あの人と。

Haru.

文字の大きさ
上 下
208 / 396
After Story

大人の階段

しおりを挟む
 2人でお茶をのんでちょっとひと息。ついでにサクサクのクッキーも1枚摘んで相談コーナー再開!

「俺のことが好きな人が俺の近くにいるって話、あったじゃん」

「うん」

 はっきりと覚えておりますよ。今日のこれだって僕がそのことを話題にあげたのがきっかけだったし。

「あれさ、俺の護衛だったんだよ」

「へ?」

「そいつ、アレックスって言うんだけど俺の4つ上でさ、近衛を数多く輩出する貴族の出だったからいつか俺の護衛になるために、って歳が近かったから小さい頃から遊び相手として城によく来てたんだ」

 ほう。騎士と王子ってラスの好きなシチュだと思うけど、まぁそれを口に出すほど僕はバカじゃありません。ラスは悩んでいるんだからね!

「アレク……アレックスのことなんだけど、周りの騎士とかに最初から王子の護衛って決まってるなんて贔屓だって言われながらも、物凄く努力して力を証明して周りを納得させて俺の護衛になった」

 いい話、だね? 努力して周りを納得させたなんてすごいよ。ラスの側にいたかったから頑張ったのかなぁ……ん~熱い恋の話だ!

「ユキ、いい話だって思ってるでしょ」

「えっ、だって周りを納得させてラスの側にきたって、それだけラスなこと好きだったわけでしょ?」

「ま、まぁたしかにそうなのかもだけどさ……問題はそこじゃないんだよ。考えてみて、相手は周りの騎士を納得させるくらいの腕をもった騎士なんだよ」

「うん」

「……まだわからない? アレク、俺よりムッキムキなの! 言うなら体格がダグラスみたいな感じなの!」

 あ、あー……やっとわかりました。ラス、奥さんをもらうんだって思ってたって言ってたもんね……まぁ、普通なら自分より小柄な人と結婚するんだと思うよね……それなのにラスのことが好きだっていう人はゴリゴリの騎士。戸惑う、よねぇ……

「俺さ、流石に俺よりゴツい奴は抱ける気がしないわけ。でさ、アレクに聞いたの。お前は俺を抱きたいのか、それとも抱かれたいのかって」

「……そうしたら?」

「……抱きたいに決まってるってさ。俺、抱かれる側の閨教育なんて受けてないしさぁ……そっちになるなんて考えてもなかったし、もう大混乱で……どうしたらいいかなぁ……」

 まぁ、混乱するのも無理はないよね。自分が好きになった相手から抱きたい、って言われたらまた別だったんだろうけど、ラスの場合は相手がラスを好きなわけで。ラスがそのアレックスさんを好きじゃない限りは受け入れがたいよね。

「ラスはアレックスさんをどう思ってるの?」

「どうって?」

「とりあえず抱く抱かれるは抜きにして、恋愛対象としてみれるかどうか、だよ。まずそこから始めなくちゃ」

 初めて抱かれるって結構覚悟のいることだし。一気にそれを考えろって酷だと僕は思うのです。まずは相手を好きになれるかどうかだよ。

「恋愛対象として……うーん、どうなのかなぁ……」

「じゃあこれは? 相手がラス以外の人の護衛になるために必死に頑張っているのを想像したらどう?」

「……嫌かも。俺じゃないのかよってなる」

「ふふ、じゃあアレックスさんが誰かと手を繋いで歩いていたら?」

「む……」

「立ち止まってキスをしていたら?」

「もやもやする……俺、アレクのこと好きなのか……?」

「さぁ? それはラスにしかわからないよ。まぁ、僕には結構気持ちが傾いているように見えるけどね」

 恋をしているかどうかは本人にしかわからないっていうのは僕がロイに言われたこと。懐かしいなぁ。あの日に僕はダグへの気持ちを自覚して、色々あっての今があるんだもんなぁ……

「……でも俺、やっぱり抱かれるのはちょっと……」

「ラスは未成年なんだし、そんなことはまだ考えなくていいよ。アレックスさんは未成年のラスの意思を無視して襲ってくるような人?」

 流石にそれは大問題ですよ。未成年の王族への強姦罪ってどうなるんだろ……うわ、言葉にしたらものすごい大事件感増したよ。

「……違う。アレクは、たとえ今俺がアレクを選んでも、大人になるまでは絶対に最後までは手は出さないって言ってた。大人になった時にアレクを選んでいなくても、俺の気持ちがアレクをに向いていない限り手は出さないとも。アレクは1度言った事を曲げる奴じゃないから、これは絶対守ると思う」

