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第七話
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真白い正装に身を包み、城内の礼拝堂に恐る恐る踏み込む。王族や高位貴族がひしめく会場内に緊張し怖じ気づくも、教壇の前に立ち静かに微笑むメイナードの姿を目にするとひどく安心感を覚えて、俺はバージンロードの上をそっと歩き出した。
彼と出会ってから二月が経ち、準備が整った俺たちは、今日をもって夫婦――否、夫夫と言うべきか――になる。
王族に運命の番が現れることは国が富む吉兆という言い伝えがあるらしく、メイナードと俺、シェリルの結婚はほとんどの貴族、国民から祝福されていた。
(――今世こそ、幸せになりたい)
俺は心の内でそう願いながら、メイナードの隣に並んだ。――彼となら、きっと叶うだろう。
―――――
陽が沈み、無事に式を終えると、今度は王子の結婚を祝う舞踏会が城で開かれた。美しい音楽が奏でられ、華やかに着飾った貴族子女達が踊る姿に、俺はつい目を奪われる。
「僕たちも踊ろうか、シェリル」
隣に立つメイナードがそう言うのに、俺は狼狽する。
「俺、踊ったことないけど大丈夫かな」
しかし、メイナードは俺の手を取り身体を引き寄せると、優しく微笑んでみせて。
「大丈夫。僕が教えるし、リードするから」
至近距離で囁かれて、頬がかっと熱くなる。彼に少し触れられるだけで、これからの夜ことを思い心臓がドクドクと拍動する。
(今夜……多分、するよな、結婚初夜だし)
αとΩの番契約は、ほとんどの場合結婚初夜に行われるというのがこの国では慣習らしい。つまり今夜、俺の首筋にメイナードが……。
(やば、考えるだけで身体、熱くなって……)
俺が真っ赤になってもじもじしていると、メイナードは少し意地悪な笑みを浮かべて。
「……そんな物欲しそうな顔をされると、今すぐ二人きりで抜け出したくなってしまいたくなるな」
俺にしか聞こえないような小さな声で低く囁いてくるものだから、背筋がゾクゾクして、腰が抜けそうになってしまう。メイナードのことで頭がいっぱいになり、夢中になっていた俺はこの時、殺意のこもった眼差しで俺を睨む令嬢に……迫り来る悪意に、全く気がつけないでいた。
―――――
二ヶ月の間寝泊まりした客室で、薄暗い夜闇の中ランプの明かりを頼りに荷物をまとめる。今日からは、メイナードの部屋で二人寝ることになるのだ。
当のメイナードは、舞踏会の終わり際にどこかの貴族に呼び止められてしまい、おそらくまだ会場にいる。
(こ、こういう時って先にお風呂入った方が良いのか? でも、い、挿れられる為の準備の仕方とか、分からないしな……)
部屋を片付けながら、一人悶々としていた……その時だった。背後で、ドアの開く音がしたのは。メイナードが来たのかと思って、俺が後ろを振り返ろうとした、刹那。
彼の物ではない、太い男の腕が背後から伸びてきて、ひどく薬品臭のするハンカチで口を塞がれ――心臓が凍り付きそうな恐怖の中、俺は手足でもがくように抵抗した末……意識を失った。
廊下の窓から差し込む青白い月光が、昏倒した護衛の騎士達を屍のように不気味に照らし出す。
――深夜0時、シンデレラは片方の靴だけ残して姿を消した。
彼と出会ってから二月が経ち、準備が整った俺たちは、今日をもって夫婦――否、夫夫と言うべきか――になる。
王族に運命の番が現れることは国が富む吉兆という言い伝えがあるらしく、メイナードと俺、シェリルの結婚はほとんどの貴族、国民から祝福されていた。
(――今世こそ、幸せになりたい)
俺は心の内でそう願いながら、メイナードの隣に並んだ。――彼となら、きっと叶うだろう。
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陽が沈み、無事に式を終えると、今度は王子の結婚を祝う舞踏会が城で開かれた。美しい音楽が奏でられ、華やかに着飾った貴族子女達が踊る姿に、俺はつい目を奪われる。
「僕たちも踊ろうか、シェリル」
隣に立つメイナードがそう言うのに、俺は狼狽する。
「俺、踊ったことないけど大丈夫かな」
しかし、メイナードは俺の手を取り身体を引き寄せると、優しく微笑んでみせて。
「大丈夫。僕が教えるし、リードするから」
至近距離で囁かれて、頬がかっと熱くなる。彼に少し触れられるだけで、これからの夜ことを思い心臓がドクドクと拍動する。
(今夜……多分、するよな、結婚初夜だし)
αとΩの番契約は、ほとんどの場合結婚初夜に行われるというのがこの国では慣習らしい。つまり今夜、俺の首筋にメイナードが……。
(やば、考えるだけで身体、熱くなって……)
俺が真っ赤になってもじもじしていると、メイナードは少し意地悪な笑みを浮かべて。
「……そんな物欲しそうな顔をされると、今すぐ二人きりで抜け出したくなってしまいたくなるな」
俺にしか聞こえないような小さな声で低く囁いてくるものだから、背筋がゾクゾクして、腰が抜けそうになってしまう。メイナードのことで頭がいっぱいになり、夢中になっていた俺はこの時、殺意のこもった眼差しで俺を睨む令嬢に……迫り来る悪意に、全く気がつけないでいた。
―――――
二ヶ月の間寝泊まりした客室で、薄暗い夜闇の中ランプの明かりを頼りに荷物をまとめる。今日からは、メイナードの部屋で二人寝ることになるのだ。
当のメイナードは、舞踏会の終わり際にどこかの貴族に呼び止められてしまい、おそらくまだ会場にいる。
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部屋を片付けながら、一人悶々としていた……その時だった。背後で、ドアの開く音がしたのは。メイナードが来たのかと思って、俺が後ろを振り返ろうとした、刹那。
彼の物ではない、太い男の腕が背後から伸びてきて、ひどく薬品臭のするハンカチで口を塞がれ――心臓が凍り付きそうな恐怖の中、俺は手足でもがくように抵抗した末……意識を失った。
廊下の窓から差し込む青白い月光が、昏倒した護衛の騎士達を屍のように不気味に照らし出す。
――深夜0時、シンデレラは片方の靴だけ残して姿を消した。
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