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After Story
side.ラシルド
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「ラス、明日は休んでいいからな」
「え?」
明日、なんかあったっけ?
「自分の誕生日も忘れたのか?」
呆れた様子の兄上の言葉に、今日の日付を思い出してみると確かに明日は俺の誕生日だった。すっかり忘れてたなぁ……
「未成年最後の誕生日くらい1日好きなことをして過ごせ。来年は成人の儀があるからゆっくりなどできない。それ以降は普通に公務になるだろうからな。今のうちに遊んでおけ」
「じゃあお言葉に甘えて休みます」
休みをくれるならもらっておこう。確かに成人したら他国へ行く仕事も多くなるはずだし、今より大変だろうしね。
兄上が即位したら俺は王弟になるわけで、王弟っていうのはなるべく自国にいた方がいい国王の代わりに他国の式典だとか舞踏会だとかに参加したり、他国の重役との会食に行ったりする。その為に他国の情報は常に最新のものを知ってないとダメなんだ。それは国王も同じだけどさ、王弟って気楽そうに思えるけど意外に大変なんだよねぇ。
「あと1年でラスも成人かぁ」
「ユキは成人してても見た目は未成年だよね」
「うるさい!」
ユキって怒り方も可愛いんだよね。覇気が全くないから怖くない。まぁ、本気で怒ってないからなんだろうけど。優しい人ほど怒った時って怖いっていうよね。だからユキが本気で怒ればものすごく怖いんだと思う。
そんな成人してるはずのユキは色気を放出しまくってる時以外は子供にしか見えない。クリーム盛り盛りのココアが似合う成人男性ってなかなかいないと思うよ。はしゃぎ方も素直で余計に子供っぽく見えるんだよね。
「いっそ12歳ってことにしたら?」
「僕もう身長伸びないから一生12歳になりそう……そんなの嫌だよ……」
「たしかに。流石に年寄りになったら皺とかでわかるだろうけどね」
「それまで12歳……なんでこの世界の平均身長は2mもあるのさ……!」
そんなこと言われても俺達からしたらこれが普通だし。ユキでも小さいのにユキのお母さんとか小さすぎてほんと妹か何かだと思ったよね。黒髪ってだけで驚いたのに。
「この世界でも高い方のダグラスのことが好きなユキがこの世界の平均身長に文句を言ってもな」
「うぐ……」
たしかに。ユキってばダグラスのことものすごい好きだよね。2人のやりとり見てたら口の中ジャリジャリしてくるくらいに、2人はデロデロに甘い。
……ユキみたいに俺から色々できたらアレクは喜ぶのかな。俺はユキみたいにさらっと好きだとか愛してるだとか言えないし、実際に言葉にしたのは付き合うことになったあの日だけ。アレクはしょっちゅう言ってくるのに、俺は照れて何も返せない。手を繋ぐのもキスをするのもアレクからで、俺からなんて全くできない。
アレクは俺からしてほしいとか思ってるのかな……
仕事も終わり、夜になればアレクがやって来た。今日、明日とここに泊まる予定だったはず。2日連続で泊まるなんて初めてかもしれない。
「ルディ、今日も可愛いな」
「……ばーか」
ほら、またこんなことしか言えない。アレクにこうやって言われるの結構嬉しかったりするのに、俺は恥ずかしくて悪態しかつけない。
……そのうち嫌われたらどうしよう。
「どうした、ルディ。元気がないな。何かあったか?」
「……なんでもない」
「なんでもないようには見えないが……ルディが言いたくないなら言わなくてもいいが、何か悩んでいるなら俺でも聞くくらいは出来るぞ」
アレクは優しい。今みたいにいつも俺のことを気にかけてくれて、俺のことを大事にしてくれる。なのに俺は何も返せなくて……
「……アレクは、俺といて楽しい? 俺、ユキみたいに素直になれないし、甘えられない……」
