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本編
90 過保護再発
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それから、しばらくの間勉強や魔法の授業を強制的に休まされた。僕は大丈夫だと言ったけれど、大泣きしたからか微熱が続いちゃって。ストレスだろうって治癒師に言われてしまった。
……ええそうです。周りの過保護が一気に発動したんですよ。
なかなか部屋から出してもらえないしそれどころかベッドからなかなか抜け出せないし、微熱が下がってもしばらくはダグに抱えられて移動だった。
今はようやく少しなら外を歩き回ることを許してもらえたんだよ。それでも1時間どころか30分もすれば部屋に戻されるけどね。
「ユキ様、こちらをお飲みください」
「……これは?」
野菜ジュースみたいに見える。こういうの、最近ものすごく出されるなぁ……
「お身体の血行を促進し、ユキ様の体調を整えるお飲み物ですよ」
「……作ったの?」
「ええ、ユキ様のために」
「……ありがとう」
……知ってる? こういう飲み物ね、リディアが作ってるんだよ。しかも毎回違うものが出されるの。どんだけレパートリーあるんだろうね……しかも全部美味しいのが逆にこわい。
まぁ僕のために作ってくれたものだからありがたく残さず飲むけどね。
「ユキ!!! いいものを持って来たぞ!!」
「……ロイ?」
大量の何かを抱えたロイが飛び込んで来た。いいものってまさかその抱えているものですか。いかにもな怪しげなものが見えるのは気のせいでしょうか。
「こっちはな、気持ちを落ち着かせるポプリでな? 安眠効果があるのだ。良質な睡眠は健康には欠かせないだろう? ああ、こっちも凄いのだ。この水はとある秘境から湧き出る水でな。飲めば身体中の毒素を排出してくれると言われている。こっちは……」
「……うん、ありがとう。気持ちだけで十分だよ……」
ものすごく怪しい。見ただけで怪しさ満点だったけどもう説明聞いたらもっと怪しくなった。なんか詐欺系の商品みたいだ……
「む?! なぜだ?! こっちなど魔除けの飾りだぞ? 壁にかけておくだけで悪いものを祓ってくれるのだ!」
「いや、うん……禍々しい、ね」
「……陛下、流石にそちらはユキ様のお部屋には合わないかと」
……うん、おどろおどろしいから本当にそれだけでも持って帰ってほしい。
なんかよくわからないんだもん。何をモチーフにしてるのかわからないけど、多分何かの生き物の首。年齢制限ついてますかってくらい怖い。これがあったら逆に怖くて寝れないし落ち着かないよ。
「む、そうか……ならせめてこっちだけでも……!」
「それは?」
あ、こっちはすごく綺麗。ガラス細工かな……? 小さな小物入れのようでちょっと興味が湧いたけれどロイの一言でその興味も消え失せた。
「これはな、飲めば不老不死になると言われている丸薬が入っているのだ」
「うん、持って帰ってね」
そんな怪しいものいらない。手に取ってみてみようと伸ばした手もすぐ引っ込めたよ。
「なぜだ……!」
「陛下、そのような怪しげなものをユキ様のお口に入れないでください」
「む……仕方ない。ならこれらは引き取ることにしよう。ユキ、何か欲しいものはないか? なんでも用意させるぞ?」
「うーん、欲しいものはないけど、はやく授業を再開させて欲しいかな!」
前の熱の時よりも長いんだもの。いい加減再開させてくださいな!
「だめだ」
「いけません」
むぅ……なんでさ……僕もう暇すぎて死んじゃうよ。
「暇ならばダグラスをしばらく休みにさせるか」
「それはいいですね」
「職権乱用!!!!」
そんなことは望んでませんよ?!! 何もいいことないから!!!
