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本編
102 全貌
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お風呂から上がり、リディアが用意してくれていた服を着る。別にさっき脱いだ服そのままでもよかったんだけどせっかく用意してくれたから着よう。
……待って、リディアこの服一体いつ持って来たの。……聞かれて、ない、よ、ね……?
聞かれてないことを願いつつ、でもまぁ今更かなんて思いながら部屋へ戻ると、見覚えのある随分と大きな人が。
「おっ、出て来たか! いやぁ、随分と時間がかかっていたがなぁにしてたんだかねぇ?」
「アルバスさん?」
ニヤニヤした顔はスルーしておこう。いつものことだ。
それよりなんでアルバスさんがここにいるのだろう。
「ユキ様、ダグラス、お飲み物をどうぞ」
「ありがとう」
とりあえずアルバスさんの向かいに座るとリディアが冷たいグラスを渡してくれたからそのまま飲む。うん、レモン水美味しい。
「……団長、用件はなんです」
少し固い表情でそう問いかけたダグに、アルバスさんの笑みはすっと消える。
「……予想はついてんだろう」
「……全部わかったんですね」
「そういうこったな」
……つまりは毒の混入について全てがわかったということ。首謀者から実行者に加えて入手経路まで。動機もなにもかも全てがわかったということだ。
日本の科学捜査に比べて随分と速い気がする。まだ丸一日経ってないよ。こんなに速く事件解決なんて……魔法とかでわかるのもあるのかな。
「ユキはどうしたい。俺は説明が欲しいならば説明し、聞きたくないならそのまま帰るつもりで来た。聞くか、それともやめておくか、どうする?」
「聞きたい、です。なぜ僕が狙われたのか……」
いつもの楽しげな笑みを消し、真剣な表情を浮かべるアルバスさんの目をじっと見つめ、答える。
「……わかった。ならば説明しよう。途中で嫌になったら言っていいからな」
「はい」
「まずは首謀者だな……首謀者はクレイン侯爵。この名前に聞き覚えはあるか?」
「……舞踏会でラギアスを貶めるようなことを言ったから僕が騎士に命じて追い出した人ですね」
一瞬誰だったか忘れていたけど、思い出した。最後まで騒いでいた人だ。あの後どうなったか僕は知らなかったけど、あの人がまさか今回の首謀者だとは……
「そうだ。そいつが今回、実行者である神官を脅してやらせた。家族を人質に取られどうしようもなかったと。本人は罪を認め、どんな処罰も受け入れると言っている」
「……人質にされたご家族はどうなりましたか」
「無事だ。ちゃんと騎士団で保護した」
「神官はどうなります」
「罪人が脅されていた場合の罪は大分軽くなる。今回の件は前の竜人の第3王子の事件のように公表はされないはずだからな。重くてクビ、ってとこだ。ま、クビになっても毒を盛った事実を知られることはないから再就職だってできるだろうしそこまで酷いもんでもないさ」
「公表されないんですか?」
公表されるものだと思ってた。でもそうか、公表したらしたで問題が起きそうだな……首謀者の侯爵はまだしもご家族を人質に取られていた神官が責められるのはいただけない。
「ああ。あとで説明するが侯爵には違う罪があったんでな。そっちで十分罰せられるんだ。だから脅されていた神官に批判がいかないようにも公表はやめておくことになった。それでも構わんか?」
「もちろんです」
それで神官の未来が少しでも明るくなるなら本望だ。
「んでもって次が動機だな。簡単に言えば恨み、だな」
「恨み、ですか……」
舞踏会で追い出したことがそこまで根に持たれていたのか……?
「舞踏会で追い出しただろう? あれで周りの貴族はクレイン侯爵はユキから嫌われたと判断した。お陰で周りの貴族からもクレイン侯爵は嫌われて取引もままならず、このままでは存続の危機になるのでは、とまでなっていたらしい」
僕のあの時の行動が一家の危機を招いた……? 元を辿れば僕が悪い……?
