【完結】嫌われ者伯爵ですが義理の息子の愛が止まりません

百日紅

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 ーー薄いカーテン越しに輝く朝陽、その眩い光がディーの枕元を照らす。

「う、うぅ・・・・・・」

(もう朝か・・・・・・いや、まだだ、まだ眠るんだ・・・・・・)

 毛布を体に巻きつけ、ぬくぬくと温まりながら二度寝を試みるディー。

 ーーその時、部屋のドアがコンコン、とノックされて。

「ディー、おはよう。もう朝だよ」

 カチャッ・・・・・・と小さな音がたちドアが開かれて、すらりと背の高く、整った顔立ちをした美男子ーーレスターが部屋に入ってきた。

 彼を拾ってから七年が経ち、小さな子猫ちゃんだったレスターはすっかり二十歳ほどの見た目まで成長していた。

 幼く可愛いかった声は成人男性らしく低いものになり、身長はとうにディーを越している。

 なによりその体つきだ。着痩せして見えるが、腹筋は割れ、胸板は厚く、広い肩幅も非常に男性的である。

 ディーは彼を黒猫の獣人だと思い込んで育てていたが、実際はネコ科はネコ科でも黒豹の獣人だったのだ。

「・・・・・・ほら、ディー。もう朝ごはん出来てるよ」

 低い声で優しく言いながら、レスターがベッドに近づいてくる。

 そのまま、ギシッ・・・・・・と音がしてレスターがベッドに上がってくると、ディーはうんうん唸りながら寝返りを打った。

「ディー、僕と一緒に朝ご飯食べよう」

 ディーの身体の上にそっと覆い被さって、囁くレスター。

 その眠たげなとろんとしたディーの顔を熱っぽく見つめながら、いつものように頬に口付ける。

「・・・・・・ディー」

 ちゅ、ちゅと優しくキスされて、ディーはくすぐったさと気恥ずかしさに顔を背けた。

 大人の男性らしく育った、誰もが見惚れるような美男子のレスターに低い美声で耳元に囁かれ、口づけられると、どうしようもなく胸が高鳴って堪らなくなる。

 体重はかけられていないが、上に乗られて抱きしめられると、彼の身体の逞しさを感じて頬を染めてしまった。

「ディー、起きてよ・・・・・・」

 こめかみや瞼にちゅうっとキスされて、ディーの吐息が震える。

「ちょっ、レスター、分かったって・・・・・・起きるから、先行ってろよ」

 まだ寝起きの眠たげな声でディーが言ったその時ーーレスターが耳朶にちゅ、と口付けてきて、柔らかな唇に食まれる奇妙な感覚に「はぁぅッ・・・・・・♡」という甘い声を上げてしまった。

 その、自分の口から出たとは到底信じ難いような恥ずかしい声に、ディーは居た堪れなくなって耳まで真っ赤になる。

 耳にかかるレスターの熱い吐息に背筋がぞくぞくして、ディーの下半身に熱が集まった。

 ーーこれ以上好き勝手させてはいけない。ディーはそんな焦燥感に駆られると、レスターの胸を無理やり押し返す。

「・・・・・・分かった、分かった‼︎ 起きるからッ‼︎」

 真っ赤に染めた頬と涙に潤んだ瞳を隠すように顔を背けながらディーが言うと、レスターはニコニコ微笑んで素直にベッドから降りた。

「顔が赤いよ、ディー。寝起きだからかな? 僕先に行ってるから、早く顔洗ってきてね」

「・・・・・・あぁ、分かった・・・・・・」

 レスターが上機嫌で部屋から出ていくのを見て、ディーはほっと息をつき胸を撫で下ろす。

 あのまま「一緒に行こう」などと言われていたら、困ったことになるところだったのだ。

 ・・・・・・己の反応した股間に、鎮まれ、鎮まれと念をかける。

 さっき毛布から出て立ち上がっていたら、レスターにもディーのそこが勃起していることを知られるところだった。

(・・・・・・こんなの、誤反応だ。レスターがあんな風にキスしてくるから)

 ぎゅっと股間を押さえて耐えようとするが、なかなか治まってくれない。

『ディー、起きて・・・・・・』

 低く甘い声が鼓膜を震わせる、その快感を思い出すたびにゾクゾクして、体が疼いてしまうのだ。

(ーーいい加減、ああいうことはやめさせなきゃだな。もうレスターは子供じゃ無いんだ、あんまり俺にベタベタしているようだと婚期が遅れるだろう・・・・・・俺と同じように)

 シーツをぎゅっと掴み、握りしめるディー。

 レスターの成長速度も二十歳程の見た目になると安定してきた。

 ーーいよいよ、養父として彼にちゃんと結婚相手を探してやらなきゃいけない。ディーは子離れをするべきだし、レスターも親離れをしなければならない頃合いなのだ。

 レスターが妻を娶り、ディーに構うことなく妻に愛を注ぐ姿を想像すると胸が締め付けられるように苦しくなる。

 ディーにとってレスターは、常に隣にいて、ディーを孤独から救ってくれるかけがえのない存在であった。

(レスターを拾って養子にした以上、あいつを人並みに幸せにしてやらなきゃいけない責任があるのに・・・・・・俺は我儘だ。こんな嫌われ者の自分とずっとずっと一緒にいて欲しいと、今のままレスターの愛情を独占し続けていたいなどと考えてしまう)

 ディーはやがて身体が落ち着いてくると、すっと立ち上がり部屋のドアノブに手をかけた。

 ぐっと握るその手に、覚悟の力がこもる。

(ーーレスターの嫁候補を探してやろう。俺の養子でしかも獣人だが、レスターは見目もいいし何より心優しい。きっと良い相手が見つかるはずだ・・・・・・)
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