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【第7週】
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【第7週】
●11月7日
与党である志民党が発案した、「健康重量税」は参議院を承認・通過しました。
この新しい税の導入は、「育児減税」と同時予定で、来年度から導入されます。
「健康重量税」は、国民の健康維持を目的として導入され、
10才以上の男女、その平均体重+1kgにつき、100円の課税となります。
同時に導入予定の「育児手当拡充」に関しては、
子供を産み育るごとに手当金を支給する物であり、
この新しい税制の導入で、国民の健康維持と少子高齢化への足止めを狙っています。
ただし、国民からの反発も大きく、山本総理の支持率低下が予想されます。
28 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:32 ID:soku0011
ただでさえ生活苦しいのに、体重で課税とかあり得ない。
肥満が悪いって決めつけるなよ、そんな簡単な話じゃないだろ。
29 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:33 ID:w393M3Aj0
妊活中だから育児手当拡充は助かるけど、健康重量税には不安…。
妊娠したら体重増えるのに、どう対応するんだろう?
30 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:33 ID:.ODiSt000
これを機に夫と一緒にダイエット始めようかな。
でも急に体重減らすのも体に悪そうで怖い。
31 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:bTayrSlu0
体重は問題ないけど、結婚なんて夢のまた夢だわ…。
育児手当金の恩恵を受けられる日は来るのか?
32 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:yOQW5e.g0
国民イジメもいい加減にしろ。
政府は自分たちの贅沢削るのが先だろ!こんな税金で何が変わるっていうんだよ。
●11月9日
劇的な胃腸炎とインフルエンザに似た症状を引き起こす病気が、同時多発的に発生しています。
東京、大阪、青森、名古屋、博多と大都市に患者が集中しており、
ハロウィーン等のイベントに集まった事により、爆発的に流行している様子です。
その為、各地の自治体は、対策の徹底を呼びかけています。
現在、特定された患者数は下記の通りです。
東京=2,236人
大阪=1,568人
青森=356人
名古屋=598人
博多=453人
その他=425人
現在、この症状は急性感染性消化器不全症候群(AIGIS)と名付けられ、隔離対策が行われています。
今後も増加傾向にあると想定され、政府は原因特定と対策に迫られています。
また、強毒性インフルエンザの可能性も考えられており、
原因特定に世界保健機関(WHO)の視察が来週予定されています。
102 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:I84S.UhN0
通勤電車で感染するのが怖いな。
満員電車で広がったら、一瞬で東京中に蔓延するだろう。
マスクは必須だな。
103 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:I84S.UhN0
これ絶対、どこかの組織が仕組んだバイオテロだろ。
感染の広がり方が不自然すぎる。
誰かが意図的に撒いたに違いない。
104 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:p431iCis0
家族が感染したらどうしよう。
特に子どもたちは、体が弱いから本当に心配…。
何か対策をもっと強化してほしい。
105 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:AyfQ.Io.0
>>103
こうゆう陰謀論を広げるのはやめてほしい。
こんな状況だからこそ、冷静に正確な情報を見極めるべきだよ。
32 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:aMAterAsu00
きっと政府は新ワクチンを打てと言ってきます。
ワクチンによる薬害がまん延するに違いありません。
新ワクチンは、絶対打たない方が良いですよ。
また、いつもの朝が始まる。
外では、怪しい病気が流行しているみたいだが、
それで仕事がなくなる訳ではない。
渡辺ハルナはそう思いつつ、更衣室で白衣を羽織った。
身長は148cmの小柄で、体形はずんぐりとしている。
髪は短くベリーショートにまとめ、全体の雰囲気は中性的な印象を受けた。
獅子鼻に銀縁メガネを載せた顔。
美人ではないが、愛嬌は充分にあると自分では思っていた。
その証拠にナースや患者達からは、評判が良い女医だと自負している。
少彦名大学病院の産婦人科医になって、5年。
小さいが大学病院で、担当医として立派に医者を続けている。
ハルナはそうした自信を奮い立たせ、診察室へと入った。
今日も患者が目白押しだ、忙しい一日になる。
診察室のPCモニターに電子カルテを開く。
"名前は…、新藤アオイさん。"
"あら、初診なのね…。"
ハルナはカルテから、問診票へと視線を移す。
そして、デスクの隅にあるマイクのスイッチをONにした。
「新藤さん、新藤アオイさん。」
「5番の扉へ、どうぞ。」
白い引き戸が開き、無言で患者が入室する。
「はい、今日はどーされましたか…?」
電子カルテへ必要事項を入力しつつ、事務的に問いかけ、
ハルナは視線を患者である、新藤アオイへと向けた。
だが、患者が座っている筈の丸椅子に、新藤アオイは座って居なかった。
「…!!」
ぴたりっと動きを止め、ハルナは立っている女性を見た。
ハルナの視線が定まる前に、女性はハルナへと急接近する。
体当たりされるかと思う位の速度で間合いを詰め、ハルナは腕を取り押さえられた。
どんっと机の上へ組み伏せられ、腕を抑え込まれる。
「何?何なの…!?」
来訪者の急な行動に、ハルナは声を荒げた。
そして、自分を取り押さえた女性に見覚えがあるのに気が付く。
その女性は、"新藤アオイ"では無かった。
綺麗に染めた青いミディアムヘア、ツートンカラーで内側が明るい水色。
片側の側頭部は、刈り上げたツーブロック。
そんな、パンクロックなスタイルは見覚えがある。
自分の担当していた患者。
IPS妊娠治療を施していた女性。
交通事故で入院した後、行方不明になっている女性。
杉本リンカだった。
「り、リンカさん…??」
「ど、どうして、ココにっ??」
リンカが目の前に現れ、ハルナの心臓が激しく弾み、早く鼓動し始める。
だが、それを表に出さないようにして、必死にリンカへ努めて優しく問いかけた。
「事故…、そうっ!」
「交通事故で入院してた筈じゃあ…?」
「それが…、何でこんな事…っ!?」
「せんせ、アタシ…。」
「知りたいの…、何か知ってるんでしょ?」
「ハルナ先生。」
リンカはゆっくりと、ハルナへ顔を近づけ低い声で囁いた。
ドスの効いた低い声。
最初、ハルナはリンカの声色は、威嚇の為に低い声かと思った。
だが、チラリッと彼女の様子を伺う。
顔面は青く。
血色も悪い。
肌には、霧吹きで水滴を吹き付けた様な脂汗。
ハルナを抑えている力も、どことなく弱い。
何か異常を抱えている様にしか見えない状態。
そんな体調でもリンカは必死に力を振り絞り、ハルナの抵抗を抑え込もうとしていた。
彼女が何故、体調不良に悩まされているのか?
