22 / 31
第二十話
しおりを挟む
ーー昼休み。サミールより少し早く、待ち構えていたように図書室に来ていたギルバートは、いつもに増して甘えてきた。
出窓に腰掛けたサミールの背後に座り、背中側からぎゅっと抱きついて、肩に顎をのせてくる。
すりすり、と髪に頬擦りされると、昨夜淫らに触れ合ったことを思い出し、サミールは頬を熱くしてしまった。
「・・・・・・先輩」
しかし、囁くギルバートの声にどこか元気が無いのに、サミールはすぐさま勘付いて心配になる。
「ギルバート様・・・・・・何か、嫌なことでもありましたか?」
サミールが読んでいた本に栞を挟み、パタンと閉じて首だけ後ろを向くと、ギルバートは優しく微笑んで。
「・・・・・・大丈夫だよ、先輩。ちょっと、疲れただけで」
サミールの身体を抱きしめながら、囁いた。
(疲れたって、何があったんだろう。いつも、大変な実技の授業後だろうと元気にしてるのに)
彼が体力的に疲れることなど考えにくい。ということは、精神面で何か疲労を感じるようなことがあったのだろうか。
抱きしめてくる腕をそっと撫でると、ギルバートは感じ入ったように深くため息をついた。
「先輩といると、落ち着くな。癒される・・・・・・」
「・・・・・・ふふ、嬉しいです。私でよければ、いくらでも癒されてください」
サミールが優しく微笑みかけると、ギルバートは穏やかな表情になって。
ちゅっと、サミールの耳朶に口付けた。
「・・・・・・好きだよ、先輩。大好き」
「あ、ぎ、ギルバート様・・・・・・」
ちゅ、ちゅ、と首筋にキスされて、サミールは己の身体が疼くのを感じる。
めくるめく快楽に二人で溺れた昨夜が思い出されてしまい、吐息が乱れた。
「・・・・・・ねえ先輩、先輩ってよく恋愛小説読んでるよね」
耳元に熱い吐息を吹きかけながら、サミールの着衣を乱さない程度に服の上から身体をまさぐりながら、ギルバートが尋ねてくる。
サミールの手元にある本は、最近図書室に入架された恋愛モノの小説だ。
サミールは、しょっちゅう恋愛小説を読んでいた。別に意識してそのジャンルばかり読んでいたつもりはないが、どうしても前世から恋愛に対する強い憧れが抜けないのだ。
「・・・・・・あ、憧れてたんです。その、素敵な恋愛に・・・・・・」
恥じらいに頬を染めながら答える。耳まで赤くしたサミールに、ギルバートは愛おしげな眼差しを注いで。
震えていたサミールの、手を取り、指を絡ませて繋いだ。
「じゃあ、来月夏休みに入ったら・・・・・・俺たちも、もっと恋人らしいこと、たくさんしようか」
「ふぇっ・・・・・・⁉︎」
(も、もっと恋人らしいことって、それは)
昨夜したようなことより、もっと淫らで激しい行為を想像してしまい、サミールはぶるっと背筋を震わせる。
・・・・・・ギルバートと付き合いだしてすぐの時、生真面目なサミールは後学のためにと思い男同士の交わり方を調べてしまったことがあった。
この学園のまあまあ大きな図書室には、(もちろん健全なラインの)性教育的な内容の本も数点存在する。
(そ、それって、ギルバートのを、私の中に入れられるようにするとか、そういう・・・・・・)
真っ赤になって身を縮こめ、もじもじするサミール。
するとギルバートは、ニヤニヤとした微笑みを浮かべて、サミールの頬を指先でツンとつついた。
「・・・・・・いやらしい意味じゃなくて。普通に、二人で遊びに出掛けたりしようってことだよ」
揶揄するような口調で囁くギルバートを、サミールは潤んだ瞳で恨めしげに見つめる。
「か、からかわないでくださいませ‼︎」
昨夜の出来事があったからか、ついついエッチな方向にばかり想像を働かせてしまった己をサミールはひどく恥じた。
かああっと頬を熱くし、ぷいっと顔を背けてしまう。
しかし、少し間を置いてギルバートに握られた手を握り返すと、赤らめた顔を隠すように俯きながら口を開いた。
「・・・・・・楽しみです。夏休み・・・・・・ギルバート様とたくさん、デート、したい・・・・・・」
どこまでも愛らしいサミールに、ギルバートは口元が緩んで笑んでしまうのを抑えられない。
そのまま、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るまで、二人は出窓の日向で手を繋ぎ、寄り添いあっていた。
出窓に腰掛けたサミールの背後に座り、背中側からぎゅっと抱きついて、肩に顎をのせてくる。
すりすり、と髪に頬擦りされると、昨夜淫らに触れ合ったことを思い出し、サミールは頬を熱くしてしまった。
「・・・・・・先輩」
しかし、囁くギルバートの声にどこか元気が無いのに、サミールはすぐさま勘付いて心配になる。
「ギルバート様・・・・・・何か、嫌なことでもありましたか?」
サミールが読んでいた本に栞を挟み、パタンと閉じて首だけ後ろを向くと、ギルバートは優しく微笑んで。
「・・・・・・大丈夫だよ、先輩。ちょっと、疲れただけで」
サミールの身体を抱きしめながら、囁いた。
(疲れたって、何があったんだろう。いつも、大変な実技の授業後だろうと元気にしてるのに)
彼が体力的に疲れることなど考えにくい。ということは、精神面で何か疲労を感じるようなことがあったのだろうか。
抱きしめてくる腕をそっと撫でると、ギルバートは感じ入ったように深くため息をついた。
「先輩といると、落ち着くな。癒される・・・・・・」
「・・・・・・ふふ、嬉しいです。私でよければ、いくらでも癒されてください」
サミールが優しく微笑みかけると、ギルバートは穏やかな表情になって。
ちゅっと、サミールの耳朶に口付けた。
「・・・・・・好きだよ、先輩。大好き」
「あ、ぎ、ギルバート様・・・・・・」
ちゅ、ちゅ、と首筋にキスされて、サミールは己の身体が疼くのを感じる。
めくるめく快楽に二人で溺れた昨夜が思い出されてしまい、吐息が乱れた。
「・・・・・・ねえ先輩、先輩ってよく恋愛小説読んでるよね」
耳元に熱い吐息を吹きかけながら、サミールの着衣を乱さない程度に服の上から身体をまさぐりながら、ギルバートが尋ねてくる。
サミールの手元にある本は、最近図書室に入架された恋愛モノの小説だ。
サミールは、しょっちゅう恋愛小説を読んでいた。別に意識してそのジャンルばかり読んでいたつもりはないが、どうしても前世から恋愛に対する強い憧れが抜けないのだ。
「・・・・・・あ、憧れてたんです。その、素敵な恋愛に・・・・・・」
恥じらいに頬を染めながら答える。耳まで赤くしたサミールに、ギルバートは愛おしげな眼差しを注いで。
震えていたサミールの、手を取り、指を絡ませて繋いだ。
「じゃあ、来月夏休みに入ったら・・・・・・俺たちも、もっと恋人らしいこと、たくさんしようか」
「ふぇっ・・・・・・⁉︎」
