角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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226、流石に慣れた。

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本日の屋敷の皆は、全員で畑に集まっていた。男の休みの日に合わせて大収穫である。
また複眼が頭を悩ませる日が来る訳だが、少女の楽しそうな顔には何も言えないようだ。

因みに少女の作った野菜をご近所に振舞うと、下手すると倍以上になって帰ってくる。
何せ田舎なので、少女の開拓した農地に負けず劣らずな農家がこの近所には多い。
犬の散歩でぴっこぴっこ可愛らしく動いている娘っ子の作った物を送られた、となれば近所のジジババ様達も気合いが入る事であろう。

「旦那様も、もう慣れた物ですね」
「そりゃあ、何年も休日に付き合わされれば慣れざるを得ないだろ」

クスクスと笑いながら声をかけた彼女に、手慣れた様子で収穫をしながら応える男。
少女が畑を始めてからもう何年もたつ。そして春夏秋冬問わずの畑仕事だ。
当然収穫も春夏秋冬問わずなので、どうあがいても慣れざるを得ないだろう。

「まあ、旦那様の為に始めた畑ですからね」
「気が付いたら畑が異常に広がっていって焦ったけどな」
「そういえば、先輩はともかく、旦那様は何で止めなかったんですか?」
「いや、やんわりとは、言ったつもりだったんだけど、通じてなかったというか・・・」

一応男は畑を広げ続ける少女に「無理はしなくて良いからな」とか「大変じゃないか?」とは言っていたが、そんな言い回しが少女に通用する訳が無い。
男が気遣ってくれている。ならばもっと張り切らねば、となるのが少女である。
どう考えても逆効果であり、老爺は気が付いていて放置していた。

「それ、角っ子ちゃんには絶対逆効果ですよ」
「ああ、今なら解るよ・・・」
「つまり理解した頃にはもう止めづらくなっちゃったと」
「うん・・・」

一応今では男も自分が原因だ、という事は多少理解している。
なので農地の拡張が止まってくれて、大分ほっとしているのだ。
とはいえ一個人が趣味でやってるとは言えない広さの農地だが。
何せ山を切り崩し、段々畑も出来ているので。

「あれ見てたら、止められねえだろ・・・」
「あー、まあ、そうですね」

二人が苦笑しながら見つめる視線の先。
そこには今日一番大きい野菜を収穫し、わーいと頭の上に掲げている少女が居た。
傍に単眼が居たのでテンション高めに少女も掲げられ、少女自身が収穫物の様になっている。
土を頬につけながらもキャッキャと喜んでいる少女を見て、どうやって止められると言うのか。

「あ、見てるの気がついて手を振ってますよ」
「解ってるさ」

彼女に言われる前に男は手を振り返し、少女は花が咲いたような笑顔を見せる。
男は自分で気が付いていないが、手を振っている時の顏はとてもいい笑顔になっていた。
それが余計に嬉しくて、少女は手を振る速さが増している。

「旦那様が手を振り返すと、何時も以上に笑顔なんですよねー、角っ子ちゃん」
「そうか? 誰に対してもあの子はあんな感じだろ」
「はー、これだから旦那様は、解ってないですねぇ」
「なんだそりゃ」

やれやれと言った様子で首を振る彼女だが、彼女でなくともそう思う人間は多いだろう。
少女が男に向ける笑顔は、明らかに他の人間に向ける物とは違うのだから。
ただ男にしてみれば、少女はいつも笑顔で、何時も可愛らしい子という認識でしかない。
彼女の言う事が良く解らない男は不服な気分だったが、キャーッと駆けて来る少女を見てすぐに笑顔を向けるのだった。







「ちっ、偶に手伝う程度で良いご身分だな、あの男は」
「先輩・・・おチビちゃんとられて悔しいのは解りますけど・・・」
「前からそうだったけど、ちみっこが絡む時のポンコツ化が最近特に強くなってるわね」
「天使ちゃんの笑顔、今日は格別に輝いてる・・・!」

女は男に敵意を隠す気のない視線を向け、単眼と複眼は少々呆れ顔だ。
羊角は通常運転である。少女が可愛ければ何でも良いのだ。

「ほんと、ここの人達って色々濃いよね。君が染まらないのが不思議だと思う」
「いえ、多分僕も結構染まってると思います・・・最近慣れて来ちゃってますし・・・」

虎少年は苦笑しながらその光景を眺め、少年はこれに慣れている自分を自覚している様だ。
とはいえ二人ともそれが嫌という訳ではないので、その表情に不快感は見て取れないが。
ただこの状況にそこまで難なく順応した虎少年も大概変わり者だ、という事を思いつつも口には出さない複眼であった。
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