「ユキ、勘違いするな。ユキは悪くないからな。あの貴族が獣人を貶めすようなことを言ったのが悪いんだ。ユキはもともとそれを禁止していたのだから、あの場でそんな行動をとったクレイン侯爵が悪い。そもそも法律でだって獣人の権利は保証されているのだしな」
「……うん」
僕の感情を読んだダグが肩を抱いて僕は悪くないと言ってくれたけれど、納得はしきれない。
「そうだぞ、ユキ。正直今回の件はクレイン侯爵の断罪のいい機会だったんだ。ユキは何も気に病まなくていいからな」
「そうですか……」
でも僕が恨まれるようなことをしなかったら少なくとも神官は巻き込まれることはなかった。リスクなしに獣人を解放するのは無理なのだろうか……?
「つまりは逆恨みってとこだ。自分の現状がユキのせいだと思い込んだ侯爵は獣人の解放を望むユキさえいなくなれば、と考えたわけだ。ま、その前からあの家の経営は大分危なかったがな」
「動機はわかりましたがそこから神官への繋がりは……?」
「あの神官は侯爵の分家のさらに分家の三男らしい。他家に手出ししてたらまだしも分家とのやりとりだったもんでいまいち情報が掴めてなかったわけだ。すまんな、未然に防げなくて」
「いえ、それは大丈夫です」
おきてしまったことは仕方ないし、何百とある貴族全てを常に監視するのは難しいだろう。それが分家とのやりとりで違和感がなかったのならばなおのこと騎士や神官を責める要因は見当たらない。
「脅された神官は仕方なくユキへ毒を盛る機会を伺い、ついに昨日決行したわけだ」
「あの神官は一度もきたことがなかった方だったんですが……いつもなら大体同じ人のはずなのに」
「そこが問題だ。実はリディアはちゃんといつもの神官に行くよう言っていたらしい。だがそいつが急に熱を出しちまって、慌ててもう1人のやつに頼もうと思えばそいつは運悪く里帰り中。さてどうするかとなった時に今回の神官が手を挙げて、そいつが見知った神官だったから大丈夫だろうと思って頼んだってわけだな」
つまりは偶然が重なってしまって今回に繋がったってことか……誰が悪いわけでもないなぁ。
「実行者に頼んだ神官はまぁ……減俸くらいが妥当だな」
「え、罰があるのです?」
「そりゃあな。少なからず原因になっちまってるからな。ま、数カ月程度だろうし気にしなさんな」
「……はい」
そう決められているのなら仕方ないけれど……なんかなぁ……
「んでもってトピティアの入手経路か? それについては侯爵が自分の領地で原料となる植物を栽培してやがった。バレねぇように持ってる森の中に小さな畑作ってな。んでもってそれをこっそりトピティアに加工して売りさばいてたってわけだ。そこが侯爵の断罪に値する罪になる。だから今回のことはなかったことになってたまたま騎士団がクレイン侯爵がトピティアを製造している証拠を見つけたために断罪したってことにする」
なるほど。オリバーさんはトピティアは持ってるだけで処罰の対象になると言っていた。入手経路について他国の関与の線は消えたけれどまさか栽培していたとは……でも売りさばいてたってことはそこで他国が絡んでる可能性が高いのか。
「侯爵家は取り潰し、首謀者の当主及び分家も含め関与した者は全て処刑。関与のみられた分家は良くて降格、悪くて取り潰しだな」
「処刑、ですか……」
「今回のことがなくてもいずれそうなっていたさ。トピティアは所持するだけで処刑と法で規定されているからな」
「そうなんですね……暗殺に使われるだけあってトピティアはやはり危険なんですね」
「そうだ。トピティアはほんの小さな小瓶一本で殺せるほどの劇毒だ。それに、無味無臭な上に無色透明なもんだからバレることはほぼない」
アルバスさんが示した大きさは随分と小さい。たったそれだけで殺せるのならば怖い毒だけれど……
「無味……?」
おかしい。僕はパスタを食べた時、へんな味を感じたはずだ。だから口がとまったんだし、それでダグが異変を察知して毒が入ってることがわかったんだから。
「そこだ。無味のはずの毒にも関わらずユキはなぜか味に異変を感じた。どんな風に感じた?」
「どんな……」