「ユキが駄目だと言うならばやめておこう。……む? 今日はダグラスは休みではなかったか? なぜいない?」
「ああ、今日はどうしても外せない用事があるって出かけていったよ」
そうなのだ。今日はダグはどうしても今日中に済ませたいからと朝早くから出て行ってしまったのだ。
「む、どういうことだ。ユキより優先させることなど……」
「あはは、なんの用事かはなんとなくわかってるんだ。僕にも関係することだろうから、仕方ないよ」
それにダグにだって用事の1つ2つあってもなにもおかしくないよ。僕も流石にそこまでは束縛しない。その用事がお見合いとかだったら必死になって引き留めるけどね。
「そうなのか?」
「うん、きっとそのうちわかるよ」
「……そうか」
まだどこか不満気なロイに笑った瞬間、部屋の扉がノックされた。
「オリバーです。許可なくこちらへ参ったことお許しください。陛下はいらしておりませんでしょうか」
扉の向こうから話しかけてきたのは宰相のオリバーさん。ロイはその声を聞いて目の前で顔を引き攣らせている。
……お仕事抜け出してきたんだね。
「リディア、お通しして」
「かしこまりました」
「まっ……!」
ロイの引き止める声を無視してさっさと扉を開けに行ったリディア。
「失礼いたします。ユキ様、改めて許可なくこちらへ訪問したことお許しください」
「構いませんよ。ロイを連れ戻しにいらしたのでしょう? どうぞ、連れて行ってくださって大丈夫です」
「ありがとうございます。では遠慮なく陛下をいただきます」
「ま、待てオリバー! 私はまだ戻らぬぞ!」
「何を仰っているのです。まだ未処理の書類が山ほどあるのですよ。それとも本日は徹夜をお望みですか?」
笑っているけど笑っていない笑顔でロイを捲したてるオリバーさんはかなり怖い。すごいよ、ものすごい冷気漂ってるもん。
もう暑いくらいの季節なのに寒さを感じ、思わず腕をさすったらすかさずリディアが暖かい紅茶を出してくれた。ありがたく飲んでほっと一息。
うん、リディアの紅茶はやっぱり美味しい。
「ユ、ユキ!! 助けてくれ!!!」
「お仕事頑張ってね、ロイ!」
訳:僕を巻き込むな!
「ではユキ様、失礼いたしました」
「ユキィイイイイイ!!!」
僕には優しい笑顔を向けてがっしりとロイを掴んで出て行ったオリバーさん。掴んでる手に青筋立ってたし相当力込めてたよ、あれ。
頑張れロイ……!
「ユキ様、こちらはどういたしましょう」
「へ?」
ロイが連れて行かれた扉を見てたらリディアが聞いてきた。なにかと視線を向けたらそこにあったのはロイが持ってきた詐欺まがいの怪しい物の山。
「……返しておいてもらえる?」
「かしこまりました」
これも持って行って欲しかったです、オリバーさん。
夕方になって戻ってきたダグと一緒にご飯を食べ、お風呂も順番に入った。日中ひっつけなかった分思いっきりひっついて甘える。え? 束縛しないんじゃなかったのかって? しないけどそのあとは思う存分甘えるんだよ。寂しいって思うのは仕方ないでしょ?
「ユキ、ちょっといいか」
「ん? なぁに?」
「少し外に行こう」
「外?」
「といっても城の敷地内だがな」
「ん、いいよ」
ダグに連れられて2人部屋を出て歩く。
なんだか夜に2人で歩くなんて僕がこの世界に来た日の夜を思い出すなぁ、なんて思っていたら連れて行かれた場所はあの庭だった。
……ええそうです。周りの過保護が一気に発動したんですよ。
なかなか部屋から出してもらえないしそれどころかベッドからなかなか抜け出せないし、微熱が下がってもしばらくはダグに抱えられて移動だった。
今はようやく少しなら外を歩き回ることを許してもらえたんだよ。それでも1時間どころか30分もすれば部屋に戻されるけどね。
「ユキ様、こちらをお飲みください」
「……これは?」
野菜ジュースみたいに見える。こういうの、最近ものすごく出されるなぁ……
「お身体の血行を促進し、ユキ様の体調を整えるお飲み物ですよ」
「……作ったの?」
「ええ、ユキ様のために」
「……ありがとう」
……知ってる? こういう飲み物ね、リディアが作ってるんだよ。しかも毎回違うものが出されるの。どんだけレパートリーあるんだろうね……しかも全部美味しいのが逆にこわい。
まぁ僕のために作ってくれたものだからありがたく残さず飲むけどね。
「ユキ!!! いいものを持って来たぞ!!」
「……ロイ?」
大量の何かを抱えたロイが飛び込んで来た。いいものってまさかその抱えているものですか。いかにもな怪しげなものが見えるのは気のせいでしょうか。
「こっちはな、気持ちを落ち着かせるポプリでな? 安眠効果があるのだ。良質な睡眠は健康には欠かせないだろう? ああ、こっちも凄いのだ。この水はとある秘境から湧き出る水でな。飲めば身体中の毒素を排出してくれると言われている。こっちは……」
「……うん、ありがとう。気持ちだけで十分だよ……」
ものすごく怪しい。見ただけで怪しさ満点だったけどもう説明聞いたらもっと怪しくなった。なんか詐欺系の商品みたいだ……
「む?! なぜだ?! こっちなど魔除けの飾りだぞ? 壁にかけておくだけで悪いものを祓ってくれるのだ!」
「いや、うん……禍々しい、ね」
「……陛下、流石にそちらはユキ様のお部屋には合わないかと」
……うん、おどろおどろしいから本当にそれだけでも持って帰ってほしい。
なんかよくわからないんだもん。何をモチーフにしてるのかわからないけど、多分何かの生き物の首。年齢制限ついてますかってくらい怖い。これがあったら逆に怖くて寝れないし落ち着かないよ。
「む、そうか……ならせめてこっちだけでも……!」
「それは?」
あ、こっちはすごく綺麗。ガラス細工かな……? 小さな小物入れのようでちょっと興味が湧いたけれどロイの一言でその興味も消え失せた。
「これはな、飲めば不老不死になると言われている丸薬が入っているのだ」
「うん、持って帰ってね」
そんな怪しいものいらない。手に取ってみてみようと伸ばした手もすぐ引っ込めたよ。
「なぜだ……!」
「陛下、そのような怪しげなものをユキ様のお口に入れないでください」
「む……仕方ない。ならこれらは引き取ることにしよう。ユキ、何か欲しいものはないか? なんでも用意させるぞ?」
「うーん、欲しいものはないけど、はやく授業を再開させて欲しいかな!」
前の熱の時よりも長いんだもの。いい加減再開させてくださいな!
