角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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112、同じだけど違う事。

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「「あ゛?」」

今日も今日とていつも通り、男と女が睨み合いをしていた。
あと数秒すればどちらともなく拳が出るだろう。
とはいえ何時もの事なので誰も気にしないし、少女に限っては微笑ましい笑顔で見つめている。
今日も二人は元気だなぁと、割とズレた思考をしている様だ。ただ今日は、少し状況が違った。

「えいっ」

男に背後に彼女が居たのだが、何を思ったのか男の背中を押したのだ。
その時の男と女は額が付きそうな程近づいており、結果―――。

「んぐっ!?」
「ぶぐっ!?」

二人の口がぶつかった。全く色気の欠片も無い呻き声である。因みに後者が女だ。
それもそのはず可愛らしいキスではなく、歯と歯が思い切りぶつかってしまった様だ。
二人は痛みで口を押さえて蹲っている。

少女は何が起きたのか良く解らず蹲る二人の間をオロオロと動き、二人ともその気配は解っているので手を上げて返す。
大丈夫だという意思表示と解り少女はほっとした顔を見せ、その顔を彼女に向ける。
珍しく怒っており、両手を胸元で握って怒っていますよと体でも解り易い意思表示をしていた。

「あー・・・ちょっとした悪戯のつもりだったんだけど、力入れすぎちゃった。ごめんなさい」

彼女はぺこりと少女に頭を下げ、全くもうという様子で腰に手を当てる少女。
少女は怒ってはいるが、それで彼女を許した様だ。

「ほう、悪戯、悪戯ねぇ・・・」
「貴様、覚悟は出来ているのだろうな・・・」

だがそれで許しはしない二人がゆらりと立ち上がる。
二人とも顔は笑顔なのだが、声はとてもドスが効いている。
彼女は二人の迫力に変な笑顔になりながら、ジワリと後ずさっていた。

「しかも、こいつと・・・あっ、しまった、意識すると気持ち悪くなって来た」
「それは此方のセリフです。何が悲しくてあなたと・・・うぷっ・・・ほんとに吐きそう」

二人は本当に気持ち悪そうな様子を見せながら、そのまま蹲ってしまった。
今ちょっとでも動けば吐くと言わんばかりの表情で、必死に堪えているのが見て取れる。

「わ、わ、ちょっと待ってて下さいね、ビニールか何か取って来ますから!」

二人の必死な様子に彼女も慌てだし、二人は頷きだけで返す。というかそれでしか返せない。
彼女が走って去って行くのを見届けた少女は、少しでも楽になる様にと二人の背中を擦る。
それに効果が有ったのか無いのかは解らないが、彼女が袋を取って来るまでは耐えられた様だ。
二人は胃液しか出なくなるまで吐き切り、その後はげっそりとした様子で顔を洗いに行った。

「・・・あー、今は余裕無さそうだけど、後が怖いなぁ。あ、そうだ。角っ子ちゃん、ちょっと待って。それあたしが捨てに行くからさ、代わりに・・・」

彼女は二人の吐瀉物の入った袋を捨てに行こうとしている少女と呼び止め、少女にとあることをお願いする。
少女はそれに少し不安に首を傾げるが、彼女は「角っ子ちゃんなら大丈夫!」と言って袋を持って去って行った。
断る事も出来ずにおいて行かれた少女は、少し不安になりながらも頼まれた事をやりに行く事を決めた様だ。
パタパタとその場から去って行き、男と女を追いかけに行った。









「くっそ、マジで気持ちわりい・・・あー、やっと落ち着いた」
「こっちだって何が悲しくて貴様と・・・!」
「俺だって好きでやった訳じゃねえよ!」
「当たり前だ、誰が貴様なんぞと好き好んでやるものか!」
「「あ゛!?」」

顔を洗い終わったところで先程の続きの様に睨み合う二人。
だがそこにパタパタと少女が慌てて割って入って来た事で、二人の意識は少女に向いた。

「ん、どうした?」
「なんだ、止めるなんて珍しい」

男も女も少女が止めに入る事を珍しく思い、怒りがどこかに飛んで行った様だ。
少女はその事に安心しつつ、二人にしゃがんで欲しいと手をピコピコ動かす。

「何、しゃがめばいいの?」
「私もか?」

二人は少女希望通りしゃがみ、そうすると少女の顏の高さに二人の顔が下りて来る。
そして少女はふんすと気合を入れ、二人の頬にちゅっとキスをした。
彼女が先程少女に頼んだ事は、二人のご機嫌取りの為のこの行為だ。
これで少しは怒りがそれないかなーと画策したらしい。

二人は何が起こったのか良く解らず、目をぱちくりさせている。
だが少女が二人の反応に少し不安になり始めた顔をしたので、慌てて口を開く。

「あ、あはは、ありがとな、うん、もう大丈夫だ」
「ああ、お前のおかげで気分は良くなった。ありがとう」

二人の顔色が明るい事を確認し、少女はにこーっと満面の笑みを返す。
そして女に再度反対の頬にキスをして、もっとご機嫌になって貰おうとした。
当然それは上手く行き、女は人が殺せそうな程の表情で迎え入れている。
そして男にもと思ったところで、女は少女を抱きかかえた。

「旦那様にはさっきので十分だ。それと男性相手には余りそういう事はするな」

女に少し強めに言われ、少し残念だなと思いながらコクンと頷く少女。
その行為の意味は良く解らないが、男相手ならどんな事でも良いのになと思っているらしい。
少しばかり危険な思考である。

「・・・さて、やらせたのは間違いなくあいつだろ」
「ええ、奴でしょうね」
「どうしてくれようか・・・!」
「ふふっ、タダでは済まさんぞ・・・!」

だが少女の頑張りもむなしく、彼女への怒りは忘れられていなかったらしい。
彼女はあとで地獄を見る事になるが、少女は二人が元気になったので満足なのであった。
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