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81、特別感。
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「・・・ん? ちみっこ、それ、どうしたの?」
複眼に声をかけられ、首を傾げながら振り向く少女。
そして複眼の指さす先を見て、手元にある携帯端末に目を落とす。
少女は「これの事?」と聞く様に高く掲げ、首を傾げながら複眼を見る。
「そうそう、それ確か旦那様のじゃないの?」
複眼は少女の端末に見覚えがあり、男が触っていたのを見た覚えも有る。
少女はその質問にコクリと頷くと、とても嬉しそうな表情で端末を抱きしめた。
むふーと聞こえてきそうな満足げな笑顔にも見える。
「・・・うん?」
少女の行動が良く解らず首を捻る複眼。
だが少女は端末を抱きめながら一緒に首を傾げるだけだった。
満面の笑みを浮かべたままなのが尚の事良く解らないだろう。
「・・・うーん、いや、えっと」
「貰ったんだってさ、それ」
そこに事情を知るらしい彼女が横から説明をし、少女は笑みで肯定をする。
今日の少女は端末を貰った事が嬉しくて、かなりぽややんとしている様だ。
「貰ったって・・・旦那様は電話どうすんの?」
「機種変更」
「ああ、お古。なるほど、旦那様の物を貰ったのが嬉しい訳だ」
複眼の言葉にペカーッと光が見えるかの様な笑顔で返す少女。
そう、少女は端末を貰った事を喜んでいるのではない。
少女は「大好きな旦那様の端末」を貰った事が嬉しいのだ。
勿論男や女から買い与えられた物は、どんな物でも大事な物だ。
けど今回貰った物は「男の所有物」であり、それは少女にとってとても特別な物だ。
機種変更をするのが遅く、若干年季が入っている感じなのも少女的には高得点らしい。
とにかく男が持っていた物、という事が少女にとっては大事な事であった。
余りに嬉しいせいか、いつもの様にキャッキャとはしゃぐ様子ではなく、端末を持ってずっとにへらっと笑っている。
表情が笑顔以外に変化しない辺り、本気でご機嫌の様だ。
「なんか本格的に、お父さんっ子がお父さんの物欲しがる感じよね」
複眼の言葉は的を射ているのかもしれないが、真実は少女にしか解らない。
ただ少女にとって男は大好きな人であるが、その分何かを返さなければいけない相手でもある。
無条件に大好きな相手という訳では無いので父親とは少し違うだろう。
ただ、男に父性的な物を求めていないとは言い難い。
少女はそういった物に触れて来ず、初めて優しくしてくれた大人の男性が男なのだ。
なれば男にその手の感情を持つ事もおかしな事ではない。ただ―――。
「・・・あたしには、それ以上に見えるけどなぁ。角っ子ちゃんの旦那様見る目」
彼女はむしろ、恋人に対する眼を向けている様な気がしていた。
勿論少女にそんな感情は良く解っていないのだが、それでも父性に向けるそれとはどこか違う。
実際はどうなのかは、本当に誰にも、少女にも解らない。
もし解る日が来るとすれば、少女がもっと成長して、色んな感情を知って、自分の生き方を決められるようになった頃の話だろう。
今の少女には「旦那様が大好き」という感情しか解っていないのだから。
「もし、本当にそうだったらどうする?」
「んー? 角っ子ちゃんが奥様になるなら、あたしは老後迄ずっとここで仕事でも良いかなぁ」
「・・・いや、そうじゃなくて・・・もう良い」
もし少女の想いが恋焦がれる物だった場合の騒動を想像する複眼だったが、お気楽な彼女の言葉を聞いて考えても仕方ないと思った様だ。
そして二人共が思っていた。少年はもっと頑張らないと本当に悲しい事になるぞ、と。
複眼に声をかけられ、首を傾げながら振り向く少女。
そして複眼の指さす先を見て、手元にある携帯端末に目を落とす。
少女は「これの事?」と聞く様に高く掲げ、首を傾げながら複眼を見る。
「そうそう、それ確か旦那様のじゃないの?」
複眼は少女の端末に見覚えがあり、男が触っていたのを見た覚えも有る。
少女はその質問にコクリと頷くと、とても嬉しそうな表情で端末を抱きしめた。
むふーと聞こえてきそうな満足げな笑顔にも見える。
「・・・うん?」
少女の行動が良く解らず首を捻る複眼。
だが少女は端末を抱きめながら一緒に首を傾げるだけだった。
満面の笑みを浮かべたままなのが尚の事良く解らないだろう。
「・・・うーん、いや、えっと」
「貰ったんだってさ、それ」
そこに事情を知るらしい彼女が横から説明をし、少女は笑みで肯定をする。
今日の少女は端末を貰った事が嬉しくて、かなりぽややんとしている様だ。
「貰ったって・・・旦那様は電話どうすんの?」
「機種変更」
「ああ、お古。なるほど、旦那様の物を貰ったのが嬉しい訳だ」
複眼の言葉にペカーッと光が見えるかの様な笑顔で返す少女。
そう、少女は端末を貰った事を喜んでいるのではない。
少女は「大好きな旦那様の端末」を貰った事が嬉しいのだ。
勿論男や女から買い与えられた物は、どんな物でも大事な物だ。
けど今回貰った物は「男の所有物」であり、それは少女にとってとても特別な物だ。
機種変更をするのが遅く、若干年季が入っている感じなのも少女的には高得点らしい。
とにかく男が持っていた物、という事が少女にとっては大事な事であった。
余りに嬉しいせいか、いつもの様にキャッキャとはしゃぐ様子ではなく、端末を持ってずっとにへらっと笑っている。
表情が笑顔以外に変化しない辺り、本気でご機嫌の様だ。
「なんか本格的に、お父さんっ子がお父さんの物欲しがる感じよね」
複眼の言葉は的を射ているのかもしれないが、真実は少女にしか解らない。
ただ少女にとって男は大好きな人であるが、その分何かを返さなければいけない相手でもある。
無条件に大好きな相手という訳では無いので父親とは少し違うだろう。
ただ、男に父性的な物を求めていないとは言い難い。
少女はそういった物に触れて来ず、初めて優しくしてくれた大人の男性が男なのだ。
なれば男にその手の感情を持つ事もおかしな事ではない。ただ―――。
「・・・あたしには、それ以上に見えるけどなぁ。角っ子ちゃんの旦那様見る目」
彼女はむしろ、恋人に対する眼を向けている様な気がしていた。
勿論少女にそんな感情は良く解っていないのだが、それでも父性に向けるそれとはどこか違う。
実際はどうなのかは、本当に誰にも、少女にも解らない。
もし解る日が来るとすれば、少女がもっと成長して、色んな感情を知って、自分の生き方を決められるようになった頃の話だろう。
今の少女には「旦那様が大好き」という感情しか解っていないのだから。
「もし、本当にそうだったらどうする?」
「んー? 角っ子ちゃんが奥様になるなら、あたしは老後迄ずっとここで仕事でも良いかなぁ」
「・・・いや、そうじゃなくて・・・もう良い」
もし少女の想いが恋焦がれる物だった場合の騒動を想像する複眼だったが、お気楽な彼女の言葉を聞いて考えても仕方ないと思った様だ。
そして二人共が思っていた。少年はもっと頑張らないと本当に悲しい事になるぞ、と。
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