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本編
126 あと一つ
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「ユキ!! 俺の分は?!」
「アル? もちろんあるよ?」
ロイの部屋にいるとアルが突撃して来た。どうやらレイのところへ用があって行ったら既にその部屋にいた三人は招待状を持っていて。
まだ渡していなかったアルは僕はどこだとレイに問い詰めたら、
「まだ母上が貰っていないのならおそらく父上のところへ向かったのでしょう」
と言われたからここへ急いで来たそうだ。
「よかったぁ……俺の分がロイのパートナー扱いでないのかと思った……」
「あはは、ちゃんと用意するよ! ロイの次に行こうと思ってたんだよ」
「そうか。ありがとうな、ユキ」
「アル、中を見せてくれ」
ロイが早く開けろとアルを急かす。中の絵が気になるようだ。オリバーさんもじっとアルの持っている招待状を見ている。
「は? 同じの持ってるだろ? 自分のをみろよ」
「いや、中の絵が違うらしい」
「? そうなのか?」
「うん! 四種類あるよ」
そう言えばアルはすぐに封筒を開き、なかの紙を取り出した。
見えたのは青々とした緑。アルのは夏のようだ。
「おお! 三種類目だ! オリバー、あと一種類だ!」
「ええ、こちらも美しいですね!」
すでに二種類見ていた二人は大盛り上がり。アルはそんな二人にちょっと引いてる。
「おい、盛り上がってないで二人のも見せてくれよ」
「ああ、すまない。これだ」
「私のはこちらです」
「どれも綺麗だな……」
三つを見比べて感心したようにつぶやくアル。
ダグの絵が褒められて嬉しい!! 王族で目も肥えてそうなロイ達から見てもダグの絵は綺麗ってすごくない?
「あと一種類は?」
「内緒! もしかしたらレイとラスが持ってるかも?」
そういえばレイは目の前で開いてたけどなんの絵か見てなかったや。どれだったっけ。
「すぐに呼べ!」
「かしこまりました」
ええ──……お仕事の邪魔じゃないかなぁ……僕が言えることじゃないけども……
「父上、母上、緊急の用とは一体……」
緊急って……
「ユキの招待状を見せろ!」
「は? 構いませんが……」
レイが出した招待状は……秋かぁ。ロイと一緒だね。
「ラス、お前のはどこだ」
「どうぞ。破らないでくださいね」
うん、それは僕も困るかな……
ラスのは……ああ、春だ……
「あと一種類……! あと一種類が足らぬ……!」
「くそ……!」
「なぜ被ってしまったのです……」
打ちひしがれる中年三人にドン引きのレイとラス。見た目年齢が実年齢より下でも、訳もわからず実の親のそんな様子みたら引くよね。
というかそんなに打ちひしがれるほど? そこまで四種類全部見たいのか……
「ユキ、父上達はなぜこうなっているのだ」
「あー……招待状の絵が四種類あるって言ったら全部見たがってね。ロイとアルとオリバーさんで三種類揃ったからあと一種類だけ見れてないんだよ」
「なるほど……ラスと絵が違ったのはそういうことか。是非とも私も全種類見たいものだな」
「かといってあそこまではなりたくないですね、兄上」
「そうだな」
ロイとアルを見る二人の目が冷たすぎて……! やめてあげて!
とりあえずロイ達が正常に戻るまでダグとお茶を飲むことにした。レイとラスは呆れて帰っていった。
でも、僕も冬の招待状は誰に行き渡るのか気になるなぁ。
「ねぇダグ、あとの一種類は誰の手に渡ると思う?」
「ヴォイド様はどうだ?」
「あー、似合うかも」
いつも白いローブ着てるからヴォイド爺=白ってイメージか既にある。だから真っ白な雪が似合うと思うんだよね。
「似合う似合わないの問題なのか」
「なんとなく? だって春か冬をアルバスさんが持ってみて。似合わないよ」
「……似合わないな」
「でしょ?」
アルバスさんは豪快なイメージだから繊細な桜や雪のイメージではない。勝手な想像だけどね。
あ、ロイ達がやっと復活した。随分時間がかかったなぁ。そんなに四種類見たい? 当日に招待状持ってる人が集まるんだからその時に見せて貰えばいいのにね。
「ふぅ……ユキ、ユキの故郷では新婦は父親と歩くというのは本当か?」
「ああ、うん。そうだよ」
結婚式で歩く通路のことをバージンロードということ。バージンロードは新婦のこれまでの人生を表すこと。バージンロードを歩く前に母親にヴェールを下ろしてもらうのが生まれる前の状態に戻ることを意味すること。父親から新郎へ新婦の手を渡すことで、これからは息子をお願いしますという意味になること。などなど請われるまま話した。
え? なんで男の僕が結婚式についてこんなに知識があるか? 母さんがそういうの大好きで自分の結婚式はどうだったとか、娘がいたらこんな結婚式をやりたかっただとか色々話してたんだよ。何回も聞かされるものだから覚えちゃった。
「よし、取り入れよう」
「俺もやりたい」
「僕はいいけど……」
ちらりとダグを見たら微笑んで頷いてくれた。OKってことだね。
「でもいきなりやり方変えても大丈夫なの?」
「なぁに、問題ないさ。万が一何か言うような者が出てきたとしても、神子の故郷の文化だと言えば大丈夫だろう」
うん。確かにそれなら大丈夫そうだ。
「なら、いいか、な?」
「うむ。決まりだな」
僕はバージンロードをロイと歩くことが決定しました。ヴェールを下ろすのはアル。二人はものすごくノリノリです。
もうバージンじゃないだとかそもそも女の子じゃないとかは突っ込まない。そもそもバージンロードの正式名称ってウェディングアイルだしきっと問題ないさ。
むむ、そういえばいつまでリディア禁止令続くんだろう。もう一週間たったよ。まさか結婚式までとか言わない、よね……? 一ヶ月以上お預けとか……
ちらりとダグを見たらズクリと腰に痺れが……だめだめ! こんなこと考えたらだめ!!
