角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
101 / 247

99、調子の変化。

しおりを挟む
心地良い季節だと思っていたのも束の間の事、あっという間に寒い時期がやって来た。
そんな最中でも少女は元気に走り回り、畑仕事も張り切っている。
張り切っているのだが・・・最近の少女は少々様子がおかしかった。

「おチビちゃん、大丈夫?」

単眼の問いかけにコクコクと頷く少女であったが、その様子は全く大丈夫ではない。
とは言っても住人達が焦る様な事は特になく、むしろ微笑ましく思いながら様子を見ている。

「んー、全然大丈夫じゃないね」

そんな少女を見つめながらくすくすと笑う単眼。
少女はそれにプルプルと横に首を振るが、それも動きが緩い。
そして話しかけずに暫く放置しておくと、少女はコックリコックリと船をこぎ始める。
最近の少女はこの通り、良く寝る様子が見られる様になっていた。

それは今迄の様に陽気に負けて眠るという様な物ではなく、むしろそんな物は関係無く眠たげにしている。
その可愛い様子には誰も危機感を感じていないし、感じる事は無いだろう。
この時期に畑仕事をしている途中でも時々眠そうにしている辺りは少し危険ではあるが。

「最近よく寝るねぇ・・・」
「この間の疲れが今頃出たのかもね。結構暴れたらしいし」

完全に頭がテーブルに落ちてしまっている少女を眺めながら単眼は楽し気に呟き、複眼は今の少女の状態の原因の予想を語る。

「それが原因なのかな?」
「さあ。単純にそれしか理由が思いつかないだけ」
「ああ、成程」

単眼の問いにシンプルに応える複眼だが、実はその答えは案外間違っていない。
少女は女との殴りあい以降、少しばかり良く眠る様になっている。

事件後すぐは女と共に居る時間が多く、女の膝で寝ていたりなどした為余り気にならなかった。
だが普段通りの仕事を始めてからも、少女は良くウトウトした様子を見せている。
それはひとえに、力の回復をしているからであった。

力の消耗により普段の稼働にも体力を普段より消耗し、普段よりよく眠る様になっている。
そしてそれは他の部分にも影響が出ていた。

「そういえばおチビちゃん、力が入ってない時が有るのよね」
「ああ、足腰に力が入ってない時あるよね。偶にふらついてる」
「それもそうなんだけど、普段から前より力が弱い気がするの」

二人の言う通り、最近の少女は前程力が強くなくなっていた。
勿論犬に付いて走れるぐらいの体力も脚力も健在だし、力も普通の人に比べれば強い。
だがそれは帰って暫くするとねじが切れた様に眠る事も多く、偶に瓶の蓋が開けられず顔を真っ赤にして頑張っている少女も見受けられる。
ただふらついているのは少女のバランス感覚の無さが原因であり、力が入っていないせいで余計にふらついているのだった。

「むしろそれが普通で、普段の力が強過ぎなんだと思うけど」
「あはは、それは確かに。あの小さい体には不釣り合いな力だもんね」

複眼は少女の飲みかけのミルクを片付けつつ今が普通と言い、単眼も笑顔で同意しながら少女を起こさない様に抱える。
単眼の大きな腕は安定していて寝やすいのか、少女は気持ち良さげに腕に抱きついていた。

「ふふっ、じゃあ私は寝かせて来るね」
「はいはい、お願い」

そしてこうやって誰かにベッドに運ばれ、また寝てしまったとへこむ少女が最近のワンセットになっていた。
もう一つ加えると寝る前の抵抗の相手が彼女だと、寝る直前まで遊ばれたりもしている。

「ふふ、お休みおチビちゃ――――」

少女をベッドに寝かせ、優しく頭を撫でてその場を離れようとする単眼。
だがその手をキュッと握られ、それが余りに力が弱かった為に思わず中腰で止まってしまう。

「も、もうちょっと良いよね?」

思わず腰を下ろし、少女の寝顔を見る様にベッドに顔を乗せる単眼。
少女は握った単眼の手を頬に当て、気持ち良さげに擦り付けている。

「えへへ、可愛いなぁ・・・」

そうして少女を眺める単眼はつられたように眠ってしまい、迎えに来た複眼に溜め息を吐かれながら起こされるのであった。






因みに女は特にこういった症状は出ていない。それ故に女は少しばかり心配に思っている。
ただ変わらず元気な様子では有るので、暫く様子を見る事に決めている様だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...