角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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128、蝙蝠の判断。

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「・・・余りに情報が少ない。まるで意図的に隠されている様だ」

少女を見つけた日から、蝙蝠男はずっと少女を捜し続けていた。
最初の情報で手に入れた遊戯場は勿論、周辺の聞き込みもやっている。
だがそれでも情報は皆無と言って良い程に無く、全く成果は上がっていなかった。

「せめてあの動画か写真をコピー出来ていれば」

まさかあんなにすぐ消えるとは思っておらず、蝙蝠男は何も保存していない。
そして元データの持ち主達も諸々の事情からデータを消している。
友人が余りに全力で事に臨んだ為、データの持ち主は裁判沙汰になる可能性が有った為だ。
それにより少女の姿がネットに再度上がる事は無く、半ば都市伝説のような扱いになっている。

尚、蝙蝠男は聞き込みの最中に何度か警察を呼ばれている。
ただし警察が現場に到着する頃には蝙蝠男の姿は無く、目立つその翼にも関わらず誰もどこに向かったのかが解らない様になってしまう。
とはいえ警察がくればそこでの聞き込みはままならず、尚且つ警察の来る頻度と早さが日に日に上がっていた。

「・・・逆に怪しい、な」

警察が余りに仕事をし過ぎている。
勿論この辺りはそれなりに仕事をする警察組織のいる土地だが、だとしても仕事熱心過ぎる。
たかが人探しをしている男一人の為に、連日即出動はどうにも不可解だ。
その上現場に駆け付ければ本人は居ない。悪戯通報と考えてもおかしくない。

「隠されている、というのは間違いないだろう」

蝙蝠男はそう思考し、この地に留まる事への意味を見出していた。
これらの事は友人の根回しが存在するのだが、蝙蝠男には逆効果になっていた様だ。
勿論友人のおかげで少女が見つかっていないことは事実なのだが、現状を冷静に見た蝙蝠男は少女が隠されていると確信している。

何より隠されていると思った理由が、情報を売る事を生業にしている人間すら口を閉じた事だ。
勿論本当に知らない可能性もあったが、腕や足を折っても何も情報を吐かなかった。
そのせいで裏家業の人間にも追われる羽目になっている蝙蝠男だが、そちらは全く意に介していない様だ。

「これ以上の聞き込みは無駄だな。せめてデータを上げた人間が解れば、そいつを締め上げられるんだがな」

蝙蝠男は聞き込みを諦める事を口にするが、それは少女を捜す事を諦めた訳では無い。
むしろ少女がここからそう遠くない所に居ると確信を持った以上、諦める訳が無いだろう。

「あの娘が街に良く出没していれば、もっと大きな噂になっていてもおかしくはない。一度でもネットに上がったなら尚の事だ。となると普段は外に出ないような生活をしているか、目立たない田舎町に居る可能性が有る」

蝙蝠男は限りなく正解に近い事を口にするが、それはあくまで近いだけの話。
田舎町なぞ大量に有るし、国中歩いて調べるには余りに広すぎる。
何年かければ見つけられるのか、という様な気の遠い話だ。
普通なら、そう、思うはずだ。

「やっと見つけたんだ。絶対に諦めん」

蝙蝠男は何年かかってでも探す事を胸に決め、その場から大きく空に飛び立つ。
人が豆粒ほどの大きさに見える高度まで難なく上昇し、その場で滞空して周囲を見回す。

「時間は有る。腹が立つぐらいにな・・・必ず、見つけてやる」

そう小さく呟いた蝙蝠男は、ふうと気合を入れる様に息を吐く。
すると蝙蝠男の額に、少女とよく似た、大きな一本の角が現れた。
同時に感情が抜け落ちた様な無表情になり、そのまま何処かへ高速で飛び去って行った。








その頃少女はというと、くちんと可愛いくしゃみをして、何だか寒気を感じていた。
それも只寒い訳では無く、何だか変に背中にくる怖気のような寒気。
ぞくっとくる寒気にプルプルしていると、心配そうに単眼が顔を覗き込む。

「おちびちゃん、大丈夫? んー、熱は、なさそうだね。ちょっと冷えちゃったかな?」

手では大き過ぎるので指先を少女の額に当て、熱が無い事を確認する単眼。
少女もずびっと鼻を鳴らすも、特に不調な感じはない様だ。
今回は我慢している訳では無く、本当に特に問題ないらしい。
なので少女は両手をぱーっと広げ、元気ですとどや顔で単眼に返した。

「ふふっ、そう、元気なら良いんだけどね。でもやっぱり冷えちゃうと良くないし、お風呂に入って温まろっか」

少女の返しに思わず目じりを下げながら、単眼は少女を抱き上げる。
そのまま二人はお風呂に向かい、ほへーっと気を抜いて温まるのであった。



因みに少女はこの時点で、何だか良く解らない寒気の事は完全に忘れてしまった様だ。
元々少女は余り深く考える方ではなかったが、男や彼女の影響が出ている気がしなくもない。
とはいえ現状は特に何も無いので、ごっきゅごっきゅと風呂上がりの牛乳を幸せそうに飲む少女であった。
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