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14 魔法が使えるオーク

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「フゥゥゥゥ……」

 異空間への入口で待ち構えているハイオークは落ち着いた様子で大きな口から息を吐き出した。

 オークが茶色の薄汚い毛並みだとすると、ハイオークは薄緑色をした艶やかな綺麗な毛をしててちょっと高級感すら感じる。

 それにモンスターのくせにこの落ち着きよう。

 ボスだ……

 このダンジョンの出口を守っているボスで間違いない。

 どっしりと構えたその出立ちからは俺を倒すというよりも先へ進ませない強い意志で満ちているような感じだ。



 俺が歩み寄らなければ攻めてくるような雰囲気ではない。

 ただハイオークの目はいつでも準備万端と言わんばかりにギラギラと俺を睨みつけている。



 あまりゆっくり考え込んでる時間はないぞ。オーク達だって追ってくるだろうし。

 このダンジョンから出てしまえれば簡単だけど、そう簡単にはいかせてもらえそうにない……
 それでもここはダンジョンから脱出することが最優先だよな……


ポンッ

 どれだけ屈強な相手でも抑えてしまえば身動きをすぐには取れないはずだ!

「盾騎士! そこのハイオークを抑えててくれ!」

「ヌウ!」

 俺の気持ちに呼応して盾騎士も気合十分に返事して、ハイオークに向かっていった。


 単独で待ち構えていたのは俺にとって好都合だ。
 悪いがこのまま異空間の入口を通らせてもらう!


 盾騎士はノシノシとハイオークに近づいていく。

 大楯で視界をふさいだ時が俺が異空間へ飛び込むチャンスだ。


 迫る盾騎士に対してハイオークは手持ちの汚い布で覆われたメイスを手に取り構えた。


 だいぶ距離が迫ってきた。
 盾騎士がハイオークに向け大楯を突き出す。


 よし! 今だ!


ボフッ!


 周りがいきなり明るくなった。


 炎!?
 まさかハイオークが魔法を使ったのか?


ボシュゥゥゥ……


 あっ! 炎に巻き込まれて盾騎士が消滅してしまった。


 守り専門の兵士がたった一発で……ウソだろ……

 先に見えたハイオークの持つメイスの布が燃え本来の形があらわになった。

 メイスの先に水晶が付いている。これが魔力の源か。

 オークとは違ってハイオークには魔力があるとは聞いたことあるけど、その魔力をあのメイスの力で倍増させているんだ。

 やばいぞ……

 上位種だろうから力もオーク以上、そして盾騎士を一撃で消滅させるほどの魔力も持ってる相手……

 異空間の入口へ入るためにはこんな相手を倒さないとダメなのか……


「フゴッ!」

「フゴゴ。フゴー!」

 げっ……よりによってこのタイミングでさっきのオーク達も追いついてきた。



CP:5/20

 CPは自然回復をちょっとしたみたいだけど5しかない……


 持ってるアイテムは

・ 宝石(赤) × 1
・ 宝石(青) × 3
・ 小瓶に入った謎の液体 × 1
・ 薬草  × 10

 これくらいしかない。

 こんなことならCPの回復する小瓶はもっと大切に使ってればよかった……

 まだ使ってない青色の宝石。これを試してみるか……

ポポポポポン!

「「「「ウオオオオーーーーー!!!」」」」

 ありったけの傭兵で勝負をかける!
 って言っても5体しか出せないけど。


「フゴ!?」

 いきなり現れた傭兵達を見てオークは驚き後退りしてる。
 引いてくれた今がチャンスだ!


 青い宝石ひとつを地面に叩きつけた。


 粉々に割れた宝石から青い粒子と光が舞い上がり俺と傭兵を包み込んだ。


ー兵士のレベルが一時的に上がりますー

 おおっ!
 この宝石も悪くない。兵士が単純に強くなるってことじゃないか!


■ ■ ■ステータス■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

名前:クラム
性別:男
年齢:43

所有スキル
最強軍団 
スキルレベル:15
CP:20/20
[兵士]
 傭兵 (CP1) Lv3
 狩人 (CP2) Lv2
 盗賊 (CP2) Lv2
 ・ユニークスキル:アイテム優先
 盾騎士(CP5) Lv2

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 あっ……全兵士1だけレベルが上がってる。

 たった1か……


「「ウオーーー!!」」

 レベルが上がっても傭兵は変わらずにいつも通り間近にいるモンスターに攻め込んでいく。

 直近にいるオークに向かっていくが、あっさり返り討ちにあって消滅した。


 レベル3になってもこんなもんか……

 厳しいな。
 この感じだと盾騎士を出してもハイオークの魔法に一発で焼かれてしまう……


 せっかくの盾騎士も有効に使えない……


「フゴォッ!!」


 オークがノってきてしまってる。
 ズバズバと傭兵達が次々にやられていく……


 残り2体しかいない……


「ウオー!」

 なのに残った傭兵は負けじと攻めにかかっていく。

「ちょっとは様子を見ようとかないのかお前ら!」

 ずーっとそうだ、傭兵は出るたびに勝てもしない敵もお構いなしにとりあえず突っ込んではやられて、何度やったって覚えやしない。

 そんなんだから、俺はずっとギルドで雑用をする羽目になったんだぞ!

 お前さえもっと役に立ってくれてれば……



「ウオー!!」


 攻めていく傭兵を弄ぶようにオークが蹴り飛ばした。

 雑魚だったことがバレて遊び出してきた。

 ハイオークも構えるのをやめて岩場に腰掛けて様子を見てやがる……


 ゴロゴロと転がる傭兵が、すぐに立ち上がりまた向かっていく。


 もう無駄だって……

 バカにされてるんだぞ、こんなモンスターに……
 なぶられながらやられるのになんだそんなにマジメに攻撃し続けていけるんだよ……


バキィィィッ!

 えっ?


 傭兵の剣がオークの戦斧を破壊した。

 5体の傭兵達が続けて攻撃したから脆くなったのか?


「フゴ??」

 なにより驚いているのは戦斧を破壊されたオークの方だったようだ。



 通じた……


 絶対もうダメだと思ってたのに、バカがつくほど一直線な傭兵の攻撃が戦斧を壊した。


 バカは俺の方だった……


 まだ負けてもいないのに、勝てる可能性がほんの少しでもあるのにそれを見るのをやめて、傭兵のせいにしてしまって……


 ギルドを追放されたのだって俺のせいだ。
 傭兵のせいなんかじゃない!


 決めた!

 ずっとやってきた、傭兵とここで心中してもいい!

 全てを出し切って俺は傭兵と一緒にオーク達と戦う!
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