魔王の誕生

Haru.

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魔王の誕生

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「黒髪に黒目……間違いない、伝説の魔術師だ!」
「それにこの魔力量……召喚は成功だ!」

 騒つく周囲に、僕はただ呆然とするしかなかった。

 手にはくたびれた通学鞄。僕はさっきまで最寄り駅から家までの道のりを歩いていたはずだった。今日は短縮授業で早く帰れたから買ったまままだ読めていない小説を思う存分読もうと思っていたのに、なぜ僕はこんなところにいるのだろう。

 突然足元が光ったのは覚えている。一体何が、と思う間も無く、気が付けば僕は石の床に描かれた大きな魔法陣の上に立っていた。周りにいる見たこともないローブ?を着た人達や豪奢な服を着た人達は混乱する僕を見て喜んでいる。何が起きているのか、さっぱりわからない。

「ここ、は、どこですか……?」

 恐る恐る聞くと、ローブを着た人達の中でも1番豪華なローブを着たおじさんがそっと前に出てきて僕の前に跪いた。きっとお偉いさんだ。は

「ここはザイール国。あなた様の元いた世界とは別の世界でございます。我らが救世の魔術師であるあなた様のお力をお借りするべく召喚した次第でございます。どうか魔王に支配されたこの国をお救いくださいませ」
「え……? あの、ひ、人違いです……僕は救世の……魔術師? なんかじゃありません」

 意味がわからない。ザイール国なんて聞いたこともないし、救世の魔術師? 誰が? 僕が? 魔術師って魔法を使う人でしょ? それも救世の、というくらいだからものすごく強い力を持った魔術師。日本で17年間生きてきた僕がそんなファンタジーな存在なはずがない。

「いえいえ、その黒髪に黒目は救世の魔術師の証。それにあなた様からはとてつもない魔力を感じます。救世の魔術師に間違いありません」
「こ、困ります。魔力? とか魔術師とか言われても……そ、それに魔王なんて僕には倒せません。か、帰らせてください」

 戦争もない平和な日本でのうのうと生きてきた僕が戦えるはずがない。ましてや魔王を倒せなんて。無理に決まってる。早く家に帰りたい。

「……魔王を倒してくだされば、元の世界にお帰ししましょう」
「そ、そんなの勝手だ! そっちの都合で勝手にここに召喚したくせに、そっちの要求を飲まなきゃ帰さないなんて! 早く帰して!」

 僕はこんなところにいたくない! 早く帰りたい。魔王がいる危険な世界になんていたくない。ここは僕には関係のない世界。ただの高校生でしかない僕が命をかける義理なんてない。


 僕は帰りたい一心で何度も帰してくれと懇願した。けれど、誰も首を縦には振らなかった。それどころか冷たい目を向けられながらただ魔王を倒せとしか言われず、気が付けばこの国の最高位の占術師の予言で選ばれたという勇者、戦士、僧侶と共に旅に出されていた。何で魔術師はこの国から出されなかったんだろう……

 初めての魔獣と呼ばれる敵との戦いでは泣き叫んで吐いた。そんな僕を勇者たちは呆れて冷たい目で見てきた。この世界で生きる勇者たちにとって、これは当たり前のことだったんだ。でも、僕にとっては違う。魔獣なんて知らない。剣で切って吹き出る赤い血なんて見たこともない。事切れる魔獣に、そして淡々と魔獣を屠った勇者たちに恐怖した。

 その夜、震えながら怖い世界から逃げるように眠ったはずの僕は気が付けば暗い闇の中に立っていた。

「ここ、は……?」
「おや、君は……この世界に召喚された子か」
「っ!? あ、あなたは……?」

 突然後ろからかけられた声に驚いて振り向くと、そこには真っ黒な服を着た、黒い髪に赤い目の男の人が立っていた。見たこともないくらいの美形で、声もすごくいい声だ。

「ん? 私はヴェルディーノ。君は唯斗ゆいとだろう?」
「──あ、」

 なんで初対面なのに僕の名前を知っているのだとか、そんなことはどうでもよかった。この世界に来て、初めて呼ばれた僕の名前だった。いつも魔術師としか呼ばれなかった。名前なんて、この世界の人たちは誰も聞いてすらくれなかった。この世界に来て2週間ほど。久しぶりに呼ばれた名前に嬉しさとか、辛さとか、ゴチャゴチャになってボロボロと涙が溢れて止まらなかった。

「ここには私以外いない。泣くだけ泣いてしまいなさい」
「う、うぁあああっっ!」

 ヴェルディーノの優しい声に、優しく頭を撫でてくれる手に、涙はさらに溢れた。この世界に来て初めての慰めだった。僕が泣いても誰も見向きもしなかった。「マオウヲタオセ」と、ただそれだけをゲームのNPCのように繰り返すこの国の人達。僕はこの世界で孤独だった。

 ヴェルディーノは泣き続ける僕を鬱陶しがることもなく、ずっと優しく撫で続けてくれた。泣いて泣いて、しまいには泣きつき疲れてうとうとし始めた僕に、ヴェルディーノは笑ってそのまま寝てしまいなさいと、そっと温かい手で目に蓋をしてきた。温かい体温に身を委ねるように眠りに落ちた僕は、次に起きた時にはあの暗い場所ではなく、勇者達と共に寝た森の中にいた。いつもならば慣れない野宿で身体はバキバキになっているのに、今日はなぜか身体が軽かった。

 夢、だったのかな。でも、なんだかただの夢ではない気がする。根拠はないけれど、あの温かい体温を、僕は覚えていた。

 そしてその予想は正しく、その日から僕は時折夢の中でヴェルディーノと会うようになった。毎回何もない暗い空間で、ただ僕とヴェルディーノがいるだけの空間だった。僕とヴェルディーノはいつも、その空間で2人並んで座ってゆったりと話した。

 ヴェルディーノはいつも優しく微笑んで僕の話をきいてくれた。この世界になれない僕を、ヴェルディーノだけは責めなかった。僕を否定せずに、そっと頭を撫でて慰めてくれた。いつも温かいヴェルディーノに、僕の心は溶かされていくようだった。

「今日ね、初めて魔獣を倒したよ。勇者達は、褒めてくれた。やっとお前も一人前だって。……でも、僕、手が震えちゃって。……っ、はは、僕、やっぱり、怖いよお……帰りたい。家に、帰りたい……っ」
「頑張ったね、唯斗。よく頑張った。唯斗のおかげできっと救われた命がある」
「ヴェルディーノぉ……僕、ずっとここにいられたらいいのに……ヴェルディーノと、2人でずっとここにいたい」

 ここにいられたら、魔獣を倒す必要もないし、冷たい目で見られることもない。魔術師と呼ばれることもない。ヴェルディーノだけが僕をただの唯斗として見てくれる。ずっとここにいられたらどんなに幸せだろう。

