角持ち奴隷少女の使用人。

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75、プール。

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「ひゃっはー! プールだー!」

暑い日差しの中、彼女が叫びながらテンション高く跳び上がり、良く解らないまま少女も同じ様に楽しそうに飛び上がる。
そして二人は手を繋ぎながら、きゃっきゃっと楽し気にクルクル回り出した。
二人の今の姿は水着であり、彼女の言葉からプールに入る事は察せられる。

「テンション高いな、あんた・・・」

だがしかし、そんな彼女に向けて呆れた様に呟く複眼。
彼女のテンションの高さは、周囲の人間にとっては若干どころかとても戸惑う物だったのだ。
何故ならそれは。

「庭にビニールプール出すだけでそこまでテンション上げられるの、多分貴女だけよ?」

単眼の言葉通り場所は屋敷の庭であり、プールはプールでも明らかに大人が泳ぐには厳しいビニールプールだからだ。
故に複眼は呆れた様子で呟きながら、ドボドボとプールに水を入れている。
ただそれでも少女は目をキラキラさせて水が溜まるのを待っており、大分楽しそうではあるが。
因みに単眼は水着だが複眼は何時もの使用人服だ。

「だーって、先輩が連れてっちゃ駄目っていうんだもんー」

元々彼女は少女を街のプールに連れて行くつもりだった。
だが女がそれを却下し、妥協案として出したのが庭でのビニールプールだ。

女としては角を見られる事で何かしらの面倒が起きる可能性を考えての事。
今まで街に出かける際は少女には必ず帽子を被らせていた。それは当然角を隠す為だ。
少女の角は珍しい物。ただそれだけでも注目されかねないのに、少女には色々と事情がある。
今の世は情報を全世界に気軽にばらまく事も出来る事を考えると、女は許可を出せなかった。

「大体クッソ広い屋敷の癖に、プールの一つもないとか。普通大きなお屋敷ってプールの一つや二つ有るもんじゃないの?」
「へー、プールなんて有っても誰も使わねーと思ってて申し訳ありませんねぇー」
「げっ、旦那様、居たの?」

彼女がプールが無い事を愚痴ると、男が平坦な声で応えた。
どうやら彼女がテンション高く叫んでいる声を聞き、何をしているのかと見に来たらしい。

「居て悪いか? 一応俺はこの家の主で、お前らの雇い主なんだが?」
「あー・・・えへへ、こ、この体を見れた事に免じて、許して☆」

男は半眼で応えると彼女は眼を泳がせながら思考し、見せつける様にポーズをとってウインクをした。
彼女の姿は冒頭通り水着であり、それも上下に分かれている物だ。
とは言ってもそこまで激しい物ではなく、ぱっと見少し露出多めの私服に見えなくもない。

肩口と腹回り、膝上から下が出ている程度。
私服になると少し露出の多い服を着る彼女であれば、普段着とそう変わらないだろう。

尚、少女と単眼はワンピースタイプの水着で、露出は余り無い物を着ている。
特に単眼は上にシャツを着ており、パレオも付けているので尚の事露出は少ない。
少女はフリルスカートの様になっている水着なので、濡れなければ普段着に見えなくもないだろう。

男は彼女の言葉を聞き、頭からつま先までゆっくりと眺め、最後に腹に視線が戻った。

「お前、太った?」
「おらぁ!」
「げふっ!?」

男が呟いた瞬間、彼女のラリアットが炸裂。
避ける暇のない攻撃は綺麗にクリーンヒットし、男はその場に崩れ落ちた。
何故毎回毎回ラリアットなのかは誰にも解らない。

「言ってはならん事をぉ! あたしは標準体重! ちょっと脂肪がぷにっとしてるだけだぁ!」

がおーっと叫ぶ彼女だが、男は耳に届いていてもそれどころではない。
少女は怒っている彼女と倒れている男に視線を迷わせながら、とりあえず男を起こしに行った。

「はいはい、水が溜まったからその辺で。準備運動もしてないんだし、ちゃんとしてから入りなよ。私は仕事に戻るから、後片付けはあんたらでやってね」
「はーい!」
「はーい、ありがとー」

そこで複眼が声をかけ、手を挙げて応える彼女と礼を言う単眼。
複眼は立ち上がると男の傍まで行って男に手を差し出す。
男はそれに目で礼をして立ち上がり、少女の頭をひと撫でして屋敷に戻ろうとする。
いや、戻ろうとして、少女に服を掴まれている事に気が付いた。

「ん、どうした?」

男は少女に要件を聞いたが、上目遣いでチラチラと見つめつつ、プールにも視線がチラチラ行っている事で理解した。
一緒にプールで遊ばないかと誘われているのだと。

「あー・・・えっと、今日はちょっと。ごめんな、また今度な」

流石の男も使用人達の中に混ざって水遊び、という事は出来ないらしい。
せめて少女だけならば、保護者として傍で見守る事も有りはしただろうが。
断られてしまっては、少女は我が儘を言う子では無いので素直に手を離す。
そして捨てられた子犬のような視線を男に送りながら、男が去っていくのを見送るのだった。

「角っ子ちゃーん、準備体操しよー」
「ほら、おいでーおチビちゃん」

だが彼女と単眼に呼ばれ、慌ててパタパタとかけていく少女。
いつまでも暗い顔をしていては良くないと切り替え、二人と一緒に準備運動を始めた。
一生懸命に動いている内に楽しくなってきて、少女は段々と笑顔になっていく。
ただしそのリズムは相変わらずで、やはり珍妙な動きではあったが。

「よし、それじゃ足からゆっくりね。一気に入ると体がびっくりしちゃうからね?」

単眼はお手本としてゆっくり足から水をかけていき、体に慣らす様に少女に教える。
少女もそれを見て素直に真似をして水をかけ、思ったよりヒヤッとした感触に驚く。
体が熱いせいないのか、気温が高いせいないのか、余計に冷たく感じたらしい。
ただ真冬の最中水に足を付けられる少女なので、それもすぐに慣れた様子だった。

「とーう!」

だが彼女は途中でじれったくなったらしく、水の中にダイブしてしまう。
それによって水が大量に弾かれ、少女と単眼も思い切り水を被ってしまった。
単眼は体が大きいので顔まで届かなかったが少女は頭から浴びてしまい、頭をプルプル振って水を飛ばし、くしくしと顔を拭いている。

「もう、おちびちゃんが頭から被っちゃったじゃない」
「あはは、ごめんごめん。でもどうせ濡れるんだし平気平気ー」
「そういう事言ってる人が足つっておぼれたりするんだから」
「ビニールプールで足つった所でどうなるってのさー。ほら、角っ子ちゃん、気持ち良いよー」

単眼の言う事が正しいのだと解っている少女なのだが、目の前のプールという存在と彼女の誘いに完全に負け、そわそわしながら単眼に上目遣いで伺いを立てる。
単眼はちょっと困った顔をしながらも頷き、少女はいそいそとプールの中に体を入れた。

当然深さなど無く、少女でも膝程度の水嵩だ。それでも何故か楽しい気持ちが沸いて来る少女。
その様子を感じ取った彼女は少女に水をかけ、少女も同じ様に彼女に水をかけ返す。
キャッキャッと楽しむ二人を見ながら椅子を用意し、何かあった時の為の待機と、足だけ水につけながらのんびり眺める単眼であった。



当然だが、羊角はこの映像の記録の為にカメラをセットしている。
別角度から4台セットしている辺り、羊角の本気具合が見て取れる事だろう。
後日編集して、少女だけのが映っている映像を作り上げた羊角は大変満足そうだった。
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