角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
180 / 247

178、確認と自戒。

しおりを挟む
その日の少女は庭に薄いマットを引き、ぐにゃーんと二つに折れていた。
どうやら柔軟体操をしている様で、足を開いてぺたーんと上半身を地面にくっつけており、少女の体の柔らかさがそれだけで理解出来る。
ただこれは純粋に元々柔らかいという訳では無く、ちゃんと普段から柔軟をしている成果だ。

体を起こすと今度は横に、んっんっと声を漏らしながら伸ばし始めた。
後は体を捻ったり丸まったり伸びたりと、全身くまなく動かしている。

何故今日少女がこんなに念入りに運動をしているかと言うと、自分がどこまで出来るのかを確かめようとしているからだ。
自分の身体能力が人よりかなり高いらしい、という事を流石の少女も最近は自覚し始めていた。
なら自分はその気になれば、今はどのぐらい出来るのだろうかと思ったらしい。



暫くそうやって体を解している少女だったが、最後にうーんと伸びをしてから立ち上がり、ピョンとマットの外に飛び出て、そのまま軽くピョンピョンと跳ね始める。
何かを確かめる様子で暫く跳ね続けた後、ぐっと膝を膝を曲げて力を溜める少女。
そしてそのまま膝のばねを使い、ピョーンと真上に勢いよく飛び上がった。

その脚力は凄まじく、屋敷の屋根の高さまで飛び上がってしまっている。
ただ少女はそこまで飛び上がるつもりは無く、予想外の高さにワタワタと慌てていた。
精々飛べでも二階の窓に手が届くかどうか。それぐらいの力加減のつもりだったのだ。
だが実際は屋根まで飛んでしまい、え?え?と驚いている間に落ち始める。

元々バランス感覚の悪い少女が慌てた事により、少女の体は空中で倒れて行く。
そして無情にもそのまま落下していき、少女はドンと音を立てて地面に落ちてしまった。
とはいえ少女は何とか手足から落ち、頭を打つなどの最悪の事態は避けられた様だ。
ただしかなり驚いたし怖かった様で、心臓をバクバクさせながら固まっている。



暫くしてから震える様に息を吐き出し、あー怖かったという顔で立ち上がる少女。
立ち上がるともう一度はふーと息を吐き、そこで少女は少しおかしな事に気が付く。
あの高さから落ちて、手足を使って着地した。なのに手足の何処にも怪我がない事に。

普通にこけて手を突いたとか、足から綺麗に着地した訳ではない。
腕は肘からいったし足は膝もついた。なのに何処にも擦り傷すらないのだ。
少女は自分の状態に首を少し傾げるが、すぐにピコピコ体を動かし始めた。
どうやら考えても解らないという結論に至ったらしい。それで良いのか。


だたその後は大ジャンプの驚きが頭に残っていたのか、少々恐る恐るになっていた。
とはいえ先程の光景を住人達が見ていれば、それすらもさせてくれなかったかもしれない。
それは良い事か悪い事か、微妙なところである。

結局自分の身体能力の把握は中途半端に終わる少女ではあったが、更に力が強くなっている事はしっかりと認識出来たらしい。
前より気をつけなきゃと思っている様で、手をぐっと握って気合いを入れている。

だがそこで少女は手のひらに痛みを感じ、ふえっと声を漏らして驚いた顔を見せた。
手を開いてみるといつの間についたのか、小さな擦り傷の後が有る。
高所からの着地で怪我が無かったのに何故だろうと、少女はまたも自分の体の疑問が増える。
確かにあの後の運動で手を突いた覚えは有るけど、落ちた時に比べれば可愛いはずなのにと。

「角っこちゃーん、おやつだよー。かえっといでー」

だがその疑問も彼女の呼びかけで消えてしまい、わーいと彼女の下へ駆け寄っていく。
食堂でおやつを食べる頃には、何に悩んでいたのか完全に忘れている少女であった。







少女がおやつをご機嫌にもむもむ食べている頃に、少し慌てている人物がいた。
休憩の合間に回収したカメラの録画を止め、映る映像を軽く確認していた羊角だ。
そこにはジャンプして中々落ちて来ない少女の映像があり、背筋をぞわっとさせていた。
なのでこれは危ないと思い、女の下へその映像を見せに向かっている。

「せ、先輩、これ、ちょっと見て下さい」
「む、どうした・・・はぁ、あの子は」
「屋敷に居る間も、まだ誰か傍に居た方が良くないですか?」
「だがこの状況で助けられるのは一人しかいないだろう。それにあの子も自分の身の危険は自分で守らねば、何時までも危ない事を繰り返す」

女が言う一人とは単眼の事だ。勿論自分も角を使えば助ける事は出来るだろう。
だが日常的な範囲で今回の事をどうにか出来るのは、屋敷では単眼しかいない。
おそらく単眼に命じれば喜んで面倒を見るとは思うが、少女の自立も促そうとしている事を考えると余り好ましくないとも思う女。

「後で注意はしておく」
「うー・・・大丈夫でしょうか」
「・・・解らん。が、何もせんよりはマシだろう」

少女は素直な子だし、女の言う事に否と応える事は無い。
だがそれとこれとは別の話だ。注意しても本人がうっかりやってしまうのだから。
とはいえ注意しないよりはマシだろうと、自分が注意すると落ち込む事を今から想像しながら、重い足を食堂に向ける女であった。

「後で旦那様に八つ当たりをしよう」

理不尽な八つ当たりが男に向かう事が決定してしまった様である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...