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53、陽気。
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少女は最近強敵と良く戦っていた。
その敵は強大で、最近の少女は敗北を重ねている。
何度か勝利はしているのだが、勝率は二割といったところだろうか。
そして少女は、今日も敗北を喫していた。
「ねえ、可愛いのは解るけどさ、あんた流石に気持ち悪いよ・・・」
「黙って。起こしちゃうでしょ」
「・・・はぁ」
羊角の様子に溜め息を吐く複眼。
だが言っても無駄だと判断し、すぐにその場から離れて行った。
邪魔者が居なくなった事で羊角は集中してカメラを構える。
静寂の中カメラの先に映るのは、立ったままうつらうつらとする少女の姿。
箒を手に、少しだけ壁に寄りかかりながら俯き、頭がゆらゆらしている。
少女は最近睡魔に負けていた。段々と暖かくなって来た陽気に負け続けていた。
そして羊角は連日の少女の眠たげな姿を撮り続けているのだ。
首がカクンと落ちた所ではっと気がつき、寝ぼけた顔のまま頭を上げる少女。
そのまま暫くぼーっとしてから、やっと頭が覚めてきたようでプルプルと頭を振る。
そしてぐっと手を握って気合いを入れ、手に持った箒で掃除を再開し始めた。
ただしその目はまだ少し開き切っていないが。
「はぁ~・・・かぁわいぃ~・・・」
一連の動きにご満悦の羊角。
ここ数日転寝をする少女の様子を多く撮っており、それだけの動画編集などもしている。
女と二人並んで動画を見ている様は、流石の彼女も「これは怖い」と言った程だった。
だがそれでも羊角の撮影は続く。周りの反応など知った事ではない。
自身がどう思われようと、少女を撮り続ける事こそが今の羊角の至高の楽しみなのだから。
天使の記録を残し続ける事が、今の自分にとっての使命なのだと。
「本当に天使ちゃんってば天使なんじゃないかしら。可愛過ぎる」
羊角の視界にフィルターがかかっている気がしなくも無いが、少女が可愛い事は事実であろう。
その可愛さは幼さから来る物もあり、羊角は成長しないで欲しいと無茶な願いを抱いている。
そんな願いむなしく少女はすくすくと・・・育ってはいなかった。
むしろその呪いの様な願いが叶うかの様に、余り成長はしていない。
勿論少しは大きくなっているのだが、成長速度は遅い部類だろう。
屋敷に来た頃と殆ど変わらない、小さな可愛い少女のままだ。
ただ違うのは健康である事と、元気である事。
それに外見が変わっておらずとも、内面は変わっている。
体も心も少女はきちんと成長しているのだ。
その様子が尚の事、羊角や女が見つめる結果になるのだが。
素直で可愛らしい部分はそのままに、少しだけしっかりして来た様子に羊角は悶える。
来た頃の怯え等もう既に無く、花の様な笑顔で向かって来る様子に眼光を鋭くする女。
ある意味でこの二人は同類なのだろうと、さぼりに入り始めた羊角の尻を蹴りながら思う複眼。
「あうっ!」
「ほら、終わり終わり」
「あー、あー! もうちょっと、お願いもうちょっと撮らせてー! 今可愛いのー!」
「さぼりは流石に見逃せない。私が先輩に怒られる」
「あー! あー! 天使ちゃんが可愛いのにー! 私の天使ー!」
「あんたのじゃないから」
その大声ではっと起きる少女。
少女はまた敗北していたのであった。
その敵は強大で、最近の少女は敗北を重ねている。
何度か勝利はしているのだが、勝率は二割といったところだろうか。
そして少女は、今日も敗北を喫していた。
「ねえ、可愛いのは解るけどさ、あんた流石に気持ち悪いよ・・・」
「黙って。起こしちゃうでしょ」
「・・・はぁ」
羊角の様子に溜め息を吐く複眼。
だが言っても無駄だと判断し、すぐにその場から離れて行った。
邪魔者が居なくなった事で羊角は集中してカメラを構える。
静寂の中カメラの先に映るのは、立ったままうつらうつらとする少女の姿。
箒を手に、少しだけ壁に寄りかかりながら俯き、頭がゆらゆらしている。
少女は最近睡魔に負けていた。段々と暖かくなって来た陽気に負け続けていた。
そして羊角は連日の少女の眠たげな姿を撮り続けているのだ。
首がカクンと落ちた所ではっと気がつき、寝ぼけた顔のまま頭を上げる少女。
そのまま暫くぼーっとしてから、やっと頭が覚めてきたようでプルプルと頭を振る。
そしてぐっと手を握って気合いを入れ、手に持った箒で掃除を再開し始めた。
ただしその目はまだ少し開き切っていないが。
「はぁ~・・・かぁわいぃ~・・・」
一連の動きにご満悦の羊角。
ここ数日転寝をする少女の様子を多く撮っており、それだけの動画編集などもしている。
女と二人並んで動画を見ている様は、流石の彼女も「これは怖い」と言った程だった。
だがそれでも羊角の撮影は続く。周りの反応など知った事ではない。
自身がどう思われようと、少女を撮り続ける事こそが今の羊角の至高の楽しみなのだから。
天使の記録を残し続ける事が、今の自分にとっての使命なのだと。
「本当に天使ちゃんってば天使なんじゃないかしら。可愛過ぎる」
羊角の視界にフィルターがかかっている気がしなくも無いが、少女が可愛い事は事実であろう。
その可愛さは幼さから来る物もあり、羊角は成長しないで欲しいと無茶な願いを抱いている。
そんな願いむなしく少女はすくすくと・・・育ってはいなかった。
むしろその呪いの様な願いが叶うかの様に、余り成長はしていない。
勿論少しは大きくなっているのだが、成長速度は遅い部類だろう。
屋敷に来た頃と殆ど変わらない、小さな可愛い少女のままだ。
ただ違うのは健康である事と、元気である事。
それに外見が変わっておらずとも、内面は変わっている。
体も心も少女はきちんと成長しているのだ。
その様子が尚の事、羊角や女が見つめる結果になるのだが。
素直で可愛らしい部分はそのままに、少しだけしっかりして来た様子に羊角は悶える。
来た頃の怯え等もう既に無く、花の様な笑顔で向かって来る様子に眼光を鋭くする女。
ある意味でこの二人は同類なのだろうと、さぼりに入り始めた羊角の尻を蹴りながら思う複眼。
「あうっ!」
「ほら、終わり終わり」
「あー、あー! もうちょっと、お願いもうちょっと撮らせてー! 今可愛いのー!」
「さぼりは流石に見逃せない。私が先輩に怒られる」
「あー! あー! 天使ちゃんが可愛いのにー! 私の天使ー!」
「あんたのじゃないから」
その大声ではっと起きる少女。
少女はまた敗北していたのであった。
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