角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
105 / 247

103、気が付いてしまった真実。

しおりを挟む
少女は張り切っていた。
いや、普段から張り切っているが、最近はまた特に張り切っている。
当然理由は先日のお使いによるものだ。あれで少し自信が付いたらしい。

やった事は皆の見守りの中電車で出かけ、店先の店員すら周知の最中でお買い物をしただけ。
だがそんな事を全く知らない少女は、成し遂げた事に対する自信を溢れさせている。
ムフーと満足げな息を吐きながら、今日もお屋敷の掃除をする少女であった。

「角っ子ちゃん、今日もご機嫌だねー」

そんな少女の様子を楽し気に思いながら、彼女は少女の頬をツンツンとつつく。
アウアウと少し翻弄される少女であったが、ぷくっと頬を膨らませて抵抗した。
すると彼女は両手で頬をムニっと挟み込み、ぷすっと空気が漏れて少女の顏は潰されてしまう。
少女はちょっと悔しそうだ。

「あははははっ」

彼女は笑いながら手を離し、少女の頭をワシワシと撫でる。
その笑いにつられてしまったのか、少女も楽しそうに笑顔を見せた。
少女が楽しげなのを確認して彼女がギューッと抱きつき、少女も同じ様に抱きつき返す。

張り切っていようがいまいが、皆も少女もあまり変化は無い様子であった。
そもそも少女は常に何かに気合を入れているので、その変化が解り難いとも言える。

「あ、ただいま戻りました」

キャッキャと楽しそうにじゃれついている二人の所に、少年が通りかかり帰りの言葉を告げる。
見ると少年はコートを羽織って鞄を肩にかけており、頬が赤くなっていて今帰って来たのだと解る様子だ。

「おかえりー。あはは、真っ赤だ。さむかったでしょー。ほら、お姉さんの手は暖かいよー」
「あうっ」

彼女は少年の頬をぶにっと挟み、少年は顔を引く事も出来ずにがっちりつかまれてしまう。
そして少女も同じ様に少年の顎下辺りをぴとっと触り、少年は声も無く固まってしまった。
彼女と少女はとても楽しげだが、少年は必要以上に体温が上昇している。

「いやー、しかしすべすべだね。まだ髭も生えてないんだよねー」

だが彼女はそんな事はお構いなしに少年の頬をすりすりと触り、少女もそれを見て同じ様に手で確かめる。
少年は小さく「ひぅ」と声を上げたが、それに気が付いたのは彼女だけでニマニマしながらその様子を眺めていた。
そして微かに「男の子に肌で負けてる」という悔しさからの悪戯でもあった。

「あ、あ、あの、ぼ、僕、報告に、いかないと、いけ、ないので」

なんとか言葉を絞り出した少年だが、彼女はそのせいで余計に笑ってしまっている。
とはいえこれ以上邪魔はしてはいけないかと手を放した所、偶然女が通りかかった。

「帰っていたのか。いや、今帰った所か」
「は、はい、今帰りました」

女は少年の様子を見て帰宅直後だと判断し、傍に居る二人を見てある程度の事情も察した様だ。
少年は背筋の伸ばして帰宅報告をし、少し緊張感の有る様子で持っていた鞄から書類を渡す。
そして役所がどうだと、向こうの書類不備がどうだと、少女には良く解らない会話が女と少年の間で始まった。

「・・・あれ、角っ子ちゃんどうしたの」

彼女は少女の様子がおかしい事に気が付く。
少女は少年に向けて、心底驚いている目を向けているのだ。
自分には付いて行けない会話を平然とする少年をみて、意味が解らなくなっている。

少女にとって少年は、何処か引っ込み思案で、恥ずかしがりやで、偶に言葉にどもって、守ってあげたい可愛い人間だった。
だが今の少年の様子はどうだ。女と会話する様は仕事中の男の様ではないかと。

そう、少女は知らなかったのだ。少年が仕事の出来る人間だと。
今ここで初めて、少女がやった様な買い物どころか、男が関わっている会社への使いの仕事すら任される程信用されているという事を知ったのだ。

「お、おーい、角っ子ちゃーん・・・聞こえてるー・・・?」

少女は余りのショックに完全に固まっていた。彼女の呼びかけの声が聞こえない程に。
そしてその後暫く、少女は珍しく嫉妬の視線を少年に向けるのだった。
少年は何故そんな目で見られているのかよく解らず、数日間辛い日々を送る事になってしまう。
ただ視線が良く向けられる事に喜んでいた部分も少しある様で、完全に辛い日々という訳でもなかった様だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...