そう言われて説明しようとしたが、形容ができなかった。酸っぱいわけでも苦いわけでもなかった。ただ変だと感じた。それだけだった。
「……わからないです。ただ変だった、としか……」
「ふむ……神子の力なのかもな。状態異常無効ではあるが身体に毒をいれないための加護のようなものなのかもしれんな」
「なるほど……」
たしかにそれ以外に説明がつかない。おそらく神様がそんな力もつけてくれていたのだろう。効かないとはいえ毒を身体の中に入れずに済んだから神様には感謝をしておかなくちゃ。
「今んとこはこれぐらい、か? 他に聞きたいことはねぇか?」
「……ないです。今のところは」
「そうか。ま、なんか聞きたいことがあったらまたいつでも聞いてくれや。聞いてて気持ちのいい話ではなかっただろう? ほら、ダグラスといちゃいちゃでもして癒されな」
「いちゃっ……! 説明してくださってありがとうございました。昨日も、ダグの代わりに調査にまわってくださって……」
昨日アルバスさんがダグの代わりを引き受けてくれたから僕はダグと一緒にいれたんだからものすごく感謝してる。昨日はダグがいないと不安で仕方なかったからね……
「気にしなさんな。やりたくてやったことだ。おっちゃんもユキちゃんが大事だからな」
そう言ってぐしゃぐしゃと僕の頭を撫でたアルバスさんはいつもの僕が知ってる面白いことが大好きなアルバスさんだった。
「ありがとうございます。おっちゃんに感謝しつつダグで癒されます」
「おう、そうしなそうしな。ユキに今必要なのは安らぎだろうからよ。うんと甘やかしてもらえ」
「いつも甘やかされてますけどね」
ダグにもリディアにも。僕の周りは僕を甘やかす人ばかりだから。
「もっと、だな。んじゃ俺は仕事に戻るわ。ダグラス、またなんかあったら呼べや」
「はい、ありがとうございます」
「お仕事頑張ってくださいね」
「おうよ、ユキはゆっくり休みな」
最後にもう一度僕を撫でてからアルバスさんは部屋を出て行った。この後も色々とまだ処理すべきことが残っているんだろう。
それなのにわざわざ僕への説明の時間を取ってくれて……本当にありがたい。本来ダグの仕事だったことも引き受けてくれてアルバスさんには感謝しかない。
アルバスさんにはいつかまたお礼をしなくちゃね。
……待って、リディアこの服一体いつ持って来たの。……聞かれて、ない、よ、ね……?
聞かれてないことを願いつつ、でもまぁ今更かなんて思いながら部屋へ戻ると、見覚えのある随分と大きな人が。
「おっ、出て来たか! いやぁ、随分と時間がかかっていたがなぁにしてたんだかねぇ?」
「アルバスさん?」
ニヤニヤした顔はスルーしておこう。いつものことだ。
それよりなんでアルバスさんがここにいるのだろう。
「ユキ様、ダグラス、お飲み物をどうぞ」
「ありがとう」
とりあえずアルバスさんの向かいに座るとリディアが冷たいグラスを渡してくれたからそのまま飲む。うん、レモン水美味しい。
「……団長、用件はなんです」
少し固い表情でそう問いかけたダグに、アルバスさんの笑みはすっと消える。
「……予想はついてんだろう」
「……全部わかったんですね」
「そういうこったな」
……つまりは毒の混入について全てがわかったということ。首謀者から実行者に加えて入手経路まで。動機もなにもかも全てがわかったということだ。
日本の科学捜査に比べて随分と速い気がする。まだ丸一日経ってないよ。こんなに速く事件解決なんて……魔法とかでわかるのもあるのかな。
「ユキはどうしたい。俺は説明が欲しいならば説明し、聞きたくないならそのまま帰るつもりで来た。聞くか、それともやめておくか、どうする?」
「聞きたい、です。なぜ僕が狙われたのか……」
いつもの楽しげな笑みを消し、真剣な表情を浮かべるアルバスさんの目をじっと見つめ、答える。
「……わかった。ならば説明しよう。途中で嫌になったら言っていいからな」
「はい」
「まずは首謀者だな……首謀者はクレイン侯爵。この名前に聞き覚えはあるか?」
「……舞踏会でラギアスを貶めるようなことを言ったから僕が騎士に命じて追い出した人ですね」
