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本編
118 ごめんよ……
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「すまん、待たせたな」
少し待ってたらロイ達が到着した。その途端にダグも含めてアーノルドさん達が一斉に立ち上がってロイ達に礼をしまして。乗り遅れた僕はかなり挙動不審。
えっと……僕、立った方がいい、か、な……? ちらりとリディアを見たらにっこり微笑んで軽く首を横に振られた。
僕は立たなくていいの? そうなの? じゃあ大人しく座ってます。
「ご機嫌麗しゅう、両陛下並びに王子殿下方。この度はこのような場を設けてくださり感謝申し上げます」
「よい、面を上げよ。お主にそうかしこまられては寒気がする」
「はぁ……まったく、こちらも家臣としての義務があるのだからそれを理解してくれ」
アーノルドさんの口調がいきなり砕けた。もしかしてロイと仲良い?
「今はプライベートな場だしいいじゃないか。じきに義理とはいえ家族となるのだしな」
「それもそうか。いや、まさかお前とこうなるとはな」
「私とて思わなんださ。だが、悪くない」
「そうだな、悪くない」
そう言ってニヤリと笑い合ったロイとアーノルドさんは良き友! って感じなんだけども……なにかやらかしてそうだな、この2人。
「ロイ、今はその辺にして昼食にしよう。ユキがお腹を空かせてしまう」
「ん? ああ、そうだな。病み上がりのユキにはしっかりと栄養をつけてもらわねばならぬからな。食事にしよう」
昨日栄養剤も打ってもらったしそこまで栄養足りてないような事態にはなってないのですが……いや、うん。何言っても無駄だろうから何も言わないよ。
全員がそれぞれ座り、お昼はスタート。
リディアが僕の前にお皿を置いてくれたのだけれど。ふと周りを見たら量は違えど同じメニュー。みんなはそれぞれの侍従やその他の使用人が給仕している。
……これ、まとめて作られたものだよ、ね。誰が用意したのかな……
「大丈夫ですユキ様。私がご用意しましたから安心してお召し上がりください」
フォークを持ったまま少し固まっていた僕にこっそりとリディアが耳打ちしてくれた。
作っているのはもちろんリディアではないだろうけれど、リディアが安全性をしっかりと確認した上で管理してくれた食べ物や飲み物は無条件で安心できる。
それがたとえばまったく知らない人が用意したものを無理に食べようとすれば、多分僕は吐くと思う。想像しただけであのパスタを食べた時の違和感が蘇る。あの感覚が毒によるものだとわかってからはその感覚が恐怖でしかない。
リディアが用意してくれたものだということで安心した僕は漸く美味しそうな料理へ手をつけられた。
全員が食べ終わればみんなでお茶用のテーブルセットへ移動。いつもより人数多いからテーブルも少し大きい。
「ユキはこっちだな」
「いや、ユキちゃんはうちの嫁だ。こっちに座ろうな、ユキちゃん」
……大きな長方形のテーブルの周りには3~4人は余裕で座れる大きなソファと、2人くらい座れる服ソファが並べられてるんだけどさ、ロイとアーノルドさんが僕をどこに座らせるかで言い争い出した。
「……ダグ、あっち」
「ん? こっちか?」
「うん。ここ、座って」
「ん」
「ロイ、アーノルドさん、僕はここで」
ここ、というのは2人掛けのソファに座ったダグの膝の上。
「ユキ……そうか、それが一番争いは起きぬか……」
「そうだな……」
少し残念そうにしつつ、ロイとアル、アーノルドさん達がそれぞれ大きいソファ、レイとラスがもう1つの2人がけソファに落ち着いた。
「ところでユキ、具合はどうなんだ?」
「もう微熱も何もないよ。むしろ気分的にはいつもより元気」
「……ダグラス、ユキが動き回らぬよう抑えておくように」
「もちろんです」
解せぬ。
「もう元気なのに……」
「今のユキに動くことを許したらいつも以上にはしゃいでまた熱を出しそうだ」
「そんなこと……」
……あるかもしれない。いつもならしないようなはしゃぎ方をして疲れ果ててまた熱を出す、なんて流れがないとは言い切れない……!
「ほら、ないとは言えないだろう?」
「むぅ……じゃあいいよ、歩く許可が出るまでダグといちゃいちゃするもん」
歩いちゃダメならその分ダグにひっつきまーす。
「いちゃっ……仲が良いのは良きことだが……それは据え膳というやつではないか?」
据え膳食わぬは男の恥ってことでそのたびに襲われやしないかって?
「リディア禁止令出たから大丈夫!」
リディアは怖いのでダグも頑張って抑えると思うのです! だからそう襲われることはないはず!
