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第二十六話・思春期

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(はぁ~、シンとアオイがついに・・・・・・なんだか、僕まで嬉しい気持ちになっちゃうな)

 にやにやとした微笑みを浮かべながら、レイジ・ユウキペアと別れて一人廊下を歩き出すオトヤ。

 自身が、リヒトに対する恋煩いで苦しんでいた経験からか・・・・・・ここ数日のシンとアオイの仲に暗雲が立ち込めていたのを、オトヤは自分ごとのように心苦しく思っていたのだ。

(僕も頑張ろう。頑張って敵を倒して、戦いを終わらせて、そして・・・・・・)

 ーー18歳になったら、教官の恋人にしてもらうんだ。そう意気込みながら一歩踏み出した、その時。

 ズキ、とした痛みが右足首に走り、オトヤは顔を顰めた。

 先程の戦闘で捻った足首が、ジンジンと痛むのだ。・・・・・・が、壁に手をついて行けば歩けないことはない。

(部屋に予備の湿布とか、あったっけ)

 一歩一歩ふらつきながら、少しずつ自室に向かって歩いていくオトヤ。そこに、背後から早歩きの足音が聞こえてきた。

「・・・・・・オトヤ」

 その低く静かな、しかしどこか色気のあるいつものリヒトの声に、オトヤは頬を染める。一声聞いただけで、胸の鼓動が高まって。

 痛みに憂鬱な表情を浮かべていたオトヤは、花が咲くようにぱぁっと笑顔になる。

「教官っ・・・・・・‼︎」

 その瞬間、自分が怪我をしていることすら忘れてパッと身体ごと振り返ってしまい、オトヤは大きく前にバランスを崩した。

「あ、わっ・・・・・・⁉︎」

「ーーッ、危ない」

 前のめりに倒れて行くオトヤ。その華奢な身体をリヒトが抱き止める。

 ふわり、と香った大好きなリヒトの匂いに、抱きしめられる腕の感触にときめくオトヤ。

「す、すみません、教官っ・・・・・・‼︎」

 頬を赤らめ、慌てて離れようとするオトヤを、リヒトはその細い手首を掴んで引き止めた。

「待て。・・・・・・俺はお前を探していたんだ」

「・・・・・・えっ?」

「オトヤ、さっきの戦闘で足に怪我をしていたな」

 治療するから来い、と言うと、リヒトはオトヤに背を向けてすっとしゃがみ込む。

「歩くのも辛いんだろ、背負って行く」

「あの、えっと、きょ、教官・・・・・・」 

 いつものごとく冷静で表情一つ変えないリヒトだが、その彼がみせるいつも以上の優しさに触れて、オトヤはたじたじになる。

「じゃ、じゃあその、失礼しますっ・・・・・・‼︎」

 思い切ってその背中に身を委ね、リヒトの肩にぎゅっと抱きつく。視界を大きく占めるのは、彼の束ねられた艶のある長い黒髪、男らしく筋張ってはいるが生白く、滑らかで絹のようなきめ細かい肌をしたうなじ。

(あぁ、教官・・・・・・なんて綺麗な人なんだろう。三年後に教官の恋人にしてもらえるなんて、夢みたいだ)

 オトヤの肉付きは薄いが柔らかな太腿を両脇に抱えたリヒトが立ち上がる。

 見た目にはすらっとした細身のリヒトだが、こうして抱きついてみると全身引き締まった筋肉がついていて、男の子であるオトヤを軽々背負い上げた。

(そりゃそっか、教官、ミダラーブラックだもん。めちゃくちゃ強いんだもんね。・・・・・・きっと、僕たちの見えないところでいっぱい鍛えてるんだろうな)

 そんなところも好き、などと心の中で囁くオトヤ。しかし、好き好きと胸の内で繰り返しているうちに、身体が反応してしまって。

 股間を硬くしてしまったオトヤは、背負われている姿勢のせいでリヒトの背中にそこを当ててしまい、いたたまれなくなった。

「ご、ごめんなさい、教官っ」

 鎮まれ、鎮まれと頭で念じるほど硬く勃起していく股間に、オトヤは耳まで真っ赤になる。

 リヒトが一歩歩くたびに、そこが服越しに背中に擦れて、快感に腰が蕩けた。

「・・・・・・生理現象なら仕方ない。お前が元気なようで良かった」

 静かな声音で言うリヒト。しかしその言葉の端々から伝わるオトヤを気遣う心に、いかがわしいことを考えてばかりの思春期真っ盛りなオトヤは後ろめたさと申し訳なさでいっぱいになってしまった。
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