「ふふ、唯斗は可愛いことを言うね。私も唯斗とずっと一緒にいたいけれど、ちゃんと陽のもとへ戻らないと」
「……うん。外でもヴェルディーノと会えたらいいのに」

 そう言えばヴェルディーノはいつも困ったように笑うんだ。きっとすごく遠くにいるんだろうな。もう、何度もこうして会って話をしている中でヴェルディーノが僕が作り上げた架空の人物じゃなくて、実際に存在していてどこかで生きていることはわかっている。だって僕が知らないこの世界のことを教えてくれるから。僕が知らないことも知っている存在なんて、僕には作れっこない。だからヴェルディーノはどこかで生きている人間なんだ。どこに住んでいるのかとかは教えてくれたことがないけれど。

「……魔王を倒せたら、あってくれる?」
「……そうだね、その時になったら外で会おう」
「ほんと!? ……なら僕、頑張って強くなる。怖いけど頑張るよ」

 ヴェルディーノに会うためだ。日本に帰るためとヴェルディーノんび会うため、2つの目標ができた。少し辛そうに笑ったヴェルディーノに気付かずに、僕は強くなるのだと決意した。

「うん、頑張って、唯斗。私はいつでも唯斗の味方だよ」
「ありがと、ヴェルディーノ。……多分また泣いちゃうから、その時は慰めてね」
「もちろん」

 そっと肩を抱き寄せてゆっくり頭を撫でてくれるヴェルディーノに、甘えるようにすり寄った。そんな僕をヴェルディーノはさらに強い力で抱き寄せると、そっと頬に手を当ててきた。

「唯斗」
「ん?」

 そっと唇に触れた柔らかいものに、一瞬それがなんなのかわからなかった。

「──え?」
「嫌だった?」
「……嫌じゃ、なかった……」

 キス、された……でも、なんでかな。ヴェルディーノは男で、僕も男なのに嫌じゃなかった。それどころか、ドキドキしている自分がいることに驚いた。

「可愛い、唯斗。もう1回してもいい?」
「え、あ、う…………いい、よ……?」

 蚊の鳴くような声で返事をすると、また唇が重ねられた。今度は一瞬で離れていかず、優しく唇を食むような、とろけるように優しいけれど長いキスだった。

「唯斗、口開けて?」
「ふぁ……んっ……」

 言われるがままにそっと唇を開くと、ぬるりと熱いものが僕の口に入ってきた。それがなんなのかなんて聞かなくてもわかる。ヴェルディーノの舌だ。僕の口を確かめるようにじっくりと舌でなぞられて、特に上顎を舌先でなぞられた時にはゾクゾクした。奥に引っ込んだ下も舐め取られて吸われる。びくりと跳ねて頭を引こうとしてもヴェルディーノの大きな手でおさえられていて逃げられない。ヴェルディーノの熱い下でされるがままに蹂躙された。

 ようやく解放された時には肩で息をしていた僕は潤んだ目でキッとヴェルディーノを睨んだ。初めてだったのにあんなに、は、激しいキスなんて……!

「あ、う……はじ、めて……だったのに……!」
「それは嬉しいな。唯斗が可愛すぎて我慢できなかった。ごめんね」
「う……ヴェルディーノは、その、僕のこと、好き、なの……?」
「ふふ、うん。好きだよ。愛している。可愛くてどうしようもないんだ」
「あう……」

 蕩けるような笑みを浮かべながらそんなことを言われたら恋愛経験ゼロな僕はタジタジです……あ、愛してるなんて言われたことないし……! こんなの、照れるしかないって!

「可愛いなぁ。唯斗は、私のこと、好きじゃない?」
「う……わ、わかんない。嫌いじゃないよ? ドキドキも、してるし、あ、あんなキスされても嫌じゃなかった。これが恋なのかなとも思うけど、勢いで言いたくない……ちゃんとヴェルディーノのこと、考えさせてほしい」

 嫌じゃなかったし、ドキドキしてるってことはって思うけど、流されてるだけなんじゃってどこかで思っている自分がいるから、だから、ちゃんと考えて答えを出したいんだ。いつも優しさをくれるヴェルディーノに不誠実なことはしたくないから。

「うん、もちろん。でも、答えを出すまでに私以外の男に唇を許しては駄目だよ」
「ヴェルディーノ以外の男の人……? ぜ、絶対やだ! キスするなら、ヴェルディーノじゃなきゃやだ!」
「唯斗、そんなに可愛いことを言ってはまた私に唇を奪われてしまうよ」
「う……ヴェルディーノ、なら……」
「唯斗……本当に可愛い」

 またそっと唇が合わされて、僕は触れた体温にドキドキした。

 起きた時、まだ唇が熱い気がしてヴェルディーノを思い出し、ボッと顔が熱くなったのを感じた。僕、ヴェルディーノにいっぱいキスされちゃった……こんなにドキドキするなんて、ヴェルディーノのこと、好きなのかなぁ。


「ほら、お前の分」
「……ありがとう」

 今日も、僕の分のご飯はみんなと比べて少ない。少し古くなってきた小さな硬い丸パン1つに、具がほとんど入っていないスープ。僕の分は、いつもこれだけ。みんなのスープにはちゃんと具がたくさん入っているし、味をつけて焼いた肉か薫製肉もみんなは食べる。けど、まともに魔獣を倒せない足手まといの僕は、活躍してないんだからってこれだけしか貰えない。男子高校生の僕には正直足りなくて、トイレに言った時とかにこっそり取った果物とかでしのいでいる。

 もちろん倒した魔獣の素材を街で売った時の僕の取り分も少ない。かろうじて貰えるけど、買い食いでもしたら一瞬でなくなるくらいの微々たるもの。たまに我慢できなくなって焼肉の串を買うんだけど、それは今の僕にはかなり贅沢なご馳走だ。……こっちでは子供のお小遣いで余裕で買えるものみたいだけど。

 ……正直、かなり辛い。なんで僕がこんな思いをしないとダメなんだろう。日本に帰りたい。でも、魔王を倒さなきゃ帰れない。なんで僕だったんだろう。なんでもっと強い人が選ばれなかったんだろう。

 ヴェルディーノがいなければ僕はもうとっくに心を病んでいただろう。今の僕はヴェルディーノに会うことを希望にして1日1日を生きているようなもの。またヴェルディーノに会うためには生きていなくちゃならないから、今日も生き延びる。


 その夜、立ち寄った街で取った宿で僕は休んでいた。いつもならうじうじうるさい僕と同じ部屋は嫌だと言われてそれぞれ1人部屋をとるのに、なぜか今日は勇者と同じ部屋だった。不思議に思ったけれど、ベッドで眠れるならなんでもいいとそのまま眠りについた僕は、感じた寒さにふと目を覚ました。