「馬鹿だな。俺が愛しているのはルディだ。神子様じゃない。ダグラスさんが神子様を愛しているように、俺はルディを愛している。ルディだから愛しているんだ」
グッと抱き寄せられ、変わらない腕の優しさに安心した。
「照れ屋なところも、意外に色々と気にしてしまうところも、全て含めてルディが好きだ。俺にとっての唯一はルディなんだ」
本音だってわかる声音で、ゆっくりと言い聞かされた言葉はゆっくりと俺に染み込んだ。アレクの言葉が、気持ちが嬉しくて、じわりと滲んできた涙を誤魔化すようにグリ、とアレクの首元に顔を擦り付けるとくしゃりと頭を撫でられた。
「……俺も、アレクが……好き」
「ああ、ありがとう。ルディ、ルディはそのままでいい。他がどうとか関係ない。それに、むしろ神子様とダグラスさんのような砂を吐きそうなほどに甘い空気を出しているカップルや夫婦は少数派だと思うぞ」
……たしかに。そういえばユキとダグラスって異常なほどに甘いんだった。あんな甘い空気を出しながら甘いクリームたっぷりのココアを美味しそうに飲んでるユキの舌は一体どうなっているんだろう。
そう考えたらなんか悩んでたのが一気に吹き飛んじゃった。俺、何を気にしてたんだろ……たしかに毎日毎日何回も愛を囁き合うユキ達みたいな例って少数派だよね。普通そんな毎日のように言い合ったりしないよね。アレクも結構頻繁に言ってくれるけど、毎日ってわけじゃない。そもそも毎日恋人として過ごす時間があるわけでもないし。
アレクは俺の近衛だから昼間は俺の側で護衛をしてくれてるけど、夜は昼間にできない書類仕事をしたりするから、これない日も多いんだ。ちなみに夜番はない。近衛っていうのは、たまにある休み以外の日は昼間には絶対に護衛対象の側にいないとだめだからね。夜番が課せられてる護衛騎士とはまたちょっと違うのが近衛なんだ。ま、ダグラスの夜番はもうなくなったけど。
「……ユキをお手本には絶対しないことにする」
「まぁ、神子様が駄目ってわけじゃないけどな。あの2人はあれで上手くいっているんだから、あの2人にとっての正解はあれってことだ。俺たちは俺たちが納得できるやり方でいいんだよ」
俺たちの納得できるやり方、かあ……
「アレクは俺に変えて欲しいところはないの?」
「ルディはルディのままでいいといっただろう? 俺は無理をしていない自然なルディと一緒にいたい」
「そっか……」
なんだ、これ……普通に嬉しいしすごく照れる……
「ルディこそ、俺に変えて欲しいことはないか?」
「ない、よ。そのままで、いい」
文句なんて思い浮かばない。アレクは、本当に優しくて俺のことを大事にしてくれる。恥ずかしくなることは多いけど、嫌じゃない。むしろ、嬉しいと思う。それだけ好きでいてくれるってことだと思うし……
「そうか、よかった。何かあったら遠慮なくいってくれ。ルディに嫌われないためなら俺はなんだってするぞ」
「別に、嫌いになんてならないし……」
「ないならないでいいんだ。俺がそう思っているということだけ知っていてくれたらいい」
「わかった」
頭の片隅には置いておくけど、多分俺がここを直して欲しいっていうことはないと思う。俺、ちゃんとアレクのこと好きだし……アレクが俺に言ってくれたように、俺もアレクに自然体でいて欲しい。無理して欲しくないのは俺も一緒だ。
……そっか、お互いが納得しあって、お互いを気遣う。これが付き合うってことなのかな。やっとちゃんとわかった気がする。
「アレク、ずっと俺と一緒にいてね」
「もちろんだ。俺も離すつもりなどないからな」
離さない、なんて言葉、ユキとダグラスが言い合ってるのを見て砂を吐きそうになったのに、アレクに言われて嬉しいと感じるなんて。嬉しそうにしていたユキの気持ちがちょっとだけわかったかもしれない。
「ん、日付が変わったな。誕生日おめでとう、ルディ」
「ありがとう、アレク」
綺麗に包装された包みを見て、つい顔が緩んでしまう。好きな人からのプレゼントってこんなに嬉しいものなんだね。
