あの人と。

Haru.

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本編

150 甘い

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「さて、と。私はそろそろ戻るとしよう。明日のお昼頃、また様子を見に来るよ」

「神様、そんなにこちらにいて大丈夫なのです?」

 ダグの部屋をくれた時も今日ほど長くいなかったし、そんなに頻繁に来ても大丈夫なのかな?

「続くと問題があるけれど、数回程度なら大丈夫だろう。幸仁とダグラスの部屋は私が作った空間でもあるから私の気も外に漏れにくいしね」

 神様が発する気はそのつもりがなくとも良くも悪くも世界へ影響を与えてしまうんだとか。だからあまりこの世界へ降りるのは良くないんだけど、僕たちの部屋ならそこまで問題はないと……

「ではなぜ前回はそろそろ時間切れだ、と言ってお帰りになったのです?」

「なんとなく、かな。強いて言えばそろそろ幸仁の寝る時間だったからだね」

 え、えぇええ……そっち……僕の都合なの……

「そういう意味では今日もそろそろ時間切れだね。お風呂も入らないといけないだろうし、私はそろそろ帰るとするよ」

 神様はそう言い残すとこっちが何かを言う前にさっさと消えてしまった。神界的なところに帰ったのだろう。相変わらず神様は現れる時も消える時も突然だ。

「……さて、では私たちも戻るとするか。一度色々と整理したいしな……」

 そう言ったロイは疲れ切った顔をしていた。

 ごめんねロイ……毒の騒動あって大変だろうにさらに僕の家族が来たり神様が現れたりでてんやわんやだったからなぁ……ゆっくり整理して下さい。正直僕もまだちょっと混乱してる。

「明日はどうする? 後処理で来れないかな?」

「ふむ……午後から顔を出せたらだそう」

「ん、わかった。ごめんね、忙しくさせちゃって」

「いや、かまわんよ。ユキのせいではないしな。ゆっくりお休み」

「うん、お休みなさい」

 ロイ達は部屋へ戻っていき、部屋にはいつも通りの3人が残った。そうしたらなんだか気が抜けたのがあくびが1つ漏れた。

「おや、急いでお風呂に入りましょうか。マッサージも念入りにしたいところですが本日は手短にいたしましょう」

 うん、今日はじっくりされたら途中で寝そうだからそれでお願いします……

「ではその内に俺も部屋で入ってこよう」

「ん、じゃあまた後でね」

「ああ」

 ダグと一旦別れてリディアとお風呂へ。

 今日も今日とてわしゃわしゃと全身を洗われて気分はさっぱり。お風呂も入れてもらってるって言ったら父さん達びっくりするかなぁ……

「なんだか楽しそうでいらっしゃいますね」

「ふふ、うん。僕ってこっちに来たばっかりの時、1人でお風呂入ってたでしょ? 日本ではそれが普通だからさ、今こうやってリディアに入れてもらっているのを父さん達が知ったらどんな反応するかなぁって思ってたの」

「押し通した自覚はございますが、私は今の状態をやめるつもりはありませんよ」

 自覚あったの……いや、うん。確かに最初は結構ゴリ押しだったよね。最初は恥ずかしくて仕方なかったし。まぁ割とすぐ慣れたけど。

「僕もリディアにお風呂入れてもらうの好きだから今更変えないよ」

「それはよろしゅうございました」

 にっこり笑ったリディアにマッサージも受け、ホカホカと温まった身体で部屋へ戻るとダグはすでに戻って来ていた。まぁ、マッサージの分僕の方が時間かかるしね。

「もう随分と遅いですし、ホットミルクをどうぞ」

「ありがとう」

 いつも寝る時間はとっくに過ぎているからいつものような紅茶ではなく、カフェインの入っていないホットミルクなんだねぇ。ちょっと蜂蜜の入ったホットミルクはとっても美味しいです。

