ホスト狂いのホスト

第５章

④

　――おかしいな。どうして隣町まで来ちゃったんだろう？このナビ、壊れてるのかな？現在の時刻は、１０時です。こ、殺される……


　と、とにかく電話をしよう。土下座しながらスマホを耳に持っていく。あ、すぐにつながった？


「この、救いようのないドアホウが。うずくまっているのか？見えている。車だ、すぐに乗れ」


　ブツン。今まで聞いたことのないような低い、ドスの効いた声が耳を這っていった。うわぁ、めっちゃ怒ってるぅぅぅっ。


　土下座したまま頭を抱えていると、すぐ横で車が止まった。顔を上げると軽くクラクションが鳴った。震えながらも立ち上がると、運転席に般若……オーナーがいた。どうして？


「もうしわけありませんごめんなさいすみませんごめいわくをおかけしましたゆるしてください」


「うるさい、黙れ。まったく。ＧＰＳを持たせているというのに、なぜ追跡が追い付けないほどわけのわからない道を通るんだ。しかも車が入れない細道ばかり」


　あ、ＧＰＳか。オーナーはずっと、俺に持たせているＧＰＳをたどって探してくれていたんだ。いや、それでも追いつけない俺って、迷子の天才？


　疲れきった顔のオーナーが怖くて視線をそらし、カバンにつけてあるお守りを手に取る。


　俺の酷い方向音痴を見かねて、オーナーが開運祈願のお守りに小さなＧＰＳを入れてくれたものだ。これがなかったら俺、いまだに隣町をさまよって家にすら帰れなかったかもしれない。