ハルナは瞬時にその原因を理解したが、
それをリンカへ告げる気持ちを呑み込んだ。
代わりにハルナは、刺激しない様に彼女の手を取る。
そして、ゆっくりと掴んでいた腕を外した。
リンカはそれに対抗もせず、素直に従ってハルナへの抑え込みを解いた。
実際、リンカの体調は最悪な状態だった。
頭痛。
悪寒。
倦怠感。
日に日に状態が悪化している事を自覚させられる。
「ハルナ先生ぃ…。」
「知っている事を全部話して…っ!!」
そんな状態でもリンカは、根性で行動していた。
「ええっ??」
「そんな急に言われても…。」
「何が何だか…、ねぇ?」
ハルナは視線をリンカから外さず、椅子へ座り直す。
「面倒くさい説明はいいのっ。」
「ハルナ先生、アタシに何をしたの…っ!?」
耐え切れない様子で、リンカは丸椅子へドスッと腰を落とす。
ガンッと威圧する様に両足で床を踏み、ぐっと四股を踏んだように足を開く。
「アタシのお腹ぁ…。」
「実は妊娠していて、その事を前から知ってたんでしょ…?」
「心当たりは、ここしかないのよ…っ!!」
リンカは凄みを利かせ、声と態度でハルナへ詰め寄った。
その間も意識がグワンッと揺れ動き、視界が掠れるのをリンカは必死に耐える。
「え…、ぃゃ…。」
ハルナは鬼気迫るリンカの視線から目を晒す。
彼女の視線を追う様にして、リンカは中腰に腰を上げる。
そして、ドンッと大きくデスクを拳で叩いた。
「言いなさいっ、早くっ!!」
リンカが叩いたデスクの天板が、拳の形に数ミリ沈んでいる。
女性に、いや男だってこんな芸当は出来はしない。
「ぃ...ぃゃ、あたしぃ...。」
「頼まれただけっ!!」
「そぅっ、そぅよっ、頼まれただけなのっ!!」
リンカの現状を理解したハルナは、引きつった笑みを浮かべた。
「頼まれた?」
「誰に…?」
「…あの、皇って女…?」
リンカはデスクを打ち抜いた拳を引き、間近でハルナの表情をじろりっと見つめた。
「そう、ディライラっ!!」
「あの女のせいよ…っ!!」
「あ、あたしはぁ、普通にぃ?」
「普通に、IPS妊娠治療を行っただけ…っ!!」
リンカの視線から逃れようと、ハルナは座った姿勢で椅子ごと後退する。
「あたしはぁ、雇われただけだしぃ…っ」
「ぜ、全部、上からの指示に従っただけよ…っ!!」
ハルナは動揺しまくって、震えた声で叫ぶ。
「そう、でも…。」
「それは、嘘なんでしょ?」
のらりくらりと言葉を繋ぐハルナの態度。
それに最悪な体調で付き合う事に、リンカは耐え切れなくなっていた。
進まぬ会話と気分の悪さが、身の内でうねる様な怒りの炎となりつつある。
「本当は、何か関係してるんでしょ?」
「ねぇ…、ハルナ先生っ?」
怒りに内面を焦がしつつもリンカは、冷静に状況を分析していた。
リンカが妊娠治療を受けていて、担当医のハルナが居た病院。
それが、今居る"少彦名大学病院"
皇・ディライラが所属していると名乗った病院。
それは、大己貴大学病院
ネットの情報だと、二つの大学は姉妹校だ。
大学病院も提携関係にある。
「ねぇ? 先生…??」
リンカは先程まで溢れ始めていた憤怒を隠す。
代わりに大人しく、優しい声で問いかけた。
「上からの指示だとか…。」
「別の大学病院からの依頼だとか…。」
「お医者さんが…。」
「そんな得体の知れない事に軽々と加担するの?」
リンカは優しく感情を押し殺しつつ、ハルナとの距離を詰める。
ハルナは椅子を使って後ずさったが、デスクとリンカの間に挟まれ逃げ場を失った。
「ぃやぁ…、それは…。」
「それわぁ…、どうしてもぉ…。」
「どうしても、必要だったのよ…。」
「アナタには…、悪いとは思うけど…。」
ジッと真正面から見据えるリンカの視線に耐え切れず、ハルナは大きく俯いた。
「わ。わ、我々…、」
「我々の悲願達成には…。」
「必要だったのよ…。」
ぽつりとハルナは下に俯いたまま、小さく呟いた
「あ。あ。あたしわぁっ!!」
「信念を持っている…っ!!」
ハルナは強い語気で呟いた。
それが、彼女の勇気に火を灯す。
「だからっ! だからっ!!」
「これは未来の為の行動よっ!!」
「アンタに悪く言われる謂れはない…っ!!」
どんっとハルナは脚でリンカを弾き返した。
不意打ちを喰らったリンカは、よろりっと数歩後ろへ後退させられる。
「悲願達成?」
「ハルナ先生…、アナタの信念って…。」
ぐっとよろけた体勢を立て直し、リンカは再びハルナへ問う。
「それは、アマテラス…?」
「…。」
怒りを露わにしたハルナの動きが、ぴたりっと止まる。
「ハルナ先生…。」
「あの、変な団体と関係がある事なの…?」
「…そうよっ!!」
「アマテラスこそ、次世代の救いでありっ!」
「未来への希望っ!!」
ハルナは強い語気と自信を露わにして、リンカへ告白した。
対してリンカは、ハルナへ向き合ったまま、
最初に入って来た引き戸へと、慎重に後ずさりしていた。
ここまで騒いでいるのに…。
ハルナとリンカが居る診察室は、完全な密室ではない。
小さい区切りで、医者側の壁はなく。
他の診察室と繋がっている。
普通ならば、そのブースは他の病院関係者が行き来している筈だった。
本来ならば…、
だが…。
ナースの姿。
別の医師。
警備員。
誰も居ない。
ハルナとリンカの二人きり。
誰もこの診察室に入って来ない。
その状況に異変を感じていた。
だが、あの背筋を刺激する"殺気"は感じない。
「あの…。」
「あの変な女と、鬼面の男は何?」
リンカは退却を決めつつ、最後の質問をハルナへ問いかける。
「変な女とは…、」
「失礼ですわっ!!」
ハルナの背後、診察室の奥から聞いた事のある声が響いた。
真っ赤なビジネススーツは、紅を抜けて黒味がかっていた。
その深紅に金髪が映え、颯爽と皇ディライラが診察室の奥に立っている。
「ディライラっ!!」
リンカは即座に腰深く構えて、臨戦態勢を取った。
それに対して、ディライラは慌てずに片手を上げて制する。
「お待ちなさい、リンカさんっ。」
「アタクシ…♪」
「今日は、お話し合いに来たんですの。」
そう告げ、二人の居る診察室へ歩を進める。
そして、診察室にある簡易ベッドへ腰かけた。
「アタクシ、今日は闘う気はありませんわ。」
片脚を上げて組むと、ディライラは丸椅子を指し示して、リンカへ着席するように勧めた。
恐る恐るリンカは、丸椅子へと腰かける。
「リンカさんだって、アタクシが近くに居たのに気づかなかったでしょう?」
「"イザナミ"とはいえ…、」
「相手に"殺気"が無いと、検知できませんのよ。」
リラックスした様子で、朗らかにディライラは言った。
「まあ、それよりも…。」
ディライラはリンカの姿を、じっくりと視認する。
「リンカさんは、随分と調子がお悪いのではなくって…?」
営業スマイル満開で、リンカを指差す。
「アタクシでしたら、"ソレ"。」
「お治しする方法を知っていますわ♪」
うふふっと余裕の笑みをディライラは浮かべる。
確かに病院から逃亡してから、体調が良かった事は殆どない。
今は緊張感と怒りもあって、血の巡りが良くなった気はするが、
今だに軽い頭痛と倦怠感が、リンカの肉体を薄くまとわりついている。
「ふう…。」
深く思い悩んだ様子で、ディライラは溜息を吐く。
何から話したら良いのか…。
それを思い悩んでいる様だ。
「まずは…、」
「謝罪いたしますわ。」
組んだ脚を揃え直し、リンカへ向かって軽く頭を下げた。
「リンカさん、アナタは妊娠していましてよ。」
「恐らく、気が付いているとは思いますけど…。」
垂れた頭を上げ、再び脚を組む。
「やっぱり…、妊娠してるんだ。」
「じゃあ、何故…。」
「タニヤと診察を受けた時、そう言わなかったのっ!?」
ぎっと、リンカはハルナを睨みつける。
鋭い視線を躱そうと、ハルナは顔を背けた。
「まあまぁ…、妊娠はしていますが…。」
「貴女のお子様ではなくってよ。」
「それどころか、物部タニヤの血縁でもありません。」
「…はい?」
「じゃ、じゃあ、誰の子供を妊娠したって言うの?」
淡々と告げられた事柄を消化し切れず、リンカは動揺しつつ問いかけた。
「我々は、それを…、」
「"ヨモツヘグイ"。」
「…と呼んでいますの。」
ディライラは誇らしげに胸を張り、リンカの問いへ応える。
「そして、貴女の様にヨモツヘグイを妊娠している女性。」
「我々は彼女達を"イザナミ"と称しています。」
「リンカさん。」
「貴女のお腹に居るのは、人間では無いの。」
「何と言ったら良いのかしら…?」
「"寄生"?」
「"器官"という方が、近い印象かしらねぇ~っ♪」
頬に手を当て、ディライラは他人事の様に呟く。
「"器官"…?」
「ナニ言ってるの?」
「人じゃないって…、何なのよっ!!」
「アタシの子宮へ、何を詰めたのっ!?」
リンカの肉体の内側に黒く冷たい液体が、どぉっと流し込まれた気がした。
不安。
恐怖。
怒り。
そんな、黒々とした冷たさと重みが、急速に体内へ満ちて染み込んで行く。
「"ヨモツヘグイ"を成長させるには…、」
「それに適した適合者が必要なの♪」
「女性なら、誰でも良いって訳じゃないのよ~♪」
嬉しそうにディライラは微笑み、自慢げに語る。
「アレルギーってあるでしょう?」
「アレを引き起こす原因物質は、"アレルゲン"って呼ぶのだけど…。」
くるくると宙へ人差し指を回し、ディライラは思い出す様に宙を見上げた。
「男性に気持ちよく中出しを決められて…、」
宙を指していた人差し指、それに親指とでOKマークを形作った。
もう片方の人差し指でその輪を突くゼスチャーをして見せる。
それは、セックスを表すゼスチャー。
「ご懐妊っ★」
「…て、言うのが普通なんですけど。」
「その精子が、アレルゲンになる事もあるのよぉ♪」
卑猥な行為を表すゼスチャーを解き、両手を合わせる。
「"ヨモツヘグイ"は、アレルギーを引き起こしやすくってぇ。」
「適合しない女性は、強いアレルギー反応を引き起こしてしまいますのっ。」
「でも、"安定期"に入れば、誰にでも移植可能になりますのよっ♪」
両手でディライラは自分のお腹を囲み、妊娠したゼスチャーを見せた。
「だから、適合者の子宮で育成して…。」
ディライラはリンカのお腹を指差した。
「安定したら、ヨモツヘグイを摘出させていただいて…。」
「それで、改めて適合させたい別の女性に移植しますの♪」
「…まさか、そんなっ!?」
リンカはディライラに指し示された自分のお腹へ触れた。
「アタシは…、」
「今まで3回…、妊娠治療を受けたわ…っ」
「じゃあ、それは…!?」
「まさか、嘘でしょ…っ!?」
リンカの体内には、黒々とした気持ちと感覚が溢れ出すほどに満ち、
その重く暗い感覚が、彼女の動きを封じた。
自分のお腹に居る"子供"。
それは、子供じゃない"異物"。
今まで行ってきてた妊娠治療。
全て嘘だった…?
