角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
232 / 247

230、気の遣い方。

しおりを挟む
畑の全滅から数日、地面が乾き始めたのを確認してから、精力的に畑を取り戻そうとする少女の姿が在った。
少女が暫く落ち込むのではと心配していた者達は、その様子に安堵の息を吐いている。
当の少女は女にいっぱい甘えたので、ピッコピッコと元気いっぱいだ。
絶対に畑は取り戻すと男に伝え、頭を撫でて貰えたので更にふんすふんすと気合を入れていた。

傍には少女を手伝う少年と虎少年、そして何故か羊角の姿も在る。
このチャンスを逃してはならぬとばかりに、少女への点数稼ぎのつもりの様だ。
そしてそんな羊角に、彼女と複眼が呆れた視線を送っている。

「・・・あいつ、虎ちゃん達より役に立ってない気がするんだけど」
「元々力仕事は出来る方じゃないもの。最近は動いてるとはいえ、限度があるわよ」
「なーにしに行ったんだか、自分の体力考えて無いねぇ」
「考えてたら子供と一緒に同じ速度で作業はしないわよ。私でもばてるわよ、あれ」

全滅した畑を取り戻す作業は、人力でやるならとにかく力と体力仕事になる。
少女は当然問題無いとして、虎少年も鍛えているので問題ない。
そして少年もまだ幼いとはいえ、むしろ幼さからくる体力が有り余っている。

そんな子供達に合わせて動こうとして、当然途中から付いて行けなくなる羊角。
ぜーぜー言い始めた所に少女がやって来て、休んでいて良いよと近くの椅子まで手を引かれる始末である。
それはそれで幸せそうではあったが、完全に役立たずであった。

「所で話は変わるけど、アンタの親、何時くんの? 連絡来てからそれなりに立ってるよ?」
「さあ、近い内としか言えないわね」
「男連れて来るって言ってたのにおっそいね」
「おそらくだけど、あのくそ親父、相手の許可取る前に言って来たんだと思うのよ。今頃私の所に連れて来る為に、相手の男性が予定調整してるんだと思うわ」
「あー、なるほど」

父親の性格を思い出しながら、溜め息を吐いて説明をする複眼。
そしてそれは間違っておらず、だからこそ未だに父親は屋敷に訪れないでいる。
おかげで虎少年との恋人のふりを完璧にやりきる自信がある様だ。
ただし自身が有るのは複眼だけで、虎少年はまだ少し不安な様だが。

「虎ちゃんには迷惑かけてるから、そのうち何かで返さないとね・・・」

少女と一緒に頑張る虎少年を見つめ、それに気が付いた虎少年が小さく手を振っていた。
複眼も優しく目を細めて手を振り返し、それを見た彼女はニマリと笑う。

「あんたさ、実際の所、虎ちゃんいいなーって思ってない?」
「ちみっこしか視界に入ってない子をどうしろってのよ」
「そうかなぁ。今の視線、確実にアンタに向いてたよ?」
「屋敷の中では数少ない常識人として接してたら、当然懐かれもするわよ。あんたと違ってね」
「それじゃあたしが常識無いみたいじゃん!」
「何を今更」

何時も通りわーぎゃーと騒ぐ彼女と、それにクールに返す複眼。
最終的に彼女が何かいけない事を言ったらしく、一方的にすねを蹴られ始めている。
虎少年はそんな様子を、複眼が楽しそうだなと感じて笑顔で見ていた。
傍に居た少年も虎少年の動きが止まった事で、同じく二人に視線を向ける。

「あの二人も旦那様と一緒で、良く飽きないですよね」
「確かに、あの二人良くああやってるよね」

少年の少し呆れ気味な言葉に、虎少年はクスクスと笑いながら応える。
そこで少女は顔を上げ、ふえっ?と声を漏らして彼女と複眼に気が付いた。
慌てて二人を、というか複眼を止めにぱたぱたと走って向かい、渋々といった様子で蹴るのを止める複眼。
彼女は嘘泣きをしながら少女に泣きつき、少女は優しく彼女の足をなでなでしている。

「・・・普段通りなのは、そう振舞う事で気にさせないようにしてるのかもね」
「え、あ・・・ああ、成程」
「まだまだ僕達は気が回らないね」
「そうですね・・・まだまだ先輩達には勝てそうにないですね」

虎少年は喧嘩をする二人、そして止めに行った少女の反応を見て、少し反省をしていた。
自分は心配をして気を遣うばかりで、気を遣わないという遣い方が下手だった事に。
そしてその言葉の意味を理解した少年も、先輩達を見て敵わないなと感じていた。

「へーんだ、目玉お化けー! いっつもどこ見てんのか解んないのよ! ばっらばらに目を向けてないで、ちゃんとこっち見なさいよ!」
「あ゛? 脛蹴られるだけじゃ足りないって? 良いわよ、次は鼻っ面潰してあげようか?」

いったん収まったはずの喧嘩は、何故か少女をはさんでまた再開されていた。
少女は二人の剣幕にオロオロして、手をバタバタさせながら必死に止めようとしている。

「・・・あれ、本当にわざとなんでしょうか?」
「ちょっと、自信、無いかな・・・あはは」

何処までも何時も通りな屋敷の住人に、虎少年は力の無い笑い返すのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...