moon child

陸号

１０P

　ただ今回は、今の自分の心の状況をわかっているから勉強をサボってまでして外に出た。


　ポシェットに財布だけを入れて、１人で街をブラブラ歩く。歩きながら、町行く人々や景色をジッと見つめている。


　レナは街に出てきた時にはよく、こうやって怪しまれない程度に人間観察をする。


　実はレナが抱える闇が理由になっているのだが、なにしろもうどうにもできないことだ。本人もわかってはいるが、どうにもできないイラだちが募っていく。


　レナは人間に強い憧れを抱いている。強い、強すぎる憧れは姿を変え、やがて彼女は「人間になりたい」と強く願うようになった。


　それはレナが生まれて初めてチユニと一緒に、世界見学という名目で街へ散歩に出かけた時のこと。


　人間の優しさに触れ、悪を知り、汚さを見て、愛を学んだ。人間にだって光や闇はある。けれどその全てが、人間という生き物がレナにとっては輝いて見えた。


　人間にとっては人間なんてと思うだろうが、月子の方が不老で良いじゃないかと思うだろうが。


　成長のない月子は、彼らなりに不便を感じるものだ。レナは特に、イマドキ女子高生達の会話に衝撃を受けたらしい。


　友達の悪口、新しくできた店、流行りのもの、恋の話、将来の話。それから体形の話など、それまで何にも興味を持たなかったレナはコレで、今のキャラが形成されたようなものだ。


　それからというもの、街へ出かける機会があれば１人でこっそり大図書館へ赴き、人間の生まれてから死ぬまでの経緯など人間について調べている。


　今だって周りに他の月子がいないかとキョロキョロしながら大図書館へと向かい、まっすぐ“人類の歴史”というブースに向かって本を漁る。