「んだよ、もう起きたのか?」
「なっっ……!? ゆ、勇者……? な、なんで僕脱がされて……」
「あ? 流石にわかんだろ? ベッドで服脱いでやることなんざ1つしかないじゃねぇか」

 僕の両手を片手で押さえてニヤニヤと笑う勇者にゾッとした。慌てて身体を捩ってみるも力の差は歴然としていて、ビクともしない。このままじゃ、僕、勇者に────

「っ、やだ! はな、っせ……!」
「ウルセェな! 役立たずなんだから性処理ぐらいしやがれ!!」
「いやだ! やだ、や、や、助けて……! だれか……っっ!!」

 バタバタと暴れながら叫んでも誰かが助けに来てくれる気配なんてない。こんなに叫んでるのになんで、と思ったらそんな僕の様子に気が付いた勇者がまたニヤリと笑った。

「無駄だぞ。この宿の奴らにはどんなに騒いでもしてるだけだから邪魔すんなって言ってあるからなぁ」

 それ、は……つまり、僕がどんなに叫んでも照れ隠しと思われているとか……? それか、本気で嫌がっているとわかっていても助ける気すらない……? そんな……ど、どうやって逃げれば……

「くく、諦めて俺に犯されろよ。大人しくしてればお前も気持ちよくさせてやるからよ」
「や、やだ……っ! はな、してっ……!」

 僕の抵抗なんて物ともせずに勇者は僕の身体をまさぐる。興奮しているのか息を荒げながら撫で回してくる勇者の手が気持ち悪くて鳥肌が立つ。やだ、いやだ……!

「はは、すっべすべ。白いし前から1度お前を犯したいと思ってたんだよ俺」
「やだぁ……! 助けて……! だれ、か……!」

 気持ち悪くて、怖くて、ボロボロ涙が溢れてくる。そんな僕に勇者はさらに興奮したように僕の身体に口付けてさらには舌を這わし始めた。

「やだ! やぁ!! はなして……!」

 バタバタと暴れてもやっぱり勇者の拘束は緩まない。このままじゃ僕……やだ、やだよぉ……ヴェルディーノ以外に、なんて……!

「泣き顔も唆るなぁ。ほら、諦めてお前も気持ちよくなれよ」

 僕の首元を舐めていた勇者は顔を上げるとそのまま僕の顔へ近づいてきた。キスをされてしまう、とわかってグッと顔を背けると僕の腕を押さえる手とは逆の手で顎をグッと掴まれて勇者の方へ無理やり向けられてしまった。段々近づいてくる唇に、どうしても嫌でぎゅっと目を瞑った瞬間、僕は覚えのある温かい体温に包まれた。

「唯斗!」
「──ぁ、ヴェル、ディ……?」

 一気に強張っていた身体から力が抜けた。今日はここへくる日だったのか……寝ている間に精神だけがここにくるのだと思っていたけど、起きていた今日でもここにきたということはそうではなかったのだろうか。でも、もしも精神だけだったら……? 気を失った僕の身体だけが勇者の元に残っていることに……

「あ、ヴェルディ、どうしよ……! ぼく、ぼく……!」
「大丈夫、大丈夫だよ。ちゃんと唯斗の身体ごとここにいるから。向こうには今唯斗はいないよ」
「ほん、と……? 僕、ここにいる……?」
「うん。ちゃんといるよ。もう安心していい」

 優しいヴェルディーノの声に安堵して、僕はヴェルディーノにしがみついてわんわんと泣いた。ヴェルディーノはそんな僕が落ち着くまでずっと優しく抱きしめて撫で続けてくれて、泣き止んだ頃にはぽってりと腫れて熱を持った瞼にヒールと、身体中に清浄魔法をかけてくれた。

「落ち着いたかい?」
「……ん。でも、まだ、こわい……」
「私が触れるのも怖いかい?」
「ヴェルディーノは、怖くない……離れる方が、怖いよ……」

 怖いのは勇者のことだ。ここにはずっといられるわけじゃない。戻った時、また襲われることだってあり得るんだ。襲ってきた勇者と明日からも一緒に旅をしなければならないなんて……

「唯斗、これを肌身離さず持っておいて。護身用のお守りだよ。唯斗に危険が迫った時、危険を弾くように魔法をかけたから」
「……ありがと、ヴェルディーノ」
「本当は、唯斗に触れたやつの元になんて帰したくないけれど……唯斗、これからは何か会った時は私の名前を叫んで。必ず助けに行くから」
「でも、外では会えないって……」
「唯斗を守るためならいくらでも駆けつけるよ。だからお願いだから呼んで? 唯斗が傷ついているのに何もできない方が辛い」

 ぎゅっと僕を抱きしめながら本当に辛そうに言ったヴェルディーノに、そっと腕を回してコクリと1つ頷いた。ヴェルディーノはそんな僕にホッとしたように1つ息を吐くと大事そうに僕を抱え直した。

「はぁ、今日は本当に肝が冷えたよ。水鏡で唯斗の様子を覗いてみたら勇者に組み敷かれていたものだから。唯斗の可愛い唇があんな奴に奪われてしまうかと思った」
「……僕も、ヴェルディーノ以外にキスされちゃうって、すごく嫌だった……身体も、触られて、きもち、わるくて……」
「ああ、ごめんね。思い出させてしまったね……」
「ううん、だい、じょうぶ……ねぇ、ヴェルディーノ、僕、僕ね」
「うん、なんだい?」
「僕、勇者に触られてすっごく嫌、で……ヴェルディーノ以外になんて、って……それでね、僕……」

 最後がなかなか言い出せなくてモゴモゴと無意味に口を動かす僕をヴェルディーノはどこか熱い瞳で見つめてこつりと額を合わせてきた。

「ねぇ、唯斗。その先を期待しても、いい……?」
「……ん。僕、ヴェルディーノが……好き」

 勇者に触られて気持ち悪くて、ヴェルディーノ以外に触られたくないって思った瞬間、僕はヴェルディーノのことをとっくに好きになっていたことに気が付いた。好きだから、触られてもキスされても嫌だなんて思わない。抱きしめてくれる腕に、温かい体温に安心する。そう、気づいたんだ。

「唯斗……! 私も愛しているよ。私の可愛い唯斗」
「僕も、好き……」

 恥ずかしくてヴェルディーノの肩に顔を擦り付ける僕を、ヴェルディーノはギュウギュウと苦しいくらいの力で抱きしめてくる。ちょっと苦しいけど、その苦しさがヴェルディーノが 僕を愛してくれている証拠のようで嬉しかった。

