角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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123、ご機嫌。

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少女は最近屋敷の外に出れない事で少し体力を持て余している、等という事は特に無い。
裏の畑は相変わらず少女が管理しているし、庭で運動も良くしている。
ただし庭より外に出てはいないので、ほんの少しだけ気落ちしていた。

犬を見送る時の視線が段々「少し羨ましい」になって来ており、それは犬も察している様だ。
帰って来た後は少女を気を遣う様にちょろちょろと周囲を歩き回り、少し唇を突き出しながら拗ねる少女の頬を舐めてご機嫌を取っている。
ただし少女も本気で拗ねている訳では無いので、すぐにニコーッと笑顔を返して犬をわしゃわしゃと撫で回していた。

そしてキャッキャと楽し気に庭で追いかけっこをし始め、掴まえてはゴロゴロと転がったり、掴まえられずにバランスを崩してワタワタしたりと、相変わらず楽し気な様子だ。
しかし、何時もながら気遣いの良く出来る犬である。

それに外に出れないとしても、屋敷には誰かしら住人が必ず残っている。
寂しいという事は特になく、むしろ皆良く構ってくれるのでそんな事を思う暇もない。
複眼は時間が有れば色々と料理を教えてくれるし、単眼もお裁縫や人形作りなどを一緒にやってくれる。羊角も隙あらば撮影しているし、彼女に限っては大半少女の傍にいる。

それに少年が、何だか最近は少し様子が違う。
何時もなら余り少女の傍に寄って行く事は無いのに、最近はちょこちょこ傍にいるのだ。
まるで少女を何かから守る様に、意識を何処か外に向けながら。

その理由は少女には良く解らないが、何となく前より仲良くなれた気がしてご満悦らしい。
にへーっと嬉しそうな笑顔を少年に向けると、少年が少々フリーズするのは相変わらずだが。
テンションの上がった少女が手を繋いで楽し気に一緒に歩いている所なども良く見かけ始め、屋敷の住人達は頑張っている少年を応援している。
尚、特に進展はない模様。基本顔を真っ赤にして何も出来ない少年であった。


何より一番大好きな二人が良く構ってくれている。
である以上、少女が本気で拗ねる事など無いだろう。

二人が自分を見てくれる。気にしてくれる。大事にしてくれている。
その事を何よりの幸せと考えている少女にとって、出かけられない事はそこまで苦痛ではない。
ただ残念なのは、お出かけでのお使いが出来ない事だろう。
何だかんだ力仕事になった時は手伝っていたので、そこが少し申し訳ないと感じているらしい。

ただそれでも、付いて行きたいなどと言いはしない。
少女も解っているのだ。今出て行けばみんなに迷惑がかかると。
何よりも大好きな男と女に迷惑と心配をかけてしまうと。
理由は詳しく聞かされていないが、それでもそこだけは理解しているのだ。

だから少女は今日も大人しく屋敷でお仕事をこなし、何時もより少し多めに構ってくれる女に甘えるのだった。
ただし傍から見ると、構って貰っているのはどっちなのかと思う時も少々有る。
ある日もそんな一幕に男が出会い、呆れた顔を向けていた。

「なあ、何でお前が膝枕されてんの。逆だろ」

女に少し用が有った男は女の自室に向かい、そこで見た物は少女に膝枕をされながら頭を撫でられている女の姿だった。
男はその光景に一瞬固まって、一拍措いてから出した言葉が今の物である。

「気のせいです」
「いや、言い訳にもなって無いんだが」
「煩いですね。私は今とても機嫌が良いので邪魔をしないで下さい」

取り付く島もない様子の女に男は溜め息を吐く。
今この瞬間も男に視線を合わせる事は無く、目を瞑ったまま話しているのだ。
完全にこのまま寝る体勢であり、邪魔をすれば殴ると言わんばかりの冷たさであった。

ただ少女が二人の様子に少し戸惑いキョロキョロと顔を動かし、手も止まってしまう。
女はそれで目を開けて男に視線を向けるが、その目は今すぐにでも男を殺しそうな程の鋭さだ。
こりゃ駄目だと思った男はもう一度溜め息を吐き、少女の頭を軽く撫でてから部屋を後にした。

少女はにへらっと嬉しそうな笑みを見せて男を見送り、えへへーと頭を両手で触りながら余韻を噛みしめている。
そして視線を下に落とすと女と目が合い、女は少し悔しそうに少女の頭を優しく撫で始めた。
その事にもにへーっとだらしない笑顔を見せながら、女の頭を撫で返す少女。

お互いに見つめ合いながら延々撫で続ける不思議な光景が出来上がっている。
ただ暫くすると少女がうつらうつらとしだし、どちらともなくぎゅっと抱きついてお昼寝をするのであった。

その後に単眼も用が有って女を訪ね来たのだが、その時は既に二人共が熟睡していた。
なので可愛らしい様子の二人を見て楽し気にクスッと笑い、毛布を掛けて去っている。
その光景を他の使用人達にも情報共有しているので、女の知らない所で女の新情報が認知され始めていた。

なにせそうやって寝ている時の女の表情は、とても優しくて安らかな顔をしているのだ。
当然少女はにまーっと、本当に嬉しそうな顔で抱きついている。
そんな二人の様子がとても可愛く感じ、単眼は思い出しながらニコニコと仕事をするのだった。

後日羊角が無許可撮影をしに行き、関節技を極められる未来はまだ誰も知らない。
ただ単眼の話を聞き、真顔になった羊角を見た彼女と複眼は予想はしていた。







尚、溜め息を吐いて去っていた男も、実は余り人の事は言えない。
新作のゲームを買ってきた際すぐに相手をしてくれるのは少女だけであり、それを解っている男は必ず少女を誘う。
何時もそれで女に「何時まで子供なんだこいつは」と溜め息を吐かれているので、結局の所この二人は似た物姉弟なのかもしれない。
とはいえ本人達は、その事には全く気が付いていないのであった。
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