ホスト狂いのホスト

第７章

⑦

　俺、顔色悪いのかな？普段より少しだけ厚めにメイクしてきたのに。立ち上がって、軽くストレッチして見せたらフレブルさんは溜め息を吐いた。


「ちゃうねん、そうやない。確かにシャンパン一気飲みを特技にして新しい売りにするんはえぇで？かっこえぇわ。けどな、今日はアカン。姫の注文でも、ちゃんとモノは選ばんと。おまえさんがさっき飲んだんはこれや」


　フレブルさん、怒ってる。いや、悲しんでる。彼がスッと差し出した、俺がさっきまで握りしめて煽っていたボトル。それはシャンパンの中でも最高級のランクに入る“アルマンド”の“ロゼ”だった。


　アルマンドロゼのボトルはシャンパンらしい形のボトルにスペードの印章、そしてロゼは全体的に淡いピンク。正直、何も考えず適当に選んでしまった。


　“アルマンド”にはロゼ以外にもいくつか種類がある。その種類によって値段も違う。ロゼは高い方から２番目。ウチで出してるのは、６０万円。


　美咲さんならともかく。とても、２０歳になったばかりの若お姫様にはハードルが高すぎる代物。ホストは姫に合わせて接待しないといけないのに。なのに、俺……


「やぁっとわかったみたいやな。ま、こんなんするんもホンマおまえさんらしくないわ。あんな大金を、しかも一気に加算されたんや。しばらくは来ぅへんで」


　そう言ってフレブルさんはコンコンに合わせて飲んでいたイチゴミルクサワーの残りを飲み干して、バックへと消えた。


　冷ややかな視線は、もうない。