「ああ、夢のようだ。……ねぇ唯斗、私に上書きをさせてくれないかい?」
「……ん、ヴェルディーノに、さわって、ほしい……」

 上書き、つまり勇者に触られた感触をヴェルディーノが上書きしてくれるというのだ。恥ずかしいけれど、気持ち悪い感触が消えてなおかつ愛しい人の感触を残してくれるなら、これほど嬉しいことはない。僕もさっさと気持ち悪い感触は忘れ去ってしまいたいのだから。

「唯斗、あまり可愛いことを言わないで。歯止めが効かなくなってしまうから」
「……いいもん。ヴェルディーノ、なら……」

 他の誰かなら死んでも嫌だけど、ヴェルディーノになら、何をされたっていい、それこそ、最後までされても……

「今日は最後までしないよ。今日してしまったら怒りに任せて酷くしてしまいそうだから。唯斗の全部をもらうのは、また今度」
「……怒ってるの?」

 ヴェルディーノはいつも通り優しく笑っている。怒っているようには到底見えなかった。

「唯斗にじゃないよ、唯斗に触れた勇者に怒ってるんだ。私の愛しい唯斗に触れて傷つけて……怒らない方がおかしいと思わないかい?」
「そ、か……触らせて、ごめんね」
「いや、未然に守れなくてごめんね」
「そういえば水鏡で見てたって……」
「うん、時折ね。唯斗の様子が気になって」

 ヴェルディーノが水鏡で僕を見ていたことには驚いたけれど、ヴェルディーノになら別に見られてもいいと思った。見られて困ることもしてないし。

「本当は助けに行きたかったんだけれど、あまり人に見られるわけにはいかない身分でね。どう助けようか迷っているうちにこの空間に引き込まれた。今日ほどこの空間に感謝したことはないね」
「そ、か。助けようとしてくれてたんだ……」
「でも迷ってしまって唯斗の心を傷つけてしまった。ごめんね」
「ううん、大丈夫。助けようと思ってくれてただけで嬉しいから」
「唯斗……私が全て忘れさせてあげるからね」
「……ん」

 そっと力を抜けば、ヴェルディーノは着ていた上着を下に敷いてから僕を優しく押し倒した。ここまで来てようやく気が付いたけれど、僕、裸のままだ……一気に恥ずかしくなって少し身をよじればヴェルディーノはクスリと笑って、僕はそのヴェルディーノ笑みから溢れ出る色気にやられてしまった。

「ふふ、赤くなって可愛い。首まで赤くなっているね」
「んっ……」
「怖くないかい?」
「ん、だいじょぶ……はずかしい、だけ」
「そっか、よかった。怖くなったらいつでも言うんだよ」
「うん……」

 僕を気遣ってくれるヴェルディーノの優しさにキュンと胸が高鳴る。この世界に来たことにはまだ戸惑っているけれど、ヴェルディーノに出会えてよかった。そして、好きになってもらえてよかった。こんなにドキドキして、幸せを感じるなんて初めてだ。

 ヴェルディーノは最初は遠慮がちに、僕が怖がらないことを確かめるようにそっと僕に触れた。あまりにも大事そうに触れられるものだから擽ったくなって、勇者に触られた時とは違う意味合いで身震いをするとヴェルディーノは甘く優しいキスをくれた。そして僕が怖がっていないことを確かめると、そっと口付けを身体中に落として、熱い舌を這わせた。

「あっ……ヴェル、ディ……」
「ん、可愛い、唯斗。もっと可愛い声を聞かせて?」
「あ、やっ……」
「そう、可愛いね」

 比べるのはヴェルディーノに失礼だけど、やっぱりヴェルディーノに触れられるのは勇者に触れられるのと違ってただただ気持ちいい。そっと触れる指先も、舌も、ただただ気持ちいい。

「ふふ、可愛い。ここ、すごく尖っちゃってる。舐めていい?」

 ヴェルディーノの視線の先には僕の立ってしまった乳首があって、そこを舐められたら、と想像して僕はブンブンと首を横に振った。そんな、そんなのぜったダメだ。ダメになってしまう。

「ダメなの? でも、唯斗のここは舐めて欲しそうだよ? ほら、想像してごらん。唯斗の可愛いここに、私の熱い舌が絡みつくんだ。すっかり立ち上がったここはきっと敏感に刺激を受け取るだろうね。柔らかくて熱い舌で包み込まれたらきっと気持ちがいいよ」

 熱を孕んだヴェルディーノの囁きに、脳髄が焼かれてしまったように頭がぼんやりしてくる。

「あ、や……そんな、のだめ……だめ、なの……」
「ダメ? でも舐めたいなぁ。ね、少しだけ。少しだけならいいでしょ?」
「ほ、ほんとに、少し……?」
「うん。少しだけ」
「う……すこし、だけ、ね」

 本当は、少しでやめてくれないことなんてわかってた。わかってたけど、わかってたのに、僕はOKを出してしまった。その瞬間、ヴェルディーノの唇から赤い舌が顔を出して、それに視線が釘付けになった僕にクスリと笑ったヴェルディーノは、甘く、包み込むように僕の乳首をその熱い舌で捕らえた。

「っ、────あ、や、あ、ヴェル、あぅ、やっぁあっ……!」

 こんなの、だめだ。ヴェルディーノの熱い舌が、ねっとりと絡みついて、グッと僕の背中がしなっても逃がしてくれない。敏感になってしまった僕はヴェルディーノの舌の小さな凹凸まで感じ取って、それが僕の乳首の凹凸と擦れ合ってビリビリとした刺激が駆け巡る。それが快感だと気がついた時には僕の理性なんてどこかに飛んでしまっていて、ヴェルディーノの気がすむまで、しゃぶり尽くされてしまった。

 ようやくヴェルディーノの熱い舌が離れて行った時には、僕は息も絶え絶えで、ただ呆然としていた。

「ふふ、可愛い。乳首だけでこんなにトロトロになっちゃって……唯斗、ここだけでイっちゃったんだね」
「んや……う、そ……」
「ほら、唯斗のお腹が唯斗の精液でベタベタだよ。ふふ、やらしい匂い」

 そう言って僕のお腹に手を這わせた後、僕に見せてきたヴェルディーノの手にはべったりと白くてどろっとしたものが絡みついていた。本当にイってしまったのだと、恥ずかしくて顔を赤くする僕の目の前で、ヴェルディーノはその手に顔を近づけてあろうことかスンスンと匂いを嗅ぐものだから僕の恥ずかしさは限界を超えてしまう。今すぐやめさせたいのに、身体中を取り巻く倦怠感でぐったりとした僕はヴェルディーノを止めることはできない。