「そっか。近くにいたラスがそう言うんだから確かに信用できる人なんだろうね」

 僕は安心いたしましたよ! ……っていうのが気になるけどね。その前段階は……うん……多分、するよねぇ……

「うん。アレクはいい奴だよ。だからこそ中途半端な答えは出したくないんだ……」

「そっかぁ……ラス、抱かれる覚悟ってね、やっぱり何も知らない時点じゃあまりつかないと思うよ。僕だってさ、この世界に来たばっかの時は誰かに抱かれるかもってなんだかもやっとしてたもん」

 この世界には僕より体格のいい人しかいないから、恋人を作るならほぼほぼ抱かれることは確定で。流石に最初からいける! 大丈夫! とはならなかったよねぇ。

「でもさ、ダグを好きになって、付き合うことになって、ハグをして、キスをして、ダグにゆっくり慣らされて。いつのまにか怖さなんてすっ飛んで最後は僕から誘ったぐらいなんだよ」

「え、そうなの?」

「うん。ダグはまだ慣れきってない、って最初は駄目だって言ってきたけどどうしても今日がいいって無理言ってさ。女の人が普通にいた世界で育った僕がいつのまにかこんな風になってたんだよ」

 いやぁ、本当にびっくりですよね。日本にいた時はまさか僕よりはるかに体格のいい男の人に抱かれるなんて思いもよらなかったもん。それなのに誘うようにまでなっちゃって……ものすごい変化だと思うよ。

「まぁそんなんだからさ、多分抱かれる云々っていうのは、ラスがアレックスさんを好きだってはっきり自覚したらその時からゆっくりと覚悟がついていくんじゃないかなって思うの。まだ未知なことすぎて怖いだろうしさ、とりあえずは手を繋ぐのはどうかな、とか、キスをするのはどうかな、とかから考えてみなよ」

「……そっかぁ。でも確かに、そうかも。俺も最初はキスとかから考えてたんだけどさ、なんかやっぱり先のこと考えちゃって。恋人になるならいつかはしなきゃだめだって思っちゃってさ」

 うーん、ラスってもしかして勘違いもしてる?

「ラス、言っておくけどえっちは義務じゃないよ?」

「え?」

 もう、やっぱり勘違いまでしてた。この勘違いはまずいよ。いざ付き合うことになってもまた悩むようになっちゃう。

「えっちはね、本人達がしたいからするの。しなきゃだめだからするんじゃないよ。好きだから触れたい、触れられたい、繋がりたい。そう思うからするの。だからね、ラスがしたいって思わない限りしなくていいんだよ。むしろしたらだめ。絶対に辛いから」

「しなくていいの……?」

 まるで目から鱗、みたいな顔をして目をしばたいているラス。今勘違いに気付けて良かったよ……危なかったぁ。

「そうだよ、しなくていいの」

「でもさ、あいつは俺のこと抱きたいって言ってるしやっぱり……」

「ラスの気持ちを無視する人じゃないんでしょ? 待ってもらいなさい」

「でも待たせといて結局できませんって酷くない? 付き合っても触らせないなんて……嫌われそうだし」

 おお? 嫌われるのが嫌ってことかな? それってつまりはラスの気持ちって大分アレックスさんに傾いてると思うんだけど……まぁ、自分で気付かないとね。僕は言いません。

「アレックスさんが本当にラスのことを想ってくれてるならそれはないと思うよ。恋人ってえっちが全てじゃないんだし」

「そっかぁ……」

 まぁ、僕としてはラスがアレックスさんを好きになっちゃえば自然と触れられたいって思うようになると思うけどね。だからずっと無理っていうのはないと思います。きっと大丈夫って思える日が来ると思います!

「ラスは身体もほとんど大人で、王子としてないお仕事もしてて、すっかり大人になったように見えるけどさ、実際にはまだ未成年なんだからゆっくり悩みな。まだまだ心は成長途中なんだよ」

「……なんかユキが大人みたい」

「僕成人してるもん。それにラスより大人の階段登ってますから!」

「……でも童貞」

 こらぁあっっ!! い、いいんだもん! 一生童貞でもいいもん……! べ、別に気にしてないんだからな……!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

奴の執着から逃れられない件について

B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。 しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。 なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され..., 途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

オトナの玩具

希京
BL
12歳のカオルは塾に行く途中、自転車がパンクしてしまい、立ち往生しているとき車から女に声をかけられる。 塾まで送ると言ってカオルを車に乗せた女は人身売買組織の人間だった。 売られてしまったカオルは薬漬けにされて快楽を与えられているうちに親や教師に怒られるという強迫観念がだんだん消えて自我が無くなっていく。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

処理中です...