(も、もっと恋人らしいことって、それは)
昨夜したようなことより、もっと淫らで激しい行為を想像してしまい、サミールはぶるっと背筋を震わせる。
・・・・・・ギルバートと付き合いだしてすぐの時、生真面目なサミールは後学のためにと思い男同士の交わり方を調べてしまったことがあった。
この学園のまあまあ大きな図書室には、(もちろん健全なラインの)性教育的な内容の本も数点存在する。
(そ、それって、ギルバートのを、私の中に入れられるようにするとか、そういう・・・・・・)
真っ赤になって身を縮こめ、もじもじするサミール。
するとギルバートは、ニヤニヤとした微笑みを浮かべて、サミールの頬を指先でツンとつついた。
「・・・・・・いやらしい意味じゃなくて。普通に、二人で遊びに出掛けたりしようってことだよ」
揶揄するような口調で囁くギルバートを、サミールは潤んだ瞳で恨めしげに見つめる。
「か、からかわないでくださいませ‼︎」
昨夜の出来事があったからか、ついついエッチな方向にばかり想像を働かせてしまった己をサミールはひどく恥じた。
かああっと頬を熱くし、ぷいっと顔を背けてしまう。
しかし、少し間を置いてギルバートに握られた手を握り返すと、赤らめた顔を隠すように俯きながら口を開いた。
「・・・・・・楽しみです。夏休み・・・・・・ギルバート様とたくさん、デート、したい・・・・・・」
どこまでも愛らしいサミールに、ギルバートは口元が緩んで笑んでしまうのを抑えられない。
そのまま、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るまで、二人は出窓の日向で手を繋ぎ、寄り添いあっていた。
751
お気に入りに追加
4,077
あなたにおすすめの小説
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
【異世界大量転生2】囲われモブは静かに引きこもりたい
とうや
BL
趣味は読書、特技は家事全般の御厨透はモブに転生してしまった。悪の将軍の初恋の人で、悪役令嬢の従兄弟のオズワルドに。
1年間意識不明で眠り続けたために廃嫡されたオズワルド。用無しと蔑まれ、虐待される従姉妹のルクレツィアを救うには、悪の将軍(予定)の王弟殿下と結婚するしかないらしい。…は?それってどこのボーイズラブ ?
物静かな溺愛系王弟×大人しくやらかす体弱い系転生者。基本淡々とした話ですが、仄暗かったり、残酷な表現もあります。たまに料理回があります。
R-18はタイトルに※印が付いてます。読み飛ばしても話は繋がります。でもエロあんまりないです。1話が超短いです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。
とうや
BL
【6/10最終話です】
「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」
王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。
あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?!
自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。
***********************
ATTENTION
***********************
※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。
※朝6時くらいに更新です。
裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?
柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」
輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。
あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。
今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。
挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。
ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。
「アレックス…!」
最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。
スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け
最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。
誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。
悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。
柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。
シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。
幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。
然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。
その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。
「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」
そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。
「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」
そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。
主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。
誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる