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115、女の毎朝。
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女はここ数日、いやに調子が良いと感じている。
いや、以前から恐らく調子は良かったのだろう。
ただ女が明らかに何かがおかしいと自覚したのが、ここ数日の事というだけだ。
女は少女と共に居る時間は心が軽く、力を抑えようとも思わずとも抑えられている。
その辺りは自覚していたので、精神的な物も作用しているのだろうと思っていた。
だがここ数日、気を張る必要の無い時間がやけに多くなっている。
それは少女と離れている時であっても関係なく、まるで少女と初めて殴り合いをした後の時の様な、何も内側に残っていない様な軽さが有った。
「やはりおかしいな・・・もうそろそろ影響が出て来る頃だと思っていたんだが・・・」
体の調子を確かめながら独り言を呟き、状態がおかしな事に不安を覚える女。
普通に考えれば調子が良い事は悪い事では無いのだが、自分の体が普通では無い事を自覚している以上、予測外の事が起こっている現状には不安が強いらしい。
今の調子の良さが、逆に危険の予兆なのでは感じている様だ。
「一層気を緩めない様にしておかねばな・・・」
女は出来ればもう二度と、あんな事態は引き起こしたくないと思っている。
少女が居れば止めてくれると思いたいが、それも確実ではない。
それに少女に万が一自分を殺させるような事態になれば、女は死んでも死にきれないだろう。
「さて、そろそろ時間か」
それはそれとして、女は今から少女を起こしに行く予定である。
現在早朝であり、まだ日も登る前。
だというのに相も変わらず隙の無いピシッとした様子の女。
少女でなくともその姿に見惚れる者も居なくは無いだろうと思える様子だ。
ただ今からやりに行く事は、只々自分の我が儘で少女を起こしに行くだけ。
畑を張り始めてからは、やる事も殆ど無いのに早朝から起きて起こしに行っている。
因みにそんな女には、ささやかな楽しみが有った。
「朝だぞ、起きろ」
少女の部屋の扉に軽くノックをし、反応が無い事を確かめてから中に入る。
するとそこには完全に起きる気配のない、熟睡モードの少女がそこに居た。
少女は居眠りは多いのだが、寝起きは悪くない。
なので朝になっても起きないという事は余り無く、こうやって完全に寝ている事は珍しい。
そしてそんな状態の少女を起こすのが、女にとっての朝の至福の時間であった。
「・・・朝だぞ。畑に行くんだろう」
起こす気が在るのかないのか微妙な声量で少女に声をかける女。
当然少女は起きる様子を見せず、むにゃむにゃと何か寝言を呟いている。
そんな反応を見た女の顔は、当然だがとても険しい物となっていく。
これで手に何か持っていたら完全に犯罪者の様相だ。
「・・・おい、起きろ」
再度少女に呼びかけるが声量は変わらず、代わりにぷにぷにと頬をつつく。
適度な弾力のある良い肌で、触っているだけで女は幸せな気分になっている。
当の少女は流石に接触が有った事で、アウ~と何かに追い詰められている様な表情で手足をパタパタさせていた。
そして女は更に眉間の皺を深くしていく。とてもご機嫌らしい。
「・・・まだ起きんか」
今日は珍しくとても寝起きが悪い様だ。
そう判断した女は今から少女が起きるのをとても楽しみにしている。
何故なら寝起きの悪い日の少女は、ぽへっとした雰囲気が数割増しになるのだ。
その様子が女にとっては可愛くて可愛くて堪らない。
だが今はその事はまだ後の楽しみであり、少女をツンツンとつついて遊んでいる。
するとそのうち少女はむ~っと頬を膨らませ、はしっと女の指を掴んだ。
そしてそのまま女の手を、腕を、と引き寄せ、ぎゅっと腕に抱きついた。
ただ寝ぼけての行動らしく、ギュッと女の腕に抱きついて幸せそうにニヘラと笑っている。
「っ・・・! ~~~っ・・・!」
