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230、気の遣い方。
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畑の全滅から数日、地面が乾き始めたのを確認してから、精力的に畑を取り戻そうとする少女の姿が在った。
少女が暫く落ち込むのではと心配していた者達は、その様子に安堵の息を吐いている。
当の少女は女にいっぱい甘えたので、ピッコピッコと元気いっぱいだ。
絶対に畑は取り戻すと男に伝え、頭を撫でて貰えたので更にふんすふんすと気合を入れていた。
傍には少女を手伝う少年と虎少年、そして何故か羊角の姿も在る。
このチャンスを逃してはならぬとばかりに、少女への点数稼ぎのつもりの様だ。
そしてそんな羊角に、彼女と複眼が呆れた視線を送っている。
「・・・あいつ、虎ちゃん達より役に立ってない気がするんだけど」
「元々力仕事は出来る方じゃないもの。最近は動いてるとはいえ、限度があるわよ」
「なーにしに行ったんだか、自分の体力考えて無いねぇ」
「考えてたら子供と一緒に同じ速度で作業はしないわよ。私でもばてるわよ、あれ」
全滅した畑を取り戻す作業は、人力でやるならとにかく力と体力仕事になる。
少女は当然問題無いとして、虎少年も鍛えているので問題ない。
そして少年もまだ幼いとはいえ、むしろ幼さからくる体力が有り余っている。
そんな子供達に合わせて動こうとして、当然途中から付いて行けなくなる羊角。
ぜーぜー言い始めた所に少女がやって来て、休んでいて良いよと近くの椅子まで手を引かれる始末である。
それはそれで幸せそうではあったが、完全に役立たずであった。
「所で話は変わるけど、アンタの親、何時くんの? 連絡来てからそれなりに立ってるよ?」
「さあ、近い内としか言えないわね」
「男連れて来るって言ってたのにおっそいね」
「おそらくだけど、あのくそ親父、相手の許可取る前に言って来たんだと思うのよ。今頃私の所に連れて来る為に、相手の男性が予定調整してるんだと思うわ」
「あー、なるほど」
父親の性格を思い出しながら、溜め息を吐いて説明をする複眼。
そしてそれは間違っておらず、だからこそ未だに父親は屋敷に訪れないでいる。
おかげで虎少年との恋人のふりを完璧にやりきる自信がある様だ。
ただし自身が有るのは複眼だけで、虎少年はまだ少し不安な様だが。
「虎ちゃんには迷惑かけてるから、そのうち何かで返さないとね・・・」
少女と一緒に頑張る虎少年を見つめ、それに気が付いた虎少年が小さく手を振っていた。
複眼も優しく目を細めて手を振り返し、それを見た彼女はニマリと笑う。
「あんたさ、実際の所、虎ちゃんいいなーって思ってない?」
「ちみっこしか視界に入ってない子をどうしろってのよ」
「そうかなぁ。今の視線、確実にアンタに向いてたよ?」
「屋敷の中では数少ない常識人として接してたら、当然懐かれもするわよ。あんたと違ってね」
「それじゃあたしが常識無いみたいじゃん!」
「何を今更」
何時も通りわーぎゃーと騒ぐ彼女と、それにクールに返す複眼。
最終的に彼女が何かいけない事を言ったらしく、一方的にすねを蹴られ始めている。
虎少年はそんな様子を、複眼が楽しそうだなと感じて笑顔で見ていた。
傍に居た少年も虎少年の動きが止まった事で、同じく二人に視線を向ける。
「あの二人も旦那様と一緒で、良く飽きないですよね」
「確かに、あの二人良くああやってるよね」
少年の少し呆れ気味な言葉に、虎少年はクスクスと笑いながら応える。
そこで少女は顔を上げ、ふえっ?と声を漏らして彼女と複眼に気が付いた。
慌てて二人を、というか複眼を止めにぱたぱたと走って向かい、渋々といった様子で蹴るのを止める複眼。
彼女は嘘泣きをしながら少女に泣きつき、少女は優しく彼女の足をなでなでしている。
「・・・普段通りなのは、そう振舞う事で気にさせないようにしてるのかもね」
「え、あ・・・ああ、成程」
「まだまだ僕達は気が回らないね」
「そうですね・・・まだまだ先輩達には勝てそうにないですね」
虎少年は喧嘩をする二人、そして止めに行った少女の反応を見て、少し反省をしていた。
自分は心配をして気を遣うばかりで、気を遣わないという遣い方が下手だった事に。
そしてその言葉の意味を理解した少年も、先輩達を見て敵わないなと感じていた。
「へーんだ、目玉お化けー! いっつもどこ見てんのか解んないのよ! ばっらばらに目を向けてないで、ちゃんとこっち見なさいよ!」
「あ゛? 脛蹴られるだけじゃ足りないって? 良いわよ、次は鼻っ面潰してあげようか?」
いったん収まったはずの喧嘩は、何故か少女をはさんでまた再開されていた。
少女は二人の剣幕にオロオロして、手をバタバタさせながら必死に止めようとしている。
「・・・あれ、本当にわざとなんでしょうか?」
