あの人と。

Haru.

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After Story

僕だって

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 ダグとアルバスさんが向かい合い、肩や膝などをならす様子を少し離れたところから見守る。剣が折れて飛んでくることがあるらしく、危ないからと防御結界を張らされました。誰かが張ると言ってくれたけれど、それくらいなら自分でも張れるからと断った。舞踏会以来魔力は訓練以外で使ってないし有り余っているのです。

「ユキ様の結界は相変わらず強いですねぇ」

「そう? たしかになるべく細かく構築してはいるけどね」

 リディアを含めた神官というのは魔法に精通しているため、その魔法がどれくらいの威力なのかが大体わかるらしい。まあ騎士でも鋭い人とか特に強い人とかはわかるらしいんだけど、やっぱり神官の方がその辺は優れているらしいですよ。

「たくさんの魔法を習得なさいましたし、もう立派な魔法師ですよ」

「そうかなぁ? でもまだ魔法収納は習得できてないからなぁ……」

 なんか中途半端な魔法ならできるんだよ。異空間を作って入れる魔法だからそこに存在するはずもないし見えないし触れられるわけもないんだけど、僕のはなんかそこに浮かんでる様に見えちゃうの。でも実際には触れないからそこにないはずなんだよね……ダグとリディアにはそっちの方が出来ないって言われた。悲しい。

「おや、始まる様ですよ」

 おお!!

 リディアから2人へと視線を戻すと、互いを睨み合い、それぞれの型で剣を構えていた。

 そしてそれぞれの足にグッと力が入ったと思った瞬間、2人の剣が交わっていた。ギリギリと剣を交わす2人はしばらくして同時に跳びのき、そのまま激しい剣戟が始まった。

 キン、とした音や時折ギッといった軋む様な音などが響いてくる為、たしかに2人が剣を振るい、交わし合っているのはわかるのだけれど……そのスピードがかなり速くてなかなか動きについていくことができない。

 ただ僕にわかるのは、2人の腕がものすごく良いことだけ。それは周りの様子を見るだけでも十分にわかる。

「やべぇな……俺もう見えなくなった」

「俺もだ。何手まで見えた?」

「10手いくかいかないかくらいだな……」

「俺5手なんだけど……」

 どうやらダグとアルバスさんの剣筋は騎士から見ても速く鋭いようだ。

「リディアから見てどう?」

「ふむ……ダグラスはユキ様と出会う以前と比べると比べ物にならないほど強くなっている気がしますね。なんなら竜人の事件の時よりも強くなっているのでは?」

 うーむ……そんな気も、する、かも? いや、うん。状況は全く違うものだし、はっきりとわかるものではないんだけど……気迫? とかダグの様子を見ていると、なんだか強くなっている気がする。

「ふふ、愛のなせる技は偉大ですね」

「リディアッ!!」

 もう、何言い出すのさ! 恥ずかしいでしょ!!

 でも、本当にそうだとしたら……嬉しいな。僕もダグを守りたいって思った。ダグも、僕を守るためにって思ってくれているのかなって……そうだったら嬉しいなぁ。


 ほこほこした気持ちで2人の戦いを見ていると、ガキッという嫌な音とともに何かが飛んで来た。それは僕が張ってた防御結界に弾かれて転がったんだけども。

「……剣?」

 剣、の先みたいな……周りの騎士達が持っている剣の半分くらいの長さの……折れた物体。

「両者戦闘不能により引き分け!!」

「終わったようですね」

 ひぇっ……2人の剣がポッキリ折れてます……もう一本の折れた先は僕とは反対側に落ちているのがチラッとみえました。

 ダグがアルバスさんに一礼し、2人して色々と話しながらこっちに向かって来ます。

「だぁーっ、この剣やっぱ弱いな! もっと強い剣に変えるか」

「経費が下りないと何度も言っているでしょう」

「しかしこうも脆いとなぁ……」

「脆いと思っているのは団長くらいですよ」

「だがお前も脆いって思うようになったんじゃねぇの? 今日もまだ本気じゃなかっただろ。これじゃ訓練になんねぇよ」

 ……剣が脆いとはいかに。

「すみません、それちょっと貸してもらえますか」

 ちょっと気になって近くの騎士さんに剣を貸してもらえないか聞いてみた。

「へっ?! ど、どうぞ。刃は潰れていますがお気をつけてください」

「ありがとうございま……っ?!」

 おっもい……! 何これ!? これを2人はあんな速さで振ってたの?!

