角持ち奴隷少女の使用人。

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71、可愛い少年。

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少年はとても困っていた。今回ばかりは本気で。
何故自分はこんな事になっているのかと。
いや、原因は自分自身なのだが、それでも何故この人達はこんなに楽しそうなのかと。

「ああ、良いわね、姉妹みたい・・・!」
「いやー・・・うん、本当に可愛いね。これは可愛いわ。二人並ぶと美少女二人でいい絵だわ」

うっとりした様子でカメラを向ける羊角と、感心する様に言う彼女。
二人の視線の先には当然少女が居るのだが、もう一人可愛い無格好をした子が居る。
それはフリフリの衣服に身を包み、ウイッグと髪飾りを付け、何故か可愛い人形まで持たされている少年の姿であった。
少女は普段から少年を可愛いと思っていたが、今はもっと可愛いと目をキラキラさせている。

何故こんな格好をしているかと言うと、原因は少女である。
今日の少女は新しいフリフリのドレスを着ており、屋敷の皆に見せて回っていた。
当然少年にもその姿を見せに行ったのだが、少女の小首を傾げながらの笑顔に狼狽えた少年は「か、可愛いですね」と少し顔を赤くさせながら応えてしまう。
その様子を見た少女は少年こそ可愛い気がすると思い、少年もドレスが似合うのではと思い至った。

そして少女に着てみないかと少年は迫られ、手を掴んで来る少女の柔らかさとか体温とか、ずいっと近付けて来る顔などで色々と混乱し、迂闊にも彼女達の見ている前で頷いてしまう。
結果「化粧はお姉さんに任せなさい!」と何故かポーズをとって張り切る彼女と「こういう時は私の出番よね」と少年に合うサイズのフリフリ衣装を用意し始める羊角という事態に。
少年は二人に連れ去られ、あれよあれよという間に着替えさせられたのだった。

そして今に至り、大変身した少年の見た目は完全に女の子となっている。
彼女の言葉通り今の少年は美少女と言って差し支えない風貌であり、少なくとも骨格で判断できるような人物でない限り少年だとは思わないだろう。
少女と並ぶとまるで姉妹かという様子であり、角さえあれば本当にそう思われかねない。

「あの、そろそろ、着替えて良いですか・・・」

少年は顔を真っ赤にし、何だかスース―する足元に狼狽えながら問う。
スカートがどうにも慣れないらしい。
流石に下着は元のままだが、危うく下着も着せられる所ではあった。

羊角が何故か女児用下着を取り出し、流石に彼女が手刀で止めたので大事には至っていない。
まさか少女のでは無いだろうなという問い詰めが有ったりもしたが、それは措いておこう。
その問い詰めに、まさかと想像してしまった少年が顔を真っ赤にした事だけは語っておこうか。

「えー、もうちょっと良いじゃん。ね、角っ子ちゃん。可愛いんだし勿体ないよね?」

だが彼女は少年の心情を理解しつつ否定を口にし、少女に声をかける。
すると少女は目をキラキラさせながらコクコクと頷き、少年にぎゅっと抱きついた。
どうやら少女にとって、今の少年は抱きしめたくなる程可愛い存在らしい。

「は、あ・・・あの・・・あ、その・・・え・・・あ」

当然少年は抱きつかれた事で顔を真っ赤にし、口をパクパクさせながら声にならない声を出す。
自分の頬に少女の頬が擦れる感触が、少年の心臓をどんどん早めている。
彼女はその様子をプルプルと震えがなら声を出さずに笑って楽しんでいた。意地が悪い。
そして羊角はもう完全に別世界にトリップしながらシャッターを切っていた。

「天使ちゃんが一番だけど・・・けど・・・これはこれで・・・!」

このままだと少年も羊角のターゲットになりそうな気配である。
ただ少女も今日は羊角の気持ちが少し解り、少年がとても可愛いと感じている。
兄弟姉妹などは良く解らないが、妹がもし居たらこんな気分だろうかと思っている様だ。
どうやら少年は少女にとっては保護対象らしい。少年の恋は本当に遠すぎる。

ただそこで少女は一つ思い至った事が有った。
今の少年の可愛さを、他の皆にも見て貰うべきなのでは、と。
少女はその感情に従い、少年の手を掴み皆の下へ走り出した。
少年は完全に頭がゆだっており、正常な判断が出来ずに素直に従ってしまう。

「あー・・・あーあ。まあ良いか」
「あーん、もうちょっと撮りたいのにぃー。まってー」

彼女は少女が何を考えたのか察したが、特に止める様子も無く見送る。
羊角はパタパタと追いかけていくが、こちらも止める気などは一切無い様だ。
そしてパニック状態のままの少年は皆の前に美少女な姿を見せていく。

「うわー・・・揶揄えねぇぐらい似合ってんな。知らなかったら女の子にしか見えねぇ」
「あら、可愛い。そういう趣味に目覚めたの?」
「わぁー! 可愛いぃー! 凄いね、可愛いね! 二人並ぶと姉妹みたい!」

余りの似合いっぷりに笑う事が出来ない男と、本気か冗談か困る事を言う複眼。
そして少年少女の並ぶ絵の良さに、全力で可愛いと褒めちぎる単眼であった。
尚、女は余りに可愛くて言葉が出ず、ギリっと歯ぎしりをさせながら見つめていた。

少年はそこでやっと正気に戻ったが、最早手遅れな事を察して色んな事を諦めた様だ。
その日は一日、少女のされるがままの少年であった。








「明日からスカートにさせようか・・・」
「いや先輩、落ち着いて」

かなり本気が入っている女の呟きに、冷静に突っ込む複眼という場面も後で有った。
複眼が居なければ、本当に翌日から少女と同じ使用人服になっていたかもしれない。
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