moon child

那月

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柒号

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 力が暴発し、部屋の中のものが空中に浮く。椅子が曲がり、重たいテレビやベッドまで浮いて壁にぶつかる。


 激痛の波が押し寄せ「ゴホッ!」と咳き込めば彼の体から衝撃波が生まれ、壁や家具を叩き壊す。同室のユラの道具箱から忍道具が飛び出る。


 サイコキネシス。それがヒロキの特殊能力。何かと便利な能力だが、こうなると本人が落ち着く以外対処できないのでなかなか厄介だ。


 あの時もそうだった。ハルヒを失ったあの日の夜も同じことが起こり、そして彼が助けてくれた。


「うっ……落ち着いて、ヒロキ。大丈夫だから」


 ガチャリと、鍵を閉めていたはずの扉が開き深手を負っていたライトが、ヒロキの肩に触れる。


 あらかじめわかっていて、合鍵を持ってきていたのか。向かいに座ると、グッと引き寄せて抱きしめた。至近距離で放たれる衝撃波がライトを襲う。


「自分で、何とかする。ほっといて、っ……よ……」


「できないよ。俺は長男だ、弟が苦しんでいるのを見て見ぬふりなんてできない」


「ゴホッ!お節介。ライトなんか嫌いだ。はぁ、はぁ……っう、はっ……」


「ハクトの口癖だね。でも、それが俺の役目だから。ヒロキ、ハルヒを失って辛いのはお前だけじゃないんだよ。俺もチユニさんも皆もショックで、苦しんで辛くても前を向いて進んでる」


「お説教?ハルのことを誰よりも1番想い、苦しんでるのは俺だって。ライト、あんたの何倍も苦しいよ」


 額に玉のような大粒の汗を浮かべ、両手でライトの胸ぐらをつかむヒロキは顔を上げた。グレーの瞳は鋭利な刃物のように鋭く睨み付けているのに、口元は笑っている。


 それでもライトは怯むことなく、肩をつかむ手にグッと力を込めた。


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