あの人と。

Haru.

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 夜にロイの部屋へ突撃し、ロイとアルに挟まれて起きたあの日からはや1週間。ダグの腕と、ロイとアルの腕の違いについて考えていたけど、答えは出なかった。


 体格の差? たしかにダグの体格はロイよりもいいけど、ロイもかなり鍛えた体格をしてる。体格の差ならむしろ、僕よりは体格がいいとはいえ、この世界にとって華奢な部類に入るアルとロイで違いを感じそうだ。じゃあつまり要因は体格の差ではない、と。

 家族か護衛かの差? それなら家族のロイ達の方が安心感があるのが普通だよね……でも正直言ってダグの方が心地いいと言うかなんと言うか……説明しづらいんだけどロイ達よりも正直安心する。いや、勿論ロイ達も十分安心するし心地いいよ?! だけど何かが違うんだよなぁ……
 うぅん、とにかくこれも要因ではなさそう。
 
 初めて弱みを見せたのはダグだから? ロイの前で泣きはしたけど泣き叫びはしてないからなぁ……目の前で泣き叫んで意識失って、なんて迷惑をかけても、僕の護衛でいてくれてるダグに絶対的な信頼がある? ダグならどんな自分を見られてもそばに居てくれるって安心感がある? 
 うーん、確かにそうかもしれないけど、ロイ達だって僕が迷惑かけても許してくれそうだからなぁ……もう家族だし、どんな僕を見られても、ってのはロイ達も同じな気がする。
 1番それっぽいのはこれに感じるけど、なんか違う気もする。

 うぅん、やっぱりわからない。なにか理由がある気がするんだけどなぜかそれがわからないんだよなぁ……
 あ、1回リディアに相談したんだよ? なんでかなぁって。勿論ロイとアルとダグには内緒にしてって言ってね。
 そしたらね、最初はなんか驚いた感じの顔して、その後に僕をまじまじと見たかと思うと、すっごい優しい顔で笑って

「それはユキ様自身でお気付きになるべきことと存じます。
いずれ自ずとお分かりになるでしょうから、今はその気持ちを心の中に留めておくだけで宜しいかと思いますよ」
 
なんて言われちゃったんだよね。うーん、でもまぁいくら考えてもわからないし、今はリディアの言う通りにしておくべきかな? リディアもそのうちわかるって言ってたし。うん、そうしよ!



 因みに今日から一般教養と礼儀作法の授業が始まる。
 本当はもう少し早く始まる予定だったし、教師も決まっていたのだけど、どうやらその教師の体調不良によって延びてしまったらしい。
 ならば他の人員を、とも考えたらしいけど、その人以上に信用できて、かつ教え方の上手い人はいないということで、どうするかを僕に尋ねてきたのだ。
 僕は別にいつからでも良かったし、他に誰か呼び寄せてもらうのも、と思ったので待つことにした。勿論教師の人には焦らずゆっくり身体を治してって伝えてもらったよ。僕のせいで無理させると悪いもんね。


 そして現在朝食も食べ終わり、先生が来るところを待っているところです……! あ、一般教養も礼儀作法も同じ人が教えれるからって同じ人らしい。誰かは教えてくれなかった。
 とりあえずしばらくは月・火・木・金の午前の数時間教えてくれることになっている。少ないかな、とも思ったけど僕の体力的にどうかってことでとりあえずこれで様子を見るらしい。体力がもてばいずれはもう少し増やすかもしれないって。
 元の世界で毎日朝から夕方まで勉強してたからもっと詰めて大丈夫、って言ったのに周りの過保護が発動したんだよ。まぁたしかにこっちに来てから体調崩し気味だけどさ。


 まだかな、といつもお茶したりくつろぐ時のテーブルセットやご飯用のテーブルとは別にあった、まだ使ってなかった机に座って待っていると部屋の扉がノックされた。リディアがそれに応え、ついに先生とご対面!
 僕は入ってきた人を見て思わずポカンとしてしまった。だってだって、その人はすごく見覚えがあったんだ。しかも久しぶりに会う。


















「ヴォイド?!!!」

「ほほほ、ユキ、久しぶりじゃな」

 そう、僕の教師はヴォイドでした。











「は~、まさか、ヴォイドが教えてくれるとは……」

 とりあえずヴォイドには僕から見て斜め左の位置に座ってもらった。机の角を挟んで隣、みたいな位置だよ。この位置が1番しっくりきたからね。

「私は知識に貪欲なのじゃよ。ひたすらに知識をつけておったらいつのまにか生き字引とも言われておった。
王子殿下方の座学も担当しておったのじゃよ」

「え、すごい!!!! 僕、そんな人に教えてもらえるなんてすごい贅沢だね!!!!

って、そういえば体調不良で延びたんだったよね、大丈夫だったの??」

「なぁに、心配することはないさ。ただちょっとな、本を運ぼうかと思うたら腰が、な。体調不良とは言ったが実は腰を痛めただけだったんじゃよ。
私ももう歳だからのう……」

「腰! もう大丈夫なの??」

「ああ、普通にしてる分には何も問題はないさ。ただまぁ腰があんな音を立てるとは思わなんでな……もう重いもんは運びとうない……」

 そう言ったヴォイドの目はすごい遠い目をしていた。かなり痛かったんだろうな……

「うん、重い物はもう持たない方が良いね。何かあったら言って? 僕が代わりに持つよ!!」

 力こぶを作るようにして意気込んで言えば、ヴォイドにそっと二の腕を掴まれた。そのまま少しもにもにと揉んだかと思えば、これまたそっと手を離して生温かい目を向けてきた。

「……気持ちだけ受け取っておくな」

 僕はそんなに非力に見えますか!!!!!!!!!
 僕だって男なんだからね!!!!!!!!!!!!
 

 ……どうせ僕はこの世界基準じゃ合法ショタですよ。こんな時元の世界とこの世界との体格の違いがすっごく憎くなるよね。今更しょうがないけど!!!!


「ま、まぁそんなことよりもぼちぼちと授業を始めようじゃないか。ほれ、今日はこの世界にある国についてじゃ」

「……ん、お願いします」

 こうして僕の授業はゆったりと始まった。


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