女は叫んで暴れて悶えたいぐらいの気分を必死に我慢し、声を殺してじっと耐える。
そうして心を落ち着け、深呼吸をし、凪いだ心で少女の寝顔を見つめ、また悶える。
全く凪いだ心になっていない。
「・・・良い加減起こさねばな」
少女の部屋に有る時計を見て、そろそろ本当に起こさねばと、起こさずに眺めていたい心を殺して口にする女。
態々口にしたのは、そうしないと起こせないからだ。決意が揺らぐらしい。
「起きろ。朝だぞ。畑の様子を見に行くんだろう」
今度こそちゃんとした声量で、少女の体を揺らす女。
少女はそれでやっとむにゃむにゃ言いながらも体を起こした。
ただその視線は定まっておらず、ぽへーっとした顔で女を見つめている。
そして急ににへーっと笑ったと思うと、女に抱きついてお腹に頬ずりをし始めた。
女はこの何時もとはまた違う様子の甘え方が楽しみで、毎朝毎朝起こしに来ている所も有る。
今の女は完全に無表情で固まっているが、頭の中は「このまま時が止まらないだろうか」等と羊角と同レベルの思考回路であった。
だが当然少女も暫くすると、はっと自分の状態に気が付く。
そしてちょっと照れながら女から離れ、ぺこりと頭を下げて使用人服に着替えた。
ただ最近少女はこの後女にちょっと長めのハグをしてから畑に行く様になり、それも女にとっては幸せの時間だ。
今日もいつも通り女にぎゅーっと抱きつき、ニコーッと笑って畑に向かう。
「何時までああやって甘えてくれるか・・・」
子供という物は何時か成長する。何時までもああやって甘えてはくれないだろう。
そう思うと少し残念ではあるが、今の少女を可愛がればそれで良いかと自分の仕事に向かう女。
だが女は気が付いていなかった。先程の少女のハグこそが、女の調子が良い原因だと。
少女はハグをして、その際に女に纏う物を飛ばしていた。
以前女が調子の悪い時にやった様に、女にまとわりつく嫌な物を払っていた。
それを毎日の日課にする事で、女は調子のいい状態を常に保っていたのだ。
だが女はまだそれには気が付かず、今暫く自分の状態に首を傾げる日々が続くのだった。
いや、以前から恐らく調子は良かったのだろう。
ただ女が明らかに何かがおかしいと自覚したのが、ここ数日の事というだけだ。
女は少女と共に居る時間は心が軽く、力を抑えようとも思わずとも抑えられている。
その辺りは自覚していたので、精神的な物も作用しているのだろうと思っていた。
だがここ数日、気を張る必要の無い時間がやけに多くなっている。
それは少女と離れている時であっても関係なく、まるで少女と初めて殴り合いをした後の時の様な、何も内側に残っていない様な軽さが有った。
「やはりおかしいな・・・もうそろそろ影響が出て来る頃だと思っていたんだが・・・」
体の調子を確かめながら独り言を呟き、状態がおかしな事に不安を覚える女。
普通に考えれば調子が良い事は悪い事では無いのだが、自分の体が普通では無い事を自覚している以上、予測外の事が起こっている現状には不安が強いらしい。
今の調子の良さが、逆に危険の予兆なのでは感じている様だ。
「一層気を緩めない様にしておかねばな・・・」
女は出来ればもう二度と、あんな事態は引き起こしたくないと思っている。
少女が居れば止めてくれると思いたいが、それも確実ではない。
それに少女に万が一自分を殺させるような事態になれば、女は死んでも死にきれないだろう。
「さて、そろそろ時間か」
それはそれとして、女は今から少女を起こしに行く予定である。
現在早朝であり、まだ日も登る前。
だというのに相も変わらず隙の無いピシッとした様子の女。
少女でなくともその姿に見惚れる者も居なくは無いだろうと思える様子だ。
ただ今からやりに行く事は、只々自分の我が儘で少女を起こしに行くだけ。
畑を張り始めてからは、やる事も殆ど無いのに早朝から起きて起こしに行っている。
因みにそんな女には、ささやかな楽しみが有った。
「朝だぞ、起きろ」
少女の部屋の扉に軽くノックをし、反応が無い事を確かめてから中に入る。
