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第三十五話・最終決戦

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 ーー街中に響く程の獣のような咆哮。マラは片手に剣を握りしめながら、空に向けて大きく両腕を開く。

「ーーウォォォォォオッ‼︎‼︎‼︎」

 その瞬間、マラの全身がぶくぶくと膨れ上がり、まるでファンタジーに出てくるオークのような、筋肉質の化け物に変化してしまった。

 服は破れ、真っ裸の巨人になった彼に、上空に飛んで来たテレビ局の中継のヘリが慌てて方向を変え飛んでいく。

 最早、全国のお茶の間のテレビにはマラの魔羅が映ってしまったことだろう。

「ーー本当に、馬鹿な奴だ」

 どこか哀愁漂う声音で、リヒトが吐き捨てる。

「・・・・・・お前達、あれが元人間だからって容赦する必要はない。あいつは怪人共をけしかけ、多くの人々を襲わせ傷つけてきた化け物だ。倒してやる以外あり得ない」

 リヒトのその言葉に、皆は頷いて武器を握りしめる。

 ちっちゃくなったレイジも、その可愛い手で頑張って武器を抱き上げて。

「・・・・・・ほら、アオイ君。あなたもぶきをもって。これがおわったら、シン君といくらでもヤれますから」

「あぁっ・・・・・・シン♡ さっさと終わらせて、俺とッ・・・・・・♡」

「おいレイジッ、お前勝手なことッ・・・・・・‼︎ 」

「まあまあ、アオイが戦う気になるなら良いじゃないか」

「・・・・・・よし、みんな、限界までリビドーを打ち込むよ‼︎ 最終決戦だ‼︎」

 オトヤの声がけに、ファイブにリヒトを加えた六人で力を合わせる。

『また俺の邪魔をする気かぁぁぁあ‼︎‼︎』

 ぐわっとその大きな全身で襲いかかってくるマラ。

 対して、六人はそれぞれの思いを乗せた渾身の一撃を繰り出した。

「「「「リビドーインパクト‼︎‼︎」」」」

 ーーリビドーを集めたエネルギーの波動が、マラの胸の核を撃ち抜く。

『グッ・・・・・・オォォォォォォオッ‼︎‼︎』

 苦しげな雄叫びが、街に轟く。

「これで終わりだ・・・・・・全部‼︎」

 シンがそう口にしたのと、ほぼ同時だった。

『さ、ざいごに、どうてぃ・・・・・・そつぎょう、したかっ・・・・・・た・・・・・・』

 ーーマラは哀しそうな、悔しそうな声でそう言うと・・・・・・その巨体が霧散し、跡形もなく消え去っていった。



ーーーーー



 ーー基地に帰る道すがら、六人乗りの車の中。アオイはシンの太ももをいやらしい手つきでスリスリしていた。

「シン・・・・・・♡ ようやく戦いが終わったな♡」

「あぁ、それはすごい嬉しいことだけど、ちょっ・・・・・・待てって‼︎ 変なとこ触るな、ぁっ♡ ・・・・・・帰ってからって言ってるだろ‼︎♡」

 一番後ろの席でイチャイチャし出したシンとアオイに、ユウキとレイジは苦笑する。

「一時の気まずかった二人が嘘みたいだねぇ」

「ほんとに」

 ちっちゃいレイジはユウキの膝に座って、大人びた表情でため息をつく。

 その見た目とのギャップが可愛らしくて、ユウキはついその子供らしい頬をふにふにつついた。

 リヒトの見立てだと、アオイのメロメロモードとレイジのショタ化は明日中には効果が切れるという。

「・・・・・・僕たちも、帰ったら、ね?♡」

 幼い小さな頭を撫で撫でしながらユウキが囁くと、レイジは頭のサイズに合わない眼鏡をなんとかクイっとして頬を染めた。

「こんないたいけなようじになった私をどうする気ですか、このへんたいは」

 ーー後部座席全体がピンク色の雰囲気になっていく中、運転席のリヒトは静かに・・・・・・どこか哀しげに微笑する。

「・・・・・・本当に、終わったんだな」

 その横顔を見つめる助手席のオトヤ。

 いつもなら、運転する教官かっこいい、などとはしゃぐところだが、今日は何故だかそんな気分になれない。

(教官・・・・・・昔の恋人を、戦いを終わらせるためとはいえ・・・・・・)

 その辛いであろう心中を想うと、オトヤは戦いを終わらせるという悲願を達成したというのに、喜ぶことができなかった。
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