ぶんぶんと頭を振って邪念を飛ばしていると、心配げな視線が集まる。
「大丈夫か?」
「大丈夫です!」
……挙動不審? わかってます。ごめんなさい。
微妙な視線が集まって気まずい時はこうしましょう。
「……ロイ達お仕事は?」
無理やり話を変えるのです。ちなみに今回はロイ達に仕事に戻らせて僕は退散しようと言う打算も含んでます。
「む……そうだな。仕方ない、仕事に戻るか……」
「そうだな……」
「頑張れ! 僕達も部屋に戻るね」
ダグを引っ張ってロイ達に引き止められる前にさっさと部屋を出る。お仕事の邪魔をしたくないだけで、決して無理やり話を変えたことを突かれたくなかったわけじゃないよ。断じて。
「……ユキ」
「なんでしょう」
「まさか欲求ふま「違う!! 違うから!!!」
なんでバレてるのさ! 鋭すぎるでしょ!!
「リディア」
「まだいけません」
「頼む」
「……だめです」
「ユキの望みでもか」
「く……いけま、せん……!」
本人の前でそんな会話しないで……!! そして僕の望みなんて言うんじゃない! の、望んでなんてないし……!
「なぁ、一度だけ」
「……本当に一度だけですよ」
「ああ、もちろんだ」
……結局一回だけはお許しが出たそうです。僕はもう瀕死です。
今夜、するのかなぁ……
「アル? もちろんあるよ?」
ロイの部屋にいるとアルが突撃して来た。どうやらレイのところへ用があって行ったら既にその部屋にいた三人は招待状を持っていて。
まだ渡していなかったアルは僕はどこだとレイに問い詰めたら、
「まだ母上が貰っていないのならおそらく父上のところへ向かったのでしょう」
と言われたからここへ急いで来たそうだ。
「よかったぁ……俺の分がロイのパートナー扱いでないのかと思った……」
「あはは、ちゃんと用意するよ! ロイの次に行こうと思ってたんだよ」
「そうか。ありがとうな、ユキ」
「アル、中を見せてくれ」
ロイが早く開けろとアルを急かす。中の絵が気になるようだ。オリバーさんもじっとアルの持っている招待状を見ている。
「は? 同じの持ってるだろ? 自分のをみろよ」
「いや、中の絵が違うらしい」
「? そうなのか?」
「うん! 四種類あるよ」
そう言えばアルはすぐに封筒を開き、なかの紙を取り出した。
見えたのは青々とした緑。アルのは夏のようだ。
「おお! 三種類目だ! オリバー、あと一種類だ!」
「ええ、こちらも美しいですね!」
すでに二種類見ていた二人は大盛り上がり。アルはそんな二人にちょっと引いてる。
「おい、盛り上がってないで二人のも見せてくれよ」
「ああ、すまない。これだ」
「私のはこちらです」
「どれも綺麗だな……」
三つを見比べて感心したようにつぶやくアル。
ダグの絵が褒められて嬉しい!! 王族で目も肥えてそうなロイ達から見てもダグの絵は綺麗ってすごくない?
「あと一種類は?」
「内緒! もしかしたらレイとラスが持ってるかも?」
そういえばレイは目の前で開いてたけどなんの絵か見てなかったや。どれだったっけ。
「すぐに呼べ!」
「かしこまりました」
ええ──……お仕事の邪魔じゃないかなぁ……僕が言えることじゃないけども……
「父上、母上、緊急の用とは一体……」
緊急って……
「ユキの招待状を見せろ!」
「は? 構いませんが……」
レイが出した招待状は……秋かぁ。ロイと一緒だね。
「ラス、お前のはどこだ」
「どうぞ。破らないでくださいね」
うん、それは僕も困るかな……
ラスのは……ああ、春だ……
「あと一種類……! あと一種類が足らぬ……!」
「くそ……!」
「なぜ被ってしまったのです……」
打ちひしがれる中年三人にドン引きのレイとラス。見た目年齢が実年齢より下でも、訳もわからず実の親のそんな様子みたら引くよね。
というかそんなに打ちひしがれるほど? そこまで四種類全部見たいのか……
「ユキ、父上達はなぜこうなっているのだ」
「あー……招待状の絵が四種類あるって言ったら全部見たがってね。ロイとアルとオリバーさんで三種類揃ったからあと一種類だけ見れてないんだよ」
「なるほど……ラスと絵が違ったのはそういうことか。是非とも私も全種類見たいものだな」
「かといってあそこまではなりたくないですね、兄上」
「そうだな」
ロイとアルを見る二人の目が冷たすぎて……! やめてあげて!
