角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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90、絵。

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「んー、こんな感じでどうかな」

単眼は紙に描いた絵を少女に見せる。
少女はその絵を見て驚きを見せ、尊敬する様なキラキラした瞳を単眼に向けた。
紙には犬の絵がデフォルメで描かれており、とても可愛らしい絵になっている。

「あはは、気に入ってくれた?」

単眼の問いに少女は大きくコクコクと頷く。
そして再度絵に視線を向け、はーと溜め息を吐きながら見つめている。
どうやら余程気に入ったらしい。

「人形を作る時にどんなの作ろうって、一度絵にしたりするから慣れてるんだ。ただデフォルメの絵しか描けないけど」

単眼の言葉通り、描かれた絵は確かに可愛らしくデフォルメされた物だ。
絵画や美術品の様なリアルな物とは程遠い。
だがそれでも悪い絵などではなく、味のある可愛いイラストに見えた。
勿論少女はとても気に入り、物凄く嬉しそうにその絵をどう残すか考え始めている。

「あはは、確か部屋に使ってないファイルが有ったから、後であげるね」

単眼が楽しそうな少女の頭を撫でながら言うと、少女はニコーっと良い笑顔を見せる。
それがまた可愛くて、単眼は少女を抱き上げて優しく抱きしめた。
少女もきゃーっと楽しそうに応え、単眼の首に抱きつく。

「あら、今日はお絵かきしてたの?」

そこに羊角がやって来て、テーブルに並ぶ紙を見ながら訊ねる。
散らばる紙に描かれた絵を見て、羊角は思わずにやけてしまった。

少女の描いたらしき、おそらく懸命に描いたのであろう絵。
明らかに絵を描き慣れていない、幼児が描いた様な絵に。
いや、その絵を描いている様子を想像してにやけてしまったのだ。

「可愛いぃ・・・絵の練習してたの? 今からまだ描くの?」

スチャッと何処からかカメラを取り出す羊角。
描いていた様子を撮れなかった事に悔しがるよりも、今からの事に力を入れるつもりらしい。
だが少女はその答えより、単眼に描いて貰った絵を羊角に見せる。

「あら可愛い。もしかしてもうそこまで描けるようになったの?」
「ううん、これは私が描いた物だよ」
「それはそれで可愛いわ。貴女本当に可愛らしいわね」
「え、えへへ、そうかな?」

羊角に可愛いと言われ、少し照れる様に笑う単眼。

「これで大きくなかったら完璧なのにねぇ」
「うっ、ぐっ・・・酷い・・・喜びを返して・・・」

だが次の一言で単眼は崩れ落ちた。
落ち込む単眼に慌て、優しく頭を抱きしめる少女。
だが単眼は頭を落としたまま少女に抱きつき、起き上がる様子を見せなかった。
上げてから落とされた為に少々ダメージが大きかったようである。

「まあまあ、可愛いっていうのは本当だから」
「うう~・・・ふーんだ」
「あら、拗ねちゃった」

羊角はこの会話の間も慌てる少女を撮り続けている。
単眼は出汁に使われた事に気が付き、少女を隠す様に抱きしめてぷいっと羊角から顔を背けた。
本当に体の大きささえ目を瞑れば可愛らしい女性だと、羊角は内心思いながらクスクスと笑う。

「ごめんなさい、揶揄い過ぎたわね。今度お詫びに何か甘い物でも驕るわ」
「まったくもう・・・おチビちゃんの分も買ってね」
「天使ちゃんの分ならいくらでも♡」

喜ぶ様に応えた羊角に溜め息を吐き、単眼は少女を抱えてテーブルに戻る。
そのまま椅子に座り、少女を膝の上に乗せる。
単眼の機嫌が直った事に少女はほっと息を吐いていた。

「所で何で絵を描き出したりしたの? また旦那様がらみ?」
「そうといえばそうだけど、違うと言えば違うかなぁ。ほら、この間楽しそうに絵本読んでたの覚えてない?」
「ええ、可愛かったし、ちゃんと撮ってるわよ」
「・・・ああ、そう、えーと・・・それで、ちょっと、絵を描いてみたくなったらしくてね」

先日少女が買って貰った絵本。それは少女に絵を描くきっかけを与える物になったらしい。
可愛い絵を見て自分も描きたくなり、色々と殴り描いていたのだ。

単眼は偶々そこにやってきて、最初は少女のお絵かき風景をのんびり眺めていた。
ただ何となく見ていて自分も描きたくなり、描いている内に少女が興味津々で見つめ始める。
その結果が冒頭の様子であり、今に至るのだった。

「成程ねー。それでこの可愛らしい様子って事なのね」
「そうそう」

そしてその説明をしている間、少女は鼻歌をフンフンと歌いがなら絵を描いている。
やはりその絵はけして上手いとは言えず、どう見ても幼児が描く落書きそのものだ。
字はそれなりに綺麗だというのに何故なのか。

「・・・ねえ、おチビちゃん、もしかしてこれ、旦那様と先輩?」

単眼は少女の書く絵を見つめて訊ねると、少女は解って貰えた事に笑顔で頷いた。
その絵はスーツの様な服を着た何かと、使用人服っぽい何かの絵。
どうやら男と女の絵らしい。そしてまたご機嫌に絵の続きを描いて行く少女。

「あー・・・これは先輩、暫く凄い顔になりそう」
「うん、絶対なると思うわ」

この絵を渡された女を想像し、一日使い物にならなくなるだろうなと思う単眼と羊角であった。
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