「やだぁ……や、ヴェルディ……」
「ん、可愛い唯斗。恥ずかしがらなくていいいんだよ。唯斗がここまで感じてくれて私は嬉しいのだから」
「う……へん、たい……」
「ふふ、唯斗が可愛すぎてつい変態になってしまう私を許してくれるかい?」
「……ん」

 ヴェルディーノがいやとか、そういうわけじゃないのだ。ただ度を超えて恥ずかしいというだけで。それが問題なのだけど、ヴェルディーノの、まるで僕のことが愛しいと語っているような表情を見ていると拒めなくなる。好きな人に愛されて、嫌なわけがないのだ。

「ありがとう、唯斗。さて、唯斗も疲れただろうし今日はもうここまでにしようね。身体を綺麗にして寝よう」
「……起きたらヴェルディーノがいないの、寂しい、な」

 ヴェルディーノと会えるのはここでだけ。起きたら、また元の場所に戻っているのだ。……勇者の、そばに。そんなの、嫌だ。ずっとヴェルディーノの側にいられたらいいのに……

「唯斗……私も寂しいよ。ごめんね、側にいてあげられなくて。代わりに……ん、ほら、ここが見えるかい? ここに、私の印をつけた。これで側にいなくても私を思い出せるだろう?」
「あ……うん、ヴェルディーノの、印……ありがと、ヴェルディーノ」

 ヴェルディーノが僕の胸元に吸い付いて印を残してくれた。不安になったら、これを見てヴェルディーノの存在を思い出そう。それにヴェルディーノがくれたお守りもあるから、外の世界でも頑張ろう。

「私の可愛い唯斗。ほら、もうおやすみ」
「ん……おやすみ、ヴェルディーノ……」

 優しくキスをしてくれたヴルディーノに抱きつきながら目を閉じた僕は疲れていたのかあっという間に意識を飛ばしたのだった。



 寒さに目を冷ますと僕は1人で宿のベッドに寝ていた。慌てて部屋を見渡すと勇者は部屋にいなかった。それに一安心して、まだ裸のままだったから急いで服を着た。その時にふと見えたヴェルディーノがつけてくれた印に思わず顔が緩んだのは秘密だ。

 ところで勇者はどこに行ったのだろう。あの勇者が僕を探すとは思えない。もしかして突然いなくなった僕の代わりを求めてどこか……例えば娼館とかにでも行ったのだろうか。ありえそうだ。性処理と言っていたぐらいだから、その相手が欲しかったのだろうし……

 荷物はそのままだったためとりあえずベッドに座って待っているとまもなく勇者が戻ってきた。その姿をみて思わず体が震えてしまったのは仕方がないはず。

「……あ? お前昨日どこに行きやがったんだ!? くそが、俺が相手してやろうとしたのに逃げやがって……!」

 掴みかかろうとしてきた勇者が怖くて、思わずぎゅっと目を瞑って身体を縮こまらせると、次の瞬間ドンッと何かが何かに激突したような音が聞こえた。

 不思議に思ってそろりと目を開くと勇者が壁のすぐ側にうずくまって唖然とした表情でこっちを見ていた。……あ、ヴェルディーノのお守りが、守ってくれたんだ……

「お前……クソ……! 腐っても救世の魔術師ってか……!? この役立たずが調子乗ってんじゃねーぞ!!」

 本当は僕がやったんじゃないけど、どうやら僕がやったと勘違いしたようだ。それなら、もう手を出してこないかもしれない。弾き飛ばされたい人なんていないだろうし。弾き飛ばされてまで僕に手を出すくらいなら、どこかよそで相手を見つけた方が絶対にいい。勇者はモテているようだし、わざわざ僕に手を出す必要なんてないんだし。……昨日はなぜか襲われかけたけど。


 結論を言うなら、勇者が再び僕に手を出してくることはなかった。時折何か言いたげにこっちを見ていることがあるけど、気が付いていないふりをして沈黙を決め込んだ。何か反応を見せてまた目をつけられたらたまったものじゃないから。

 ……だって僕はヴェルディーノのものだもん。ほかの誰かに触らせるわけにはいかないのだ。



 ヴェルディーノとは会うたびにイチャイチャした。というより、ヴェルディーノが僕に触れてくるのだ。毎回ヴェルディーノは初心者の僕に容赦がなくって僕の知らない快感を植え付けてきて……ヴェルディーノ好みの身体に変えられているんだって、気づいた時はゾクゾクとしたものが背筋を走った。

 ……でも、ヴェルディーノは最後まではしてくれていない。指で中を責められて、最初は違和感しか感じなかったそこに、ここも感じる場所なんだって教え込まれてもヴェルディーノは指で僕を気持ちよくさせるだけで、ヴェルディーノのものは決して入れようとしなかった。

 でも、今日こそは最後までしてほしい。だって、今日は、魔王を倒す旅の最終日なのだ。明日ようやく魔王城へ着いて、この長かった旅が終わるのだ。

 ……魔王がどれくらい強いのか、僕は知らないけれど、魔王というくらいだからそう簡単に倒せないことはわかっている。それこそ、死んでしまうことだってあり得るのだ。……正直、震えるほど怖いけど、少しホッとしている自分もいる。だって、明日が終わればこの地獄のようだった旅から解放されるのだから。

 長い旅の中で、僕は沢山の命を屠った。殺して、しまった。そうしないと、生き残れなかったから。苦しかった。辛かった。1つ命を奪うたびに、僕の手はどんどん冷たくなっていくようで、ヴェルディーノはそんな僕の手をいつでも優しく包み込んで温めてくれたんだ。そんなヴェルディーノが僕の唯一の支えで、ヴェルディーノがいたからこそ僕はここまで来れた。

 明日はきっと辛い戦いになるだろうから、生きて帰れるかわからないから、その前に、ヴェルディーノに抱いてほしい。ヴェルディーノに愛されてその幸せを感じながら戦いに挑みたい。

 ……でも、そういった僕に、ヴェルディーノは首を縦に振ることはなかった。

「……どうして?」
「だって、今唯斗を抱いてしまったら唯斗は満足して万が一死んでしまうようなことになっても悔いはないって思ってしまうだろう?」
「う……」

 たしかに、思ってしまうかもしれない。ヴェルディーノに愛されるという1番の幸せを感じられたのだからもういいやってなってしまうかもしれない。

「私は唯斗に生きていてほしい。いや、生きていないと許さない。だから、今唯斗を満足させることはしないよ。ほら、魔王を倒したら外で会う約束をしていただろう? その時に、嫌ってほど甘く抱いてあげる。唯斗の大好きなここに私のものを指が届かないくらい奥まで入れて揺さぶって、これ以上ないってほどの快感を植え付けてあげる。ここが私の形を覚えるまで、泣いて嫌がってもやめてあげないよ」
「──っあ、や、ヴェル、ディ……」
「ふふ、想像しちゃった? 腰が揺れてるよ。外で会った時に抱いてあげるから、それまでちゃんと生きているんだよ」
「う……わか、った……」
「ん、いいこ」

