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131、内緒の。
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「今日も庭でズンドコズンドコ音が鳴りそうな良く解らん躍りしてるな」
「一応最近も教えはしているんですが、全く直りませんね」
屋敷から庭を眺め、少女を見つめながら呟く男と女。
今日も今日とて少女は庭で体操をしていた。
女の綺麗な動きを見て教えて貰っているはずなのに、相変わらず珍妙な動きだ。
そして今日は何故か犬がその周りをぴょんぴょんと跳ねており、さながら何かの儀式に見える。
ただ二人の呆れた様な内容の言葉とは裏腹に、声音には優しい物が含まれていた。
男も笑みを見せており、女はいつも通りの眼光を向けている。
女は相変わらず優しく笑うという事は出来ない用だ。
「リズム感が無いんだよな。家に有る音ゲーもリズムじゃなくて覚えての反射神経だし」
「音ゲーはリズム感なんて要らないでしょう。心を無にして指示通りに反射で押すだけです」
「いや、一応はリズムが要るゲームも有るからな?」
「ああ、有りましたね。ですが連打していたらクリア出来ましたよ、あれ」
「クリアは出来るけど評価最悪じゃねえか・・・」
クリア出来れば良いのだと言わんばかりの女の言葉に溜め息を吐く男。
女とゲームをやるとこういう所が有るので、種類によっては全く楽しめない。
なので少女を呼ぶ頻度が増えている男だが、気が付くと女が居るのもいつもの事になっている。
とはいえ少女を前にすると尊敬の視線を得たいからなのか、これ以上ない程に集中して最高評価を取る女であるが。
「そういえば、旦那様、ゲームの話で思い出したのですが」
「あん、どした?」
女はふと何かを思い出したような声音と顔で男に声をかけ、男も首を傾げながら返す。
そこに何も不自然は無く、本当にただ疑問を持って聞き返した様に見える。
だが女は見逃さなかった。ゲームの話でと問いかけた瞬間、男が一瞬びくっと動いたのを。
「先日あの子の部屋に、携帯ゲームを見かけました。あの子はのめり込むと止まらないので、ゲーム機の類は私室に置かない、という約束だった筈ですが」
「・・・返し忘れてたんじゃねえの? 俺も何時でも部屋にいる訳じゃねえし、いっつもゲームしてる訳じゃねえから一つ二つ無くても気が付かねえよ」
「へぇ・・・」
「なんだよ」
女はまだ言い逃れる気かコイツという様子だが、男はあくまでしらばっくれる気の様だ。
因みに女が見つけた携帯機は割と最新機種であり、男も良く触っているのを知っている。
だというのに無い事に気が付かなかった、というのは余りに不自然だ。
「旦那様、確か複数人協力型のゲームを最近やっていましたよね」
「やってたな」
「同じ物が有ったんですよ、あの子の部屋に」
「まあ、俺の持って行ったんだから、おかしくはないだろ」
「貴方のデータが無かったんですが?」
「メモリは別にしてるからな」
男は最早女と視線を合わせず、少女を眺めながら受け答えを続ける。
その動きに不自然は無いのだが、無さ過ぎて逆に不自然だと女は感じていた。
女は男がこちらを見ていないのを確認して、ゆっくりを部屋を見回す。
そうして今迄の経験からある一点に当たりを付け、つかつかと歩いて行く。
男は女が何をする気なのか気が付いたが、動き出すまで少女を見ていた事で反応が送れた。
結果止める暇なく女はとある棚を開くと、そこには少女の部屋に会った物と同じ携帯機が。
それを取り出して見せつける様に持ちながら男に振り向く女。
「これは何でしょう」
「あー・・・返しに来てたんじゃねえの?」
「私はあの子の部屋で見つけた後、そのまま戻しました。つい先ほどの事です」
「・・・いや、うん、えっと」
女は真顔で男に問い詰める。貴様が約束を破ってどうすると。
男はこれは不味いといった表情で目線を逸らし、言い訳を必死に考えていた。
だがこの状況を覆せるような言葉なぞ思い浮かぶはずもなく、女の圧に怯んでいる。
「別にあの子に遊ばせるなとも、買い与えるなとも言いません。ですがあの子の性格上、守らせなければいけない事は守らせて下さい。貴方が一番それをしなければいけない立場でしょう」
「はい、すみません・・・」
女の余りにも正当すぎる言い分に、男は言い訳を諦めて素直に謝った。
それはさながら娘に甘い父親が、母親に甘やかしすぎだと怒られている様に見える。
因みに携帯機が見つかった経緯は少女が不審な動きをしていたからである。
男は携帯機の事は女には内緒だと言って渡していた。
だが女が少女の部屋に入って行った際、少女はぴゃっと驚きながら何かを隠したのだ。
少女にしては珍しいその行動に女はその時は何も言わず、後でそっと確認に行った。
勿論この後少女を叱る気では有るが、おそらく原因であろう男を先に締めに来たのである。
少女に隠し事など出来ないと、男は先ずその事を理解するべきであった。
「あれは暫く没収します。貴方も暫くゲームには誘わない様に。良いですね?」
「はい・・・」
今回ばかりは完全に男が悪いので、素直に頷いて項垂れる男であった。
尚その後没収された少女はというと、叱られてしょぼんとはしたものの、少し安心していた。
