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164、猫の探検。
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その日猫は、珍しく一匹で屋敷を彷徨っていた。
いや、猫には彷徨っている様な自覚は無く、楽し気に探検をしているつもりの様だが。
その証拠に猫はぶなーんぶな~んとご機嫌に、少女を彷彿とさせる何処かズレた調子の鳴き声を上げなら、てふてふと屋敷の廊下を歩いている。
その歩みは下手をすれば亀の方が速いのではと思う速度だが、猫は特に気にせず歩いてゆく。
猫は基本的に誰かの腕の中か、犬の背中か頭に居る事が多い。
なので自分の足で歩く事で見えてくる景色に、何処か新鮮な物を感じながら歩いていた。
因みに猫自身はご機嫌なのだが、実は少女が焦って猫を探し回っていたりする。
少女は何時も通り猫を犬に預けて、犬も何時も通り猫を任された。
だがのんびりと少女の部屋でお昼寝をしていた所、猫が何を思ったのか外に行こうと歩き出す。
犬は余程ぐっすり寝ていたのか、その事に気が付かなかった。
そしてそのまま猫は部屋を出て行き、ぶなぶなと楽し気に鳴きながら散策しているという訳だ。
普段なら犬が気が付かずとも問題は無かったのだが、今日は少し事情が有った。
犬は普段から扉を開け閉めするし、少女の部屋に入る時もちゃんと扉を閉める。
だから本来なら猫は扉を開けず、諦めて犬の下へ戻ってゆくはず。
だが今日は最初から少女の部屋に犬が居て、犬に猫を預けてそのまま二匹は昼寝をした。
つまり扉を閉めたのは犬ではなく、出て行った少女。
少女は部屋を出て行く際に扉を閉めたつもりだったのだが、少し閉め方が甘かったらしい。
扉が開かなかった為に犬も気が付かず、当然少女は一切気が付かずに仕事に向かった。
結果猫が少し押しただけで扉が開き、猫は何だか楽しくなってそのまま出て行ったという訳だ。
そして少女が休憩の合間に猫の様子を見に来たら、猫が犬の傍に居ない。
犬はまだすやすやと気持ち良さそうに寝ていたので、そっと部屋の中を探し回るも出て来ない。
最初は隠れているんだと思っていた少女だが、猫が出て来ない事に段々と焦りを覚え始める。
そしてふと、部屋に入る時扉が若干開いていた様な気がした。
無意識に開けて入った為にその辺りの記憶は曖昧な様だが、もしかしたらと気が付き焦る少女。
猫は皆が知っての通り余り強い体ではない。
最近はしっかりとご飯を与え、適度に運動させているので来たばかりの頃よりは頑丈だろう。
だがそれでも元が弱いという事には変わりはなく、見ていない所で怪我をする可能性はある。
少女は慌てながらも犬を起こさない様にそーっと扉を閉め、猫の捜索に出て行く。
幸いながら、今更の話だが少女の部屋は一階な為、階段から落ちるという可能性は低い。
だが一階だという事は、何処にでも行けるという事だ。
今回の様に何かの拍子に外に出て行く可能性も大きい。
少女はワタワタと屋敷を走り回り、当然それを見た使用人達は何か有ったのかと訊ねた。
事情を聴いた使用人達も猫を捜し始めるのだが、絶妙にエンカウントせずに時間が経っている。
猫は焦る少女の事も知らず、住人達が何やらバタバタしている事も気にせず、のんびりと自由気ままに屋敷を歩き回っているという訳だ。
何度か近くをすれ違ったりなどもしているのだが、猫は一休みと何かの陰に隠れる様にして蹲り、上手く視界に入らない位置で休んでいた。
何だか慌ただし気な様子を見て頑張れとでも言う様にぶな~と鳴く猫だったが、小さな声だった為に誰の耳にも届いていない。
そも猫のせいで皆が慌ただしいのだが、猫にとっては知った事ではないし、実際解っていない。
皆が傍から居なくなり静かになると、そろそろ行こうかと猫はゆっくり立ち上がる。
すると猫の視界がぐんぐん上に上がり、気が付くと犬の顔と同じぐらいの高さになっていた。
猫はぶなん?と良く解らない状況に疑問の鳴き声を上げるが、理由は単純明快だ。
起きた犬が匂いを辿り、猫を見つけて咥えて持ち上げたのだ。
そして犬は猫を咥えたまま少女の部屋に足を向け、猫は揺れている状態が楽しいのか特に抵抗する様子は無い。
ぶなーんぶなーんとご機嫌に鳴いている内に少女の部屋に戻り、犬は猫を置くとしっかりと扉を閉め、猫を抱える様に丸まって寝始める。
猫も探検をして満足したのか、丸い体を更に丸めてすやすやと眠り出した。
夢の中でまた探検を楽しんでいる様で、時折手足がピョコピョコと動いている。
「もう一度部屋を捜し――――何だ、居るじゃないか」
そこで女と少女が部屋に入って来て、猫が居る事を確認する二人。
使用人達で屋敷を探し回って、少女は庭も走り回ったが見つからない。
もしかしたら部屋の何処かにまだ隠れているのかもしれないと、女と一緒に戻って来たらしい。
「何処かに隠れていたんだろう。焦ったのは解るが、もう少し落ち着く様に」
女は少女を窘める様に告げ、少女もその通りなんだろうと反省した様子を見せている。
実際は抜け出しているし、扉を半開きにした少女の失敗ではあるにしても、ちゃんと部屋は捜した訳なのだが。