「ちょっと、自信、無いかな・・・あはは」
何処までも何時も通りな屋敷の住人に、虎少年は力の無い笑い返すのであった。
少女が暫く落ち込むのではと心配していた者達は、その様子に安堵の息を吐いている。
当の少女は女にいっぱい甘えたので、ピッコピッコと元気いっぱいだ。
絶対に畑は取り戻すと男に伝え、頭を撫でて貰えたので更にふんすふんすと気合を入れていた。
傍には少女を手伝う少年と虎少年、そして何故か羊角の姿も在る。
このチャンスを逃してはならぬとばかりに、少女への点数稼ぎのつもりの様だ。
そしてそんな羊角に、彼女と複眼が呆れた視線を送っている。
「・・・あいつ、虎ちゃん達より役に立ってない気がするんだけど」
「元々力仕事は出来る方じゃないもの。最近は動いてるとはいえ、限度があるわよ」
「なーにしに行ったんだか、自分の体力考えて無いねぇ」
「考えてたら子供と一緒に同じ速度で作業はしないわよ。私でもばてるわよ、あれ」
全滅した畑を取り戻す作業は、人力でやるならとにかく力と体力仕事になる。
少女は当然問題無いとして、虎少年も鍛えているので問題ない。
そして少年もまだ幼いとはいえ、むしろ幼さからくる体力が有り余っている。
そんな子供達に合わせて動こうとして、当然途中から付いて行けなくなる羊角。
ぜーぜー言い始めた所に少女がやって来て、休んでいて良いよと近くの椅子まで手を引かれる始末である。
それはそれで幸せそうではあったが、完全に役立たずであった。
「所で話は変わるけど、アンタの親、何時くんの? 連絡来てからそれなりに立ってるよ?」
「さあ、近い内としか言えないわね」
「男連れて来るって言ってたのにおっそいね」
「おそらくだけど、あのくそ親父、相手の許可取る前に言って来たんだと思うのよ。今頃私の所に連れて来る為に、相手の男性が予定調整してるんだと思うわ」
「あー、なるほど」
父親の性格を思い出しながら、溜め息を吐いて説明をする複眼。
そしてそれは間違っておらず、だからこそ未だに父親は屋敷に訪れないでいる。
おかげで虎少年との恋人のふりを完璧にやりきる自信がある様だ。
ただし自身が有るのは複眼だけで、虎少年はまだ少し不安な様だが。
「虎ちゃんには迷惑かけてるから、そのうち何かで返さないとね・・・」
少女と一緒に頑張る虎少年を見つめ、それに気が付いた虎少年が小さく手を振っていた。
複眼も優しく目を細めて手を振り返し、それを見た彼女はニマリと笑う。
「あんたさ、実際の所、虎ちゃんいいなーって思ってない?」
「ちみっこしか視界に入ってない子をどうしろってのよ」
「そうかなぁ。今の視線、確実にアンタに向いてたよ?」
「屋敷の中では数少ない常識人として接してたら、当然懐かれもするわよ。あんたと違ってね」
「それじゃあたしが常識無いみたいじゃん!」
「何を今更」
何時も通りわーぎゃーと騒ぐ彼女と、それにクールに返す複眼。
最終的に彼女が何かいけない事を言ったらしく、一方的にすねを蹴られ始めている。
虎少年はそんな様子を、複眼が楽しそうだなと感じて笑顔で見ていた。
傍に居た少年も虎少年の動きが止まった事で、同じく二人に視線を向ける。
「あの二人も旦那様と一緒で、良く飽きないですよね」
「確かに、あの二人良くああやってるよね」
少年の少し呆れ気味な言葉に、虎少年はクスクスと笑いながら応える。
そこで少女は顔を上げ、ふえっ?と声を漏らして彼女と複眼に気が付いた。
慌てて二人を、というか複眼を止めにぱたぱたと走って向かい、渋々といった様子で蹴るのを止める複眼。
彼女は嘘泣きをしながら少女に泣きつき、少女は優しく彼女の足をなでなでしている。
「・・・普段通りなのは、そう振舞う事で気にさせないようにしてるのかもね」
「え、あ・・・ああ、成程」
「まだまだ僕達は気が回らないね」
「そうですね・・・まだまだ先輩達には勝てそうにないですね」
虎少年は喧嘩をする二人、そして止めに行った少女の反応を見て、少し反省をしていた。
自分は心配をして気を遣うばかりで、気を遣わないという遣い方が下手だった事に。
そしてその言葉の意味を理解した少年も、先輩達を見て敵わないなと感じていた。
「へーんだ、目玉お化けー! いっつもどこ見てんのか解んないのよ! ばっらばらに目を向けてないで、ちゃんとこっち見なさいよ!」
「あ゛? 脛蹴られるだけじゃ足りないって? 良いわよ、次は鼻っ面潰してあげようか?」
いったん収まったはずの喧嘩は、何故か少女をはさんでまた再開されていた。
少女は二人の剣幕にオロオロして、手をバタバタさせながら必死に止めようとしている。
「・・・あれ、本当にわざとなんでしょうか?」
「ちょっと、自信、無いかな・・・あはは」
何処までも何時も通りな屋敷の住人に、虎少年は力の無い笑い返すのであった。
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