そして、脳裏に浮かんだ一番の疑問。
「た。た。タニヤは…?」
「当然、タニヤもこの事は知らなかったでしょ…?」
リンカはゆっくりと呟いた。
「…。」
きょとんとした顔をして、ディライラはリンカを見た。
「彼女?」
「あぁ…、物部タニヤの事?」
「…ごめんなさいねぇ~っ♪」
わざとらしく、ディライラはリンカを拝む様に両手を合わせた。
「この事をご存じないのは…、」
「貴女だけですの…っ★」
ペロリッと舌を出し、小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「我々が必要としたのは、適応する"容器"ですわ。」
「"ヨモツヘグイ"が安全に"着床"と"育成"出来る"容器"。」
「それがアナタなのよ、リンカさん♪」
「本当、申し訳ございません。」
呆然としているリンカへ、形式的に軽く頭を下げる。
「今まで騙して妊娠治療を受けさせて…。」
「でも、前回の2回行った治療でも、立派な"イザナミ"が誕生していますわ♪」
「…イザナミ…?」
「何?それは…?」
ディライラの言葉にショックを受けて、蒼白になりながらもリンカは問う。
「"ヨモツヘグイ"の驚異的な能力は、生存本能の強さですの」
「その強さは、受胎した女性を超人化させる。」
「リンカさんも心当たりございますでしょ?」
「"ヨモツヘグイ"で、人よりも優れた能力を得られた女性。」
「そんな女性を我々は"イザナミ"と呼んでいますのよ♪」
得意げに、
自慢げに、
嬉しそうに、
ディライラは胸を張りつつ、呆然としたリンカへ告げた。
「今までアタクシが行ったご無礼は、ホント…、」
「申し訳ございません、謝罪いたします♪」
「だから、今度は一緒に頑張りましょう…!!」
そう告げると、ディライラは片手をリンカへ差し出した。
「ぜひ、アナタにはアマテラスに入っていただきたいの…っ!!」
「ヨモツヘグイを安定して妊娠出来る女性を失う事…。」
「それは、我々アマテラスとしては、大変な損失ですわっ!!」
ディライラは立ち上がり、リンカの片手を強引に握った。
「貴女のその能力。」
「これからも、女性の権利向上に役立てていただきたいと思っておりますのっ!!」
握ったリンカの手を包む様に、両手で掴む。
「この世界は、男尊女卑で成り立っていましてよっ!!」
「でも、少しずつだけど変化はしていますの…。」
「例えば…」
「医大入試の男女差別が発覚してから、女医が増えた。」
「男女均等法によって、様々な分野の職業で女性は増えた。」
「でも、そんな遅々とした歩みでは、駄目ですわっ!!」
ブンブンと、リンカを掴んだ手をディライラは振る。
「こうしている間にも、女性達は虐げられ、搾取されていますのよっ。」
「男どもは勝手に戦争を引き起こし、民族浄化と称して、」
「敗けた国の女性へ集団レイプを公然と行う。」
「女性の身体に商業価値を付け、その姿や肉体を販売している。」
「何故、女性だけが金と体を搾取されないといけませんの…?」
「男が主役の世界には、終止符を打たなくちゃいけませんわっ!!」
カッとハイヒールで床を踏み鳴らし、
立ち上がったディライラは、力強く声を上げた。
「"イザナミ"は、そんな新世界を造り出しますのっ!!」
「超人な力を奮って、男達を駆逐するのよっ!!」
希望に満ち溢れ、嬉々とした表情でディライラは振り返る。
「でもぉ…。」
「これは、あくまで個人的な意見なのだけどぉ~…。」
「リーダーである、オオミヤノメ様とアタクシには、意見の相違がありますのぉ…」
「オオミヤノメ様は、男性絶滅を公言していらっしゃるケド…」
ディライラは一人で盛り上がりつつ、腕を組み、思い悩む様な仕草をして見せた。
「アタクシとしては…。」
「男性は脳味噌を削ってバカにしてから、」
「完全家畜化するのが良いと思いますの♪」
「そう♪ ヤプー"みたいに…」
パンッと両手を合わせ、
嬉しそうに
屈託なく
ディライラは、そう告げる。
「あ…。」
リンカの方を見て、はっとした表情を見せた。
「あら…、申し訳ないですわ。」
「アタクシ独りで盛り上がって…。」
少女の様にディライラは照れて、恥ずかしさに悶える様に身を左右へふる。
「えーと、リンカさんは…、」
「"家畜人ヤプー"てっ、…ご存じ?」
にこやかにディライラは、小説のタイトルを知っているかとリンカへ伺う。
「…。」
「…何が…っ。」
「ばっかっじゃないの…っ!!」
ディライラの三文芝居じみた演説を聞き終わると、リンカは吐き捨てる様に呟いた。
「そんな、バカみたいな活動に…。」
「協力する訳ないでしょっ!!」
ギロリッとリンカは丸椅子に座ったままで、下からディライラを睨む。
「どうせ、アタシの体を…。」
「"怪物を孕ませる容器"として使う気でしょ?
「そんな、サイコパスに誰が協力するか…っ!!」
体内で抑え込んでいた怒りの炎が、口から言葉となって噴き出す。
「…あら?」
怒るリンカに対し、ディライラは意も解さずにキョトンとした顔を見せた。
「リンカさんは…、協力はしないって、コト…?」
「ふーん☆」
「しょうがないですわねぇ…。」
腕を組み、
片手を頬に当て、
ディライラは、困った表情を浮かべる。
「丁寧かつ丁重に、"お誘い"いたしましたのにぃ…。」
ディライラの背中辺りから、ぞろりっとした棘のある黒い気配が溢れ出す。
その黒く棘のある気配は、リンカの身体へまとわりつき始めた。
その気配は、黒い棘を持つ薔薇の枝。
または、毒のある蛇のようで、
じくじくとリンカの肌を刺し、痛みに似た感覚が全身を覆う。
"殺気"。
リンカは丸椅子から跳ね飛ぶ様に立ち上がる。
そして、ディライラから離れ、
入室した時に使った、診察室の引き戸に背を預けた。
「別に…、アタクシはよろしいですのよ☆」
「所詮、貴女は"保育器"なんですから…。」
「四肢を切断したダルマにして、本当に"容器"として利用しても…♪」
ディライラはねっとりとした視線でリンカを見詰めた。
リンカはその視線から目を離さず、
背中へ手を回して引き戸を開いた。
そのまま視線を外さず、軽く後ろへ飛んで待合室へと飛び出す。
待合室は、広い長方形な室内をしていて。
中央には診察を待つ患者が座る長椅子が並んでいる。
壁には個々の診察室へ通じる引き戸があり、
その内のひとつから、リンカは飛び出した。
ディライラへ睨みを効かせつつ、待合室へ出る。
そのリンカのすぐ横に誰か立っていた。
そこから、ごぅっと突風の様な感覚。
それに、リンカは吹き飛ばされそうな錯覚を覚えた。
強く吹き上げる突風には、無数の針が舞い、彼女の肌へ容赦なく突き刺さる。
「…!?」
そんな強い殺気を感じ、リンカは相手を目視した。
立ち上がったヒグマの様な巨大な黒い影。
両手で握って、大きな拳を造ると彼女に向かって振り下ろす。
ぎちちっと筋肉の束がスーツの下で満ち満ちてうねり、
短く刈り上げた金髪。
赤い憤怒の相をした鬼の面。
皇・ディライラの忠実な僕。
左神がリンカへ襲い掛かる。
鉄塊の様な拳が、リンカの肩へ叩き込まれた。
衝撃にリンカの視界が点滅し、
勢いよく床へ叩き伏せられる。
「…がは…っ!?」
リンカは肩から袈裟切りに拳をぶつけられ
肺の息を強制的に吐かされた。
リンカの意識より、先に体が反応する。
殴られた反動。
床に打ち付けられた衝撃。
その応力でリンカは自分の姿勢を制御する。
ネコ科の猛獣の様な、しなやかな動きですり抜けると、
互いの間に長椅子を挟んだ位置へ移動した。
診察を待っていた患者達は、突然起こった出来事に驚いて動けずにいる。
左神は、そんな患者達が腰かけている長椅子を掴む。
そのまま3人が座った長椅子を持ち上げ、患者達を振るい落す。
そして、棍棒か長槍の様に構えると、リンカへ向けて突き出した。
「ひっ!?」
待合室の壁に張り付いたリンカは、身を下げて左神の放つ長椅子を躱す。
壁が凹む程の力で長椅子を突き出し、左神は執拗にリンカを攻撃する。
周囲にいる患者達も事態の異変に気付き、悲鳴を上げてパニックへと陥った。
そんな散り散りに逃げる患者を掴み、邪魔とばかりに人形の様に遠くへ放って進む白髪の長髪。
青く憤怒の鬼面をつけた大男、右神。
人々を蹴散らしつつ、彼は一直線にリンカへと突進して来る。
「ちぃ…っ!!」
右神の放つ右ストレートを躱す。
左神の持つ長椅子が彼女へ突きこまれる。
彼女はダッキングの動作で頭を下げ、それらを避けた。
しゃがんだ彼女の顔へ、右神が放った蹴りがヒットする。
「がっ!?」
大きく仰け反って、リンカは後ろに吹き飛んだ。
放り投げられた人形の様に、彼女は力なく宙を舞う。
さらに追い打ちで、左神の突き出す長椅子がぶち当たる。
脇腹。
肩。
頭。
何度も、左神の放つ衝きがリンカの肉体を打ち、
壁と長椅子の間に幾度もプレスされた。
破裂した水風船みたいに、リンカの身体から血が噴き
白い壁へ幾筋もの放物線を描く。
ぐしゃりっとリンカの肉体は床へと崩れた。
蹴り上げた脚を戻し、右神は乱れた長髪を手櫛で直す。
確かな手ごたえを感じ、床に倒れたリンカへと近づいた。
「…っ!?」
すると、壁にかけてあった額縁が外れ、右神の肩へとぶつかる。
それは、先程の衝撃で吹き飛んだのか、特にダメージを受けなかった右神は首をかしげた。
視線を元に戻すと、床に倒れたリンカと視線が合った。