「開けてくれ」
「ん」
いつも俺はこういう包装は破いてしまうんだけど、これはあまり破ってしまわないように慎重に開いていく。だってなんか……なんでかはわからないけどやぶりたくなかったんだもん。
時間をかけて漸く包装を取り、ドキドキしながら上等な箱をゆっくりと開くと……
「まだ早いと思ったんだが、俺のものだって証をつけて欲しくなってな。だが、ルディの立場的に言えば、ブレスを送ると国に大々的に発表しなくてはならないだろう? そこで神子様の故郷での恋人の証だという揃いの指輪にしてみたんだ。つけてくれるか?」
箱の中には綺麗な指輪が2つ並んでいた。ユキが初めて城下町に行った時のお土産をもらった時に左手の薬指につける指輪の話を聞いた。腰が全くたっていなかったけれど、指輪を大事そうに撫でるユキは本当に幸せそうだった。ちょっとだけ、うらやましかった。……まさか、アレクがその話を知っていて、俺のために用意してくれるなんて……
「ありが、とう……っだいじに、する」
こんなの反則だ。こんなの泣くに決まってるじゃんか……
「喜んでもらえてよかった。つけてやろう」
「……ん」
左手を差し出し、そっとはめてもらった指輪はサイズもぴったりで、キラリと綺麗に光った。
「俺にもつけてくれ」
もう1つの指輪を渡され、アレクにはめると嬉しそうにアレクが笑った。
「神子様の世界の文化はいいな。この指輪は特別な感じがする。いつかブレスレットも贈らせてくれ」
それはつまり、いつか結婚してくれってことで。いつになるかはまだ分からないけど、でもいつかの約束をくれたのが嬉しかった。いつかアレクからブレスレットを贈られたら、俺はまた泣いちゃうんだろうなあ。それでもってものすごく嬉しいと思う。楽しみ、だなあ。
俺が成人するまであと1年。それまでにアレクとの仲はどう変化していくのか楽しみだ。……成人したらすぐに抱かれたりする、のかな……そんなことわからないのに、なぜかやたらと気になった俺はその夜、隣で寝るアレクにドキドキしてあまり眠れないのだった。
「え?」
明日、なんかあったっけ?
「自分の誕生日も忘れたのか?」
呆れた様子の兄上の言葉に、今日の日付を思い出してみると確かに明日は俺の誕生日だった。すっかり忘れてたなぁ……
「未成年最後の誕生日くらい1日好きなことをして過ごせ。来年は成人の儀があるからゆっくりなどできない。それ以降は普通に公務になるだろうからな。今のうちに遊んでおけ」
「じゃあお言葉に甘えて休みます」
休みをくれるならもらっておこう。確かに成人したら他国へ行く仕事も多くなるはずだし、今より大変だろうしね。
兄上が即位したら俺は王弟になるわけで、王弟っていうのはなるべく自国にいた方がいい国王の代わりに他国の式典だとか舞踏会だとかに参加したり、他国の重役との会食に行ったりする。その為に他国の情報は常に最新のものを知ってないとダメなんだ。それは国王も同じだけどさ、王弟って気楽そうに思えるけど意外に大変なんだよねぇ。
「あと1年でラスも成人かぁ」
「ユキは成人してても見た目は未成年だよね」
「うるさい!」
ユキって怒り方も可愛いんだよね。覇気が全くないから怖くない。まぁ、本気で怒ってないからなんだろうけど。優しい人ほど怒った時って怖いっていうよね。だからユキが本気で怒ればものすごく怖いんだと思う。
そんな成人してるはずのユキは色気を放出しまくってる時以外は子供にしか見えない。クリーム盛り盛りのココアが似合う成人男性ってなかなかいないと思うよ。はしゃぎ方も素直で余計に子供っぽく見えるんだよね。
「いっそ12歳ってことにしたら?」
「僕もう身長伸びないから一生12歳になりそう……そんなの嫌だよ……」
「たしかに。流石に年寄りになったら皺とかでわかるだろうけどね」
「それまで12歳……なんでこの世界の平均身長は2mもあるのさ……!」