 ヴェルディーノの、ばか……今日は何もしてくれない気だ……ヴェルディーノに気持ちいいことを教え込まれた僕の身体はもうすっかりその気になっているのに、そのままにされるなんて……こんなの、魔王に勝って早く外でヴェルディーノに会うしかないじゃないか。



 そうして僕はモヤモヤしながら決戦の時を迎えた。今僕たちの目の前には黒い鎧を身に纏った魔王がいる。魔王からは流石に一筋縄ではいかなさそうな強い力を感じた。

 ……でも、僕は負けるわけにはいかないのだ。早くヴェルディーノに会わなくてはならないのだから。

「いくぞ!!」

 勇者のその声を皮切りに、一斉に魔王に攻撃を仕掛けた。勇者と戦士が直接斬りかかり、僕は魔法で攻撃し、僧侶はバフやデバフをかけたり勇者たちにできた傷にヒールを飛ばしたりして援護する。

 流石に魔王は、今までの敵とは比べ物にならないほど強かった。戦士の重い一撃を長剣一本でなぎ払い、振り向きざまに勇者に斬りかかる。僕も必死に魔法を飛ばすけれど、なかなか致命傷は与えられない。ほとんどが避けられたり魔王が放つ魔法で相殺されてしまうのだ。

 長い戦いに疲弊し、もう勝てないんじゃないか、そう思った時、転機が訪れた。戦士の重い攻撃についに魔王の剣が限界を迎えたのだ。その瞬間に隙ができた魔王に向かって無数の氷の槍を飛ばし、勇者も魔王の懐に入り込んでひと突き。

 ──魔王は、倒れた。

「やった、のか……? やった、やったぞ!! 魔王に勝ったぞ!!」
「よっしゃあああ!!」

 喜ぶ勇者たちを尻目に、僕は魔王がどうしても気になって倒れた魔王のそばに近寄った。槍と剣が刺さる瞬間、僕を見ていた気がしたんだ。

 冑の中は一体どんな顔をしているのかな、とそっと取ってみると、僕は、僕は、そこに会った顔が信じられなかった。

「う、そ……うそ、でしょ……? なんで、なんで、どうしてっ……!! ねぇ、起きて、起きてよ ぉ……! なんでなのっ……────ヴェルディーノ……っっ!!」

 魔王は、ヴェルディーノだった。なんで、なんで、魔王を倒したら外で会おうって言ってたじゃない。どうして? 魔王を倒すために頑張るって言っていた僕を、ヴェルディーノはどんな気持ちで慰めてくれていたの?

 僕は、僕は、最愛の、ヴェルディーノを殺してしまった。僕を愛してくれた人。この世界でただ1人僕に優しくしてくれた人。どうして、どうして何も言ってくれなかったの。僕は魔王がヴェルディーノだと知っていたら……!

「ヴェルディーノ、ヴェルディーノぉ……っっ!! やだ、やだよぉ……こんな形で、会いたくなかったよぉ……っ!」

 ボロボロ涙が溢れてきて、僕は冷たいヴェルディーノにすがって馬鹿みたいに泣いた。幸か不幸か、勇者たちは魔王城にあった財宝に夢中で僕のそんな様子には気がつかなかった。気づかれていたら魔王と関係あるものとして僕は勇者たちに殺されていただろう。……いや、殺された方が幸せだったかもしれない。だってもうヴェルディーノはいないんだから。ヴェルディーノと同じ場所へ行けるなら、殺された方がいいかもしれない。

 ……でも、それはヴェルディーノが許さないような気がした。いつも僕を大事にしてくれていたヴェルディーノはきっと僕が僕自身を蔑ろにすることを許さないだろう。僕はせめて落ち着いてからヴェルディーノを綺麗な場所へ埋葬してあげようと、マジックボックスの中へヴェルディーノをしまった。生き物は入れられないマジックボックス。そこにヴェルディーノを入れられたことにヴェルディーノはもう生きていないことを再認識させられて、また涙が溢れてきた。


 財宝とともにザイール国の城に戻った僕たちに、国王は褒美としてなんでも願いを叶えると言った。勇者たちは高い地位や沢山の金、姫との結婚などを望み、それらは全て叶えられた。

 そして僕の番になって、僕は僕の望みはなんだろうかと考えた。もともと僕は元の世界に戻るために旅をしていたけど、いつしかもう帰らずにヴェルディーノとこの世界で暮らそうと思っていた。魔王を倒せば、外で会えるとヴェルディーノは言っていたから、その時に一緒に暮らしてほしいというつもりだった。でも、もう、ヴェルディーノはいないのだ。僕が殺してしまったから。なら、もう、この世界にいる意味なんてないじゃないか。日本に帰るしか、ないじゃないか。

「……僕の望みは故郷に帰ることです」
「……ほかに望みはないのか?」
「ありません。そちらの望み通り魔王は倒しました。約束通り元の世界に帰してください」
「い、いや、しかしだな……」

 冷や汗を流しながら吃る国王、さっと視線をそらす宰相、ニヤニヤと笑うローブをきた魔術師たち。ああそうか、僕は騙されていたのか。最初から、騙されていたんだ。帰る方法なんて、ないんだ。もう僕は、帰れないのに、この国の人たちは魔王を倒せば帰すと僕を騙して戦わせたんだ。帰るために旅だった僕を嘲笑って行ったんだ。

 ああ、僕の幸せが全てが消えた。ヴェルディーノもいない。日本にも帰れない。ナニモカモゼンブウシナッテシマッタ。

 その瞬間、何かがプツリと切れた感覚がして、それと同時に深い憎悪が身体の奥底から湧き上がってきた。深い憎悪はそのまま僕の力となり、僕の身体を変えていく。どんどん増していく力に、僕は僕が魔王になったことを理解した。

「っ、はは、あははっ! アハハハハハ!!! 騙したな、呪ってやる、この国、いいや、この世界の全てを呪ってやる……! 救世の魔術師だと? ハハハ、僕が次の魔王だ!!! 魔王としてこの世界を滅ぼしてやる……!」

 深い深い憎悪が渦巻く。深い憎悪はそのまま僕の身体から漏れ出て黒い刃となって周りを攻撃した。勇者たちが僕を倒そうと攻撃してくるけど、そんなものは届かない。手足よりも自由に動かせる黒い刃で簡単に押さえ込めた。

 ニタニタ笑っていた魔術師たちは最初に捕まえた。簡単に殺すなんてことはしない。そうしたら苦しまないじゃないか。僕の憎悪が魔術師の身を焼き、魔術師たちは悲鳴をあげる。もっと、もっと苦しめ……! 僕を騙していた、嘲笑っていた報いだ……!