「リディア遅くまでごめんね、もう部屋に戻っても大丈夫だよ?」

「お気になさらずとも大丈夫ですよ。ですがそうですね、ユキ様もすぐお休みになられるでしょうしそろそろ私も下がります。何かあればお気軽にお呼びくださいませ」

「うん、ありがとう」

 リディアが出ていってからグイッとホットミルクを飲み干し、軽く浄化をかけたらそのままカップは置いておき、ダグに抱きつく。

「おっと……どうした?」

「……なんでもない」

 ダグの胸にピトリとつけた耳に響く、とくりとくりと規則的な鼓動。その音が、ダグが生きていることをはっきりと実感させてくれる。

 目の前でダグが倒れた時、どれほどの絶望を感じたことか。神様から加護をもらったはずなのに、ダグを失ってしまうのかと、たまらなく怖かった。

「……心配をかけて悪かった」

「……本当に怖かったんだからね」

「ああ、悪かった。ありがとうな、助けてくれて」

「ん……もうワインは飲まないでね」

 僕もうワインがトラウマで仕方ない。

「……ウイスキーならいいか?」

 ああ、ダグじつはお酒好きだもんなぁ……ちょくちょくウイスキーだとかワインだとか色々と飲んでたし。あれ、誕生日プレゼントお酒でもよかったかも? でもこの世界も成人してないとお酒は買えないし、この世界での見た目年齢12歳な僕には売ってくれなかったか……それに僕も飲んだことないからどれが美味しいのかわからない……まぁいいや、美味しいご飯とケーキを作ってあげよう。

「ワインじゃなかったら……お酒飲んでるダグってすっごくかっこいいし」

「……そうか」

 ダグほどお酒が似合う人っていないんじゃないかって思うくらいかっこいいんだからね! もうほんと惚れ惚れしちゃうかっこよさ。トラウマはワインだからそれ以外の何も問題のないお酒はむしろ飲んでいただきたいです。


「さてユキ、そろそろ寝よう。もうこんな時間だ」

「……キスしてくれなきゃやだ」

 だってさっきできなかったもん。僕ずっとキスしたいの我慢してたんだよ。やっとできるからしてからじゃないと寝たくない。すでにすごく眠いけど。

「……誘っているのか? 大歓迎だが……」

「ち、違う! 明日は父さん達来るからえっちはダメ! キスだけ!」

「……残念だ」

 本当に残念そうなダグ。そ、そんなにえっちしたいの……? だから僕は、

「……明日、なら……」

 そう言ったのだけど……

「言ったな? 俺は忘れないからな」

 ……早まったかもしれない。すっごく野生的なお顔をしていらっしゃいます。僕多分明後日歩けない。

「さあユキ、今日はキスをして寝ような」

「ん……」

 抱き上げられてベッドへ連れて行かれ、ゆっくりと押し倒された。少しドキドキしながらキスを待つとすぐにダグの唇が顔中に降ってきて、最後に口へ優しくキスをされる。

「もっと……」

「ああ」

 優しく絡み合う舌に、ジンと甘い痺れが身体を走る。

 やっぱり僕、ダグとのキス大好き……だってこんなに気持ちいい。僕の口を優しく犯すダグの舌は不思議と甘く感じて、ひたすらに僕を虜にするんだ。いくらしても、もっとしたいと思ってしまう……

 だからこそ、ダグの唇が離れていったときはちょっと不満で。

「ん、もっとしたい……」

 くいくいとシャツを引っ張って強請るもダグはしてくれない。

「これ以上するとユキを抱きたくなる。明日、な?」

 むぅ……それなら仕方ないか……

「ほら、腕枕してやるからもう休め」

「ん……ダグ辛くない? 大丈夫?」

「もう大丈夫だ。心配いらないさ」

 なら遠慮なく……

 もぞもぞとダグの腕の中へ入り込み、すっぽりと僕を包み込む温もりに安心してそのままゆっくりと眠った。

 明日は父さん達に何を弾こうかな……
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