するとそこには完全に起きる気配のない、熟睡モードの少女がそこに居た。
少女は居眠りは多いのだが、寝起きは悪くない。
なので朝になっても起きないという事は余り無く、こうやって完全に寝ている事は珍しい。
そしてそんな状態の少女を起こすのが、女にとっての朝の至福の時間であった。
「・・・朝だぞ。畑に行くんだろう」
起こす気が在るのかないのか微妙な声量で少女に声をかける女。
当然少女は起きる様子を見せず、むにゃむにゃと何か寝言を呟いている。
そんな反応を見た女の顔は、当然だがとても険しい物となっていく。
これで手に何か持っていたら完全に犯罪者の様相だ。
「・・・おい、起きろ」
再度少女に呼びかけるが声量は変わらず、代わりにぷにぷにと頬をつつく。
適度な弾力のある良い肌で、触っているだけで女は幸せな気分になっている。
当の少女は流石に接触が有った事で、アウ~と何かに追い詰められている様な表情で手足をパタパタさせていた。
そして女は更に眉間の皺を深くしていく。とてもご機嫌らしい。
「・・・まだ起きんか」
今日は珍しくとても寝起きが悪い様だ。
そう判断した女は今から少女が起きるのをとても楽しみにしている。
何故なら寝起きの悪い日の少女は、ぽへっとした雰囲気が数割増しになるのだ。
その様子が女にとっては可愛くて可愛くて堪らない。
だが今はその事はまだ後の楽しみであり、少女をツンツンとつついて遊んでいる。
するとそのうち少女はむ~っと頬を膨らませ、はしっと女の指を掴んだ。
そしてそのまま女の手を、腕を、と引き寄せ、ぎゅっと腕に抱きついた。
ただ寝ぼけての行動らしく、ギュッと女の腕に抱きついて幸せそうにニヘラと笑っている。
「っ・・・! ~~~っ・・・!」
女は叫んで暴れて悶えたいぐらいの気分を必死に我慢し、声を殺してじっと耐える。
そうして心を落ち着け、深呼吸をし、凪いだ心で少女の寝顔を見つめ、また悶える。
全く凪いだ心になっていない。
「・・・良い加減起こさねばな」
少女の部屋に有る時計を見て、そろそろ本当に起こさねばと、起こさずに眺めていたい心を殺して口にする女。
態々口にしたのは、そうしないと起こせないからだ。決意が揺らぐらしい。
「起きろ。朝だぞ。畑の様子を見に行くんだろう」
今度こそちゃんとした声量で、少女の体を揺らす女。
少女はそれでやっとむにゃむにゃ言いながらも体を起こした。
ただその視線は定まっておらず、ぽへーっとした顔で女を見つめている。
そして急ににへーっと笑ったと思うと、女に抱きついてお腹に頬ずりをし始めた。
女はこの何時もとはまた違う様子の甘え方が楽しみで、毎朝毎朝起こしに来ている所も有る。
今の女は完全に無表情で固まっているが、頭の中は「このまま時が止まらないだろうか」等と羊角と同レベルの思考回路であった。
だが当然少女も暫くすると、はっと自分の状態に気が付く。
そしてちょっと照れながら女から離れ、ぺこりと頭を下げて使用人服に着替えた。
ただ最近少女はこの後女にちょっと長めのハグをしてから畑に行く様になり、それも女にとっては幸せの時間だ。
今日もいつも通り女にぎゅーっと抱きつき、ニコーッと笑って畑に向かう。
「何時までああやって甘えてくれるか・・・」
子供という物は何時か成長する。何時までもああやって甘えてはくれないだろう。
そう思うと少し残念ではあるが、今の少女を可愛がればそれで良いかと自分の仕事に向かう女。
だが女は気が付いていなかった。先程の少女のハグこそが、女の調子が良い原因だと。
少女はハグをして、その際に女に纏う物を飛ばしていた。
以前女が調子の悪い時にやった様に、女にまとわりつく嫌な物を払っていた。
それを毎日の日課にする事で、女は調子のいい状態を常に保っていたのだ。
だが女はまだそれには気が付かず、今暫く自分の状態に首を傾げる日々が続くのだった。
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