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After Story
手合わせ
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「そういや、ユキの攻撃魔法は見たことねぇな。よし、おっちゃんが稽古をつけてやろう」
そんなアルバスさんの一言でダグ達騎士が訓練をしている横で僕も魔法の訓練的なのをすることに。
「アルバスさん、お仕事は?」
「ん? 少しくらい大丈夫だ」
嘘をついているようには見えない……いや、まぁ騎士団長のアルバスさんにとって感情を悟られないようにすることなんて簡単なんだろうけども。
んー……でもまぁここにいて、なおかつ誰も呼びに来ないってことはそこまで急ぎのお仕事はないってことかな? なら舞踏会の件も大分片がついたってことか……また今度聞かなくちゃね……本当は聞きたくないよ。ダグが毒に苦しむ光景がはっきりと脳裏に映るから。でも……これからのためには、きかなくちゃ。
「でも僕、手合わせしたいなんて言ってないです」
「いいじゃねぇか。ユキも暇だろ? おっちゃんとちと遊ぼうぜ」
遊びなの? 遊んでもらうような年齢ではないんだけど……
「それに、たまにはダグラスとリディア以外の奴と手合わせするのもユキの力になるぞ?」
たしかに! アルバスさんってダグともリディアとも戦い方は全く違うと思うし、訓練になるかも。
それに、特にダグなんだけど……僕に怪我をさせないようにってほぼ防戦一方で、僕には殆ど魔法を撃って来ないからなぁ……しかもちゃんと当たらないようにって撃ってくるんだよね。
僕の為にならないでしょ! って言っても、万が一にもユキに傷をつけてしまったらと思うととても攻撃なんかできないって言われるんだよ。たしかに僕だってダグに怪我はして欲しくないけどぉ……
まぁいいや、訓練になるなら手合わせしてもらお!
「よろしくお願いします!」
「おし! やるか!」
「ユキ様にお怪我をさせたら片腕と片脚を切り落としますからね」
「それじゃ現場に立てなくなんだろ?! んなもん死んだほうがマシだ!」
「何言ってるんですか。なんでマシな方の罰を与えないとダメなんです?」
不思議で仕方ないっていう顔で言ったリディア。相変わらず絶対零度の目がとても怖いです。
んーでも、現場に立てないってことはすなわち安全なところにいれるってわけで。好きな人に危ないところに行って欲しくないっていうリディアの思いが込められてたり……
「ユキ様?」
「ごめんなさい!!!!」
すっごい冷ややかに微笑まれた! 夢に出るよ!! これはもうダグにしがみついて寝ないとね!!
「アルバスさん早くやりましょう!」
「よっしゃ、やるか!」
アルバスさんをグイグイ押して、訓練所の中の空いているスペースへ。騎士さんと違って剣を振り回すのじゃなくて魔法をぶっ放すから結構広めの所を選んだよ。
「遠慮なくこい!」
「お願いします!」
長ったらしい詠唱なんてものはない。でも魔法はその構造を理解し、構築できないと発動しない。どちらか一方だけじゃ成立しないのだ。もちろん構築には魔力がいるし、集中力だっている。魔法って結構奥が深いのですよ。
あ、技の名前も本当は言わなくていいんだよ。僕はイメージを強める為に言うことが多いけど、理解してる魔法については構築できたらいいわけだから言わないときだってある。だって何を繰り出すのか相手に宣言するなんてバカみたいでしょ? こう言うのは不意打ちが効果覿面だと思うのです!
まずは小手調べに火弾! 5発ほど発動してみると……まぁ、相殺されるよねぇ。簡単に水弾で消されちゃいました。
数打ちゃ当たるって概念は通用しないと考えていい。いくら魔力が頭おかしいくらいあっても、自分の体の中にあるものを使うのだからそれなりに体力だって消耗するんだよ。だからなるべく無駄撃ちはしない。それに相手は騎士団長。そんな子供騙しみたいなやり方じゃダメでしょう!
「それだけかぁ?」
「ここからです!」
大きな水神の檻を構築。見た目は直径3メートルくらいの大きな水の玉。だけど中は激しく水が動いていて、触れた瞬間中に吸い込まれる。だから物理攻撃じゃなくて魔法で対処するのが正解。これ、実は上級魔法なのですよ。えっへん。
「おーおー、どでかいもんを作ったな! だが弱い!」
水神の檻はアルバスさんに触れる前にアルバスさんの風属性魔法によって散らされ、アルバスさんの周りが水浸しに。
それを確認した僕は水神の檻を放った後すぐに構築していた氷山の針を発動。さっきの水を元にアルバスさんの方向へ無数の氷の針が襲いかかる。
「ほぉ、やるな!」
とか言って融かすくせに!!!
でも、おかげできっちりアルバスさんの足下まで濡れた。アルバスさんは水溜りに足をつけてるようなもの。
雷神の怒り!
