moon child

参号

１０P

　あの大学生達のような者がいる場所に、レンマはいられない。たとえ従業員が心優しい人間でも、レンマは気を使って行くのをやめるのだろう。


　子供っぽく自由奔放なレンマ。だがそんな彼が人目を気にして自分を曲げるようになったのは、数年前のルカが生まれた日のこと。


　まだ生まれていないルカの卵を壊そうと１２体のハウンド、８体のリンクスが襲いかかっていた。


　ハウンド達が出現する前に卵を見つけ警護をしていたレンマとシャノン。すぐにチユニのそばにいるライトに連絡を送り、戦闘部の応援を呼んだ。


　到着まで２人で近くの人間達を避難誘導しながら、ハウンド達と戦う。ハウンドとリンクスを合わせて２０体と多いが、街の中心地とあって人間も多い。


　シャノンはその能力を大いに駆使して人間達を庇い大けがを負いながらもリンクスに銃口を向ける。


　レンマはその怪力でと雷で１度に多くのハウンド達との戦闘を繰り広げていたが、母親に置いて行かれた小さな子供２人に気が付いた。


　すっかり腰を抜かしてしまっていて、近くにいたハウンド３体が我先にと飛びかかっている。


　瞬間、レンマは対峙しているリンクスに背を向け爪で肩を抉られながらも走り、懸命に手を伸ばした。


　横から飛び込んできた別のハウンドが脇腹に食らいつくが、それでも歯を食いしばって地を蹴った。大きく跳んだ。


　伸ばした手が死の恐怖に怯える子供をつかみ、腕に抱く。自分の大きな体からはみ出ないようきつく抱きしめ、振り下ろされる爪に耐える。


　ザシュッザシュッ！と、いくつもの鋭い爪がレンマの背中に襲いかかり、真っ赤な血が噴き出す。