男の言いつけとはいえ、女に内緒というのが心苦しかったらしい。
とはいえ男から貰った物を没収されてしまった事も事実なので、やっぱりちょっと落ち込む少女であった。
「一応最近も教えはしているんですが、全く直りませんね」
屋敷から庭を眺め、少女を見つめながら呟く男と女。
今日も今日とて少女は庭で体操をしていた。
女の綺麗な動きを見て教えて貰っているはずなのに、相変わらず珍妙な動きだ。
そして今日は何故か犬がその周りをぴょんぴょんと跳ねており、さながら何かの儀式に見える。
ただ二人の呆れた様な内容の言葉とは裏腹に、声音には優しい物が含まれていた。
男も笑みを見せており、女はいつも通りの眼光を向けている。
女は相変わらず優しく笑うという事は出来ない用だ。
「リズム感が無いんだよな。家に有る音ゲーもリズムじゃなくて覚えての反射神経だし」
「音ゲーはリズム感なんて要らないでしょう。心を無にして指示通りに反射で押すだけです」
「いや、一応はリズムが要るゲームも有るからな?」
「ああ、有りましたね。ですが連打していたらクリア出来ましたよ、あれ」
「クリアは出来るけど評価最悪じゃねえか・・・」
クリア出来れば良いのだと言わんばかりの女の言葉に溜め息を吐く男。
女とゲームをやるとこういう所が有るので、種類によっては全く楽しめない。
なので少女を呼ぶ頻度が増えている男だが、気が付くと女が居るのもいつもの事になっている。
とはいえ少女を前にすると尊敬の視線を得たいからなのか、これ以上ない程に集中して最高評価を取る女であるが。
「そういえば、旦那様、ゲームの話で思い出したのですが」
「あん、どした?」
女はふと何かを思い出したような声音と顔で男に声をかけ、男も首を傾げながら返す。
そこに何も不自然は無く、本当にただ疑問を持って聞き返した様に見える。
だが女は見逃さなかった。ゲームの話でと問いかけた瞬間、男が一瞬びくっと動いたのを。
「先日あの子の部屋に、携帯ゲームを見かけました。あの子はのめり込むと止まらないので、ゲーム機の類は私室に置かない、という約束だった筈ですが」
「・・・返し忘れてたんじゃねえの? 俺も何時でも部屋にいる訳じゃねえし、いっつもゲームしてる訳じゃねえから一つ二つ無くても気が付かねえよ」
「へぇ・・・」
「なんだよ」
女はまだ言い逃れる気かコイツという様子だが、男はあくまでしらばっくれる気の様だ。
因みに女が見つけた携帯機は割と最新機種であり、男も良く触っているのを知っている。
だというのに無い事に気が付かなかった、というのは余りに不自然だ。
「旦那様、確か複数人協力型のゲームを最近やっていましたよね」
「やってたな」
「同じ物が有ったんですよ、あの子の部屋に」
「まあ、俺の持って行ったんだから、おかしくはないだろ」
「貴方のデータが無かったんですが?」
「メモリは別にしてるからな」
男は最早女と視線を合わせず、少女を眺めながら受け答えを続ける。
その動きに不自然は無いのだが、無さ過ぎて逆に不自然だと女は感じていた。
女は男がこちらを見ていないのを確認して、ゆっくりを部屋を見回す。
そうして今迄の経験からある一点に当たりを付け、つかつかと歩いて行く。
男は女が何をする気なのか気が付いたが、動き出すまで少女を見ていた事で反応が送れた。
結果止める暇なく女はとある棚を開くと、そこには少女の部屋に会った物と同じ携帯機が。
それを取り出して見せつける様に持ちながら男に振り向く女。
「これは何でしょう」
「あー・・・返しに来てたんじゃねえの?」
「私はあの子の部屋で見つけた後、そのまま戻しました。つい先ほどの事です」
「・・・いや、うん、えっと」
女は真顔で男に問い詰める。貴様が約束を破ってどうすると。
男はこれは不味いといった表情で目線を逸らし、言い訳を必死に考えていた。
だがこの状況を覆せるような言葉なぞ思い浮かぶはずもなく、女の圧に怯んでいる。
「別にあの子に遊ばせるなとも、買い与えるなとも言いません。ですがあの子の性格上、守らせなければいけない事は守らせて下さい。貴方が一番それをしなければいけない立場でしょう」
「はい、すみません・・・」
女の余りにも正当すぎる言い分に、男は言い訳を諦めて素直に謝った。
それはさながら娘に甘い父親が、母親に甘やかしすぎだと怒られている様に見える。
因みに携帯機が見つかった経緯は少女が不審な動きをしていたからである。
男は携帯機の事は女には内緒だと言って渡していた。
だが女が少女の部屋に入って行った際、少女はぴゃっと驚きながら何かを隠したのだ。
少女にしては珍しいその行動に女はその時は何も言わず、後でそっと確認に行った。
勿論この後少女を叱る気では有るが、おそらく原因であろう男を先に締めに来たのである。
少女に隠し事など出来ないと、男は先ずその事を理解するべきであった。
「あれは暫く没収します。貴方も暫くゲームには誘わない様に。良いですね?」
「はい・・・」
今回ばかりは完全に男が悪いので、素直に頷いて項垂れる男であった。
尚その後没収された少女はというと、叱られてしょぼんとはしたものの、少し安心していた。
男の言いつけとはいえ、女に内緒というのが心苦しかったらしい。
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