ギラリッと白い光を放つ彼女の視線は、
無感情で
無慈悲で
人の意識を感じさせない。
冷たい刃物の様だった。
吸い込まれる様な眼光。
右神はそれを凝視していると、後ろから何者かに殴られた。
ガラスの弾ける音が響く。
キラキラと輝くガラス片。
壊れた額縁。
彼は、軽い衝撃に意識が奪われる。
待合室の壁を飾っていた額縁。
それが右神の後頭部へ襲い掛かった。
慌てて右神は周囲を見渡す。
腰が抜けた状態で逃げる老女の後ろ姿。
長椅子に隠れている老人。
周囲で逃げ惑う患者達。
右神を攻撃する様な敵は確認できない。
不測の事態に戸惑う右神。
それを見ていた左神は、長椅子を抱えたままで少し後ろへ下がった。
壁にあった額縁は、宙を飛んで右神の頭へぶつかったのを見たからだった。
ゆらりっと震える手が挙がる。
それは床に倒れていたリンカの手だった。
それは宙を差し、ひょいっと動く。
すると、並べて設置されていた長椅子が蠢いた。
見えない何かが椅子を動かしている。
ゴトゴトと、脚を踏み鳴らす様な音が響き、周囲の長椅子達が震えた。
異常に気が付いた右神と左神は、互いに顔を見合わせる。
すると、生き物の様に複数の長椅子が動き、二人に突撃をかましてきた。
驚愕している内に、長椅子は二人の脚へぶつかり、犬の様にまとわりつく。
「う、うがぁぁぁあっ!!」
左神は叫ぶと持っていた長椅子を振るう。
右神は突進してくる長椅子を掴むと、遠くへ放り投げた。
「…痛ぅぅぅ…っ!!」
上げていた手で、リンカは壁に触れる。
べちゃりっと血の跡が壁に着き、ゆらりっと彼女は立ち上がった。
長椅子と闘う二人を見ず、彼女は病院の玄関へと壁によりかかって進みだす。
そんな彼女を恐れつつ、患者達は道を空ける。
よろよろと進むリンカの背中へ、左神が投げた長椅子が襲い掛かる。
投げ槍の如く宙を飛び、リンカの背中へぶつかる寸前、
それは見えない何かへぶつかると、方向を変えて診察室側の壁へ突き立った。
周囲に集う長椅子を蹴散らし、左神と右神はリンカの後を追う。
正に猪突猛進なふたりは、周囲にある患者や物品に構わず、
一直線にリンカを強襲した。
右神は転がっていた長椅子を掴み、大きく横一閃に振るう。
その一閃上にいた老人の頭は吹き飛ばされた。
生卵の様に割れ、
床に髄液と乳白色な物体が飛び散る。
そんな強撃すら、リンカの手前で見えない何かに弾かれた。
自ら放った反動に右神は、弾き飛ばされて背中から壁へ叩きつけられる。
そんな彼の前を赤い物体が飛んで行った。
左神はリンカの至近距離まで駆け込むと、パンチを連打で叩き込む。
太鼓を乱打するがごとく、鈍い音が響く。
そんな激しい連打は全て、宙に浮かぶ消化器にヒットしていた。
リンカと左神の間、その空間に赤い消化器が飛び込んで来ていた。
マシンガンの乱射を喰らった様に、ひしゃげた消化器は白い煙を噴き出す。
ぶわっと待合室に消火剤の煙が充満し、全ての人の視界を奪った。
そんな一連の出来事を無視しつつ、リンカはよろよろと病院の正面玄関へと進んだ。
手を伸ばして、玄関のガラスへ触れる。
溶ける様に
崩れる様に
床から天井まであったガラス板は、細かく砕けて崩れ落ちる。
白い消火剤の煙と共にリンカは、病院から脱出した。
力付く様に膝をつき、その体はガラスと同じ様に崩れ落ちる。
病院の正面玄関。
そこには、車が玄関前まで行けるような車道とスペースがあった。
その端でアオイは車に乗って待機していた。
病院でアクシデントが起きた場合、即座に脱出できるようにだ。
車寄せの片隅で待機していると、玄関のガラスが盛大に割れた。
ビックリしつつも、アオイは注視していると、濛々と白い煙が院内から溢れ出す。
そして、血塗れなリンカがフラフラになって出て来た。
「…ええー…っ」
想定していたより遥かに大きなアクシデントに、アオイは吐く様な声を出した。
そして、車をリンカのすぐ傍へ寄せる。
「リンカっ!!」
「リンカっ!!!」
車からリンカへ声をかけたが、倒れているリンカから反応が無い。
慌てて彼女は車から降り、車を回り込んでリンカへ駆け寄った。
「ちょっとぉっ!? 大丈夫!?」
倒れたリンカの頬を叩き、意識の有無を確認する。
「ぅ…、ぅん。」
吐息に似た、力ない声が返って来る。
アオイは後部ドアを開け、リンカの腕を掴んで引っ張った。
「ほらっ!!早くっ!!」
「乗ってっ、早くっ!!!」
リンカの腕を掴み、引き寄せると腰へ手を回す。
そして、物を放り込む様に車の後部座席へ彼女押し込んだ。
素早く自分も運転席へ飛び込み、車を急発進させる。
「一体…、何をドーしたらっ!!」
「こんな事になるのよー…っ!!」
叫びに近い声で嘆きつつ、アオイはハンドルに齧りつく様な体勢で車を駆った。
「あーぁ…っ♪」
「派手に暴れたわねぇ…っ♪」
ハンカチを片手に消火剤の煙幕を吸い込まない様に鼻を押え、ディライラは待合室の惨状を見渡した。
ウキウキとした表情で、彼女はこの状況を楽しんでいる様子だった。
「でぃ、ディライラ…?」
浮かれている彼女の背後から、おずおずとハルカが顔を覗かせる。
「どうすんのよっ、ひどいわっ!!」
「アタシの職場をこんなにしてっ!!」
泣きそうな顔でハルナは、ディライラを叱った。
「ごめん☆ごめーんっ★」
満面の営業スマイルを振りまき、ディライラは両手を合わせる。
「確かにぃ~…。」
「ちょっと、ゴージャスにはしゃいじゃったわねっ♪」
「処理班を手配してちょうだい。」
シャンと背筋を伸ばし、ディライラは荒れた待合室の中を優雅に闊歩する。
「ディライラっ!!」
「こんな事っ!!」
「こんなひどい事してっ、許されないわっ!!」
今まで大人しくしていたハルナは、怒りを露わにして叫んだ。
「…なぁにぃ~…っ?」
「それって、アタクシに言ってますぅ?」
ゆらりっとディライラは振り返り、ハルナを睨む。
にこやかだった赤い唇はキュッと吊り上がる。
涼やかな目元も、それにつられる様に持ち上がった。
ファッションモデルのウォーキングの様に、優雅に踵を返すとハルナへ近づく。
「何か問題でもぉ…?」
そう呟きつつ、ハルナの肩を軽く叩く。
「理化学研究所で、非正規研究員だった貴女を…。」
「大学病院の産婦人科医長に抜擢したのはぁ…。」
「誰だったかしらぁ~…???」
ハルナの耳元でディライラは囁く。
まるで蛇の舌で舐められている様な、暗い殺意がハルナの意識を舐め回す。
「あの頃から、今まで助け合って来た仲じゃなぁーぃ♪」
サラリと彼女の金髪が流れ、ハルナへ触れる。
先程まで満ちていた、ハルナの怒気は鳴りを潜め、
彼女は怯えた表情で、無言のまま下を見詰めていた。
「大丈夫っ♪」
「アタクシにお任せになってっ☆」
一瞬でディライラの殺意は霧散して、
ぽんぽんと軽くハルナの肩を叩いた。
「…あら?」
何かに気が付き、ディライラは足元へ視線を落とした。
「丁度いいですわっ☆」
「"コレ"を犯人にして貰ってっ♪」
ディライラは、足元に転がった老人を足先で小突いた。
頭を粉砕されて転がる遺体を足で弄ぶ。
「よかったわぁーっ♪」
「丁度よい、犯人が居てくれてっ♪」
怯えて呆然としたハルナに構わず、ディライラは微笑む。
背後に現れた左神が、ディライラの上着を持ち寄る。
当然の様に彼女は、腕を伸ばすと左神の構えた上着へ袖を通した。
「さて…、申し訳ありませんけど…。」
「アタクシ、まだ仕事がありますの…っ♪」
ハルナの方へ視線を向けず、ディライラは独り言の様に呟く。
「後の処理は、ウチの処理班に任せてちょうだい。」
「それまで、患者達は逃げない様に監禁してくださいね☆」
そして、右神と左神を従え、ディライラは病院を後にする。
「では…、」
「"陽光に導かれん事を"…♪」
振り返りもせず、片手をあげてディライラは、ハルナへそう告げた。
◆◆続く◆◆
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執筆進捗&近況の確認は…
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●11月7日
与党である志民党が発案した、「健康重量税」は参議院を承認・通過しました。
この新しい税の導入は、「育児減税」と同時予定で、来年度から導入されます。
「健康重量税」は、国民の健康維持を目的として導入され、
10才以上の男女、その平均体重+1kgにつき、100円の課税となります。
同時に導入予定の「育児手当拡充」に関しては、
子供を産み育るごとに手当金を支給する物であり、
この新しい税制の導入で、国民の健康維持と少子高齢化への足止めを狙っています。
ただし、国民からの反発も大きく、山本総理の支持率低下が予想されます。
28 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:32 ID:soku0011
ただでさえ生活苦しいのに、体重で課税とかあり得ない。
肥満が悪いって決めつけるなよ、そんな簡単な話じゃないだろ。
29 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:33 ID:w393M3Aj0
妊活中だから育児手当拡充は助かるけど、健康重量税には不安…。
妊娠したら体重増えるのに、どう対応するんだろう?
