角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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116、勝負事。

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「レイズ」

静かにそう告げる複眼を不敵な笑顔で見つめる彼女。
横ではドキドキした様子で二人を見つめる少女の姿も有った。
そしてニヤリと口を歪めた形のまま、彼女は口を開く。

「コール」

コールと言葉を発し、手に持つカードをテーブルに投げる彼女。
それは5枚のトランプであり、数字は6が三つ揃っていた。
少女はその手におーっと驚いた様子を見せ、手をパチパチ叩く。

「スリーカード! 流石に今回は勝ったでしょ!」

楽し気にそう言って胸を張る彼女であったが、複眼は表情を変えずにカードを投げる。
そこには同じくスリーカードが出来ていた。ただしAのスリーカードが。
少女は彼女に何と言って良いのか解らない様子の顔を向けている。
拍手の途中で止まっている手が物悲しい。

「はい、私の勝ち」
「なんでえええええ! おかしいって、あんた強過ぎるって!」

複眼の無情な勝利宣言に彼女は嘆き項垂れる。
それも仕方ない事で、彼女はここまでボロ負けであった。
因みにチップは今日のおやつであり、彼女は2枚のクッキーしか残っていない。

「強いも何も、あんたが一回も降りないからでしょうが」
「だって、勝負の時点でベットしてるんだから、何か降りたくないじゃん~」

ルールを完全に無視したような発言に、複眼は呆れた様に溜め息を吐く。
彼女がここまで負け続けているのは単純明快。
一度も勝負を降りずに勝負し続けた結果、最終的に複眼に搾取されたのであった。

「うえーん、折角の角っ子ちゃんのお菓子ー」
「言っとくけど、やろうって言い出したのアンタだからね」

嘆き机に突っ伏す彼女の頭をなでなでして慰める少女。
彼女は解り易くおよよと泣きながら少女に抱きつき、ぎゅっと頭を抱きしめて貰いに行く。
複眼はそれを冷めた目で見つめながら、手に入れた菓子を情け容赦なく食べている。
だが彼女はふと、何かを思いついた様な様子を見せて顔を上げた。

「角っこちゃんもちょっと勝負しない?」

笑顔で提案してくる彼女に少女は少し思案する。
だがすぐにニコーっと笑顔を返し、トランプを手に取る少女。
そしてたとたどしい手でシャッフルし、カードをお互いに配っていく。

「お、やる気だね?」

彼女は配られたカードを手に取り、少女も自分に置いたカードを取る。
そして複眼はその様子を見て、思わず吹き出しそうになったのを堪えていた。
何故なら少女は自分の手札を見た瞬間、物凄いがっかりした顔をしたのだ。
これでは「何も手が出来ていない」と教えている様なものだ。

「ド、ドロー」

彼女は狼狽えつつカードを交換し、少女もしょぼんとした様子のまま交換をする。
すると少女はむーっと困った顔でカードを見つめ始め、どうやらいい手が来なかった事が解る。
複眼はもう耐えられなくなり後ろを向いて震えていた。

彼女はそれなりに良い手が出来ているのだが、このまま勝負して良い物か悩み始めている。
だがしかし勝負を始めた以上、やるしかないとコールする二人。

「えっと、フルハウス」

彼女の手はフルハウスと中々良い手であり、対する少女の手は2のワンペア。
役にはなっているが、その中でも一番弱い役である。
彼女に回収されて行くお菓子へ悲し気にああっと手を伸ばすも、大人しく手を下ろして再度シャッフルを始める少女。

悲しげな様子の少女に彼女は悪い事をした気分になって来ている。
そんな複雑な様子のまま、次のゲームが開始された。
少女の手でゆっくりとカードが配られ、カードを確認する。

その瞬間少女はパァッと笑顔になり、どう見ても良い手が来た事が解った。
少女の解り易すぎる様子にお腹を抱えて蹲る様に震える複眼。
対して彼女はどう見ても降りるべき様子に目を細めながら困っている。

「あー・・・」

だがこんなに嬉しそうな表情を見て降りれるはずもない。
少女はレイズをして上乗せし、彼女は少し悩んでからコールした。
結果は少女がストレートであり、彼女は役無し。
勝てた事にわーいっと体全体で表現して喜ぶ少女を見て、負けたけどなんかもうこれで良いやと思う彼女であった。

「あー、結局お菓子が無くなったー」
「・・・ぷくくっ、あんたが、勝てない勝負、挑むのが・・・・くくっ、悪い」
「あれ見て勝ちに行くとか無理だよー・・・」
「ふふっ、そうね、私も無理かな」

心底楽しげな複眼と何かを諦めた彼女の会話を聞くも、良く解らずに首を傾げる少女。
どうやら勝負中の自分の表情の自覚は一切ないらしい。
だが彼女の手元に何も無いのを見て、少女はクッキーを手に取る。

「ん、角っこちゃん、くれるの?」

そのまま彼女の口元に向ける様に差し出し、あーんと咥える彼女。
モグモグと食べる彼女を見てニコーっと笑顔になり、彼女も笑顔で返して少女を抱きしめる。

「角っこちゃんは優しいねえ。もうだーい好きー」

頬をすりすりしながら好意を口にする彼女に応える様に、少女もきゃっきゃと頬を摺り寄せる。
勝負した意味無いなーと思いながら、本人が楽しそうなら良いかとクスッと笑う複眼だった。
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