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本編
57 庭で
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あれから暫くしてなんとかダグの熱は収まったみたい。
「……すまない」
「ううん、大丈夫……」
ちょっと気恥ずかしい雰囲気が漂うのは仕方ないよね。
「情けないな……呆れるだろう? これではまるで盛りのついた子供のようだ」
「呆れてなんかないよ? 我慢させて悪いなぁ、とは思うけど……それに、それだけ僕を好きでいてくれるってことでしょ? そう思ったら嬉しくもあるんだよ」
大好きな恋人に求められて呆れるなんてありえない。
「ぐっ……またそういうことを……」
「……ごめんなさい」
また少し反応したものが……僕は言葉を慎重に選ばなければならないかもしれない。
「ふ──……」
「……落ち着いた?」
「ああ、もう大丈夫だ。
ああ、もうそろそろ昼食だな……っと、リディアが来たみたいだ」
「え?」
んん? 来てないよ??
って思った瞬間ドアがノックされた。
「ユキ様、ダグラス、そろそろ昼食のお時間ですよ。入室してもよろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
……ほんとにリディアが来た。入って来たリディアをぽかんと見つめてしまう。
「……なんでわかったの?」
「ん? ああ、獣人ほどではないがこれでも部隊長だからな。それなりに気配を読めるんだ」
つまりはリディアが近づいてくる気配を察したってこと?
「凄い……かっこいい!!」
「そうか? ユキにそう言われると悪い気はしないな」
「お2人の仲がよろしいのはわかりましたから、先に昼食をお召し上がり下さい。その後はまたいくらでもいちゃいちゃしてくれて構いませんからね」
「いちゃっ……! うぅ……庭、行こっか……」
最近やっぱりリディアが意地悪だ……なんだか僕がダメージ受けるポイントよくわかってるよね……
「ああ、そうだな」
これ以上長引かせるとリディアの攻撃がものすごいことになりそうだから大人しく庭へ向かう。
あう、ダグに手を握られました。嫌じゃないというかむしろ嬉しいので僕も握り返してそのまま庭へ。リディアの生温かい視線は気にしないことにします。
「うぅ、食べ過ぎちゃった……」
「大丈夫か?」
「うん……でも少し歩きたい」
「わかった、庭を歩こう」
いつもよりご飯が美味しく感じてついつい食べ過ぎてしまった。……わかってるよ、ダグと食べたからだって。1人で食べることが多いから余計に、ね。
ダグと手を繋ぎながらゆっくりと庭を歩く。護衛とリディアは少し離れたところからついて来てる。帯刀してないとはいえ、ダグなら万が一のことがあっても時間稼ぎか僕を抱えて逃げるくらいはできるから、だってさ。流石に竜人が来たら厳しいけど、ラギアスが気配探るの上手いからある程度は離れても大丈夫なんだとか。
「ねぇダグ、ダグは今までのお休みの日って何してたの?」
「剣の手入れをしたり稽古をしたり、だな」
「……お休みだよね?」
なんだか僕、社畜って思い浮かんだよ……ダグ真面目だもんなぁ。
「ああ。趣味というものがないからな。他にすることがないんだ」
「ほかの騎士さんたちと街へ行ったりはしないの?」
「ふむ……酒を飲みに行くか食事をしに行くくらいだな」
「普通に買い物とかは?」
「ないな。……外、行きたいか?」
「え? ……うーん、どうだろ。もともと家で本読んだりピアノ弾いたりしてるのが好きだったから、元の世界でもあまり外へは出かけなかったんだ。ダグと行けるなら楽しいだろうけど、僕はこうして一緒にいられるだけで幸せなんだよ」
外に行く時は自分から行くんじゃなくて、兄さん達に誘われて、って感じだったなぁ。兄さん達は結構アウトドア派で夏になると海とか山とかに連れていかれた。普通にショッピングに行って大量に服を買ってもらったりもしたなぁ。それで毎回決まってヘトヘトになって家に帰るんだよね……うん、僕は根っからのインドア派だ。
「そうか……いつか、街にも連れて行こう」
「え? でもそれって護衛とかで大変じゃない?」
「頻繁には難しいが……極たまに、事前に計画をしっかり練ってからなら大丈夫だろう。ユキには髪と目を隠すために窮屈な格好をしてもらうことになるが……」
「そうなの? じゃあ、一度くらいは行ってみたいかな……実際に、この国の街を見てみたい」
ヴォイド爺に色々と習ってはいるけど、聞くのと実際に見るのとではまた違ってくると思うし。
「ああ、いつか行こう……まだ先になるとは思うがな。ユキが最低限の護身魔法を覚えてからになるかもしれない」
「護身魔法??」
「相手を麻痺させる、眠らせる、捕縛する、といった簡単な攻撃系統の魔法と自分に防御結界を張り相手の攻撃を遮断する魔法の総称だ。ユキは魔力制御の次に覚えることになる」
なるほど、相手の動きを止めたり実際に自分に結界を張って身を守る為の魔法か。それは僕としても覚えたい。万が一の時に自分でも身を守れるっていうのは嬉しいし。ほら、ダグ達も僕を気にしながらだと敵に集中できなくなるかもしれないしさ。
状態異常無効とはいえ、斬り付けられたり掴まれたりしたらどうしようもなくなるからね。
「それって難しいの?」
「いや、魔法自体は難しくはない。だが、精度が低ければ、麻痺などは効きが悪いし、防御結界は脆い」
「精度……僕頑張る! 竜人にも通用するくらい!」
「はは、それは中々難しいが……ユキならやってのけそうだな。俺も手伝うから一緒に頑張ろう」
「うん!!」
みんなを守れるくらいになるって決めたんだから、まずは護身魔法を確実に! 自分さえ守れないのにみんなを守るなんて無理だからね。しっかり確実に覚えましょう!