30 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:33 ID:.ODiSt000
これを機に夫と一緒にダイエット始めようかな。
でも急に体重減らすのも体に悪そうで怖い。
31 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:bTayrSlu0
体重は問題ないけど、結婚なんて夢のまた夢だわ…。
育児手当金の恩恵を受けられる日は来るのか?
32 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:yOQW5e.g0
国民イジメもいい加減にしろ。
政府は自分たちの贅沢削るのが先だろ!こんな税金で何が変わるっていうんだよ。
●11月9日
劇的な胃腸炎とインフルエンザに似た症状を引き起こす病気が、同時多発的に発生しています。
東京、大阪、青森、名古屋、博多と大都市に患者が集中しており、
ハロウィーン等のイベントに集まった事により、爆発的に流行している様子です。
その為、各地の自治体は、対策の徹底を呼びかけています。
現在、特定された患者数は下記の通りです。
東京=2,236人
大阪=1,568人
青森=356人
名古屋=598人
博多=453人
その他=425人
現在、この症状は急性感染性消化器不全症候群(AIGIS)と名付けられ、隔離対策が行われています。
今後も増加傾向にあると想定され、政府は原因特定と対策に迫られています。
また、強毒性インフルエンザの可能性も考えられており、
原因特定に世界保健機関(WHO)の視察が来週予定されています。
102 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:I84S.UhN0
通勤電車で感染するのが怖いな。
満員電車で広がったら、一瞬で東京中に蔓延するだろう。
マスクは必須だな。
103 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:I84S.UhN0
これ絶対、どこかの組織が仕組んだバイオテロだろ。
感染の広がり方が不自然すぎる。
誰かが意図的に撒いたに違いない。
104 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:p431iCis0
家族が感染したらどうしよう。
特に子どもたちは、体が弱いから本当に心配…。
何か対策をもっと強化してほしい。
105 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:AyfQ.Io.0
>>103
こうゆう陰謀論を広げるのはやめてほしい。
こんな状況だからこそ、冷静に正確な情報を見極めるべきだよ。
32 名前:名無しさん 20XX/11/07 19:34 ID:aMAterAsu00
きっと政府は新ワクチンを打てと言ってきます。
ワクチンによる薬害がまん延するに違いありません。
新ワクチンは、絶対打たない方が良いですよ。
また、いつもの朝が始まる。
外では、怪しい病気が流行しているみたいだが、
それで仕事がなくなる訳ではない。
渡辺ハルナはそう思いつつ、更衣室で白衣を羽織った。
身長は148cmの小柄で、体形はずんぐりとしている。
髪は短くベリーショートにまとめ、全体の雰囲気は中性的な印象を受けた。
獅子鼻に銀縁メガネを載せた顔。
美人ではないが、愛嬌は充分にあると自分では思っていた。
その証拠にナースや患者達からは、評判が良い女医だと自負している。
少彦名大学病院の産婦人科医になって、5年。
小さいが大学病院で、担当医として立派に医者を続けている。
ハルナはそうした自信を奮い立たせ、診察室へと入った。
今日も患者が目白押しだ、忙しい一日になる。
診察室のPCモニターに電子カルテを開く。
"名前は…、新藤アオイさん。"
"あら、初診なのね…。"
ハルナはカルテから、問診票へと視線を移す。
そして、デスクの隅にあるマイクのスイッチをONにした。
「新藤さん、新藤アオイさん。」
「5番の扉へ、どうぞ。」
白い引き戸が開き、無言で患者が入室する。
「はい、今日はどーされましたか…?」
電子カルテへ必要事項を入力しつつ、事務的に問いかけ、
ハルナは視線を患者である、新藤アオイへと向けた。
だが、患者が座っている筈の丸椅子に、新藤アオイは座って居なかった。
「…!!」
ぴたりっと動きを止め、ハルナは立っている女性を見た。
ハルナの視線が定まる前に、女性はハルナへと急接近する。
体当たりされるかと思う位の速度で間合いを詰め、ハルナは腕を取り押さえられた。
どんっと机の上へ組み伏せられ、腕を抑え込まれる。
「何?何なの…!?」
来訪者の急な行動に、ハルナは声を荒げた。
そして、自分を取り押さえた女性に見覚えがあるのに気が付く。
その女性は、"新藤アオイ"では無かった。
綺麗に染めた青いミディアムヘア、ツートンカラーで内側が明るい水色。
片側の側頭部は、刈り上げたツーブロック。
そんな、パンクロックなスタイルは見覚えがある。
自分の担当していた患者。
IPS妊娠治療を施していた女性。
交通事故で入院した後、行方不明になっている女性。
杉本リンカだった。
「り、リンカさん…??」
「ど、どうして、ココにっ??」
リンカが目の前に現れ、ハルナの心臓が激しく弾み、早く鼓動し始める。
だが、それを表に出さないようにして、必死にリンカへ努めて優しく問いかけた。
「事故…、そうっ!」
「交通事故で入院してた筈じゃあ…?」
「それが…、何でこんな事…っ!?」
「せんせ、アタシ…。」
「知りたいの…、何か知ってるんでしょ?」
「ハルナ先生。」
リンカはゆっくりと、ハルナへ顔を近づけ低い声で囁いた。
ドスの効いた低い声。
最初、ハルナはリンカの声色は、威嚇の為に低い声かと思った。
だが、チラリッと彼女の様子を伺う。
顔面は青く。
血色も悪い。
肌には、霧吹きで水滴を吹き付けた様な脂汗。
ハルナを抑えている力も、どことなく弱い。
何か異常を抱えている様にしか見えない状態。
そんな体調でもリンカは必死に力を振り絞り、ハルナの抵抗を抑え込もうとしていた。
彼女が何故、体調不良に悩まされているのか?
