moon child

伍号

５P

　ハクトは１人では戦えない。そこで危なっかしい彼を補助するのが、退路を確保しながら近くの人間達を避難誘導しているライト。


　彼は正直、わけあってハクトよりも戦えない。肉体を使って戦うよりも、状況を把握し頭脳を使って最善策を見出し指示を飛ばす、いわば司令塔。


　それに彼の特殊能力はそれに特化した能力だ。誘導しながらも時々、ハクトに指示を飛ばしている。


「そのハウンドを前に思いっきり蹴り飛ばして下がって！右斜め後ろから来るからそれもギリギリまで引き付けてから避けて、後ろのやつが衝突するから！」


「前、蹴る！み、右後ろ？やだやだっ！はっ、は、挟まれてるっ」


「落ち着いてハクト！３、２、１、今だ横に跳んで！一気に狩れッ！！」


　ライトの指示通り、斬りつけたハウンドを前に蹴り飛ばせば乱入してきた別のハウンドが蹴躓く。立ち直られる前に跳び下がれば２体に挟まれる。


　しかし冷静なライトの合図に合わせて２体をギリギリまで引き付けて横に跳べば、２体は正面衝突。


　目の前で倒れるハウンド３体を、ハクトの赤いナイフが斬りつける。的確に急所を、浅くても何度も斬りつけ２度と動けないようにする。


　両手が返り血で染まりハクトの息が荒くなって、苦しそうだ。レンマはまだか？


　ハウンドはまだ９体残っている。誰がどう考えても、ライトの補助があってもハクトに残りのハウンドまで殲滅する余力は残っていない。あと２体が限界だな。


　ライトには身を守るすべがない、こともないが。武器を持っていない。


　代わりに、安全性の高い場所を探せる。別のハウンドが襲いかかってきても、確実に避けられる。ライトはそういう特殊能力を持っている。