moon child

伍号

２P

　ライトは思った。さっきの爆発で、レナが頑張って隠してきた闇が他の月子に伝わってしまった。自分のせいだ、と。


　バレたからといって、レナが虐められるわけではない。むしろレナほどではないにしろ、人間に憧れている者はいるはずだ。きっと、皆は理解してくれるさ。


　他の月子達の絆の力を信じ、ライトは立ち上がった。深くうなずき、ハクトに手を差し出す。


「ありがとう。もう大丈夫、散策再開できるよ。そういえばライトはどこにいたの？遠くにいたって言ってたよ、ね？」


「あぁ、遠くって言ってもこの街の中だよ。今日は時間的にも余裕があるし、足を延ばして普段は行かないところを調べてみようと思ってね」


「せっかくの計画、僕のせいで台無しになっちゃったんだ。ごめんなさい。僕、やっぱり１人でも――」


「シッ！この感じ……ハウンドか？まさか近くに、新しい卵が……！？」


　ライトの手を取り立ち上がったハクトは自分のせいで彼に迷惑をかけたと落ち込むが、ライトはそんなことを思うような男ではない。


　それに今はそれどころではない。何かを察知したライトはハクトの口を手でふさぎ、当たりをキョロキョロと見渡す。


　遠くで悲鳴が上がった。混乱と恐怖に乱れ、町行く人々がある方向から逃げ惑っているのが見える。


　走る人間達の背中側から、黒い影が飛び出してきた。１つではない。複数の黒い影は次々と人間達に襲いかかり、肉を噛みちぎろうと食らいつく。


　考えている暇はない。ライトは当然、体調不良が少しマシになったハクトも飛び出した。


　ついさっきまでは何もなかったはずだ。なのに今、２人の目の前には逃げ遅れた人間に食らいつき肉を噛みちぎっては貪り食うハウンドと屍。赤い血の水溜まり。