「うぉっと! 危ねっ」
むっ、水溜まりに電気を流して感電させようと思ったのにものすごい跳躍力で避けられちゃった。まぁ想像通りなので構いません! ついでに巨大な蔦をニョキニョキっと出して搦め捕ろうとすると、アルバスさんは蔦を燃やそうとする。
「んあ? 燃えねぇ!」
「無駄です! その蔦は僕が無駄に強化してます!」
速攻で燃やされるようなもの強化するに決まってるでしょ? 燃えないように水属性の結界を纏わせてます。簡単に切れるものでもないですよ! もちろん媒介はさっきの水。再利用大切!
「なら術者を倒すまで!」
「受けて立ちます!」
アルバスさんが蔦から矛先を僕に変え、蔦を避けながらあらゆる魔法を撃ってくる。僕はそれに対して相殺する属性の魔法を撃ちつつ蔦を操ってアルバスさん動きを制限する。追い込む作戦です!
でも相手はさすが騎士団長。するするっと抜けられて気づいたら目の前には僕を覗き込むにっこり笑顔のアルバスさん。追い込むつもりが追い込まれた……
「ほい、終了っと」
「あう」
ちょんっと首を突かれて手合わせ終了です。魔法とか使われたわけじゃないから痛みとかはないけど、まぁ魔法か剣を使ってたら普通に首切られてたよねー。うぅ、悔しい!
「やるな、ユキ!」
「わぁ?!」
両脇に手を入れられてそのまま持ち上げられました。いわゆる高い高いってやつですよ……! アルバスさん、ダグより大きいから高すぎて怖い……!! 落とされることはないだろうけど怖くて必死にアルバスさんの腕にしがみつく。
「あんだけの属性を一気に操れるとはな! 流石ユキだ!」
「お、下ろしてください……!」
「いいじゃねぇか! ほら高い高ーい! なんつってな!」
「ぎゃあぁあああああ!!」
投げないで! 投げないで!! 高い高い高い!! 余裕で4メートルは越してるから!!
「お、おいユキ?」
「ユキ様!!」
「だ、ダグぅうぅうううううう!!」
本気でギャン泣きしだした僕に焦ったアルバスさんが僕を下ろすと、僕は叫びを聞いて駆け付けてくれたダグに飛びついた。もう必死でしがみつきましたよ。
「団長!!」
「わ、わりぃ。そんなに怖がるとは……」
「当たり前でしょう?! 突然空中に放り出されて怖くないわけがないでしょう! ユキ様はあなたと違って繊細な心をお持ちなんですからね!」
リディアがアルバスさんを怒鳴りつける傍で僕はダグにしがみついてギャン泣き。だって本気で怖かったんだもん……紐なしバンジーかと思った……
以降僕はしばらくアルバスさんの半径5メートル以内には入らなくなるのだった。
そんなアルバスさんの一言でダグ達騎士が訓練をしている横で僕も魔法の訓練的なのをすることに。
「アルバスさん、お仕事は?」
「ん? 少しくらい大丈夫だ」
嘘をついているようには見えない……いや、まぁ騎士団長のアルバスさんにとって感情を悟られないようにすることなんて簡単なんだろうけども。
んー……でもまぁここにいて、なおかつ誰も呼びに来ないってことはそこまで急ぎのお仕事はないってことかな? なら舞踏会の件も大分片がついたってことか……また今度聞かなくちゃね……本当は聞きたくないよ。ダグが毒に苦しむ光景がはっきりと脳裏に映るから。でも……これからのためには、きかなくちゃ。
「でも僕、手合わせしたいなんて言ってないです」
「いいじゃねぇか。ユキも暇だろ? おっちゃんとちと遊ぼうぜ」
遊びなの? 遊んでもらうような年齢ではないんだけど……
「それに、たまにはダグラスとリディア以外の奴と手合わせするのもユキの力になるぞ?」
たしかに! アルバスさんってダグともリディアとも戦い方は全く違うと思うし、訓練になるかも。
それに、特にダグなんだけど……僕に怪我をさせないようにってほぼ防戦一方で、僕には殆ど魔法を撃って来ないからなぁ……しかもちゃんと当たらないようにって撃ってくるんだよね。
僕の為にならないでしょ! って言っても、万が一にもユキに傷をつけてしまったらと思うととても攻撃なんかできないって言われるんだよ。たしかに僕だってダグに怪我はして欲しくないけどぉ……
まぁいいや、訓練になるなら手合わせしてもらお!
「よろしくお願いします!」
「おし! やるか!」
「ユキ様にお怪我をさせたら片腕と片脚を切り落としますからね」
「それじゃ現場に立てなくなんだろ?! んなもん死んだほうがマシだ!」
「何言ってるんですか。なんでマシな方の罰を与えないとダメなんです?」
不思議で仕方ないっていう顔で言ったリディア。相変わらず絶対零度の目がとても怖いです。
んーでも、現場に立てないってことはすなわち安全なところにいれるってわけで。好きな人に危ないところに行って欲しくないっていうリディアの思いが込められてたり……
「ユキ様?」
「ごめんなさい!!!!」
すっごい冷ややかに微笑まれた! 夢に出るよ!! これはもうダグにしがみついて寝ないとね!!