ハルナは瞬時にその原因を理解したが、
それをリンカへ告げる気持ちを呑み込んだ。
代わりにハルナは、刺激しない様に彼女の手を取る。
そして、ゆっくりと掴んでいた腕を外した。
リンカはそれに対抗もせず、素直に従ってハルナへの抑え込みを解いた。
実際、リンカの体調は最悪な状態だった。
頭痛。
悪寒。
倦怠感。
日に日に状態が悪化している事を自覚させられる。
「ハルナ先生ぃ…。」
「知っている事を全部話して…っ!!」
そんな状態でもリンカは、根性で行動していた。
「ええっ??」
「そんな急に言われても…。」
「何が何だか…、ねぇ?」
ハルナは視線をリンカから外さず、椅子へ座り直す。
「面倒くさい説明はいいのっ。」
「ハルナ先生、アタシに何をしたの…っ!?」
耐え切れない様子で、リンカは丸椅子へドスッと腰を落とす。
ガンッと威圧する様に両足で床を踏み、ぐっと四股を踏んだように足を開く。
「アタシのお腹ぁ…。」
「実は妊娠していて、その事を前から知ってたんでしょ…?」
「心当たりは、ここしかないのよ…っ!!」
リンカは凄みを利かせ、声と態度でハルナへ詰め寄った。
その間も意識がグワンッと揺れ動き、視界が掠れるのをリンカは必死に耐える。
「え…、ぃゃ…。」
ハルナは鬼気迫るリンカの視線から目を晒す。
彼女の視線を追う様にして、リンカは中腰に腰を上げる。
そして、ドンッと大きくデスクを拳で叩いた。
「言いなさいっ、早くっ!!」
リンカが叩いたデスクの天板が、拳の形に数ミリ沈んでいる。
女性に、いや男だってこんな芸当は出来はしない。
「ぃ...ぃゃ、あたしぃ...。」
「頼まれただけっ!!」
「そぅっ、そぅよっ、頼まれただけなのっ!!」
リンカの現状を理解したハルナは、引きつった笑みを浮かべた。
「頼まれた?」
「誰に…?」
「…あの、皇って女…?」
リンカはデスクを打ち抜いた拳を引き、間近でハルナの表情をじろりっと見つめた。
「そう、ディライラっ!!」
「あの女のせいよ…っ!!」
「あ、あたしはぁ、普通にぃ?」
「普通に、IPS妊娠治療を行っただけ…っ!!」
リンカの視線から逃れようと、ハルナは座った姿勢で椅子ごと後退する。
「あたしはぁ、雇われただけだしぃ…っ」
「ぜ、全部、上からの指示に従っただけよ…っ!!」
ハルナは動揺しまくって、震えた声で叫ぶ。
「そう、でも…。」
「それは、嘘なんでしょ?」
のらりくらりと言葉を繋ぐハルナの態度。
それに最悪な体調で付き合う事に、リンカは耐え切れなくなっていた。
進まぬ会話と気分の悪さが、身の内でうねる様な怒りの炎となりつつある。
「本当は、何か関係してるんでしょ?」
「ねぇ…、ハルナ先生っ?」
怒りに内面を焦がしつつもリンカは、冷静に状況を分析していた。
リンカが妊娠治療を受けていて、担当医のハルナが居た病院。
それが、今居る"少彦名大学病院"
皇・ディライラが所属していると名乗った病院。
それは、大己貴大学病院
ネットの情報だと、二つの大学は姉妹校だ。
大学病院も提携関係にある。
「ねぇ? 先生…??」
リンカは先程まで溢れ始めていた憤怒を隠す。
代わりに大人しく、優しい声で問いかけた。
「上からの指示だとか…。」
「別の大学病院からの依頼だとか…。」
「お医者さんが…。」
「そんな得体の知れない事に軽々と加担するの?」
リンカは優しく感情を押し殺しつつ、ハルナとの距離を詰める。
ハルナは椅子を使って後ずさったが、デスクとリンカの間に挟まれ逃げ場を失った。
「ぃやぁ…、それは…。」
「それわぁ…、どうしてもぉ…。」
「どうしても、必要だったのよ…。」
「アナタには…、悪いとは思うけど…。」
ジッと真正面から見据えるリンカの視線に耐え切れず、ハルナは大きく俯いた。
「わ。わ、我々…、」
「我々の悲願達成には…。」
「必要だったのよ…。」
ぽつりとハルナは下に俯いたまま、小さく呟いた
「あ。あ。あたしわぁっ!!」
「信念を持っている…っ!!」
ハルナは強い語気で呟いた。
それが、彼女の勇気に火を灯す。
「だからっ! だからっ!!」
「これは未来の為の行動よっ!!」
「アンタに悪く言われる謂れはない…っ!!」
どんっとハルナは脚でリンカを弾き返した。
不意打ちを喰らったリンカは、よろりっと数歩後ろへ後退させられる。
「悲願達成?」
「ハルナ先生…、アナタの信念って…。」
ぐっとよろけた体勢を立て直し、リンカは再びハルナへ問う。
「それは、アマテラス…?」
「…。」
怒りを露わにしたハルナの動きが、ぴたりっと止まる。
「ハルナ先生…。」
「あの、変な団体と関係がある事なの…?」
「…そうよっ!!」
「アマテラスこそ、次世代の救いでありっ!」
「未来への希望っ!!」
ハルナは強い語気と自信を露わにして、リンカへ告白した。
対してリンカは、ハルナへ向き合ったまま、
最初に入って来た引き戸へと、慎重に後ずさりしていた。
ここまで騒いでいるのに…。
ハルナとリンカが居る診察室は、完全な密室ではない。
小さい区切りで、医者側の壁はなく。
他の診察室と繋がっている。
普通ならば、そのブースは他の病院関係者が行き来している筈だった。
本来ならば…、
だが…。
ナースの姿。
別の医師。
警備員。
誰も居ない。
ハルナとリンカの二人きり。
誰もこの診察室に入って来ない。
その状況に異変を感じていた。
だが、あの背筋を刺激する"殺気"は感じない。
「あの…。」
「あの変な女と、鬼面の男は何?」
リンカは退却を決めつつ、最後の質問をハルナへ問いかける。
「変な女とは…、」
「失礼ですわっ!!」
ハルナの背後、診察室の奥から聞いた事のある声が響いた。
真っ赤なビジネススーツは、紅を抜けて黒味がかっていた。
その深紅に金髪が映え、颯爽と皇ディライラが診察室の奥に立っている。
「ディライラっ!!」
リンカは即座に腰深く構えて、臨戦態勢を取った。
それに対して、ディライラは慌てずに片手を上げて制する。
「お待ちなさい、リンカさんっ。」
「アタクシ…♪」
「今日は、お話し合いに来たんですの。」
そう告げ、二人の居る診察室へ歩を進める。
そして、診察室にある簡易ベッドへ腰かけた。
「アタクシ、今日は闘う気はありませんわ。」
片脚を上げて組むと、ディライラは丸椅子を指し示して、リンカへ着席するように勧めた。
恐る恐るリンカは、丸椅子へと腰かける。
「リンカさんだって、アタクシが近くに居たのに気づかなかったでしょう?」
「"イザナミ"とはいえ…、」
「相手に"殺気"が無いと、検知できませんのよ。」
リラックスした様子で、朗らかにディライラは言った。
「まあ、それよりも…。」
ディライラはリンカの姿を、じっくりと視認する。
「リンカさんは、随分と調子がお悪いのではなくって…?」
営業スマイル満開で、リンカを指差す。
「アタクシでしたら、"ソレ"。」
「お治しする方法を知っていますわ♪」
うふふっと余裕の笑みをディライラは浮かべる。
確かに病院から逃亡してから、体調が良かった事は殆どない。
今は緊張感と怒りもあって、血の巡りが良くなった気はするが、
今だに軽い頭痛と倦怠感が、リンカの肉体を薄くまとわりついている。
「ふう…。」
深く思い悩んだ様子で、ディライラは溜息を吐く。
何から話したら良いのか…。
それを思い悩んでいる様だ。
「まずは…、」
「謝罪いたしますわ。」
組んだ脚を揃え直し、リンカへ向かって軽く頭を下げた。
「リンカさん、アナタは妊娠していましてよ。」
「恐らく、気が付いているとは思いますけど…。」
垂れた頭を上げ、再び脚を組む。
「やっぱり…、妊娠してるんだ。」
「じゃあ、何故…。」
「タニヤと診察を受けた時、そう言わなかったのっ!?」
ぎっと、リンカはハルナを睨みつける。
鋭い視線を躱そうと、ハルナは顔を背けた。
「まあまぁ…、妊娠はしていますが…。」
「貴女のお子様ではなくってよ。」
「それどころか、物部タニヤの血縁でもありません。」
「…はい?」
「じゃ、じゃあ、誰の子供を妊娠したって言うの?」
淡々と告げられた事柄を消化し切れず、リンカは動揺しつつ問いかけた。
「我々は、それを…、」
「"ヨモツヘグイ"。」
「…と呼んでいますの。」
ディライラは誇らしげに胸を張り、リンカの問いへ応える。
「そして、貴女の様にヨモツヘグイを妊娠している女性。」
「我々は彼女達を"イザナミ"と称しています。」
「リンカさん。」
「貴女のお腹に居るのは、人間では無いの。」
「何と言ったら良いのかしら…?」
「"寄生"?」
「"器官"という方が、近い印象かしらねぇ~っ♪」
頬に手を当て、ディライラは他人事の様に呟く。
「"器官"…?」
「ナニ言ってるの?」
「人じゃないって…、何なのよっ!!」
「アタシの子宮へ、何を詰めたのっ!?」
リンカの肉体の内側に黒く冷たい液体が、どぉっと流し込まれた気がした。
不安。
恐怖。
怒り。
そんな、黒々とした冷たさと重みが、急速に体内へ満ちて染み込んで行く。
「"ヨモツヘグイ"を成長させるには…、」
「それに適した適合者が必要なの♪」
「女性なら、誰でも良いって訳じゃないのよ~♪」
嬉しそうにディライラは微笑み、自慢げに語る。
「アレルギーってあるでしょう?」
「アレを引き起こす原因物質は、"アレルゲン"って呼ぶのだけど…。」
くるくると宙へ人差し指を回し、ディライラは思い出す様に宙を見上げた。
「男性に気持ちよく中出しを決められて…、」
宙を指していた人差し指、それに親指とでOKマークを形作った。
もう片方の人差し指でその輪を突くゼスチャーをして見せる。
それは、セックスを表すゼスチャー。
「ご懐妊っ★」
「…て、言うのが普通なんですけど。」
「その精子が、アレルゲンになる事もあるのよぉ♪」
卑猥な行為を表すゼスチャーを解き、両手を合わせる。
「"ヨモツヘグイ"は、アレルギーを引き起こしやすくってぇ。」
「適合しない女性は、強いアレルギー反応を引き起こしてしまいますのっ。」
「でも、"安定期"に入れば、誰にでも移植可能になりますのよっ♪」
両手でディライラは自分のお腹を囲み、妊娠したゼスチャーを見せた。
「だから、適合者の子宮で育成して…。」
ディライラはリンカのお腹を指差した。
「安定したら、ヨモツヘグイを摘出させていただいて…。」
「それで、改めて適合させたい別の女性に移植しますの♪」
「…まさか、そんなっ!?」
リンカはディライラに指し示された自分のお腹へ触れた。
「アタシは…、」
「今まで3回…、妊娠治療を受けたわ…っ」
「じゃあ、それは…!?」
「まさか、嘘でしょ…っ!?」
リンカの体内には、黒々とした気持ちと感覚が溢れ出すほどに満ち、
その重く暗い感覚が、彼女の動きを封じた。
自分のお腹に居る"子供"。
それは、子供じゃない"異物"。
今まで行ってきてた妊娠治療。
全て嘘だった…?