一瞬誰だったか忘れていたけど、思い出した。最後まで騒いでいた人だ。あの後どうなったか僕は知らなかったけど、あの人がまさか今回の首謀者だとは……
「そうだ。そいつが今回、実行者である神官を脅してやらせた。家族を人質に取られどうしようもなかったと。本人は罪を認め、どんな処罰も受け入れると言っている」
「……人質にされたご家族はどうなりましたか」
「無事だ。ちゃんと騎士団で保護した」
「神官はどうなります」
「罪人が脅されていた場合の罪は大分軽くなる。今回の件は前の竜人の第3王子の事件のように公表はされないはずだからな。重くてクビ、ってとこだ。ま、クビになっても毒を盛った事実を知られることはないから再就職だってできるだろうしそこまで酷いもんでもないさ」
「公表されないんですか?」
公表されるものだと思ってた。でもそうか、公表したらしたで問題が起きそうだな……首謀者の侯爵はまだしもご家族を人質に取られていた神官が責められるのはいただけない。
「ああ。あとで説明するが侯爵には違う罪があったんでな。そっちで十分罰せられるんだ。だから脅されていた神官に批判がいかないようにも公表はやめておくことになった。それでも構わんか?」
「もちろんです」
それで神官の未来が少しでも明るくなるなら本望だ。
「んでもって次が動機だな。簡単に言えば恨み、だな」
「恨み、ですか……」
舞踏会で追い出したことがそこまで根に持たれていたのか……?
「舞踏会で追い出しただろう? あれで周りの貴族はクレイン侯爵はユキから嫌われたと判断した。お陰で周りの貴族からもクレイン侯爵は嫌われて取引もままならず、このままでは存続の危機になるのでは、とまでなっていたらしい」
僕のあの時の行動が一家の危機を招いた……? 元を辿れば僕が悪い……?
「ユキ、勘違いするな。ユキは悪くないからな。あの貴族が獣人を貶めすようなことを言ったのが悪いんだ。ユキはもともとそれを禁止していたのだから、あの場でそんな行動をとったクレイン侯爵が悪い。そもそも法律でだって獣人の権利は保証されているのだしな」
「……うん」
僕の感情を読んだダグが肩を抱いて僕は悪くないと言ってくれたけれど、納得はしきれない。
「そうだぞ、ユキ。正直今回の件はクレイン侯爵の断罪のいい機会だったんだ。ユキは何も気に病まなくていいからな」
「そうですか……」
でも僕が恨まれるようなことをしなかったら少なくとも神官は巻き込まれることはなかった。リスクなしに獣人を解放するのは無理なのだろうか……?
「つまりは逆恨みってとこだ。自分の現状がユキのせいだと思い込んだ侯爵は獣人の解放を望むユキさえいなくなれば、と考えたわけだ。ま、その前からあの家の経営は大分危なかったがな」
「動機はわかりましたがそこから神官への繋がりは……?」
「あの神官は侯爵の分家のさらに分家の三男らしい。他家に手出ししてたらまだしも分家とのやりとりだったもんでいまいち情報が掴めてなかったわけだ。すまんな、未然に防げなくて」
「いえ、それは大丈夫です」
おきてしまったことは仕方ないし、何百とある貴族全てを常に監視するのは難しいだろう。それが分家とのやりとりで違和感がなかったのならばなおのこと騎士や神官を責める要因は見当たらない。
「脅された神官は仕方なくユキへ毒を盛る機会を伺い、ついに昨日決行したわけだ」
「あの神官は一度もきたことがなかった方だったんですが……いつもなら大体同じ人のはずなのに」
「そこが問題だ。実はリディアはちゃんといつもの神官に行くよう言っていたらしい。だがそいつが急に熱を出しちまって、慌ててもう1人のやつに頼もうと思えばそいつは運悪く里帰り中。さてどうするかとなった時に今回の神官が手を挙げて、そいつが見知った神官だったから大丈夫だろうと思って頼んだってわけだな」
つまりは偶然が重なってしまって今回に繋がったってことか……誰が悪いわけでもないなぁ。
「実行者に頼んだ神官はまぁ……減俸くらいが妥当だな」
「え、罰があるのです?」
「そりゃあな。少なからず原因になっちまってるからな。ま、数カ月程度だろうし気にしなさんな」
「……はい」
そう決められているのなら仕方ないけれど……なんかなぁ……