そんなこと言われても俺達からしたらこれが普通だし。ユキでも小さいのにユキのお母さんとか小さすぎてほんと妹か何かだと思ったよね。黒髪ってだけで驚いたのに。
「この世界でも高い方のダグラスのことが好きなユキがこの世界の平均身長に文句を言ってもな」
「うぐ……」
たしかに。ユキってばダグラスのことものすごい好きだよね。2人のやりとり見てたら口の中ジャリジャリしてくるくらいに、2人はデロデロに甘い。
……ユキみたいに俺から色々できたらアレクは喜ぶのかな。俺はユキみたいにさらっと好きだとか愛してるだとか言えないし、実際に言葉にしたのは付き合うことになったあの日だけ。アレクはしょっちゅう言ってくるのに、俺は照れて何も返せない。手を繋ぐのもキスをするのもアレクからで、俺からなんて全くできない。
アレクは俺からしてほしいとか思ってるのかな……
仕事も終わり、夜になればアレクがやって来た。今日、明日とここに泊まる予定だったはず。2日連続で泊まるなんて初めてかもしれない。
「ルディ、今日も可愛いな」
「……ばーか」
ほら、またこんなことしか言えない。アレクにこうやって言われるの結構嬉しかったりするのに、俺は恥ずかしくて悪態しかつけない。
……そのうち嫌われたらどうしよう。
「どうした、ルディ。元気がないな。何かあったか?」
「……なんでもない」
「なんでもないようには見えないが……ルディが言いたくないなら言わなくてもいいが、何か悩んでいるなら俺でも聞くくらいは出来るぞ」
アレクは優しい。今みたいにいつも俺のことを気にかけてくれて、俺のことを大事にしてくれる。なのに俺は何も返せなくて……
「……アレクは、俺といて楽しい? 俺、ユキみたいに素直になれないし、甘えられない……」
「馬鹿だな。俺が愛しているのはルディだ。神子様じゃない。ダグラスさんが神子様を愛しているように、俺はルディを愛している。ルディだから愛しているんだ」
グッと抱き寄せられ、変わらない腕の優しさに安心した。
「照れ屋なところも、意外に色々と気にしてしまうところも、全て含めてルディが好きだ。俺にとっての唯一はルディなんだ」
本音だってわかる声音で、ゆっくりと言い聞かされた言葉はゆっくりと俺に染み込んだ。アレクの言葉が、気持ちが嬉しくて、じわりと滲んできた涙を誤魔化すようにグリ、とアレクの首元に顔を擦り付けるとくしゃりと頭を撫でられた。
「……俺も、アレクが……好き」
「ああ、ありがとう。ルディ、ルディはそのままでいい。他がどうとか関係ない。それに、むしろ神子様とダグラスさんのような砂を吐きそうなほどに甘い空気を出しているカップルや夫婦は少数派だと思うぞ」
……たしかに。そういえばユキとダグラスって異常なほどに甘いんだった。あんな甘い空気を出しながら甘いクリームたっぷりのココアを美味しそうに飲んでるユキの舌は一体どうなっているんだろう。
そう考えたらなんか悩んでたのが一気に吹き飛んじゃった。俺、何を気にしてたんだろ……たしかに毎日毎日何回も愛を囁き合うユキ達みたいな例って少数派だよね。普通そんな毎日のように言い合ったりしないよね。アレクも結構頻繁に言ってくれるけど、毎日ってわけじゃない。そもそも毎日恋人として過ごす時間があるわけでもないし。
アレクは俺の近衛だから昼間は俺の側で護衛をしてくれてるけど、夜は昼間にできない書類仕事をしたりするから、これない日も多いんだ。ちなみに夜番はない。近衛っていうのは、たまにある休み以外の日は昼間には絶対に護衛対象の側にいないとだめだからね。夜番が課せられてる護衛騎士とはまたちょっと違うのが近衛なんだ。ま、ダグラスの夜番はもうなくなったけど。
「……ユキをお手本には絶対しないことにする」
「まぁ、神子様が駄目ってわけじゃないけどな。あの2人はあれで上手くいっているんだから、あの2人にとっての正解はあれってことだ。俺たちは俺たちが納得できるやり方でいいんだよ」
俺たちの納得できるやり方、かあ……
「アレクは俺に変えて欲しいところはないの?」
