角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
219 / 247

217、安定した畑。

しおりを挟む
少女は今日も畑で良い汗を流していた。
寒空の中でも何のそのといった様子で、元気にぴょこぴょこ動き回っている。
虎少年も手伝いで一緒に作業をしているが、少女の動きには時々付いて行けていない。
体力には自信があったのになぁと、少しだけへこみ気味だ。

最近の畑では一気に収穫しないで良い様に、時期をずらして作物を植えている。
相変わらず畑の規模が規模なのでやはり多いが、複眼が処理に困る事は大分減った。
これ以上の拡大はしない約束なので、その事にも胸を撫で下ろしている様だ。
とはいえ畑の存在により野菜類の買い出しが減ったので、便利だとも思っているが。

そしてもう一人、少女の畑仕事をちょこちょこ見ている老爺も同じ様に安心していた。
なるべく面倒は見てあげたいが、もう老齢で体力が無い老爺には少々辛い。

そもそも本業ではないので、効率の良い管理などは良く解らない。
手探りの先生と手探りの生徒でやっているので、あまり広過ぎると困ってしまうのだ。
実際現状でも少し悩んでいたので、これ以上の拡大は老爺としても勘弁して欲しい所だった。
とはいえその様子を余り見せない辺りが老爺の優しい所だが。

「うん、良い感じに出来てるねぇ」

老爺が畑の様子をのんびり確認して伝えると、喜んできゃっきゃと跳ねる少女。
微笑みながら頭を撫でようと思った老爺だったが、土だらけな事に気が付き手を引っ込めた。
だが少女が引っ込んだ手を見て、えっ?という顔をしたので、少し悩みつつも手を払ってから少女の頭を撫でる老爺。
後で女に少し睨まれるかなと思いつつ、少女が喜んでいるのでまあ良いかと諦めている。

「しかし、前に来た時も思いましたけど・・・これ一人で手作業って凄いですね」

虎少年は感心する様な驚く様な感じで呟く。
重機も何もなく、とにかく少女が手作業で広げた畑。
山も切り崩してあり、少なくとも牛も馬も使わず子供がやった、などとは誰も信じないだろう。

「この子が頑張ったからねぇ」

頭を撫でながらの老爺の言葉に、手を挙げてハイッと応える少女。
そしてそのまま虎少年の方に向き、むふーっとどや顔を見せている。

「ぷっ・・・くっ・・・!」

虎少年は思わず吹き出してしまい、顔を背けてプルプルと震えだす。
少し珍しい様子が可愛いのと共に、余りにもどや顔なのがツボに入ってしまった様だ。
笑ってはいけないと思いつつも、そう思う程に笑ってしまう虎少年。
少女はふえ?と声を漏らし、不思議そうに体ごと首を傾げている。

「んんっ、んっ、・・・うん、凄いと思う。頑張ったね」

虎少年は何とか落ち着きを取り戻し、軽く咳払いをしてから少女の頭を撫でる。
少女は傾いた体制のままにへーッと笑顔を返すと、虎少年の手を取って別の場所を指さした。
どうやら他にも見て貰いたい様で、虎少年は素直について行く。

「元気だねぇ・・・私は休憩させてもらうとしようかな。老人にはあの子について行ってあげられないなぁ」

老爺は元気にパタパタと走る少女を虎少年を見送り、少々若さが羨ましいと感じるのであった。
とはいえ老爺の性格上、たとえ若い頃でも一休みするのだが。
それとこれとはまた別の話なので、老爺にとっては些細な事である。









尚、少女は楽しくなり、予定外の量を収穫してしまう。
ただ複眼が保存用の調理をした事で問題は無く、少女の中で複眼の株がまた上がるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...