 暗い暗い感情に飲み込まれ、あと一歩で魔術師を殺してしまうといった瞬間、僕の身体は背中から温かい何かに包まれた。

「──唯斗、戻っておいで。それくらいにしておきなさい。唯斗の綺麗な手を汚すような相手ではないよ。優しい唯斗はあんなクズでも殺してしまえば気に病んでしまう」

 聴きたくてやまなかった声に、黒い刃は一気に霧散した。

「──え、あ、あ、ヴェ、ヴェルディ……? ヴェルディーノなの……? どう、どうして……」
「唯斗、悲しませてごめんね。私はあれくらいでは死なないよ。仮死状態とでもいうのかな。流石に唯斗の槍は痛くてしばらく眠らなくてはならなかったけど。外で会うと、約束していただろう? 私は約束は守る男だよ」

 そう言ってふわりと笑ったヴェルディーノにボロボロと涙が溢れた。なんで、とか、どうやって、とか、もうどうでもよかった。生きているヴェルディーノに、温かいヴェルディーノにまた会えたんだ。もう、それだけで十分だった。

「ヴェルディーノ、ごめん、なさい……っ! 生き、てて、よかった、よぉ……!」
「ふふ、うん。私もこうしてまた唯斗に触れられて嬉しいよ。唯斗、私とともに生きてくれるかい?」
「うん、うん、ヴェルディーノと一緒にいる……!」
「嬉しいよ。では先に唯斗を傷つけたゴミたちを掃除していこう」

 ヴェルディーノはそういうと冷たい目であたりを見渡した。僕の黒い刃は消えてしまっているのに誰も襲いかかってこなかったのは、ヴェルディーノの威圧で誰も動けなかったからみたいだ。何かに押さえつけられたように、誰もが、そう、勇者までもが苦しそうに這いつくばっていた。

「本当はいっそ死んだほうがマシだと思えるくらいの苦痛を与えてやりたいけれど、愛しい唯斗にそんなところは見せられないからね。唯斗、少しの間目と耳を塞いでいるんだよ」
「ん、わかった」

 そっと目を閉じて耳を手で塞ぐと、悲鳴があちこちから聞こえた。でも、そんな悲鳴にも僕は何も感じなかった。前までの僕なら恐怖にガタガタ震えて泣き叫んでいただろうけど、今はそれの原因のヴェルディーノも怖くないし、なんなら僕を片腕で抱き寄せてくれるヴェルディーノの体温に酷く安心する。

 多分、魔王になったと感じたあの瞬間に、僕の身体も精神も魔王としてのものに作り変わったのだ。でも、ヴェルディーノへの想いだけは変わらずある。ヴェルディーノとともに生きていく僕にはその感情さえあれば十分だから、それ以外が変わってしまっても別に構わない。

「さて、終わった。唯斗、私の城へ行こう」
「うん。僕を連れて行って」

 ギュッと抱きつけば、ヴェルディーノは愛おしそうに僕を優しく抱き上げてくれた。周りに転がる死体なんて目に入らなかった。ヴェルディーノ、僕の愛しいヴェルディーノ。僕の視界にはヴェルディーノだけ。

「しっかり掴まっているんだよ」
「うん」

 しっかりとヴェルディーノの首に抱きつくと、次の瞬間には黒を基調とした寝室に移動していて、僕はそこにあったベッドへ優しく押し倒された。

「──あ、ヴェルディ……」
「ふふ、約束通り、唯斗を頂戴? 初めてだからうんと優しくしてあげる」

 欲を孕んだヴェルディーノの瞳に、一気に僕の身体は熱を持った。だって、この身体はヴェルディーノに触れられることを知っている。ヴェルディーノに触れられて気持ちよくなることを、知っているんだ。これからヴェルディーノから与えられるであろう快感を想像してゾクゾクと身体を震わせる僕に、ヴェルディーノは蕩けるような笑みを浮かべた。


「っあぁあ!! ア! や、も、だめぇっ……!」
「どうして? 唯斗のここはもっとって言っているよ? ほら、キュウキュウと私の指に絡みついてくる。ほら、気持ちいいね、唯斗」
「ヤァアッ!! やっ、アッ、きも、ち……ァアアッッ!!」
「ふふ、そうだね。もっと気持ちよくなってごらん?」

 もう何度も何度もイってしまっているのに、ヴェルディーノの手は止まらない。ヴェルディーノの長い指がずっと僕のナカをねっとりと掻き回し、僕の快感を際限なく引き出していく。

「可愛いね、唯斗。何度でもイっていいからね」
「ヤァッ! も、イけな……っ!」
「嘘はダメだよ、唯斗。……ほらまたイった。まだまだイけるね、唯斗」
「ア────ッッッッ!! ヤッ、アッアッ、ひ、────ッッ!」

 グチュグチュと水音が部屋中に響き渡る程激しく指を動かされて僕は背を仰け反らせてイった。それでも止まらないヴェルディーノの責めに全身を引攣らせて何度も何度も連続でイけば、ベルディーノはそんな僕を酷く愛おしそうに見つめた。

「綺麗だよ、唯斗……さて、そろそろ唯斗の望みだったこれを入れてあげる。お腹の奥まで私を刻みつけてあげるからね」
「あ、あ、あ、ヴェルディ、ヴェル、ディーノ……」
「ふふ、可愛い。まだ当ててるだけなのに吸い付いてくるね」

 あ、あ、今、今当てられてるのはヴェルディーノの……あ、ずっと欲しかった、あ、はいる、はいってきちゃ────

「──ア"ッッッッ!! ヒ、~~~~ッッッッ!!」
「こぉら、唯斗。入れただけで飛んじゃダメでしょ? これからなんだか、らっ!」
「ア"~~~~~~~ッッッッ!!!」

 ゴチュ、ってなっちゃいけない音が身体の1番奥で鳴った。ヴェルディーノはそのまま何度も何度も奥を抉るように突いてきて、僕は髪を振り乱して何度も何度もイった。何度もイっても、ヴェルディーノは止まってくれなかった。

「ふふ、可愛い。ほら唯斗、お腹の1番奥、ここを開けて?」
「ンァア!! ヤ、なに、ヤ、ヤ、ヤ……!」
「やじゃないでしょ? ほら、あけて?」

 ねっとりと1番奥を捏ねまわすように腰を回すヴェルディーノに僕はブルブル震えながらヴェルディーノを見るとヴェルディーノはそんな僕に甘い微笑みを向けてきて、その微笑みに安堵した瞬間、ヴェルディーノは今までで1番強く突き上げてきた。

 グブリ、と身体の奥に音が響いて、次の瞬間、僕は、全身に走った衝撃にわけもわからず叫んでいた。

「ア"ア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!!」
「ふふ、いい子、唯斗。私を迎え入れられて偉いね」
「ア──!! ア──ッッ!!」
「可愛い、唯斗。もっと沢山気持ちよくなろうね」

 そんなヴェルディーノの悪魔のような言葉を最後に僕の記憶は途絶えている。……いや、とてつもなくイかされたのは覚えてる。でも、もう訳がわからないほどイって、イかされて、なにがなんだかって感じで……

 ……ヴェルディーノがあんなにドSだったなんて……いや、薄々わかってたけど……! でも初めてであんなにされるなんて思ってなかった……!