それからもダグのことを聞きながら庭をゆっくり歩いた。その中でわかったことは、ダグにはお兄さんがいて、実家の辺境伯家の跡取りとして既にお父さんのお仕事を手伝ってるんだって。ダグは次男で後継にはなれないからって騎士の道に進んだらしい。
貴族の次男以降が騎士や神官になるのは多いけど、平民だって力があればなれる職業だから、貴族が権力にモノを言わせることがないように家名を使うことは禁止されているんだって。これを破ると貴族にとってはかなり屈辱的な罰が科せられるとか。
実家は何も言わないのかって? ほら、騎士や神官って言わば国の持ち物だからさ、国を敵に回したくないから何もできないらしい。それでもたまに口出ししてくるような貴族がいて、そんなお家にはキツイお仕置きが待ってるんだって。領地没収とか降格、とか……こわいね!
というかダグって貴族だったんですね……しかも辺境伯って上級貴族じゃない?
ラス、僕とダグ身分差恋愛じゃなくない? あ、神子と護衛っていうシチュがあるからいいんですか?
……別になんでもいいけどね。身分差とかそんなの僕にとってはどうでもいいし。ダグがダグであればそれでいいのです!!
「……すまない」
「ううん、大丈夫……」
ちょっと気恥ずかしい雰囲気が漂うのは仕方ないよね。
「情けないな……呆れるだろう? これではまるで盛りのついた子供のようだ」
「呆れてなんかないよ? 我慢させて悪いなぁ、とは思うけど……それに、それだけ僕を好きでいてくれるってことでしょ? そう思ったら嬉しくもあるんだよ」
大好きな恋人に求められて呆れるなんてありえない。
「ぐっ……またそういうことを……」
「……ごめんなさい」
また少し反応したものが……僕は言葉を慎重に選ばなければならないかもしれない。
「ふ──……」
「……落ち着いた?」
「ああ、もう大丈夫だ。
ああ、もうそろそろ昼食だな……っと、リディアが来たみたいだ」
「え?」
んん? 来てないよ??
って思った瞬間ドアがノックされた。
「ユキ様、ダグラス、そろそろ昼食のお時間ですよ。入室してもよろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
……ほんとにリディアが来た。入って来たリディアをぽかんと見つめてしまう。
「……なんでわかったの?」
「ん? ああ、獣人ほどではないがこれでも部隊長だからな。それなりに気配を読めるんだ」
つまりはリディアが近づいてくる気配を察したってこと?