そして、脳裏に浮かんだ一番の疑問。
「た。た。タニヤは…?」
「当然、タニヤもこの事は知らなかったでしょ…?」
リンカはゆっくりと呟いた。
「…。」
きょとんとした顔をして、ディライラはリンカを見た。
「彼女?」
「あぁ…、物部タニヤの事?」
「…ごめんなさいねぇ~っ♪」
わざとらしく、ディライラはリンカを拝む様に両手を合わせた。
「この事をご存じないのは…、」
「貴女だけですの…っ★」
ペロリッと舌を出し、小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「我々が必要としたのは、適応する"容器"ですわ。」
「"ヨモツヘグイ"が安全に"着床"と"育成"出来る"容器"。」
「それがアナタなのよ、リンカさん♪」
「本当、申し訳ございません。」
呆然としているリンカへ、形式的に軽く頭を下げる。
「今まで騙して妊娠治療を受けさせて…。」
「でも、前回の2回行った治療でも、立派な"イザナミ"が誕生していますわ♪」
「…イザナミ…?」
「何?それは…?」
ディライラの言葉にショックを受けて、蒼白になりながらもリンカは問う。
「"ヨモツヘグイ"の驚異的な能力は、生存本能の強さですの」
「その強さは、受胎した女性を超人化させる。」
「リンカさんも心当たりございますでしょ?」
「"ヨモツヘグイ"で、人よりも優れた能力を得られた女性。」
「そんな女性を我々は"イザナミ"と呼んでいますのよ♪」
得意げに、
自慢げに、
嬉しそうに、
ディライラは胸を張りつつ、呆然としたリンカへ告げた。
「今までアタクシが行ったご無礼は、ホント…、」
「申し訳ございません、謝罪いたします♪」
「だから、今度は一緒に頑張りましょう…!!」
そう告げると、ディライラは片手をリンカへ差し出した。
「ぜひ、アナタにはアマテラスに入っていただきたいの…っ!!」
「ヨモツヘグイを安定して妊娠出来る女性を失う事…。」
「それは、我々アマテラスとしては、大変な損失ですわっ!!」
ディライラは立ち上がり、リンカの片手を強引に握った。
「貴女のその能力。」
「これからも、女性の権利向上に役立てていただきたいと思っておりますのっ!!」
握ったリンカの手を包む様に、両手で掴む。
「この世界は、男尊女卑で成り立っていましてよっ!!」
「でも、少しずつだけど変化はしていますの…。」
「例えば…」
「医大入試の男女差別が発覚してから、女医が増えた。」
「男女均等法によって、様々な分野の職業で女性は増えた。」
「でも、そんな遅々とした歩みでは、駄目ですわっ!!」
ブンブンと、リンカを掴んだ手をディライラは振る。
「こうしている間にも、女性達は虐げられ、搾取されていますのよっ。」
「男どもは勝手に戦争を引き起こし、民族浄化と称して、」
「敗けた国の女性へ集団レイプを公然と行う。」
「女性の身体に商業価値を付け、その姿や肉体を販売している。」
「何故、女性だけが金と体を搾取されないといけませんの…?」
「男が主役の世界には、終止符を打たなくちゃいけませんわっ!!」
カッとハイヒールで床を踏み鳴らし、
立ち上がったディライラは、力強く声を上げた。
「"イザナミ"は、そんな新世界を造り出しますのっ!!」
「超人な力を奮って、男達を駆逐するのよっ!!」
希望に満ち溢れ、嬉々とした表情でディライラは振り返る。
「でもぉ…。」
「これは、あくまで個人的な意見なのだけどぉ~…。」
「リーダーである、オオミヤノメ様とアタクシには、意見の相違がありますのぉ…」
「オオミヤノメ様は、男性絶滅を公言していらっしゃるケド…」
ディライラは一人で盛り上がりつつ、腕を組み、思い悩む様な仕草をして見せた。
「アタクシとしては…。」
「男性は脳味噌を削ってバカにしてから、」
「完全家畜化するのが良いと思いますの♪」
「そう♪ ヤプー"みたいに…」
パンッと両手を合わせ、
嬉しそうに
屈託なく
ディライラは、そう告げる。
「あ…。」
リンカの方を見て、はっとした表情を見せた。
「あら…、申し訳ないですわ。」
「アタクシ独りで盛り上がって…。」
少女の様にディライラは照れて、恥ずかしさに悶える様に身を左右へふる。
「えーと、リンカさんは…、」
「"家畜人ヤプー"てっ、…ご存じ?」
にこやかにディライラは、小説のタイトルを知っているかとリンカへ伺う。
「…。」
「…何が…っ。」
「ばっかっじゃないの…っ!!」
ディライラの三文芝居じみた演説を聞き終わると、リンカは吐き捨てる様に呟いた。
「そんな、バカみたいな活動に…。」
「協力する訳ないでしょっ!!」
ギロリッとリンカは丸椅子に座ったままで、下からディライラを睨む。
「どうせ、アタシの体を…。」
「"怪物を孕ませる容器"として使う気でしょ?
「そんな、サイコパスに誰が協力するか…っ!!」
体内で抑え込んでいた怒りの炎が、口から言葉となって噴き出す。
「…あら?」
怒るリンカに対し、ディライラは意も解さずにキョトンとした顔を見せた。
「リンカさんは…、協力はしないって、コト…?」
「ふーん☆」
「しょうがないですわねぇ…。」
腕を組み、
片手を頬に当て、
ディライラは、困った表情を浮かべる。
「丁寧かつ丁重に、"お誘い"いたしましたのにぃ…。」
ディライラの背中辺りから、ぞろりっとした棘のある黒い気配が溢れ出す。
その黒く棘のある気配は、リンカの身体へまとわりつき始めた。
その気配は、黒い棘を持つ薔薇の枝。
または、毒のある蛇のようで、
じくじくとリンカの肌を刺し、痛みに似た感覚が全身を覆う。
"殺気"。
リンカは丸椅子から跳ね飛ぶ様に立ち上がる。
そして、ディライラから離れ、
入室した時に使った、診察室の引き戸に背を預けた。
「別に…、アタクシはよろしいですのよ☆」
「所詮、貴女は"保育器"なんですから…。」
「四肢を切断したダルマにして、本当に"容器"として利用しても…♪」
ディライラはねっとりとした視線でリンカを見詰めた。
リンカはその視線から目を離さず、
背中へ手を回して引き戸を開いた。
そのまま視線を外さず、軽く後ろへ飛んで待合室へと飛び出す。
待合室は、広い長方形な室内をしていて。
中央には診察を待つ患者が座る長椅子が並んでいる。
壁には個々の診察室へ通じる引き戸があり、
その内のひとつから、リンカは飛び出した。
ディライラへ睨みを効かせつつ、待合室へ出る。
そのリンカのすぐ横に誰か立っていた。
そこから、ごぅっと突風の様な感覚。
それに、リンカは吹き飛ばされそうな錯覚を覚えた。
強く吹き上げる突風には、無数の針が舞い、彼女の肌へ容赦なく突き刺さる。
「…!?」
そんな強い殺気を感じ、リンカは相手を目視した。
立ち上がったヒグマの様な巨大な黒い影。
両手で握って、大きな拳を造ると彼女に向かって振り下ろす。
ぎちちっと筋肉の束がスーツの下で満ち満ちてうねり、
短く刈り上げた金髪。
赤い憤怒の相をした鬼の面。
皇・ディライラの忠実な僕。
左神がリンカへ襲い掛かる。
鉄塊の様な拳が、リンカの肩へ叩き込まれた。
衝撃にリンカの視界が点滅し、
勢いよく床へ叩き伏せられる。
「…がは…っ!?」
リンカは肩から袈裟切りに拳をぶつけられ
肺の息を強制的に吐かされた。
リンカの意識より、先に体が反応する。
殴られた反動。
床に打ち付けられた衝撃。
その応力でリンカは自分の姿勢を制御する。
ネコ科の猛獣の様な、しなやかな動きですり抜けると、
互いの間に長椅子を挟んだ位置へ移動した。
診察を待っていた患者達は、突然起こった出来事に驚いて動けずにいる。
左神は、そんな患者達が腰かけている長椅子を掴む。
そのまま3人が座った長椅子を持ち上げ、患者達を振るい落す。
そして、棍棒か長槍の様に構えると、リンカへ向けて突き出した。
「ひっ!?」
待合室の壁に張り付いたリンカは、身を下げて左神の放つ長椅子を躱す。
壁が凹む程の力で長椅子を突き出し、左神は執拗にリンカを攻撃する。
周囲にいる患者達も事態の異変に気付き、悲鳴を上げてパニックへと陥った。
そんな散り散りに逃げる患者を掴み、邪魔とばかりに人形の様に遠くへ放って進む白髪の長髪。
青く憤怒の鬼面をつけた大男、右神。
人々を蹴散らしつつ、彼は一直線にリンカへと突進して来る。
「ちぃ…っ!!」
右神の放つ右ストレートを躱す。
左神の持つ長椅子が彼女へ突きこまれる。
彼女はダッキングの動作で頭を下げ、それらを避けた。
しゃがんだ彼女の顔へ、右神が放った蹴りがヒットする。
「がっ!?」
大きく仰け反って、リンカは後ろに吹き飛んだ。
