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151、更なる探し人。
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「また、あの娘を捜している人物が現れたみたいだよ」
「は? また?」
男は友人の言葉に少々間抜けな声を上げて聞き返す。
今日は友人が何時も通り朝から来たので遊びに来たのだと思ったら、少し報告する事が有ると言うので男は自室で話を聞いていた。
流石に今回は少女関連以外だろうと思っていた男は予想外の事に顔を顰め、隣では女が険しい表情になりこぶしを握り締めている。
友人は男の言葉に静かに頷くと、二人とは違い穏やかな様子で口を開いた。
「ああ、まただ。ただ今回は、そんなに警戒する必要は無いんじゃないかなと思う」
「どういう事ですか?」
友人の予想外に穏やかな言葉に男は怪訝な顔をし、女も不思議に思い詳細を訊ねる。
だが眉間に深い皺を作りながらの険しい眼光にも友人はにっこりと笑顔を返していた。
むしろ女相手だから笑顔を返している可能性も有るが。
「そんなに不安そうな顔をしなくても、今回は大丈夫だよ」
友人は女の肩を抱いて安心させようとするが、女の眉間は更に皺が寄って行く。
早く話を続けろと言わんばかりの様子に友人は肩をすくめ、女の肩を抱いたまま話を続ける。
そして女は話が終わったらボディーブローを打つ用意をしている。
「捜しているっていう人物が、あの事件で保護された少年なんだよ」
「あの事件で保護って・・・あの子が奴隷になった事件か?」
「そうそう。他国から来ているし正規手順で旅行ビザみたいだから、暫くすれば居なくなるとは思うよ。それに見つかっても多分大丈夫だと思うかな」
「大丈夫な理由は?」
男の問いに、友人はにっと口角を上げる。
「そこはカンかな?」
「勘だ~? 何だよそのあやふやな理由は」
「うーん、何となくその少年に共感を感じるんだよ、私はね」
友人の答えに納得いかない男だが、それでも友人は確信の有る様な笑顔で語る。
それで何となく、男は友人が大丈夫だと言った理由を感じ取ってしまった。
もし共感した事が理由なのだとしたら、少女を捜す人物を危険だと思う必要は無いと。
だって友人は女が化け物だと知りながら、それでも好意を持ち続けている人物なのだから。
「私としてはいっそ招待してあげたらどうかな、と思うよ」
「・・・招待、なぁ。あの子に当時の記憶が有るならそれも良いかもしれないが」
「ああそうか、記憶が無いんだったか、あの子」
「それに、正直俺は余計な事を思い出す事はさせたくねえな」
「私も反対です。あの娘は今穏やかに暮らしている。過去の事件の事など忘れたままで良い」
友人はその人物を少女に会わせたいと思っている様だが、男と女は乗り気ではなかった。
少女は自分が奴隷になった経緯は自分で調べて知っている。
だが当時の記憶は全く無いし、その子の事を覚えているかどうかも怪しい。
出来れば少女には生々しい記憶なぞ忘れたままでいて欲しいと、二人はそう思っていた。
「・・・そっか、残念だけど、保護者がそう言うんじゃ仕方ないね」
「お前の気持ちは解らなくねえが、それでも、な」
男は窓から外を眺め、庭に居る少女に目を向ける。
最近は陽気も良く暖かいせいか、少女は丸まる犬に寄りかかりながら自分も丸まって寝ていた。
そしてその胸に猫がまた丸まっており、大中小の丸い生き物が重なっている。
そんな穏やかな様子を見て笑みを見せる男に、友人はふうと溜め息を吐いた。
「まったく、もう完全にただのお父さんじゃないか。嫁も居ないのに」
「うっせえ。嫁が居ないのはお前も同じだろ」
「私には素敵な女性がここにいぐふぅ・・・!」
「どうやら話はそれで終わりの様ですね」
男の言葉に女を更に抱き寄せようとした友人だったが、話が終わったと思った女は予定通りボディーブローを突き入れた。
綺麗に突き刺さったボディーに友人が蹲り、女は何時も通りの無表情に戻っている。
どうやら女も今回の件にそこまで警戒する必要は無いと思っている様だ。
そうして女は友人を一瞥すると部屋から出て行き、寝ている少女に毛布の一つでもかけてやろうと庭に向かって行った。
「なあ、本当にさ、あれの何処が良いの、お前」
「ふ、ふふ、坊やのお前には解らんさ」
「たいして歳変わんねえだろ・・・」
「ふっ、実年齢の話ではないさ。人を愛した経験の違いを言っている。さて私は彼女を追いかけに行って来る」
「あー、はいはい、行ってらっしゃい。殴られてらっしゃい」
友人の相変わらずの訳の解らなさに、男は適当に答えて去って行く友人を見送る。
男には女の何処がそんなに良いのかさっぱり解らない。
姉だからというのも当然あるが、それでも男は女の様な人物には絶対惚れない確信がある。
「人を愛した経験、ねぇ・・・嫁なぁ・・・」
ただ友人の言葉自体は少し突き刺さっていた様で、庭の様子を見ながら呟く男。
すやすやと丸まって穏やかに眠る少女を眺めていると、何だか穏やかな気分になっていく。
「あんま興味無かったけど、子供も良いなと最近は思う様になったな・・・相手が居ねえけど」