「んでもってトピティアの入手経路か? それについては侯爵が自分の領地で原料となる植物を栽培してやがった。バレねぇように持ってる森の中に小さな畑作ってな。んでもってそれをこっそりトピティアに加工して売りさばいてたってわけだ。そこが侯爵の断罪に値する罪になる。だから今回のことはなかったことになってたまたま騎士団がクレイン侯爵がトピティアを製造している証拠を見つけたために断罪したってことにする」
なるほど。オリバーさんはトピティアは持ってるだけで処罰の対象になると言っていた。入手経路について他国の関与の線は消えたけれどまさか栽培していたとは……でも売りさばいてたってことはそこで他国が絡んでる可能性が高いのか。
「侯爵家は取り潰し、首謀者の当主及び分家も含め関与した者は全て処刑。関与のみられた分家は良くて降格、悪くて取り潰しだな」
「処刑、ですか……」
「今回のことがなくてもいずれそうなっていたさ。トピティアは所持するだけで処刑と法で規定されているからな」
「そうなんですね……暗殺に使われるだけあってトピティアはやはり危険なんですね」
「そうだ。トピティアはほんの小さな小瓶一本で殺せるほどの劇毒だ。それに、無味無臭な上に無色透明なもんだからバレることはほぼない」
アルバスさんが示した大きさは随分と小さい。たったそれだけで殺せるのならば怖い毒だけれど……
「無味……?」
おかしい。僕はパスタを食べた時、へんな味を感じたはずだ。だから口がとまったんだし、それでダグが異変を察知して毒が入ってることがわかったんだから。
「そこだ。無味のはずの毒にも関わらずユキはなぜか味に異変を感じた。どんな風に感じた?」
「どんな……」
そう言われて説明しようとしたが、形容ができなかった。酸っぱいわけでも苦いわけでもなかった。ただ変だと感じた。それだけだった。
「……わからないです。ただ変だった、としか……」
「ふむ……神子の力なのかもな。状態異常無効ではあるが身体に毒をいれないための加護のようなものなのかもしれんな」
「なるほど……」
たしかにそれ以外に説明がつかない。おそらく神様がそんな力もつけてくれていたのだろう。効かないとはいえ毒を身体の中に入れずに済んだから神様には感謝をしておかなくちゃ。
「今んとこはこれぐらい、か? 他に聞きたいことはねぇか?」
「……ないです。今のところは」
「そうか。ま、なんか聞きたいことがあったらまたいつでも聞いてくれや。聞いてて気持ちのいい話ではなかっただろう? ほら、ダグラスといちゃいちゃでもして癒されな」
「いちゃっ……! 説明してくださってありがとうございました。昨日も、ダグの代わりに調査にまわってくださって……」
昨日アルバスさんがダグの代わりを引き受けてくれたから僕はダグと一緒にいれたんだからものすごく感謝してる。昨日はダグがいないと不安で仕方なかったからね……
「気にしなさんな。やりたくてやったことだ。おっちゃんもユキちゃんが大事だからな」
そう言ってぐしゃぐしゃと僕の頭を撫でたアルバスさんはいつもの僕が知ってる面白いことが大好きなアルバスさんだった。
「ありがとうございます。おっちゃんに感謝しつつダグで癒されます」
「おう、そうしなそうしな。ユキに今必要なのは安らぎだろうからよ。うんと甘やかしてもらえ」
「いつも甘やかされてますけどね」
ダグにもリディアにも。僕の周りは僕を甘やかす人ばかりだから。
「もっと、だな。んじゃ俺は仕事に戻るわ。ダグラス、またなんかあったら呼べや」
「はい、ありがとうございます」
「お仕事頑張ってくださいね」
「おうよ、ユキはゆっくり休みな」
最後にもう一度僕を撫でてからアルバスさんは部屋を出て行った。この後も色々とまだ処理すべきことが残っているんだろう。
それなのにわざわざ僕への説明の時間を取ってくれて……本当にありがたい。本来ダグの仕事だったことも引き受けてくれてアルバスさんには感謝しかない。
アルバスさんにはいつかまたお礼をしなくちゃね。
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