それはそれでなんだか物足りないなんて思ってないんだからな……!
「リディア禁止令? ……それが出た経緯を聞こうか」
あっ……ごめんダグ……
一気に雰囲気が変わったロイ、アル、アーノルドさん、キリノさんにまずい予感を察知。ダグもちょっと固くなった。ごめんよ……
ちなみにレイとラスは案の定ニヤニヤ。マリオンさんはあーあって表情。
「ほぉう? ではユキが熱を出したのはダグラスのせい、と?」
「聞き捨てならんなぁ……」
「ダグラス、お前ユキちゃんになんてことを……」
「ユキちゃんが可哀想……」
一昨日の夜のことを吐かされまして。途端に4人はダグへ一斉放火。
「申し訳ありません……」
「ダグ謝んないでいいから!」
「しかしな、ユキ……」
「僕はダグに怒ってないし、昨日既に謝ってくれたからもういいんだよ」
蒸し返したらまたダグがしゅんってなる! ……いや、まぁしゅんとしたダグは子犬っぽくて可愛いんだけども。そうじゃなくて大好きな人には笑っていてほしいじゃん!
「だがユキ、ユキは抵抗しようにもダグラス相手では逃げようがないだろう? 無理矢理押し込められたのではないのか?」
たしかに力では負けるけども。それこそ成人男性と幼児以上に差がありますけども。
「僕かけようと思ったらダグに拘束とかかけれるもん。本当に嫌だったら睡眠でも麻痺でもなんでもかけて逃げるよ」
……まぁよっぽどがない限り逃げないけどね。逃げずに何か方法ないか模索するし。
「しかしユキを大切にせぬ婿など……」
「えっやだやだやだ僕ダグと結婚するからね!!」
結婚反対の流れはやめてください!!!
必死にダグにしがみついてブンブンと首を振る。
「わかった、わかったから落ち着きなさい……今更結婚に反対はせぬよ。反対などしたらユキはダグラスと2人で旅に出るとでも言い出しそうだ……」
……それはいいかもしれない。ダグと二人旅。
……ん? 結婚認めてくれないなら出て行く、って駆け落ち? 駆け落ちかぁ、ちょっとやってみたい、かも? 危ないし迷惑かけるからしないけども。
「言っておくが2人だけでの旅は流石に安全面から許可できぬぞ」
「わ、わかってるよ!」
ちょっといいなって思っただけだもん!
少し待ってたらロイ達が到着した。その途端にダグも含めてアーノルドさん達が一斉に立ち上がってロイ達に礼をしまして。乗り遅れた僕はかなり挙動不審。
えっと……僕、立った方がいい、か、な……? ちらりとリディアを見たらにっこり微笑んで軽く首を横に振られた。
僕は立たなくていいの? そうなの? じゃあ大人しく座ってます。
「ご機嫌麗しゅう、両陛下並びに王子殿下方。この度はこのような場を設けてくださり感謝申し上げます」
「よい、面を上げよ。お主にそうかしこまられては寒気がする」
「はぁ……まったく、こちらも家臣としての義務があるのだからそれを理解してくれ」
アーノルドさんの口調がいきなり砕けた。もしかしてロイと仲良い?
「今はプライベートな場だしいいじゃないか。じきに義理とはいえ家族となるのだしな」
「それもそうか。いや、まさかお前とこうなるとはな」
「私とて思わなんださ。だが、悪くない」
「そうだな、悪くない」
そう言ってニヤリと笑い合ったロイとアーノルドさんは良き友! って感じなんだけども……なにかやらかしてそうだな、この2人。
「ロイ、今はその辺にして昼食にしよう。ユキがお腹を空かせてしまう」
「ん? ああ、そうだな。病み上がりのユキにはしっかりと栄養をつけてもらわねばならぬからな。食事にしよう」
昨日栄養剤も打ってもらったしそこまで栄養足りてないような事態にはなってないのですが……いや、うん。何言っても無駄だろうから何も言わないよ。
全員がそれぞれ座り、お昼はスタート。
リディアが僕の前にお皿を置いてくれたのだけれど。ふと周りを見たら量は違えど同じメニュー。みんなはそれぞれの侍従やその他の使用人が給仕している。
……これ、まとめて作られたものだよ、ね。誰が用意したのかな……
「大丈夫ですユキ様。私がご用意しましたから安心してお召し上がりください」
フォークを持ったまま少し固まっていた僕にこっそりとリディアが耳打ちしてくれた。
作っているのはもちろんリディアではないだろうけれど、リディアが安全性をしっかりと確認した上で管理してくれた食べ物や飲み物は無条件で安心できる。
それがたとえばまったく知らない人が用意したものを無理に食べようとすれば、多分僕は吐くと思う。想像しただけであのパスタを食べた時の違和感が蘇る。あの感覚が毒によるものだとわかってからはその感覚が恐怖でしかない。