 目が覚めた僕が羞恥と全身の痛みにうんうんと唸っていると扉が開く音がした。多分ヴェルディーノだけど、恥ずかしすぎてそっちを見れない。

「唯斗、起きているかい?」
「……ん」
「ふふ、照れているの? 沢山イってたもんね。可愛かったよ」

 クスクスと笑うヴェルディーノが憎い。ぶすっと拗ねた表情を向けると、甘く微笑んだヴェルディーノが僕を優しく抱き上げてそっとキスをしてきた。

「ごめんね、唯斗が可愛くて少しやりすぎてしまったね」

 少しじゃない……と思ってじっとりと睨むとヴェルディーノは困ったように微笑んだ。

「許してくれないかい?」

 プイッと顔を背けると、ヴェルディーノは優しいキスを何度も何度も僕に落とした。

「……やさしくするって、いった」
「ごめんね、唯斗が可愛すぎて止まれなかったんだ」
「……からだ、いたい」
「ああ、辛いよね。ヒールをかけてあげる」
「……起きた時、そばにいなかった」
「寂しかった? ごめんね。部下達に指示を出しに行っていたんだ。もう少し寝ているかと思ったんだけど」

 グチグチと文句を言う僕に、ヴェルディーノは優しい声で謝って、甘いキスを何度も何度もくれる。お陰でちょっとだけ機嫌は元に戻ったけど、まだまだ足りない。むすっとしたままギュッとヴェルディーノの服を握りしめると、ヴェルディーノは嬉しそうに甘く微笑んで僕を抱きしめた。

「お詫びに今日は唯斗のおねだりをなんでも聞くよ。ずっと甘やかしてあげる」
「……ごはん、たべさせて」
「ふふ、いいよ。今の唯斗は細すぎるから沢山食べて少し太ろうね」

 そう言ったヴェルディーノは僕を抱えたままテーブルセットの方へ移動し、僕を膝に乗せて座った。そのままパチンと指をひとつ鳴らせば美味しそうな料理が沢山テーブルの上に現れて、漂ってきた美味しそうな香りに僕のお腹が空腹を訴えてきゅるりと鳴いた。

「どれもあっさりとした味付けにしてあるから、今の唯斗でも無理なく食べられるはずだよ。どれが食べたい?」
「……あれ」
「これだね?」

 ヴェルディーノは僕の気が済むまで、僕が指差した料理を食べさせてくれた。僕が一口食べるたびにニコニコと嬉しそうに笑うヴェルディーノを見ていたらなんだか拗ねているのが馬鹿らしくなってきた。

「……次は優しくしてね」
「それは約束できないかな。唯斗が可愛すぎて歯止めが効かないから」
「……ばか」

 次もまたヴェルディーノに何度もイかされてしまうんだろうなって思ったけど、もうそれでもいいや。いや、良くはないけど、それだけヴェルディーノが僕を愛してくれてる証拠でもあるわけだし……仕方ないから受け入れる。多分また拗ねるけど。その時はヴェルディーノに甘やかしてもらうんだ。それで、いい。

「ヴェルディーノ、ねむい……」
「ん、側にいるね。おやすみ、唯斗」
「おやすみ……」


 ヴェルディーノは約束通り起きるまで側にいてくれて、ヴェルディーノに膝枕されていたらしい僕はそっと本を読むヴェルディーノを眺めた。

「──ん、起きた? おはよう、唯斗」
「おはよ……」
「お腹は空いてない? 夜ご飯の時間も過ぎてしまっているけれど」
「……空いてる、かも」

 寝てただけなのに、意識してみればなんだかお腹が減った感じがする。お肉とか、ガッツリしたものが食べたい気分。

「そっか、なら食事にしようね」
「ん」

 ヴェルディーノはまた手ずからご飯を食べさせてくれて、しっかり眠って疲れが取れたこともあって僕の機嫌はすっかりよくなった。

「ヴェルディーノ、好き」
「私も愛してるよ。可愛い唯斗」
「ん、もっと言って」
「どうしたの、可愛いね。愛しい唯斗。いくらでも言ってあげる。愛してるよ。世界で唯一、唯斗だけを愛してる」
「僕も、ヴェルディーノだけ好き」
「ああもう唯斗。可愛すぎるよ」

 ギュウギュウと抱きしめられて、僕はここぞとばかりにスリスリとヴェルディーノに擦りつけば更に強く抱き込まれて優しいキスまで降ってきた。嬉しい。

「ずっと、愛してね」
「うん、もちろん。一緒に魔王としての長い人生を生きていこう」
「ん、ずっと一緒」

 この身体には寿命はあってないようなものだってなんとなく理解している。今魔王である僕たちをおびやかす可能性のある存在がいないこともわかる。あの暗い空間が魔王と魔王になる素質のある者が時折引き込まれる場所だってこともわかった。魔王になってから、漠然と色んなことがわかるようになった。きっと魔王としての能力的な何かなのだろう。ヴェルディーノが物知りだったのはこの力があったからかな。

 これから僕は想像もつかないほど長い時をヴェルディーノと生きていくのだろう。1人きりだったら、きっと途中で生きることに飽きてしまったていただろうけれど、僕にはヴェルディーノがいる。ヴェルディーノとならきっとずっと楽しく生きていられる。

 世界中を旅してみるのもいいし、こっそり人間の国へ行って美味しいものを食べたりヴェルディーノに似合う服を探すのも楽しそうだ。

 こんなにワクワクするのは初めてかもしれない。ヴェルディーノとやりたいことが沢山ある。時間はたっぷりとあるから、のんびりとやりたいことをやろう。きっと僕に甘いヴェルディーノは優しく笑って僕のわがままに付き合ってくれるはず。ねぇ、沢山楽しいことをしようね、ヴェルディーノ!











魔王倒すは双黒の救世の魔術師

しかし魔術師を絶望させることなかれ

絶望した魔術師はその身を魔王へ変えるだろう

魔術師を絶望させることなかれ

魔術師は魔に魅入られた者

ゆえに魔術師は魔の力を操る者なり


──── 完 ────
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