男は庭でまた殴られている友人と、険しい顔で殴りながらもどこか楽しそうな女を見て、ああいう関係も有りなのかなと少し思うのであった。
「は? また?」
男は友人の言葉に少々間抜けな声を上げて聞き返す。
今日は友人が何時も通り朝から来たので遊びに来たのだと思ったら、少し報告する事が有ると言うので男は自室で話を聞いていた。
流石に今回は少女関連以外だろうと思っていた男は予想外の事に顔を顰め、隣では女が険しい表情になりこぶしを握り締めている。
友人は男の言葉に静かに頷くと、二人とは違い穏やかな様子で口を開いた。
「ああ、まただ。ただ今回は、そんなに警戒する必要は無いんじゃないかなと思う」
「どういう事ですか?」
友人の予想外に穏やかな言葉に男は怪訝な顔をし、女も不思議に思い詳細を訊ねる。
だが眉間に深い皺を作りながらの険しい眼光にも友人はにっこりと笑顔を返していた。
むしろ女相手だから笑顔を返している可能性も有るが。
「そんなに不安そうな顔をしなくても、今回は大丈夫だよ」
友人は女の肩を抱いて安心させようとするが、女の眉間は更に皺が寄って行く。
早く話を続けろと言わんばかりの様子に友人は肩をすくめ、女の肩を抱いたまま話を続ける。
そして女は話が終わったらボディーブローを打つ用意をしている。
「捜しているっていう人物が、あの事件で保護された少年なんだよ」
「あの事件で保護って・・・あの子が奴隷になった事件か?」
「そうそう。他国から来ているし正規手順で旅行ビザみたいだから、暫くすれば居なくなるとは思うよ。それに見つかっても多分大丈夫だと思うかな」
「大丈夫な理由は?」
男の問いに、友人はにっと口角を上げる。
「そこはカンかな?」
「勘だ~? 何だよそのあやふやな理由は」
「うーん、何となくその少年に共感を感じるんだよ、私はね」
友人の答えに納得いかない男だが、それでも友人は確信の有る様な笑顔で語る。
それで何となく、男は友人が大丈夫だと言った理由を感じ取ってしまった。
もし共感した事が理由なのだとしたら、少女を捜す人物を危険だと思う必要は無いと。
だって友人は女が化け物だと知りながら、それでも好意を持ち続けている人物なのだから。
「私としてはいっそ招待してあげたらどうかな、と思うよ」
「・・・招待、なぁ。あの子に当時の記憶が有るならそれも良いかもしれないが」
「ああそうか、記憶が無いんだったか、あの子」
「それに、正直俺は余計な事を思い出す事はさせたくねえな」
「私も反対です。あの娘は今穏やかに暮らしている。過去の事件の事など忘れたままで良い」
友人はその人物を少女に会わせたいと思っている様だが、男と女は乗り気ではなかった。
少女は自分が奴隷になった経緯は自分で調べて知っている。
だが当時の記憶は全く無いし、その子の事を覚えているかどうかも怪しい。
出来れば少女には生々しい記憶なぞ忘れたままでいて欲しいと、二人はそう思っていた。
「・・・そっか、残念だけど、保護者がそう言うんじゃ仕方ないね」
「お前の気持ちは解らなくねえが、それでも、な」
男は窓から外を眺め、庭に居る少女に目を向ける。
最近は陽気も良く暖かいせいか、少女は丸まる犬に寄りかかりながら自分も丸まって寝ていた。
そしてその胸に猫がまた丸まっており、大中小の丸い生き物が重なっている。
そんな穏やかな様子を見て笑みを見せる男に、友人はふうと溜め息を吐いた。
「まったく、もう完全にただのお父さんじゃないか。嫁も居ないのに」
「うっせえ。嫁が居ないのはお前も同じだろ」
「私には素敵な女性がここにいぐふぅ・・・!」
「どうやら話はそれで終わりの様ですね」
男の言葉に女を更に抱き寄せようとした友人だったが、話が終わったと思った女は予定通りボディーブローを突き入れた。
綺麗に突き刺さったボディーに友人が蹲り、女は何時も通りの無表情に戻っている。
どうやら女も今回の件にそこまで警戒する必要は無いと思っている様だ。
そうして女は友人を一瞥すると部屋から出て行き、寝ている少女に毛布の一つでもかけてやろうと庭に向かって行った。
「なあ、本当にさ、あれの何処が良いの、お前」
「ふ、ふふ、坊やのお前には解らんさ」
「たいして歳変わんねえだろ・・・」
「ふっ、実年齢の話ではないさ。人を愛した経験の違いを言っている。さて私は彼女を追いかけに行って来る」
「あー、はいはい、行ってらっしゃい。殴られてらっしゃい」
友人の相変わらずの訳の解らなさに、男は適当に答えて去って行く友人を見送る。
男には女の何処がそんなに良いのかさっぱり解らない。
姉だからというのも当然あるが、それでも男は女の様な人物には絶対惚れない確信がある。
「人を愛した経験、ねぇ・・・嫁なぁ・・・」
ただ友人の言葉自体は少し突き刺さっていた様で、庭の様子を見ながら呟く男。
すやすやと丸まって穏やかに眠る少女を眺めていると、何だか穏やかな気分になっていく。
「あんま興味無かったけど、子供も良いなと最近は思う様になったな・・・相手が居ねえけど」
男は庭でまた殴られている友人と、険しい顔で殴りながらもどこか楽しそうな女を見て、ああいう関係も有りなのかなと少し思うのであった。
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