「ルディはルディのままでいいといっただろう? 俺は無理をしていない自然なルディと一緒にいたい」
「そっか……」
なんだ、これ……普通に嬉しいしすごく照れる……
「ルディこそ、俺に変えて欲しいことはないか?」
「ない、よ。そのままで、いい」
文句なんて思い浮かばない。アレクは、本当に優しくて俺のことを大事にしてくれる。恥ずかしくなることは多いけど、嫌じゃない。むしろ、嬉しいと思う。それだけ好きでいてくれるってことだと思うし……
「そうか、よかった。何かあったら遠慮なくいってくれ。ルディに嫌われないためなら俺はなんだってするぞ」
「別に、嫌いになんてならないし……」
「ないならないでいいんだ。俺がそう思っているということだけ知っていてくれたらいい」
「わかった」
頭の片隅には置いておくけど、多分俺がここを直して欲しいっていうことはないと思う。俺、ちゃんとアレクのこと好きだし……アレクが俺に言ってくれたように、俺もアレクに自然体でいて欲しい。無理して欲しくないのは俺も一緒だ。
……そっか、お互いが納得しあって、お互いを気遣う。これが付き合うってことなのかな。やっとちゃんとわかった気がする。
「アレク、ずっと俺と一緒にいてね」
「もちろんだ。俺も離すつもりなどないからな」
離さない、なんて言葉、ユキとダグラスが言い合ってるのを見て砂を吐きそうになったのに、アレクに言われて嬉しいと感じるなんて。嬉しそうにしていたユキの気持ちがちょっとだけわかったかもしれない。
「ん、日付が変わったな。誕生日おめでとう、ルディ」
「ありがとう、アレク」
綺麗に包装された包みを見て、つい顔が緩んでしまう。好きな人からのプレゼントってこんなに嬉しいものなんだね。
「開けてくれ」
「ん」
いつも俺はこういう包装は破いてしまうんだけど、これはあまり破ってしまわないように慎重に開いていく。だってなんか……なんでかはわからないけどやぶりたくなかったんだもん。
時間をかけて漸く包装を取り、ドキドキしながら上等な箱をゆっくりと開くと……
「まだ早いと思ったんだが、俺のものだって証をつけて欲しくなってな。だが、ルディの立場的に言えば、ブレスを送ると国に大々的に発表しなくてはならないだろう? そこで神子様の故郷での恋人の証だという揃いの指輪にしてみたんだ。つけてくれるか?」
箱の中には綺麗な指輪が2つ並んでいた。ユキが初めて城下町に行った時のお土産をもらった時に左手の薬指につける指輪の話を聞いた。腰が全くたっていなかったけれど、指輪を大事そうに撫でるユキは本当に幸せそうだった。ちょっとだけ、うらやましかった。……まさか、アレクがその話を知っていて、俺のために用意してくれるなんて……
「ありが、とう……っだいじに、する」
こんなの反則だ。こんなの泣くに決まってるじゃんか……
「喜んでもらえてよかった。つけてやろう」
「……ん」
左手を差し出し、そっとはめてもらった指輪はサイズもぴったりで、キラリと綺麗に光った。
「俺にもつけてくれ」
もう1つの指輪を渡され、アレクにはめると嬉しそうにアレクが笑った。
「神子様の世界の文化はいいな。この指輪は特別な感じがする。いつかブレスレットも贈らせてくれ」
それはつまり、いつか結婚してくれってことで。いつになるかはまだ分からないけど、でもいつかの約束をくれたのが嬉しかった。いつかアレクからブレスレットを贈られたら、俺はまた泣いちゃうんだろうなあ。それでもってものすごく嬉しいと思う。楽しみ、だなあ。
俺が成人するまであと1年。それまでにアレクとの仲はどう変化していくのか楽しみだ。……成人したらすぐに抱かれたりする、のかな……そんなことわからないのに、なぜかやたらと気になった俺はその夜、隣で寝るアレクにドキドキしてあまり眠れないのだった。
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