moon child

玖号

５P

　ユラの小動物好きは、彼が生まれてすぐに全員に知れ渡った。というのも、ユラの誕生を祝って軽くはしゃいだ日のこと。


　チユニと月子全員、それから彼らと関わりが深い戦闘部長の男と諜報部長のカラスが参加していた。


　カラスは名前のごとく常に１羽はそばにカラスを置いている。ゆえにそのカラスに反応してしまったユラの姿を、全員が目にしてしまったのだ。


　というか、もはや事件レベルか。


　カラスの肩に乗っている小さいカラスに背後から近づき、スッと伸ばされたユラの手が漆黒の翼に触れる寸前に小カラスが飛び立ちユラを猛攻撃。


　飼い主であるカラスもものすごい剣幕で怒鳴り散らし、ユラは落ち込んで数時間、自室に引きこもり。


　カラスにとって小カラスは家族も同然。それが急に襲われたのだ、怒る。それに驚き恐怖した。ユラの忍者すぎる気配の消え方と、度を越えた小動物好きと、それを制御できないことを思い知った。


　あれはもう、愛を通り越して犯罪のレベルだと思う。猫好きなのに猫アレルギーというようなジレンマ。ユラはまだ、小動物に触れたことがない。なのに好きなのだ。


「…………我、そんなに恐ろしいのか……」


　ついさっきまで小鳥達がとまっていた窓枠に触れ、彼は小さく溜め息を吐いた。遠くから見るだけでも癒される。しかし触れてみたい。触れてもっと癒されたい。


　触れればきっと温かいのだろう。顔を近づければ独特な動物の匂いが。包み込むように抱き上げればモゾモゾ動いて早い鼓動を、小さな命を感じるのだろう。


　感じてみたい。でも、どうすればいい？