「凄い……かっこいい!!」
「そうか? ユキにそう言われると悪い気はしないな」
「お2人の仲がよろしいのはわかりましたから、先に昼食をお召し上がり下さい。その後はまたいくらでもいちゃいちゃしてくれて構いませんからね」
「いちゃっ……! うぅ……庭、行こっか……」
最近やっぱりリディアが意地悪だ……なんだか僕がダメージ受けるポイントよくわかってるよね……
「ああ、そうだな」
これ以上長引かせるとリディアの攻撃がものすごいことになりそうだから大人しく庭へ向かう。
あう、ダグに手を握られました。嫌じゃないというかむしろ嬉しいので僕も握り返してそのまま庭へ。リディアの生温かい視線は気にしないことにします。
「うぅ、食べ過ぎちゃった……」
「大丈夫か?」
「うん……でも少し歩きたい」
「わかった、庭を歩こう」
いつもよりご飯が美味しく感じてついつい食べ過ぎてしまった。……わかってるよ、ダグと食べたからだって。1人で食べることが多いから余計に、ね。
ダグと手を繋ぎながらゆっくりと庭を歩く。護衛とリディアは少し離れたところからついて来てる。帯刀してないとはいえ、ダグなら万が一のことがあっても時間稼ぎか僕を抱えて逃げるくらいはできるから、だってさ。流石に竜人が来たら厳しいけど、ラギアスが気配探るの上手いからある程度は離れても大丈夫なんだとか。
「ねぇダグ、ダグは今までのお休みの日って何してたの?」
「剣の手入れをしたり稽古をしたり、だな」
「……お休みだよね?」
なんだか僕、社畜って思い浮かんだよ……ダグ真面目だもんなぁ。
「ああ。趣味というものがないからな。他にすることがないんだ」
「ほかの騎士さんたちと街へ行ったりはしないの?」
「ふむ……酒を飲みに行くか食事をしに行くくらいだな」
「普通に買い物とかは?」
「ないな。……外、行きたいか?」
「え? ……うーん、どうだろ。もともと家で本読んだりピアノ弾いたりしてるのが好きだったから、元の世界でもあまり外へは出かけなかったんだ。ダグと行けるなら楽しいだろうけど、僕はこうして一緒にいられるだけで幸せなんだよ」
外に行く時は自分から行くんじゃなくて、兄さん達に誘われて、って感じだったなぁ。兄さん達は結構アウトドア派で夏になると海とか山とかに連れていかれた。普通にショッピングに行って大量に服を買ってもらったりもしたなぁ。それで毎回決まってヘトヘトになって家に帰るんだよね……うん、僕は根っからのインドア派だ。
「そうか……いつか、街にも連れて行こう」
「え? でもそれって護衛とかで大変じゃない?」
「頻繁には難しいが……極たまに、事前に計画をしっかり練ってからなら大丈夫だろう。ユキには髪と目を隠すために窮屈な格好をしてもらうことになるが……」
「そうなの? じゃあ、一度くらいは行ってみたいかな……実際に、この国の街を見てみたい」
ヴォイド爺に色々と習ってはいるけど、聞くのと実際に見るのとではまた違ってくると思うし。
「ああ、いつか行こう……まだ先になるとは思うがな。ユキが最低限の護身魔法を覚えてからになるかもしれない」
「護身魔法??」
「相手を麻痺させる、眠らせる、捕縛する、といった簡単な攻撃系統の魔法と自分に防御結界を張り相手の攻撃を遮断する魔法の総称だ。ユキは魔力制御の次に覚えることになる」
なるほど、相手の動きを止めたり実際に自分に結界を張って身を守る為の魔法か。それは僕としても覚えたい。万が一の時に自分でも身を守れるっていうのは嬉しいし。ほら、ダグ達も僕を気にしながらだと敵に集中できなくなるかもしれないしさ。
状態異常無効とはいえ、斬り付けられたり掴まれたりしたらどうしようもなくなるからね。
「それって難しいの?」
「いや、魔法自体は難しくはない。だが、精度が低ければ、麻痺などは効きが悪いし、防御結界は脆い」
「精度……僕頑張る! 竜人にも通用するくらい!」
「はは、それは中々難しいが……ユキならやってのけそうだな。俺も手伝うから一緒に頑張ろう」
「うん!!」
みんなを守れるくらいになるって決めたんだから、まずは護身魔法を確実に! 自分さえ守れないのにみんなを守るなんて無理だからね。しっかり確実に覚えましょう!
それからもダグのことを聞きながら庭をゆっくり歩いた。その中でわかったことは、ダグにはお兄さんがいて、実家の辺境伯家の跡取りとして既にお父さんのお仕事を手伝ってるんだって。ダグは次男で後継にはなれないからって騎士の道に進んだらしい。
貴族の次男以降が騎士や神官になるのは多いけど、平民だって力があればなれる職業だから、貴族が権力にモノを言わせることがないように家名を使うことは禁止されているんだって。これを破ると貴族にとってはかなり屈辱的な罰が科せられるとか。
実家は何も言わないのかって? ほら、騎士や神官って言わば国の持ち物だからさ、国を敵に回したくないから何もできないらしい。それでもたまに口出ししてくるような貴族がいて、そんなお家にはキツイお仕置きが待ってるんだって。領地没収とか降格、とか……こわいね!
というかダグって貴族だったんですね……しかも辺境伯って上級貴族じゃない?
ラス、僕とダグ身分差恋愛じゃなくない? あ、神子と護衛っていうシチュがあるからいいんですか?
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