リディアが用意してくれたものだということで安心した僕は漸く美味しそうな料理へ手をつけられた。
全員が食べ終わればみんなでお茶用のテーブルセットへ移動。いつもより人数多いからテーブルも少し大きい。
「ユキはこっちだな」
「いや、ユキちゃんはうちの嫁だ。こっちに座ろうな、ユキちゃん」
……大きな長方形のテーブルの周りには3~4人は余裕で座れる大きなソファと、2人くらい座れる服ソファが並べられてるんだけどさ、ロイとアーノルドさんが僕をどこに座らせるかで言い争い出した。
「……ダグ、あっち」
「ん? こっちか?」
「うん。ここ、座って」
「ん」
「ロイ、アーノルドさん、僕はここで」
ここ、というのは2人掛けのソファに座ったダグの膝の上。
「ユキ……そうか、それが一番争いは起きぬか……」
「そうだな……」
少し残念そうにしつつ、ロイとアル、アーノルドさん達がそれぞれ大きいソファ、レイとラスがもう1つの2人がけソファに落ち着いた。
「ところでユキ、具合はどうなんだ?」
「もう微熱も何もないよ。むしろ気分的にはいつもより元気」
「……ダグラス、ユキが動き回らぬよう抑えておくように」
「もちろんです」
解せぬ。
「もう元気なのに……」
「今のユキに動くことを許したらいつも以上にはしゃいでまた熱を出しそうだ」
「そんなこと……」
……あるかもしれない。いつもならしないようなはしゃぎ方をして疲れ果ててまた熱を出す、なんて流れがないとは言い切れない……!
「ほら、ないとは言えないだろう?」
「むぅ……じゃあいいよ、歩く許可が出るまでダグといちゃいちゃするもん」
歩いちゃダメならその分ダグにひっつきまーす。
「いちゃっ……仲が良いのは良きことだが……それは据え膳というやつではないか?」
据え膳食わぬは男の恥ってことでそのたびに襲われやしないかって?
「リディア禁止令出たから大丈夫!」
リディアは怖いのでダグも頑張って抑えると思うのです! だからそう襲われることはないはず!
それはそれでなんだか物足りないなんて思ってないんだからな……!
「リディア禁止令? ……それが出た経緯を聞こうか」
あっ……ごめんダグ……
一気に雰囲気が変わったロイ、アル、アーノルドさん、キリノさんにまずい予感を察知。ダグもちょっと固くなった。ごめんよ……
ちなみにレイとラスは案の定ニヤニヤ。マリオンさんはあーあって表情。
「ほぉう? ではユキが熱を出したのはダグラスのせい、と?」
「聞き捨てならんなぁ……」
「ダグラス、お前ユキちゃんになんてことを……」
「ユキちゃんが可哀想……」
一昨日の夜のことを吐かされまして。途端に4人はダグへ一斉放火。
「申し訳ありません……」
「ダグ謝んないでいいから!」
「しかしな、ユキ……」
「僕はダグに怒ってないし、昨日既に謝ってくれたからもういいんだよ」
蒸し返したらまたダグがしゅんってなる! ……いや、まぁしゅんとしたダグは子犬っぽくて可愛いんだけども。そうじゃなくて大好きな人には笑っていてほしいじゃん!
「だがユキ、ユキは抵抗しようにもダグラス相手では逃げようがないだろう? 無理矢理押し込められたのではないのか?」
たしかに力では負けるけども。それこそ成人男性と幼児以上に差がありますけども。
「僕かけようと思ったらダグに拘束とかかけれるもん。本当に嫌だったら睡眠でも麻痺でもなんでもかけて逃げるよ」
……まぁよっぽどがない限り逃げないけどね。逃げずに何か方法ないか模索するし。
「しかしユキを大切にせぬ婿など……」
「えっやだやだやだ僕ダグと結婚するからね!!」
結婚反対の流れはやめてください!!!
必死にダグにしがみついてブンブンと首を振る。
「わかった、わかったから落ち着きなさい……今更結婚に反対はせぬよ。反対などしたらユキはダグラスと2人で旅に出るとでも言い出しそうだ……」
……それはいいかもしれない。ダグと二人旅。
……ん? 結婚認めてくれないなら出て行く、って駆け落ち? 駆け落ちかぁ、ちょっとやってみたい、かも? 危ないし迷惑かけるからしないけども。
「言っておくが2人だけでの旅は流石に安全面から許可できぬぞ」
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ちょっといいなって思っただけだもん!
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