角持ち奴隷少女の使用人。

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82、情報。

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何時もの朝。何時もの朝食。
だが今日は何時もと少し違う所が有った。

「うん、美味い。いやー、悪いな、私までご馳走になって」

何故か友人が朝食を一緒にしている。
因みに泊った翌日ではなく、やって来たのは早朝。それも日の出頃だ。
流石に正面玄関は閉めていたので、畑仕事の為に開けられた裏口から不法侵入しようとした。

だがその際少女が友人を見つけ、涙目で女に助けを求めに行ったのですぐさまボコボコにされ、簀巻きにされてゴミ箱に入れられてしまった。
少女の誤解はまだ解けていないようだ。その証拠に今も少年を近づけさせないようにしている。
少年はその時、少女が抱きついて移動を阻止して来るので完全に行動不可能になっていた。

「悪いと思うなら帰れよ。つーかこんな時間からくんな」
「そもそもどうやってあそこから抜け出したんですか、この生ごみは」

いつの間にか簀巻きから抜けだし、当たり前の様に朝食をとっている友人に文句を言う男と女。
だが友人は気にする風でもなくふふっと笑った。因みに食べているのは本来は男の朝食だ。

少女は友人を警戒して別の所で食べており、使用人達と一緒に楽し気に朝食を摂っている。
女も本当ならそちらに混ざりたいので苛立ちながら食堂に立っていた。
その間少年は少女に「あーん」されて、自分が口を付けたスプーンでもっきゅもっきゅと食事をする少女を見て顔を真っ赤にしている。少女は一切気にしていないのが悲しい。

「おやおや辛辣だね、二人共。折角大事な友人達に会いに来たのに」
「うるせえ腐れ縁。大体お前の目当てはこいつで、俺の事なんてどうでも良いだろうが」
「いやいや、お前の事も大事な友人だと思っているよ。ただ彼女が私にとって格別なだけでね」
「解んねえわー・・・これの何処が良いのかさっぱりわっかんねぇ・・・」

男は心底理解不能な目を向けるが、友人は可哀そうな物を見る目を男に向けた。
少しイラッとした男は手元にあったフォークを投げ、友人の腕に綺麗に突き刺さした。

「いたっ、いったあああああ! ちょっ、お前、これは洒落にならないだろう!」
「うるせえ、顔面狙わなかっただけ感謝しやがれ!」
「甘いですね旦那様。顔よりも内臓を狙わなければ」
「君も君でえげつないな!」

腕からフォークを抜き、ハンカチを患部に巻きながら二人に文句を言う友人。
女は少女と戯れる時間を邪魔されているので本気で容赦が無い。

「ったく、んで、今日は何で来たんだ? ただ遊びに来ただけか?」
「そうだよ、と言いたいけど別口の要件が有って来た、かな」

男の問いに友人は食事を一時中断し、ごそごそと鞄をまさぐって封筒を取り出した。
それを女に渡し、女はそのまま男に渡す。
男は嫌な予感がしながらも封筒を開けて中身を確認し、心底嫌そうな顔を見せた。
そして女にも中身を見せると、女は表情が完全に抜け落ちながらそれを見つめる。

「ったく、ご苦労なこって」
「全くですね」

男と女は心底気に食わないという声音で同じ気持ちを口にする。
封筒の中に入っていた物は、少女の経歴と危険人物を男が抱えているという情報だ。
それだけなら良いのだが、これはとある放送局の企画書であった。

「まあそれ、もう潰したんだけどね。感謝して欲しいなー」
「ああ、はいはい。ありがとうございます。お礼にその朝食好きなだけどうぞ」
「安くないか!?」
「それ、こいつが作ったもんだが?」
「そうですか、私の作った物では満足して頂けませんか」
「いやぁ、君の作った食事は最高だなぁ!」

友人は最高の笑顔で食事を再開し、それを見届けてから男と女は溜め息を吐いた。
少女の情報が出回っているその事に気分を重くしながら。




尚、女は友人に少しは感謝していたので、その日は腰を抱く友人を我慢した。
今日は我慢。今日は我慢。今日は我慢。と心の中で呟く女。
だが尻を撫でられたところで完全にブチ切れ、結局いつも通り手が出てしまう。
何時まで経っても学習せず、折角の感謝の気持ちを自分でぶち壊す友人であった。
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