とりあえずロイ達が正常に戻るまでダグとお茶を飲むことにした。レイとラスは呆れて帰っていった。
でも、僕も冬の招待状は誰に行き渡るのか気になるなぁ。
「ねぇダグ、あとの一種類は誰の手に渡ると思う?」
「ヴォイド様はどうだ?」
「あー、似合うかも」
いつも白いローブ着てるからヴォイド爺=白ってイメージか既にある。だから真っ白な雪が似合うと思うんだよね。
「似合う似合わないの問題なのか」
「なんとなく? だって春か冬をアルバスさんが持ってみて。似合わないよ」
「……似合わないな」
「でしょ?」
アルバスさんは豪快なイメージだから繊細な桜や雪のイメージではない。勝手な想像だけどね。
あ、ロイ達がやっと復活した。随分時間がかかったなぁ。そんなに四種類見たい? 当日に招待状持ってる人が集まるんだからその時に見せて貰えばいいのにね。
「ふぅ……ユキ、ユキの故郷では新婦は父親と歩くというのは本当か?」
「ああ、うん。そうだよ」
結婚式で歩く通路のことをバージンロードということ。バージンロードは新婦のこれまでの人生を表すこと。バージンロードを歩く前に母親にヴェールを下ろしてもらうのが生まれる前の状態に戻ることを意味すること。父親から新郎へ新婦の手を渡すことで、これからは息子をお願いしますという意味になること。などなど請われるまま話した。
え? なんで男の僕が結婚式についてこんなに知識があるか? 母さんがそういうの大好きで自分の結婚式はどうだったとか、娘がいたらこんな結婚式をやりたかっただとか色々話してたんだよ。何回も聞かされるものだから覚えちゃった。
「よし、取り入れよう」
「俺もやりたい」
「僕はいいけど……」
ちらりとダグを見たら微笑んで頷いてくれた。OKってことだね。
「でもいきなりやり方変えても大丈夫なの?」
「なぁに、問題ないさ。万が一何か言うような者が出てきたとしても、神子の故郷の文化だと言えば大丈夫だろう」
うん。確かにそれなら大丈夫そうだ。
「なら、いいか、な?」
「うむ。決まりだな」
僕はバージンロードをロイと歩くことが決定しました。ヴェールを下ろすのはアル。二人はものすごくノリノリです。
もうバージンじゃないだとかそもそも女の子じゃないとかは突っ込まない。そもそもバージンロードの正式名称ってウェディングアイルだしきっと問題ないさ。
むむ、そういえばいつまでリディア禁止令続くんだろう。もう一週間たったよ。まさか結婚式までとか言わない、よね……? 一ヶ月以上お預けとか……
ちらりとダグを見たらズクリと腰に痺れが……だめだめ! こんなこと考えたらだめ!!
ぶんぶんと頭を振って邪念を飛ばしていると、心配げな視線が集まる。
「大丈夫か?」
「大丈夫です!」
……挙動不審? わかってます。ごめんなさい。
微妙な視線が集まって気まずい時はこうしましょう。
「……ロイ達お仕事は?」
無理やり話を変えるのです。ちなみに今回はロイ達に仕事に戻らせて僕は退散しようと言う打算も含んでます。
「む……そうだな。仕方ない、仕事に戻るか……」
「そうだな……」
「頑張れ! 僕達も部屋に戻るね」
ダグを引っ張ってロイ達に引き止められる前にさっさと部屋を出る。お仕事の邪魔をしたくないだけで、決して無理やり話を変えたことを突かれたくなかったわけじゃないよ。断じて。
「……ユキ」
「なんでしょう」
「まさか欲求ふま「違う!! 違うから!!!」
なんでバレてるのさ! 鋭すぎるでしょ!!
「リディア」
「まだいけません」
「頼む」
「……だめです」
「ユキの望みでもか」
「く……いけま、せん……!」
本人の前でそんな会話しないで……!! そして僕の望みなんて言うんじゃない! の、望んでなんてないし……!
「なぁ、一度だけ」
「……本当に一度だけですよ」
「ああ、もちろんだ」
……結局一回だけはお許しが出たそうです。僕はもう瀕死です。
今夜、するのかなぁ……
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