角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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222、自分も乗せたい。

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くっつく事になれる為と、先日複眼を背もたれにしていた虎少年。
その後も色々と彼女に言われながら、段々それなりに距離感は近くなっていた。
日常的に傍に居ると人間慣れる物なのか、今では近くても良い笑顔を見せる様になっている。

ある日友人がやって来て「甘いな、こうするんだよ」などと言って女の腰を抱いてぼこぼこにされていたが、決してその指導の成果ではないだろう。
むしろ不安そうに複眼を見上げたので完全に逆効果になっており、更に女に殴られていた。

ただ今の虎少年ならば多少照れつつも出来るので、むしろ初々しい恋人同士に見えなくもない。
二人の仲が良い事に少女は喜んでいるが、虎少年的には内心複雑である。
少女が嫌な顔をするのは避けたいが、何も気にされないのも少々切ない様だ。

「・・・案外早く慣れちゃったな。つまんない」

複眼と虎少年の距離感を見て彼女はそんな事を言っていたが、複眼の耳に入っていたので地味にすねを蹴られて泣いていた。
余り痛そうには見えない感じで延々蹴るので、傍から見ると解らない痛みである。
倒れる彼女の足を少女がなでなでして慰めていたので心配は無いだろうが。

ただそうなると、今度は女慣れもしておいた方が良いかもね、などとのたまう始末である。
流石に当然の如くその提案は却下される、と思っていたら、意外な所から声が上がった。

「虎ちゃん、私の膝にも乗らない?」

前々から虎少年の毛皮をモフモフしたいと思っていた単眼がそんな事を言い出したのだ。
今まで我慢していた単眼だったのだが、とうとう我慢出来なくなってしまったらしい。

何せ暖かくなり始めたらなのか、虎少年が最近薄着なのだ。
前から触りたいと思っていた腕が露わになっていて、複眼と少女は好きにそれを触っている。
少女が抱きついて手を繋ぐのは仕方ないと思えたけど、複眼には少し狡いという感情が浮かんでいたらしい。
いや、事有る毎にモフモフしている少女にも、少しだけ羨ましいと思ってはいるのだが。

「ね、ほら、私大きいから安定感あるよ?」

何時もなら気にする大きさまで口にして、何とかして虎少年を膝に乗せたい単眼。
ぺんぺんと膝を叩いて必死である。

その様子に他の使用人達は生暖かい目を送っていたが、当の虎少年は少し困っていた。
何故なら虎少年が慣れたのは「複眼」であって「女性」ではないのだ。
単眼がどれだけ必死であろうと素直に頷くのは難しいだろう。

「・・・だめ?」

大きな体を小さくし、上から上目使いをするという不思議な状態で虎少年を見つめる単眼。
その隣では少女も首を傾げており、駄目なの?と言いたげな様子で見つめていた。
複眼は「このお願いの仕方は狡くないか」と思いながらも本人の意思に任せるつもりらしい。

「わ、わかりました、膝に座ったら良いんですか?」

二人の視線に駄目とは言えなくなり、おずおずと単眼の膝に向かう虎少年。
ただわーいと両手を上げる少女とその手に指を合わせて喜ぶ単眼を見ては、思わず微笑ましい物を見る目で見つめてしまっていた。

「じゃあ、はい、抱えるねー」
「え、わっ」

嬉しくなった単眼は思わず虎少年を抱えに行き、自ら膝の上に乗せる。
虎少年は抱えられた事に驚き、今度は座った時の安定感に少し驚ていた。
何せサイズ差がかなり違うので、単眼の宣言通りの安定感である。

「わー・・・もふもふー・・・気持ち良いー・・・」
「わ、あ、あの」
「んー? なあにー?」
「あー・・・いえ、何でもないです」
「そう? ふわー・・・ふかふかだぁー・・・」

虎少年の頭に、腕に、手にと、虎少年のモフモフを堪能する単眼。
流石にちょっと恥ずかしくなった虎少年だったが、顔を上げた時に入って来た単眼の物凄く嬉しそうな笑顔に何も言えなくなってしまった。
普段の単眼ならば気が付いたのだろうが、毛皮に触れた事でテンションが高く気が付かない。
虎少年の腕を優しく指でムニムニ摘まみながら、この上なく上機嫌だ。

その上隣では良かったねーと言いたげに少女がニコニコしており、単眼もえへへーと少しだらしない笑顔で返している。
この状況で何を言えるのだろう、と思いながら虎少年は全ての抵抗を諦めた。

「・・・何か、ほんと、罪悪感だけが募るから早く来てくれないかしら」

まさか自分が父に早く来て欲しいと思う日が来るとは、などと思いながら困った様子の複眼。
これで虎少年が女性に慣れる事自体は悪い事ではないと思うが、変な風に慣れない事を祈るばかりである。
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