放り投げられた人形の様に、彼女は力なく宙を舞う。
さらに追い打ちで、左神の突き出す長椅子がぶち当たる。
脇腹。
肩。
頭。
何度も、左神の放つ衝きがリンカの肉体を打ち、
壁と長椅子の間に幾度もプレスされた。
破裂した水風船みたいに、リンカの身体から血が噴き
白い壁へ幾筋もの放物線を描く。
ぐしゃりっとリンカの肉体は床へと崩れた。
蹴り上げた脚を戻し、右神は乱れた長髪を手櫛で直す。
確かな手ごたえを感じ、床に倒れたリンカへと近づいた。
「…っ!?」
すると、壁にかけてあった額縁が外れ、右神の肩へとぶつかる。
それは、先程の衝撃で吹き飛んだのか、特にダメージを受けなかった右神は首をかしげた。
視線を元に戻すと、床に倒れたリンカと視線が合った。
ギラリッと白い光を放つ彼女の視線は、
無感情で
無慈悲で
人の意識を感じさせない。
冷たい刃物の様だった。
吸い込まれる様な眼光。
右神はそれを凝視していると、後ろから何者かに殴られた。
ガラスの弾ける音が響く。
キラキラと輝くガラス片。
壊れた額縁。
彼は、軽い衝撃に意識が奪われる。
待合室の壁を飾っていた額縁。
それが右神の後頭部へ襲い掛かった。
慌てて右神は周囲を見渡す。
腰が抜けた状態で逃げる老女の後ろ姿。
長椅子に隠れている老人。
周囲で逃げ惑う患者達。
右神を攻撃する様な敵は確認できない。
不測の事態に戸惑う右神。
それを見ていた左神は、長椅子を抱えたままで少し後ろへ下がった。
壁にあった額縁は、宙を飛んで右神の頭へぶつかったのを見たからだった。
ゆらりっと震える手が挙がる。
それは床に倒れていたリンカの手だった。
それは宙を差し、ひょいっと動く。
すると、並べて設置されていた長椅子が蠢いた。
見えない何かが椅子を動かしている。
ゴトゴトと、脚を踏み鳴らす様な音が響き、周囲の長椅子達が震えた。
異常に気が付いた右神と左神は、互いに顔を見合わせる。
すると、生き物の様に複数の長椅子が動き、二人に突撃をかましてきた。
驚愕している内に、長椅子は二人の脚へぶつかり、犬の様にまとわりつく。
「う、うがぁぁぁあっ!!」
左神は叫ぶと持っていた長椅子を振るう。
右神は突進してくる長椅子を掴むと、遠くへ放り投げた。
「…痛ぅぅぅ…っ!!」
上げていた手で、リンカは壁に触れる。
べちゃりっと血の跡が壁に着き、ゆらりっと彼女は立ち上がった。
長椅子と闘う二人を見ず、彼女は病院の玄関へと壁によりかかって進みだす。
そんな彼女を恐れつつ、患者達は道を空ける。
よろよろと進むリンカの背中へ、左神が投げた長椅子が襲い掛かる。
投げ槍の如く宙を飛び、リンカの背中へぶつかる寸前、
それは見えない何かへぶつかると、方向を変えて診察室側の壁へ突き立った。
周囲に集う長椅子を蹴散らし、左神と右神はリンカの後を追う。
正に猪突猛進なふたりは、周囲にある患者や物品に構わず、
一直線にリンカを強襲した。
右神は転がっていた長椅子を掴み、大きく横一閃に振るう。
その一閃上にいた老人の頭は吹き飛ばされた。
生卵の様に割れ、
床に髄液と乳白色な物体が飛び散る。
そんな強撃すら、リンカの手前で見えない何かに弾かれた。
自ら放った反動に右神は、弾き飛ばされて背中から壁へ叩きつけられる。
そんな彼の前を赤い物体が飛んで行った。
左神はリンカの至近距離まで駆け込むと、パンチを連打で叩き込む。
太鼓を乱打するがごとく、鈍い音が響く。
そんな激しい連打は全て、宙に浮かぶ消化器にヒットしていた。
リンカと左神の間、その空間に赤い消化器が飛び込んで来ていた。
マシンガンの乱射を喰らった様に、ひしゃげた消化器は白い煙を噴き出す。
ぶわっと待合室に消火剤の煙が充満し、全ての人の視界を奪った。
そんな一連の出来事を無視しつつ、リンカはよろよろと病院の正面玄関へと進んだ。
手を伸ばして、玄関のガラスへ触れる。
溶ける様に
崩れる様に
床から天井まであったガラス板は、細かく砕けて崩れ落ちる。
白い消火剤の煙と共にリンカは、病院から脱出した。
力付く様に膝をつき、その体はガラスと同じ様に崩れ落ちる。
病院の正面玄関。
そこには、車が玄関前まで行けるような車道とスペースがあった。
その端でアオイは車に乗って待機していた。
病院でアクシデントが起きた場合、即座に脱出できるようにだ。
車寄せの片隅で待機していると、玄関のガラスが盛大に割れた。
ビックリしつつも、アオイは注視していると、濛々と白い煙が院内から溢れ出す。
そして、血塗れなリンカがフラフラになって出て来た。
「…ええー…っ」
想定していたより遥かに大きなアクシデントに、アオイは吐く様な声を出した。
そして、車をリンカのすぐ傍へ寄せる。
「リンカっ!!」
「リンカっ!!!」
車からリンカへ声をかけたが、倒れているリンカから反応が無い。
慌てて彼女は車から降り、車を回り込んでリンカへ駆け寄った。
「ちょっとぉっ!? 大丈夫!?」
倒れたリンカの頬を叩き、意識の有無を確認する。
「ぅ…、ぅん。」
吐息に似た、力ない声が返って来る。
アオイは後部ドアを開け、リンカの腕を掴んで引っ張った。
「ほらっ!!早くっ!!」
「乗ってっ、早くっ!!!」
リンカの腕を掴み、引き寄せると腰へ手を回す。
そして、物を放り込む様に車の後部座席へ彼女押し込んだ。
素早く自分も運転席へ飛び込み、車を急発進させる。
「一体…、何をドーしたらっ!!」
「こんな事になるのよー…っ!!」
叫びに近い声で嘆きつつ、アオイはハンドルに齧りつく様な体勢で車を駆った。
「あーぁ…っ♪」
「派手に暴れたわねぇ…っ♪」
ハンカチを片手に消火剤の煙幕を吸い込まない様に鼻を押え、ディライラは待合室の惨状を見渡した。
ウキウキとした表情で、彼女はこの状況を楽しんでいる様子だった。
「でぃ、ディライラ…?」
浮かれている彼女の背後から、おずおずとハルカが顔を覗かせる。
「どうすんのよっ、ひどいわっ!!」
「アタシの職場をこんなにしてっ!!」
泣きそうな顔でハルナは、ディライラを叱った。
「ごめん☆ごめーんっ★」
満面の営業スマイルを振りまき、ディライラは両手を合わせる。
「確かにぃ~…。」
「ちょっと、ゴージャスにはしゃいじゃったわねっ♪」
「処理班を手配してちょうだい。」
シャンと背筋を伸ばし、ディライラは荒れた待合室の中を優雅に闊歩する。
「ディライラっ!!」
「こんな事っ!!」
「こんなひどい事してっ、許されないわっ!!」
今まで大人しくしていたハルナは、怒りを露わにして叫んだ。
「…なぁにぃ~…っ?」
「それって、アタクシに言ってますぅ?」
ゆらりっとディライラは振り返り、ハルナを睨む。
にこやかだった赤い唇はキュッと吊り上がる。
涼やかな目元も、それにつられる様に持ち上がった。
ファッションモデルのウォーキングの様に、優雅に踵を返すとハルナへ近づく。
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そう呟きつつ、ハルナの肩を軽く叩く。
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「大丈夫っ♪」
「アタクシにお任せになってっ☆」
一瞬でディライラの殺意は霧散して、
ぽんぽんと軽くハルナの肩を叩いた。
「…あら?」
何かに気が付き、ディライラは足元へ視線を落とした。
「丁度いいですわっ☆」
「"コレ"を犯人にして貰ってっ♪」
ディライラは、足元に転がった老人を足先で小突いた。
頭を粉砕されて転がる遺体を足で弄ぶ。
「よかったわぁーっ♪」
「丁度よい、犯人が居てくれてっ♪」
怯えて呆然としたハルナに構わず、ディライラは微笑む。
背後に現れた左神が、ディライラの上着を持ち寄る。
当然の様に彼女は、腕を伸ばすと左神の構えた上着へ袖を通した。
「さて…、申し訳ありませんけど…。」
「アタクシ、まだ仕事がありますの…っ♪」
ハルナの方へ視線を向けず、ディライラは独り言の様に呟く。
「後の処理は、ウチの処理班に任せてちょうだい。」
「それまで、患者達は逃げない様に監禁してくださいね☆」
そして、右神と左神を従え、ディライラは病院を後にする。
「では…、」
「"陽光に導かれん事を"…♪」
振り返りもせず、片手をあげてディライラは、ハルナへそう告げた。
◆◆続く◆◆
■■■■■■■■■■■■
執筆進捗&近況の確認は…
■■■■■■■■■■■■
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