「だめだ」
「いけません」
むぅ……なんでさ……僕もう暇すぎて死んじゃうよ。
「暇ならばダグラスをしばらく休みにさせるか」
「それはいいですね」
「職権乱用!!!!」
そんなことは望んでませんよ?!! 何もいいことないから!!!
「ユキが駄目だと言うならばやめておこう。……む? 今日はダグラスは休みではなかったか? なぜいない?」
「ああ、今日はどうしても外せない用事があるって出かけていったよ」
そうなのだ。今日はダグはどうしても今日中に済ませたいからと朝早くから出て行ってしまったのだ。
「む、どういうことだ。ユキより優先させることなど……」
「あはは、なんの用事かはなんとなくわかってるんだ。僕にも関係することだろうから、仕方ないよ」
それにダグにだって用事の1つ2つあってもなにもおかしくないよ。僕も流石にそこまでは束縛しない。その用事がお見合いとかだったら必死になって引き留めるけどね。
「そうなのか?」
「うん、きっとそのうちわかるよ」
「……そうか」
まだどこか不満気なロイに笑った瞬間、部屋の扉がノックされた。
「オリバーです。許可なくこちらへ参ったことお許しください。陛下はいらしておりませんでしょうか」
扉の向こうから話しかけてきたのは宰相のオリバーさん。ロイはその声を聞いて目の前で顔を引き攣らせている。
……お仕事抜け出してきたんだね。
「リディア、お通しして」
「かしこまりました」
「まっ……!」
ロイの引き止める声を無視してさっさと扉を開けに行ったリディア。
「失礼いたします。ユキ様、改めて許可なくこちらへ訪問したことお許しください」
「構いませんよ。ロイを連れ戻しにいらしたのでしょう? どうぞ、連れて行ってくださって大丈夫です」
「ありがとうございます。では遠慮なく陛下をいただきます」
「ま、待てオリバー! 私はまだ戻らぬぞ!」
「何を仰っているのです。まだ未処理の書類が山ほどあるのですよ。それとも本日は徹夜をお望みですか?」
笑っているけど笑っていない笑顔でロイを捲したてるオリバーさんはかなり怖い。すごいよ、ものすごい冷気漂ってるもん。
もう暑いくらいの季節なのに寒さを感じ、思わず腕をさすったらすかさずリディアが暖かい紅茶を出してくれた。ありがたく飲んでほっと一息。
うん、リディアの紅茶はやっぱり美味しい。
「ユ、ユキ!! 助けてくれ!!!」
「お仕事頑張ってね、ロイ!」
訳:僕を巻き込むな!
「ではユキ様、失礼いたしました」
「ユキィイイイイイ!!!」
僕には優しい笑顔を向けてがっしりとロイを掴んで出て行ったオリバーさん。掴んでる手に青筋立ってたし相当力込めてたよ、あれ。
頑張れロイ……!
「ユキ様、こちらはどういたしましょう」
「へ?」
ロイが連れて行かれた扉を見てたらリディアが聞いてきた。なにかと視線を向けたらそこにあったのはロイが持ってきた詐欺まがいの怪しい物の山。
「……返しておいてもらえる?」
「かしこまりました」
これも持って行って欲しかったです、オリバーさん。
夕方になって戻ってきたダグと一緒にご飯を食べ、お風呂も順番に入った。日中ひっつけなかった分思いっきりひっついて甘える。え? 束縛しないんじゃなかったのかって? しないけどそのあとは思う存分甘えるんだよ。寂しいって思うのは仕方ないでしょ?
「ユキ、ちょっといいか」
「ん? なぁに?」
「少し外に行こう」
「外?」
「といっても城の敷地内だがな」
「ん、いいよ」
ダグに連れられて2人部屋を出て歩く。
なんだか夜に2人で歩くなんて僕がこの世界に来た日の夜を思い出すなぁ、なんて思っていたら連れて行かれた場所はあの庭だった。
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