あの人と。

Haru.

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本編

28 朝

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 柔らかな光を感じ、ゆっくりと目を開けば目の前には金髪の精悍な男性が……


 えっ?!!! ロイ?!!!!!!


 びっくりしてのけぞれば何かにぶち当たった。それにまた驚いて後ろを見れば、こっちには茶髪の美形な男性が……


 え、アル……? え、何事……


 状況が把握しきれず、とりあえず起き上がって2人を見下ろせば確かにそこにはロイとアルがいる。僕はどうやらロイとアルの2人に挟まれて寝ていたようだ。


 もしかして、僕ロイにしがみついて離れなかった……? 僕、ダグの袖掴んで引き留めたことあるよね。ならロイから離れなかった可能性もあり得る、よね。

 うそぉ、僕、だとしたらめっちゃ迷惑かけてるじゃん……いや、夜に押しかけた時点でもうかなり迷惑かけてるけどさぁ……しがみついて離れないなんてもっと迷惑じゃん……


 思わず頭をかかえて唸っていると、僕が動いた気配に2人が起きてしまったようだった。

「ん……どうした、ユキ? まだ早いだろう」

「んー? ほら、ユキもうちょっと寝なよ」

 2人はもう一度僕を寝かそうと布団に引き込んでくるが、今の僕にとってはそれどころじゃない。

「え、と……僕、なんでここで寝てるのかな。ごめんね、もう部屋に戻るよ」

「んん……? あぁ、私達がユキと共に寝たかったからな……ダグラスがユキを部屋に連れて行くと申したのを断ったのだよ」

「……なんで……?」

「まぁ、そんな事いいじゃないか。ほら、もう一度寝よう」

 ロイとアルに挟まれ、ゆっくりと頭や撫でられるともうダメだった。18にもなって寝かしつけられるなんて……と思ったが、心地よい温もりには抗えなかった。
 僕はもう一度暖かな眠りへと意識を手放した。




 


「……キ………………ろ」

「ユ……もう………………て」


 んん……なあに?


 心地よい眠りに身を任せていると、誰かの声がした。それでもまだこの心地よい眠りを手放したくなく、うとうとと微睡んでいると、今度は肩をゆるく揺すられた。

「ユキ……お……くれ」

「あと……ごふ、ん……」


 もーちょっと、もうちょっとだけ寝たい……


「ユキごめん……もう起き……れ」


 んぅ……起きないとだめぇ……?


「ふふ、ユキはお寝坊さんだな」

「可愛いのだが……もうそろそろ朝食が来る頃だし……」


 ちょうしょく。ちょうしょくってなんだっけ……ちょうしょくは朝食で……朝に……食べる……ご飯……


 ………………!!!!!!!!!


「ご飯!!!!!!!!!」

 我ながらどんな起き方だ、と思います、はい。

 叫びながら起き上がればそこにはびっくりした表情のロイとアル。
 あ、そうだ、僕ロイとアルに挟まれて寝てたんだった。

「お、おはようゴザイマス……」

 とりあえず朝の挨拶をして見れば2人は吹き出した。ええ、そりゃもう盛大に。

「ぶふっ!!!! そ、そんなに腹が減っていたのかっ……!!」

「あはははは!!! ご飯!!!! なんて起きる人間始めてみたっ……!!」

 ……僕がご飯に反応して起きたのは事実なので何も言い返せません。

「くっくっく……いや、うん、可愛いよ……ぶふっ……」

「うんうん、かわいっ……ふふっ……ご、ご飯食べよっか……ご飯っ……ぶふっ……」

 ……笑いすぎじゃないかな。
 
 僕が拗ね始めているのに気付いたのか2人はなんとか笑いを収めた。

「す、すまない、あまりにも可愛かったもので、な?」

「ほ、ほら、一緒に食べよ?」

「むぅ……いや、2人に起こされて起きなくて朝食に反応したのは僕だもん、2人は悪くないよ。それより、なんで僕がここに寝てたのか詳しく教えてほしいな」

 そうだよ、1度目が覚めた時にロイは一緒に寝たかったから、って言ったけど、それがなんでかはまだ聞いてないんだ。

「ああ、そのことか……そうだな、食べながら話すことにしよう。さ、ユキは着替えなさい」

「ん、わかった。でも、僕の着替えここにないよね?」

「私がお持ちいたしましたよ」

「えっリディア?!」

 え、いつのまにここに……? てかなんでここに……?

「ユキをここで寝かせたからな。ダグラスに頼んでリディアに伝えておいてもらったのだよ。
さ、ユキはリディアに着替えさせてもらいなさい。私達は先に隣の部屋に行っているからな」

 そう言ってロイとアルは部屋にいくつかあるうちの1つの扉の向こうへ行ってしまった。
 残された僕はリディアに目を向け、ロイが言っていたことの真偽を確かめる。

「そうなの……?」

「ええ、昨晩ダグラスより伝言があり、それに従いこちらへユキ様のご衣裳をお持ちしたのですよ。さ、すぐにお召し替えを済ませましょう」

「う、うん。ありがとう、リディア」

「いえいえ、私は構いませんよ。
それよりも、昨晩は夕食後からなにやら思い悩んだご様子でしたが、今朝はそのようなご様子もなくとても安心いたしました」

「え、リディア気付いていたの?」

「ええ、勿論です。本日もそのようなご様子であるならば、一度お声をおかけしようと思っていたのですが……陛下と話されたのですね。
 陛下方とユキ様がより親密になったように感じましたが、昨晩のユキ様の悩みの元はそのことについてでしょうか? 何にしろ、ユキ様の憂いが晴れたことは喜ばしい限りでございます」

 僕の身嗜みを整えながらリディアが言った言葉に驚愕する。

「リディアそんなことにまで気付いたの?」

「ふふ、今の私はユキ様のどんな些細な変化も見逃さぬよう気を配っていますからね。これくらいは当然のことですよ」

「えええ? 僕なんだか逆に怖いなぁ……」

「大丈夫ですよ、ユキ様の体調に差し支えないならばなにも口出しは致しませんし、言い触らしもいたしませんよ」

「それでもリディアは知ってるってことでしょう?」

「そうですが……なにかやましい事をされるご予定でも?」

 リディアの目がキラーンと光った。怖っ!!!

「し、しないよ!! 気分的な問題!!!」

「ふふ、危ない事はなさらないでくださいね。
さ、ご支度も整いましたし、隣のお部屋へ参りましょう。陛下方がお待ちです」

 そうだ、ロイとアルを待たせてるんだった! はやく行かなくちゃ。

「ん、リディアありがと」

 リディアが開けてくれた扉を潜ると、ロイとアルがお茶を飲みながら待っててくれていた。

「ロイ、アル、ごめんなさい、おまたせして」

「ん? ああ、着替えたのか。丁度朝食が来たところだ。さあ、ユキも座りなさい」





 僕が席に着くと和やかな朝食が始まった。でも、もう昨日の夕食のような気持ちになる事はなかった。そこにあったのは、ただただ暖かい気持ちだけだった。
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