「アルバスさん早くやりましょう!」
「よっしゃ、やるか!」
アルバスさんをグイグイ押して、訓練所の中の空いているスペースへ。騎士さんと違って剣を振り回すのじゃなくて魔法をぶっ放すから結構広めの所を選んだよ。
「遠慮なくこい!」
「お願いします!」
長ったらしい詠唱なんてものはない。でも魔法はその構造を理解し、構築できないと発動しない。どちらか一方だけじゃ成立しないのだ。もちろん構築には魔力がいるし、集中力だっている。魔法って結構奥が深いのですよ。
あ、技の名前も本当は言わなくていいんだよ。僕はイメージを強める為に言うことが多いけど、理解してる魔法については構築できたらいいわけだから言わないときだってある。だって何を繰り出すのか相手に宣言するなんてバカみたいでしょ? こう言うのは不意打ちが効果覿面だと思うのです!
まずは小手調べに火弾! 5発ほど発動してみると……まぁ、相殺されるよねぇ。簡単に水弾で消されちゃいました。
数打ちゃ当たるって概念は通用しないと考えていい。いくら魔力が頭おかしいくらいあっても、自分の体の中にあるものを使うのだからそれなりに体力だって消耗するんだよ。だからなるべく無駄撃ちはしない。それに相手は騎士団長。そんな子供騙しみたいなやり方じゃダメでしょう!
「それだけかぁ?」
「ここからです!」
大きな水神の檻を構築。見た目は直径3メートルくらいの大きな水の玉。だけど中は激しく水が動いていて、触れた瞬間中に吸い込まれる。だから物理攻撃じゃなくて魔法で対処するのが正解。これ、実は上級魔法なのですよ。えっへん。
「おーおー、どでかいもんを作ったな! だが弱い!」
水神の檻はアルバスさんに触れる前にアルバスさんの風属性魔法によって散らされ、アルバスさんの周りが水浸しに。
それを確認した僕は水神の檻を放った後すぐに構築していた氷山の針を発動。さっきの水を元にアルバスさんの方向へ無数の氷の針が襲いかかる。
「ほぉ、やるな!」
とか言って融かすくせに!!!
でも、おかげできっちりアルバスさんの足下まで濡れた。アルバスさんは水溜りに足をつけてるようなもの。
雷神の怒り!
「うぉっと! 危ねっ」
むっ、水溜まりに電気を流して感電させようと思ったのにものすごい跳躍力で避けられちゃった。まぁ想像通りなので構いません! ついでに巨大な蔦をニョキニョキっと出して搦め捕ろうとすると、アルバスさんは蔦を燃やそうとする。
「んあ? 燃えねぇ!」
「無駄です! その蔦は僕が無駄に強化してます!」
速攻で燃やされるようなもの強化するに決まってるでしょ? 燃えないように水属性の結界を纏わせてます。簡単に切れるものでもないですよ! もちろん媒介はさっきの水。再利用大切!
「なら術者を倒すまで!」
「受けて立ちます!」
アルバスさんが蔦から矛先を僕に変え、蔦を避けながらあらゆる魔法を撃ってくる。僕はそれに対して相殺する属性の魔法を撃ちつつ蔦を操ってアルバスさん動きを制限する。追い込む作戦です!
でも相手はさすが騎士団長。するするっと抜けられて気づいたら目の前には僕を覗き込むにっこり笑顔のアルバスさん。追い込むつもりが追い込まれた……
「ほい、終了っと」
「あう」
ちょんっと首を突かれて手合わせ終了です。魔法とか使われたわけじゃないから痛みとかはないけど、まぁ魔法か剣を使ってたら普通に首切られてたよねー。うぅ、悔しい!
「やるな、ユキ!」
「わぁ?!」
両脇に手を入れられてそのまま持ち上げられました。いわゆる高い高いってやつですよ……! アルバスさん、ダグより大きいから高すぎて怖い……!! 落とされることはないだろうけど怖くて必死にアルバスさんの腕にしがみつく。
「あんだけの属性を一気に操れるとはな! 流石ユキだ!」
「お、下ろしてください……!」
「いいじゃねぇか! ほら高い高ーい! なんつってな!」
「ぎゃあぁあああああ!!」
投げないで! 投げないで!! 高い高い高い!! 余裕で4メートルは越してるから!!
「お、おいユキ?」
「ユキ様!!」
「だ、ダグぅうぅうううううう!!」
本気でギャン泣きしだした僕に焦ったアルバスさんが僕を下ろすと、僕は叫びを聞いて駆け付けてくれたダグに飛びついた。もう必死でしがみつきましたよ。
「団長!!」
「わ、わりぃ。そんなに怖がるとは……」
「当たり前でしょう?! 突然空中に放り出されて怖くないわけがないでしょう! ユキ様はあなたと違って繊細な心をお持ちなんですからね!」
リディアがアルバスさんを怒鳴りつける傍で僕はダグにしがみついてギャン泣き。だって本気で怖かったんだもん……紐なしバンジーかと思った……
以降僕はしばらくアルバスさんの半径5メートル以内には入らなくなるのだった。
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