「……ユキ様、危険ですので振るおうなど思わないでくださいね」

「……振るえるように見える?」

 こう……持つだけで腕がプルプル震えてるんだよ? 振るえてるじゃないよ。震えてるんだよ。日本語じゃ音は同じだけど意味は全然違うよ。

「ユキ様、危ないですから……」

「ユキ、なぁにしてんだ?」

 やっとこっちに戻って来た2人。ダグは心配そうに僕の手から剣を奪い、元の持ち主に返してしまった。アルバスさんは笑いを堪えている。

「せいっ! ……いたい」

 まともに持つこともできないのか……とちょっと落ち込んだところに笑いやがって! となり、アルバスさんのお腹に向けて拳を突き出して見たのだけれど。鎧なんか着てないのに鉄板でも仕込んでるのかってほどに硬かった。手が痛い。心も痛い。

「……大丈夫か?」

「……心は大丈夫じゃないです」

「ユキ様、お手を」

「……ありがとう」

 リディアが赤くなった手にさっと治癒魔法をかけてくれました。手の痛みは引いたけれど心は激痛を訴えてます。

「僕も男なのに……!」

 うわぁんっとダグに抱きついたらそっと抱きしめて頭を撫でてくれた。嬉しい。

「ユキ様には魔法があるではありませんか。ユキ様ほどの魔力量は他にいませんよ」

 うぅ、確かに僕の魔力ってえげつないくらいに多いらしいんだけども……僕としては少しでも筋力とか運動神経だとかが欲しかったわけで……!

「私はそのままのユキ様をお慕いしておりますよ」

 もー!! そんなこと言われたらこれでいいって思っちゃうでしょ! 機嫌も元通りどころかむしろ良いくらいになっちゃうでしょ!!

「んで、ユキは何をしようとしてたんだ?」

「……剣が脆いって気になって見てみたかっただけです」

「ユキ様、この剣が脆いなんて感じるのはアルバスとダグラスくらいですよ。普通の人間が脆いと感じるわけがありません。訓練用にそこそこ強いものを使っているはずですからね」

 ……アルバスさんもダグも怪物なのかな。

「しかし本当に弱いぞこれ。毎回こうも折れてちゃ訓練にならねぇ。かといって訓練で真剣を使うのはなぁ……」

 毎回折れてるの? そりゃ結界も張らされるわけだね。実際僕の結界に当たったし。

「しかしあの軍務の奴め、前に言ったらそんなに言うなら自費でどうにかしろって言いやがったんだよな。訓練用の武具くらい国費でどうにかしろってんだよ」

 うーん、確かに防衛力を高めるのも国の義務だと思うし、それに通ずる訓練用の物を用意するのも国の義務な気がする。

 えーとたしか軍務大臣はランドンさんだよね。ランドンさんはたしか……

「キツネ?」

「「「ぶっ」」」

 あ、何人か吹き出した。ダグとリディアまで肩揺らしてるよ。

「くっくっく……ユキから見ても軍務の奴はキツネか! ユキにまで言われてちゃあ世話ないな!!」

 やっぱりみんな思ってたんだ? 僕は中身がどうなのか知らないけども。

「中身まで胡散くせぇキツネジジイだから覚えとけよ」

「はぁい」

 なんて返したらいいかわからなかったからとりあえずそう返事を返しておいたけど、周りの反応から見るに正解みたい? 肯定が正解って……

「今度近づくことはお勧めできない方々をお教えいたしますね」

「ありがとう?」

 まぁ、あって損はない知識、かな……? 情報通のリディアが言うなら本当に何かしら問題のある人なんだろうしね。でも僕って国政には関わってないから使うかどうかはわからないけどねぇ……ま、教えてもらえるなら教えて貰っておこう。
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