こうして猫の探検は誰にも知られる事無く、少女のお騒がせという形で終わったのであった。
いや、猫には彷徨っている様な自覚は無く、楽し気に探検をしているつもりの様だが。
その証拠に猫はぶなーんぶな~んとご機嫌に、少女を彷彿とさせる何処かズレた調子の鳴き声を上げなら、てふてふと屋敷の廊下を歩いている。
その歩みは下手をすれば亀の方が速いのではと思う速度だが、猫は特に気にせず歩いてゆく。
猫は基本的に誰かの腕の中か、犬の背中か頭に居る事が多い。
なので自分の足で歩く事で見えてくる景色に、何処か新鮮な物を感じながら歩いていた。
因みに猫自身はご機嫌なのだが、実は少女が焦って猫を探し回っていたりする。
少女は何時も通り猫を犬に預けて、犬も何時も通り猫を任された。
だがのんびりと少女の部屋でお昼寝をしていた所、猫が何を思ったのか外に行こうと歩き出す。
犬は余程ぐっすり寝ていたのか、その事に気が付かなかった。
そしてそのまま猫は部屋を出て行き、ぶなぶなと楽し気に鳴きながら散策しているという訳だ。
普段なら犬が気が付かずとも問題は無かったのだが、今日は少し事情が有った。
犬は普段から扉を開け閉めするし、少女の部屋に入る時もちゃんと扉を閉める。
だから本来なら猫は扉を開けず、諦めて犬の下へ戻ってゆくはず。
だが今日は最初から少女の部屋に犬が居て、犬に猫を預けてそのまま二匹は昼寝をした。
つまり扉を閉めたのは犬ではなく、出て行った少女。
少女は部屋を出て行く際に扉を閉めたつもりだったのだが、少し閉め方が甘かったらしい。
扉が開かなかった為に犬も気が付かず、当然少女は一切気が付かずに仕事に向かった。
結果猫が少し押しただけで扉が開き、猫は何だか楽しくなってそのまま出て行ったという訳だ。
そして少女が休憩の合間に猫の様子を見に来たら、猫が犬の傍に居ない。
犬はまだすやすやと気持ち良さそうに寝ていたので、そっと部屋の中を探し回るも出て来ない。
最初は隠れているんだと思っていた少女だが、猫が出て来ない事に段々と焦りを覚え始める。
そしてふと、部屋に入る時扉が若干開いていた様な気がした。
無意識に開けて入った為にその辺りの記憶は曖昧な様だが、もしかしたらと気が付き焦る少女。
猫は皆が知っての通り余り強い体ではない。
最近はしっかりとご飯を与え、適度に運動させているので来たばかりの頃よりは頑丈だろう。
だがそれでも元が弱いという事には変わりはなく、見ていない所で怪我をする可能性はある。
少女は慌てながらも犬を起こさない様にそーっと扉を閉め、猫の捜索に出て行く。
幸いながら、今更の話だが少女の部屋は一階な為、階段から落ちるという可能性は低い。
だが一階だという事は、何処にでも行けるという事だ。
今回の様に何かの拍子に外に出て行く可能性も大きい。
少女はワタワタと屋敷を走り回り、当然それを見た使用人達は何か有ったのかと訊ねた。
事情を聴いた使用人達も猫を捜し始めるのだが、絶妙にエンカウントせずに時間が経っている。
猫は焦る少女の事も知らず、住人達が何やらバタバタしている事も気にせず、のんびりと自由気ままに屋敷を歩き回っているという訳だ。
何度か近くをすれ違ったりなどもしているのだが、猫は一休みと何かの陰に隠れる様にして蹲り、上手く視界に入らない位置で休んでいた。
何だか慌ただし気な様子を見て頑張れとでも言う様にぶな~と鳴く猫だったが、小さな声だった為に誰の耳にも届いていない。
そも猫のせいで皆が慌ただしいのだが、猫にとっては知った事ではないし、実際解っていない。
皆が傍から居なくなり静かになると、そろそろ行こうかと猫はゆっくり立ち上がる。
すると猫の視界がぐんぐん上に上がり、気が付くと犬の顔と同じぐらいの高さになっていた。
猫はぶなん?と良く解らない状況に疑問の鳴き声を上げるが、理由は単純明快だ。
起きた犬が匂いを辿り、猫を見つけて咥えて持ち上げたのだ。
そして犬は猫を咥えたまま少女の部屋に足を向け、猫は揺れている状態が楽しいのか特に抵抗する様子は無い。
ぶなーんぶなーんとご機嫌に鳴いている内に少女の部屋に戻り、犬は猫を置くとしっかりと扉を閉め、猫を抱える様に丸まって寝始める。
猫も探検をして満足したのか、丸い体を更に丸めてすやすやと眠り出した。
夢の中でまた探検を楽しんでいる様で、時折手足がピョコピョコと動いている。
「もう一度部屋を捜し――――何だ、居るじゃないか」
そこで女と少女が部屋に入って来て、猫が居る事を確認する二人。
使用人達で屋敷を探し回って、少女は庭も走り回ったが見つからない。
もしかしたら部屋の何処かにまだ隠れているのかもしれないと、女と一緒に戻って来たらしい。
「何処かに隠れていたんだろう。焦ったのは解るが、もう少し落ち着く様に」
女は少女を窘める様に告げ、少女もその通りなんだろうと反省した様子を見せている。
実際は抜け出しているし、扉を半開きにした少女の失敗ではあるにしても、ちゃんと部屋は捜した訳なのだが。
こうして猫の探検は誰にも知られる事無く、少女のお騒がせという形で終わったのであった。
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