角持ち奴隷少女の使用人。

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66、介護。

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少女は責任を感じていた。
先日の単眼との腕相撲で、単眼の腕を痛めてしまった事に。

幸い単眼の力が強く、頑丈であった事で大事には至らなかった。
一応念の為病院にも行ったのだが、少し筋を痛めていると診断された程度で済んでいる。
とはいえ悪化する可能性も有るので、余り軽く見過ぎないようにとは言われているが。

心配で診察結果を待っていた少女は、その結果には胸を撫で下ろした。
だがそれでも、もしかしたら大怪我をさせていたかもしれない。
単眼だからあれで済んだが、もし別の人ならどうなっていたか。
そう考え始めると怖くて気分が沈んでいく少女。

だが元気がないながらも、それでも少女らしい思考回路からの行動を始める。
単眼は片腕が上手く動かせず、普段通りの仕事が出来ない様子。
ならば単眼の腕が回復するまでは、自分が単眼の腕になろうと決めた様だ。

そしてその日から、単眼のおはようからおやすみまでをお世話する少女が生まれた。
少女は先ず何時も通りに起きたら畑の世話の途中で単眼を起こしに向かう。
こんこんとノックをして反応が無い事を確認し、扉を開けて中に入る。

尚今更の話だが、屋敷の住人達は基本的にカギをかけていない。
友人が堂々と家に入って来た事からも解ると思うが、玄関も夜中以外は基本開けっぱなしだ。
物騒だと思うなかれ、ここは田舎なのだ。これがこの辺りでは普通の事。

そして沢山女性が居る中に男が二人という環境でも、彼女達に鍵をかけるという感覚は無い。
男に対してその辺りの信頼はしているし、少年が襲うなど有りえないとも思っている。
そもそも男がもし誰かを選ぶような事が有れば、それは玉の輿でもあるのだ。
とはいえ誰もそんな事は狙っておらず、男に対して恋愛感情なども一切無いが。

「うに・・・にゅー・・・だれぇー・・・」

誰かが部屋に入って来たのを察し、もぞもぞと起き上がる単眼。
可愛らしいパジャマに身を包んだ姿で、人形を抱えながら寝ぼけ眼を少女に向ける。

「あー・・・おはよぉー・・・むにゅ・・・」

少女は単眼の挨拶にぺこりと頭を下げ、そそくさと単眼の着替えの用意を始める。
単眼は寝ぼけた頭でチマチマ動く少女を眺め、少し幸せな気分になっている。

「可愛いなぁ・・・」

服をよいせと広げて着せようとして来る少女に、思わずクスクスと笑みが漏れてしまう。
そもそも体格が違い過ぎて、少女が着替えの補助をするには単眼が屈まなければいけない。
たとえ腕を痛めていたとしても、一人で着替える方が圧倒的に早いのだ。

それでも少女の気持ちが嬉しくて、可愛らしくて、素直に少女に世話をされる単眼。
ただ精一杯屈む単眼と、精一杯つま先立ちで背を伸ばす少女の姿は、傍から見ると笑える光景かもしれない。

「ふはー、ありがとねー」

服を着替え終わり、礼を告げる単眼。
少女は嬉しそうにコクコクと頷き、一仕事終えた感で一杯だ。

「畑に戻るんだよね? いってらっしゃい」

手を振って見送ってくれる単眼に笑顔で手を振り返し、パタパタと畑に作業の続きをしに戻る。
作業を終えたら今日の野菜をもぎり、またパタパタと台所に向かう。
今日の朝食担当は彼女らしく、既に調理の準備に入っていた。

「お、角っ子ちゃん、ありがとねー」

少女から野菜を受け取り、手際よく調理して行く彼女。
勿論少女も張り切って手伝い、その様子に彼女は少し安堵していた。
あれから少女が少し元気がない事には気が付いており、最近少しだけ元気が戻って来た事にほっとしている様だ。

「はーい、出来たよー。じゃ、お願いね?」

彼女から渡されたプレートを持ち、重大な任務を任されたかのような顔で頷く少女。
気合いを入れて歩を進め、単眼の部屋までプレートを持って行く。

「あ、おチビちゃん、ありがとー」

少女はプレートを単眼の部屋のテーブルに置き、椅子を引く。
そしてその横に脚立を置き、フォークとナイフを手にふんすと構えた。

「あはは、ありがとねー」

単眼が椅子に座ると少女も脚立に上り、プレートの食事を単眼の口に運ぶ。

「あーん。んぐんぐ・・・」

勿論単眼は片手が動くのでここまでする必要は無いのだが、少女の張り切りが可愛くて突っ込む気はない様だ。
少女の介護を甘んじて受け、というか、楽しんで受け入れている。
尚昼食と夕食もこの調子で、少女は全ての面倒を見る気満々だ。
そうして単眼が朝食を食べ終わると食器を片付け、今度はパタパタと自分の食事に向かう。

「お疲れ、んじゃ行って来るから」

そこですれ違った男に頭をポンポンと軽く叩かれ、慌てて頭を下げて見送った。
男は苦笑しながら出勤し、少女は姿が見えなくなってから朝食を食べる為にテーブルに着く。
もっきゅもっきゅと慌てずにちゃんと美味しく食べ、自分の分の食器も片付ける。

そして今度はまたパタパタと単眼の下へ向かい、単眼につきっきりで仕事の補助をし始める。
ただ単眼は腕が治るまでは無理をしなくて良いと言われており、軽い掃除程度しか仕事は無い。
そしてその掃除を張り切って少女がやってしまうので、単眼は少女と談笑するぐらいしかやる事が無い状態だ。

「おちびちゃん、お膝の上においで―」

なのでここ数日は少女を膝の上に乗せ、のんびりぽけーっとしている二人の姿が良くあった。
単眼は少女の頭を撫でてのんびりし、少女は目を細めながら撫でられている。
何度かパシャリとシャッターの音が何処からか聞こえているが、それもいつもの事だ。

因みに少女は風呂も介護する気満々で、単眼の体を隅々までしっかり洗っている。
何処から持って来たのか彼女が怪しげなマットを複数引いてその上でやっているので、絵面的には色々不味い物があったが少女は特に気にしていない。気が付いていないとも言う。
ただ単眼は恥ずかしかったのだが、ふんすと気合を入れている少女を前に断れなかった様だ。

そして寝間着を二人で屈んで伸びてわちゃわちゃしながら着替え、単眼と少女の一日は終わる。
どう見ても「お世話している」ではなく「お世話されてあげている」状態だが、単眼は楽しい様なので問題無いだろう。
もう少しで腕の調子が戻りそうなのを感じており、ちょっとだけ残念な気分になっている単眼であった。




尚この数日間、女は単眼を羨ましそうな目で何度も見つめていた。
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